2019年 02月 01日
タコとツグミとイタリアの冬
寂しさに海を覗けばあはれあはれ章魚逃げてゆく真昼の光
という北原白秋の歌があったのですが、その授業のあとの批評会で、大ベテランの尊敬する先生から、思いがけない批評をいただいて驚きました。
30年近くも前の話なのですが、わたし自身は授業中に、「タコが生き延びようとして、八つの足をばたばたさせて必死で逃げて行くのを、作者が見て」と説明したように、ぼんやりと覚えています。今もはっきり覚えているのは、その大先輩の先生の鋭く温かい批評です。
「ぼくは釣りをするので知っとるんやけどね、タコが逃げるときは、全身でこうさあっと逃げて行くんで、足を動かしたりはせんのよ。これは見たことがないと分からんよねえ。聞きながら、自分も、知らんのに知ったつもりで、実際とは違うことを教えよることがあるんやないかと思いましたよ。」と言われたのです。
「章魚逃げてゆく」と読んで、わたしは、自分が知っている他の動物の逃げ方から、タコもそんなふうに足を動かして逃げるものだと信じて疑わなかったのですが、そんなふうに、知っているつもりで知らないこと、自分の知っていることや見聞きしたことから、勝手に推測して知ったつもりになっていること、実は知らないのに自分では気づかずにいることが、わたしにも、そして、他の人にも、意外と多いのではないかと思います。
それとは少し話が変わりますが、わたしは動物や植物、虫などについて知らないことが多く、イタリアに来て、動植物に詳しい夫に教えてもらって、イタリア語名を知ったのに、日本語名は知らず、ブログの記事に書く段になって、初めて伊和辞典で調べて、「ああ、このgardeniaが、日本語でクチナシという花なんだ。」などと知って、驚くことが少なくありません。

我が家の庭で一番よく見かける野鳥は、イタリア語名をmerloと言います。雄は漆黒の衣に黄色いくちばし、雌は茶色のようにも灰色のようにも見える色をしていて、わたしたちの存在や視線に気づくと、すぐに逃げてしまうので、なかなか撮影できません。うちや出かけた先で聞こえる鳥の鳴き声も、山育ちの夫は聞いて何の鳥だか分かることが多く、あれはmerloだよと教えてくれます。merloは、そんなふうにイタリアではよく見かける野鳥なのですが、わたしはしばらくの間、イタリア語名は知っていても、その日本語名を知らずにいました。おそらくはブログの記事を書くときになって初めて、日本語では何と言うのだろうと、辞書を引いたのではないかと思うのですが、愛用の『伊和中辞典』のmerloの項には、第一義に、「《鳥》クロウタドリ、ツグミ」と書いてあります。こう書いてあるのを見て、どちらでもよいのだろうと思い、「クロウタドリ」は聞いたことがなかったので、merloは日本語のツグミに該当する鳥だと、長い間思いこんでいたように思います。

そうではないと気づいたのは、これもずいぶん前のことなのですが、たまたま何かの拍子に、ツグミの写真を日本語のサイトで見たときです。それが、わたしがイタリアで見かけるmerloとは異なる鳥なので、ウィキペディアでイタリア語でmerloと呼ぶ名の鳥の学名を調べ、

その学名、Turdus merulaが正しいことを野鳥を観察できる公園の案内看板でも確認して、その学名の鳥は、ツグミ属ではあるものの、「クロウタドリ」であることを、他のサイトでも写真を見て、確認しました。ただ、植物でも、属名は日本語で知っているけれども、種の名前が分からない場合、属名で呼んで済ませてしまう場合も多く、言葉の長さと鳥の名前として人が知っている度合いを考えると、merloに近いのは、ツグミのような気がするためか、わたしの頭の中では「merlo = ツグミ」という図式ができあがってしまっているのですが、実際には、「ツグミ属のクロウタドリ」なのでありました。辞書に書いてあるので、他にもmerloはツグミだと考えている人が多いようにも思い、公にもツグミと訳される場合が多いのではないかという疑問があり、また、属名は知られていても、種は知られない多くの動物や植物が、属名でひとくくりにされている例は少なくないので、ツグミ属なのでツグミでもいいのだろうかと、思ったりもします。

今頃こんな話をするのは、1月最後の3日間、あるいは1月最後の2日間及び2月最初の1日が、イタリアでは、i (tre) giorni della merla、「雌クロウタドリの(3)日」と呼ばれ、一年で最も寒い3日間だと言い伝えられているためです。名前の認知度や言葉の長さ・響きから、つい「雌ツグミの3日」と考えてしまい、また、書いてもしまったあとで、「ああ、そう言えば、正確にはクロウタドリと書くべきだった。」と気づいたのでありました。1年で最も寒い日と言い伝えられてはいても、約50年の平均気温を見ると、1月の平均気温を、この「雌クロウタドリの3日」の平均気温が、わずかながら上回るので、実際には最も寒い3日間ではなく、例年、1月10日以降は、気温が上向きになることが多いのだと、オンライン記事に書かれていました。気温を測るすべを持たず、長い寒さに耐えかねた昔の人が、最も寒い日だと感じていたことから、こういう言い伝えがあるのではないかと、この記事には書かれていました。記事へのリンクはこちらです。
ペルージャではこの数日気温が上がったのですが、今日から明日にかけて暴風が吹き雨が降り続けるという予報が出ています。明日は、イタリアでは南部を除き、悪天候の地域が多いようです。
********************************************************************************************************************************
Sono passati i giorni della merla.
Anche se ora il maltempo investe l'Italia e
tornerà il freddo la prossima settimana,
la primavera è sempre più vicina :-)
Foto: Merla nel centro storico di Perugia 2/7/2010
Perché questa foto? Vediamo e sentiamo i merli
nel nostro giardino ma fuggono subito e finora
questa è l'unica merla che io sia riuscita a fotografare.
********************************************************************************************************************************

最近漢字のチョイスがあった時にあれ、どちらだったかなと迷いが出る事があるんです。
調べてからブログに書けば良いのに良しとしてしまう自分が恥ずかしいです。
クロウタドリ、ご自宅の庭で見られるとは!
羨ましいです。
漆黒に黄色いくちばし、とても美しいですね。
メスは茶色っぽい灰色なんですね。
私達もクロウタドリを見たくて、石垣島に行きましたが、
見ることができませんでした。
イタリアでは鳴き声も普通に聞くことが出来るのですね。
白いお花とクロウタドリ、素敵なお写真ですね。
(likebirds妻)
まれですが、春から秋にかけては、庭でぴょんぴょん跳ねている
のを、よく見かけるんですよ。鳴き声もとてもきれいです。
いつかイタリアにいらしたら、公園などで見かけられる機会がきっと
あるのではないかと思います。トラジメーノ湖は、野鳥の種類や数が
イタリアでも殊に多い湖で、湖畔には有料ですが、葦の葉に隠れた多数の
鳥がたくさんいて、それを観察・撮影できる場所もあるんですよ。
https://www.facebook.com/oasinaturalistica.lavalle/
ありがとうございます。お二人の美しい鳥の写真を見て、近視の
わたしでは目にとらえられないかわいい姿、あるいは空を飛ぶ
勇姿に、名前だけ知っていたのに知らなかった鳥の姿や、聞いたことの
ない鳥の姿と名前が分かることも多く、楽しみながら学ばせていただいています。
子供の頃、市場でおでこに値札を貼られたタコが
そお~っと逃げようと足をもぞもぞさせつつ移動し始めたら
お店のおじさんに首根っこをつかまれて発泡スチロールの箱に投げ戻されたのを見た記憶があります。
なおこさんのイメージと近いようですね。
フランスの鳥や植物の名前が知りたくて、小さな図鑑やCDを求めましたが
いまはwikiや動画で検索することが多くなりました。
英語では見つかるのに、フランス語だとラテン語名だけとか、その逆もあります。
ホトトギスはだんぜんフランス語の petit coucou がかわいいです♪
イタリア語は和伊中辞典でもラテン語しか載っていませんでした。
Tant pis!(イタリア語ならPeccato?)
クロウタドリだったのですね。
以前フランスにお住まいの方のブログでこの鳥について
書かれていることがあり、春を告げる鳥?なのか早春から声を聞くというような話でした。その時、私は3月のポルトガルから帰った後で、ポルトガルで聞いた歌うような鳥の声の主がこのクロウタドリだったのか?と思い調べたことがありました。でも、これこれ!と思わなかったのですよ。
今でもあの声の主を確かめたくて、早春のポルトガルへ行くことを妄想します。二番目の伝承についてはお時間ができた時に教えていただけたら嬉しいです。
こうしてイタリア語を勉強することで、色々なことを知ることができて、なかなか上達できないまでも楽しんでいます。
日本では明日は節分ですよーー!!
「知らんのに知ったつもりで」これはよくあることかも?と思いました!注意したいと思います!
なおこさんのところでは当たり前にいる鳥、日本では珍しくて、一部地域にしかいないことも?また逆もあって日本でしか観ることが出来ない生き物や植物も?
何気なく見ている当たり前のものも、注意して観察したいなあ~と思います(*^_^*)
私も、教えていて、時々はっきりわからないのに、多分・・・でこたえてしまったことがあるからです。
そんな時は、次回のときまでにしっかり調べ、正しいのは、こちらでしたと訂正しています。
日本人なら疑問に思わないであろうことを、質問してくることがあり、
そういう時は、どんな風に答えていいのか、困る時もありました。
この鳥、クロウタドリというのですね。
以前スイスの山で、見かけ、何と言う鳥なのかなと思っていました。
日本では、迷鳥として、南の島に時々現われるみたいですね。
タコも慣れた水のないところで必死だったのでしょうね。
思いもかけない大先輩の批評、今もよく覚えています。残念ながらまだ
テレビ映像でも、タコが水中で逃げるところを見たことがないのですが。
そうなんですね。うちは夫が好きで、動植物図鑑は、絵入り・写真入りの
ものがたくさんあるのですが、求める動物や植物にたどり着くまでが大変で、
最近はわたしも、特定地域の高山植物図鑑を参照する場合を除いては、
たいていインターネットのお世話になっています。わたしの場合は、夫が
イタリア語名を知っている場合が多いので、そこから伊和辞典にないので、
インターネットで学名を調べて、対応する日本語名を調べてということが多いの
ですが、ウィキペディアもたまに間違いがあるので、必ず複数サイトを調べて、
裏を取るようにしちます。
メルマガは、ブログと比べて読者の反応が見えにくいので、さっそく
いただけたお言葉、とてもうれしかったです。
ポルトガルも南欧なので、クロウタドリ、いそうなものですが、どうでしょうね。
貴ブログを拝見して、わたしもまたポルトガルに行きたいなと思いました。
節分、わたしが日本に住んでいた頃はもっぱら豆まきでした。昔からの風習も
現代になって変わっていくとはおもしろいですね。
外国語を勉強すると、いろいろな意味で世界が広がりますよね。お互いに頑張りましょう♪
特に教える立場にあるときには、確かにこうだと確信を持って言えるように、
いろいろな調べ物をして、かつ様々な角度から見ていかないといけないなと
思いました。
日本の皆さんのブログの写真のおかげで、この花日本にも咲いていたんだ、
少し違うなあ、など、いろいろ分かって、わたしも興味深いです。
わたしも自信がないときは、学校なら次の授業までに調べておきますねと
言い、個人授業のときは、生徒さんといっしょに本、辞書やインターネットで
調べることもあります。
なんとスイスの山にもクロウタドリがいるんですね! この記事を通して、
コメントでも何度も書いたので、ようやく「merlo=クロウタドリ」と認識し直す
ことができそうです。



