イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

友情と勇気・音楽に感動、映画『Green Book』

 昨夕、夫が友人からすばらしいと聞いて、ずっと見たがっていたアメリカ映画、『Green Book』を、映画館に見に行きました。サンレモ音楽祭があるのにと思いながら夫についていたのですが、音楽も物語もすばらしい映画で、感動しました。イタリア語に吹き替えての上映ではありましたが、イタリアでも映画の題名は、英語の原題のままです。日本では、『グリーンブック』という題で、3月1日に劇場公開される予定のようです。

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Dalla pagina FB di Eagle Pictures

 1962年、黒人差別がまだ根強く残る南部に、あえてコンサートツアーに行こうとする黒人天才ピアニスト、ドン・シャーリー。もう一人の主人公は、最初は黒人に対する差別意識がありながらも、家族を養うために、やむなくドン・シャーリーの南部ツアーの運転手を務めることとなったイタリア系アメリカ人、トニー。礼儀作法や道徳観に問題がありながらも、性根は優しく、南部でのドン・シャーリーへの差別を許せないトニーと、古典音楽や自ら演奏する音楽の世界ばかりで、当時アメリカで人気のある音楽に疎く、教養と徳は高いものの、礼儀正しすぎるきらいのあるドン・シャーリー。

 この二人が、長い旅を通して、そして、出会うさまざまな差別を通して、互いの世界を学び合い、理解し合い、そして厚い友情を築いていく様子を、美しい音楽やユーモア、差別に満ちた当時の南部の富裕層たちの姿を織り交ぜながら、描いた映画です。

 イタリア語版の予告編では、初めから、こうした二人の出会いや交流を軸に、映画を紹介しています。


 一方、英語音声・日本語字幕の日本で公開される映画の予告編では、映画の物語そのものを紹介する前、冒頭に、「本年度のアカデミー賞大本命」という音声と言葉の表示に、2分足らずの予告編の4秒もが割かれています。


 北部なら白人と変わらぬ待遇を受けて尊重され、報酬も3倍だというのに、差別と屈辱を受け続ける南部で、ドン・シャーリーがあえてツアーを決行するのはなぜかという問いに、トリオの演奏家の一人がこう答えます。

  "Perché per cambiare i cuori delle persone ci vuole il coraggio."
  "Because it takes courage to change people's hearts."
  「人々の心を変えるには、勇気が必要だからさ。」(石井訳)

 イタリアでも日本でも、最近は外国人、特に移民への差別が以前に比べて目立ってきているように思います。生まれた国や宗教、職業や性別、性的指向や学歴などで、人を差別してはいけないこと、そういう差別をしない若い世代を育てていき、大人たちも今の在り方を見直すことが、今ほど大切なときはないような気がします。わたしが日本で教えた3校目、かつ最後の高校は、愛媛県立内子高等学校で、学校を挙げて人権教育に取り組んでいました。学校には教職員への人権教育研修もあり、そうやって学んだことを、愛媛県立高校では返すことができなくとも、何らかの形で、世の中に返していけたらと願っています。

 閑話休題。確かこの内子高校で人権教育に当たっていて、知ったのが、「黒人差別は、本来は差別する黒人側の問題であり、同様に女性差別は差別する男性側の問題だ。」ということで、よく勘違いされがちですが、まさにそのとおりだと思います。弱いとみなされがちな立場にある人が、差別や偏見に苦しむことなく、気がねなく幸せに暮らせる社会こそ、皆が幸せに暮らせる世界だと思います。日本で日本語を学んで働こうとする外国の方たちへの差別やそうした方たちの搾取のニュースを、最近心苦しい思いで読んでいます。その背景には、欧米圏から日本に来る外国の方と、経済的には豊かな日本に比べると貧しい国から来る方についての、テレビ放映や報道など、マスコミが与える情報の影響も大きいのではないかと思います。マレーシアに研修に行って、人々の温かさや本当に豊かな生き方を見ることができたと、輝いた瞳で語ってくれた、大先輩の数学の先生など、実際にそうした地域を旅行した方が語る国のすばらしい点を見聞きするにつけても、そう思います。

 実際、外国に暮らしているわたしには切実な問題でもありますが、もし、ご自分や大切なご家族が外国に住んでいたとしたら、その土地の方にどんなふうに接してもらいたいか、どんな国出身の方にも、そういう心で、日本でもイタリアでも人を遇することができるようになれば、そして、自分もそうでありたいと切に願う今日この頃です。

 題名の『Green book』は、夜中に黒人が移動することが禁止されている地域さえあり、また、白人だけが利用できるレストランやホテルが存在した当時のアメリカ南部で、黒人が安心して利用できる宿泊施設の情報が掲載されている冊子です。かつては、南イタリア出身の移民への賃貸を断っていた北イタリアの賃貸住宅も少なくなく、今では移民に対して、同様にふるまう大家が、イタリア各地に存在します。実話に基づくこの映画を機に、少しでも世界が、差別・偏見の少ないものとなるように祈っています。

 すばらしい映画ですので、皆さん、ぜひご覧ください。

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"Green Book", film bellissimo e commovente ispirato a una storia vera.

Racconta l'amicizia tra due protagonisti, un italoamericano
e un pianista di colore negli Stati Uniti del 1962.
A mano a mano le differenza sociali e di carattere che prima li dividevano
iniziano a diventare la fonte di crescita culturale e personale
per entrambi, aprendo a ciascuno di loro un mondo nuovo,
le maniere e i punti di vista diversi,
a unire i due con affetto e rispetto reciproco e profondo.
Quanto sono ingiuste le discriminazioni,
quanto sono disumani coloro che discriminano e perseguitano.
L'incomprensione, gli stereotipi e le discriminazioni degli altri
esaltano ancora di più la bellezza della loro amicizia straordinaria.
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by Bolognamica2 at 2019-02-18 17:44
なおこさん、おはようございます!
なおこさんの記事でこの映画を知ってから、すぐにでも観に行きたくなり、ちょうど同時期に久々に会った友人からもお勧めされて、先週観てきました!
すっごく良かったですー!!心に響くものがあり、自分の心の奥底から何か混みあげるものがありました。
素敵なシーンが沢山ありましたが、個人的に好きなシーンは初めてピアニストの彼がケンタッキーフライドチキンを車の中で食べるところ(笑)、と、最後のバーでの素晴らしい演奏、あとはラストシーンの主人公の奥様の一言とピアニストの方へのあの抱擁シーンが何とも深い愛情を感じられてグッときました。素晴らしい映画を教えて下さってありがとうございましたー!!
Commented by milletti_naoko at 2019-02-18 23:22
みかさんも映画をご覧になって感動されたんですね!
すばらしい映画ですよね。みかさんが見てくださって、さらに同じように感動をされたと知って、わたしこそうれしいです。ありがとうございます♪

おっしゃるどのシーンもいいですよね。フライドチキンとバー演奏の場面は、心と互いの距離の垣根が取り払われていく、接触によってお互いが変わっていく瞬間で、そういう変化を象徴しているようにも思います。トニーの奥さんは最初から曇りのない愛ある態度で皆に接していたのですが、そういう彼女がドン・シャーリーに心からの感謝を告げ、こっそり耳打ちする場面、わたしも感動しました。
by milletti_naoko | 2019-02-07 18:53 | Film, Libri & Musica | Trackback | Comments(2)