イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

日本語教育 上級・出直し入門それぞれの難しさ、N1対策の場合

 月曜は、昨年末の日本語能力試験でN2に合格し、今年末の試験では上級レベルを対象とするN1の受験を目指す若者の授業があり、火曜は、ぜひ日本語を勉強したいという本人のたっての希望で、昨年夏に6週間、日本語を学びに来ていた12歳の少年の久しぶりの授業がありました。

日本語教育 上級・出直し入門それぞれの難しさ、N1対策の場合_f0234936_734131.jpg

 そこで、先週から、あれこれと考えながら授業の準備をしていました。写真の左手は、N1を目指す若者の授業用に作成したプリントです。

 中級終了レベルのN2と上級レベルのN1では、漢字や語彙だけを見ても、それぞれ認定基準の漢字が、N2は1,000字程度、N1は2,000字字程度で、語彙は、N2は6千語程度、N1は1万語程度と、大きな隔たりがあります。読解や聴解においても、N2では内容を把握できればよかったのが、N1では、より難しい文章や音声で伝える内容を、文章の構成や流れ、詳細まで理解する必要があります。ですから、イタリアに暮らしている若者にはかなり難しく、仕事もしながらですから、2年かけて、じっくり力を培っていけたらと考えています。

 今は、まだあと数十ページ残っている『新完全マスター読解 日本語能力試験N2』を、授業中に見ていっています。残念ながら、日本語能力試験そのものが、漢字・語彙・文法・読解・聴解という構成からなり、しかも選択式であるために、出版される日本語能力試験対策問題集も、漢字のみ・語彙のみ・文法のみ・読解のみ・聴解のみを扱うものが多くなってしまっています。

 けれども、本来、漢字や語彙、文法は、読解・聴解の対象であるまとまりのある文章や音声と切り離せないものであって、中学校や国語の古文や英語の教科書が分かりやすいのですが、文や会話を学び、その中に出てくる漢字や言葉、文法を押さえていった方が、確実に力がつきます。これは、歴史の年号や電話番号のように、単なる数字の羅列では記憶しにくいので、「鳴くよウグイス平安京」という言葉と共に794年という平安京遷都の年を覚えるのと同じで、わたしたちの脳は、何かまとまりのある流れの中、意味のある構造の中にあるものごとの方を、そういう状況から切り離されたものよりも、ずっと記憶しやすいようにできているからです。母語で何かを耳にするときや、本などを読むときも、一般的にはわたしたちは、まず右脳を使って、概要を把握し、次に左脳を使って、文法や言葉などの細部に注意を払い、そして、最後に再び右脳を使ってそうした情報を統合するという過程を通して言語情報を理解することが分かっています。また、何より言語そのものにおいて、文字や語彙、文法は表現する内容と緊密に結びついています。

 閑話休題。そこで、月曜は授業の最初に先週の復習をすることに決めて、そのためのプリントを用意しました。まずは、先週の授業で見た『新完全マスター読解』の問題文を読み直し、文中の漢字や言葉、文法事項で、若者が知らなかったもの、あるいは自信がなかったものに印をつけていきます。そして、プリント(上の写真左)の左側には印が多くついた復習の必要が高い文を配し、右側には、その文中に使われている漢字や語句、文法で、特に注意すべきものについてまとめてみました。また、問題集にはかなりの漢字に読み仮名がふってあるのですが、このプリントでは、N1対象の漢字については、あえて読みを添えず、自分の頭を使って読みや意味を文脈からも考えることを通して、そういう漢字も少しずつ覚えていけることをねらいました。文法事項については、『どんなときどう使う日本語表現文型500 N1~N3』、N2の語彙や漢字については、『日本語能力試験 ターゲット2000 N2単語』や『日本語能力試験 ターゲット1000 N2漢字』、これらに載っていないものについては、『新漢語林』や『和伊中辞典』を参考に、例文などを書きました。

 「N1はあまりにも難しいから、問題集を解くよりも、とにかく本を読んで読みまくるのがいい」と、若者は、N1合格を目指す人々、合格した人々のフォーラムで見たそうです。ただし、たとえば問題集の文章や、今読書中だという小説の一部を音読させてみるだけでも、読めない漢字や知らない言葉、勘違いしている漢字や言葉、どこまでが主語かが理解できていない場合があることが分かるので、本人が自分で多読する一方で、授業の中では、わたしが読みがきちんとできているかを確認し、指導していくことも必要です。そのためには、分野別に分かれてしまって、しかも選択方式の日本語能力試験問題集よりも、今度目指すレベルから言っても、わたしがかつて高校で教えるのに使っていた、高校生向けの記述式問題集がいいのではないかと思いつきました。

 日本で初めて勤めた高校が大きい学校で、国語教員が10人いて、多くの先生に教わることができたことに、今でも感謝しています。中でも厳しく指導していただいたのが、現代文の問題の作り方でした。漢字の読みや言葉の意味、指示語が指す内容などを踏まえて、問題を解いていけば、その問題文の言わんとしていたこと、問題文に書かれていることが分かってくる、そういう問題でなければならず、さらに、単に問題作成者である自分がそう解釈したからではなく、文中の言葉や文の流れを手がかりに、だれが見ても、それが答えであることが明らかでなければならないこと、現代文の問題にはそういう客観性が必要とされることを、初任校でたたき込んでいただいたおかげで、その後、若手の先生の多い学校に勤めるようになったときにも、自分の中に、どんなふうに問題を作ればいいかという軸ができていました。第一学習社の現代文の問題集が、そういう意味で、まさに理想的な問題でできていて、使いやすく、文を読みながら、漢字や言葉を学び、かつ自分で日本語で書いて答えなければいけないところがあるのがいいと考えたのですが、さあ、けれども、イタリアから注文できるものだろうか。そう思って調べると、高校向けの教材なので、オンラインでの注文は高校教師からしか受けず、しかも、書店に問題集は売られていても、解答・解説はついていないとのことでした。

 というわけで、昔取った杵柄で、オンライン新聞や近代作家の小説や詩作品を教材として選んで、わたし自身で、毎回問題を作り、漢字や語彙も、読解と並行して学べて、かつ書く力がつけられるようにできればと今は考えています。せっかく文を読むのであれば、そんなふうに総合的に学ぶべきだと思うし、そうすれば、読みが深まると同時に、漢字や語彙、文法も学ぶことができて一石二鳥だからです。

 オンライン新聞を使った教材は、著作権の問題があるので、公表が難しいのですが、すでに著作権が消滅している近代作家の作品を問題とした場合には、いつか例をご紹介できればと考えています。

******************************************************************************************************************
Lezione di giapponese
lunedì per un allievo che studia per superare
l'esame di livello avanzato, N1 di JLPT (Japanese-Language Proficiency Test),
martedì per un ragazzo di 12 anni tornato dopo 6 mesi dall'ultima e sesta lezione.
Entrambe le lezioni richiedono preparazioni con cura in modi e sensi diversi,
ma sono anche sfide interessanti ed è bello vedere brillare gli occhi dei ragazzi.
******************************************************************************************************************

Articolo scritto da Naoko Ishii

↓ 記事がいいなと思ったら、ランキング応援のクリックをいただけると、うれしいです。
↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ  

by milletti_naoko | 2019-02-13 23:59 | Insegnare Giapponese