2019年 02月 27日
「好きです」で興味つなげてひらがな練習、12歳イタリア少年 日本語出直し入門

外国語学校の同僚で、ドイツ語を教える彼のお母さんからは、もうずいぶん前から、「息子が日本が大好きで、日本語が勉強したいと、もう長い間言っているの。でも、ドイツ国籍もあるんだから、まずはドイツ語をしっかり勉強してからと言ってあるのよ」と、聞いていました。去年の7月、誕生日に少年が何よりも望んでいたのが日本語の授業に通うことだったので、両親から少年への誕生日祝いが、日本語の授業となり、いよいよわたしが授業を担当することになりました。授業自体が何時間続くか分からない状況だったので、日本語で話せることを増やしていきながら、ひらがなを読んで書けるように、少しずつ練習をしていきました。「あいさつ」に、「はじめまして」の会話表現、自分の名前・国籍・年齢を言う表現など、言えることが増えいくという達成感を感じてもらいたいと思うと同時に、母語の発音への干渉をできるだけ防ぐために、できるだけ早くひらがなを学んでほしいと考えていたからです。8月半ばまでの5時間の授業の間に、ひらがなはハ行まで学習しました。
夏休みが明けてから、少年自身は日本語の勉強を続けたいと考えていたものの、いろいろ事情があったようで、学習の再開は今年2月半ば、つまり前回の授業から半年後となりました。

予想どおり、ひらがなもあいさつの言葉も、かなり忘れてしまっていました。それを見越して、絵の状況にふさわしいあいさつを、記号で選んで答えるという問題を、準備しておきました。
驚いたのは、ひらがなやあいさつの言葉はうろ覚えなのに、自分の名前や国籍・年齢などを言う表現は、どれもきちんとすらすらと言えたことです。自分についての表現ということで、学習意識も意欲も高かったのでしょう。
これまでの授業でのひらがなの学習や、あいさつの言葉の復習には、JYL Project こどもの日本語ライブラリのサイトの冊子教材(練習帳)のページで、「かな練習帳 [50音順] ひらがな」と「会話練習帳 中学生」をダウンロードし、練習帳の練習や絵を活用しました。
- JYL Project こどもの日本語ライブラリのサイト - 冊子教材(練習帳)

そうやって、あいさつの問題を解き、あいさつを日本語で言いながら、ひらがなも読んだのですが、おぼつかないひらがなが多いようだったので、この50音カードを使って、ア行からハ行まで一行ごとに、いったん列に並んだ五文字を見て、発音練習をしてみて、覚えられたと本人に自信があるようになったら、何も見ないで五つの文字を順に並べるという練習をしました。

ひらがなの復習が必要だけれども、文字の練習ばかりではつまらないこと、自分に関する表現については、頭に入りやすいことを考慮して、入門出戻り再開、2時間目の授業では、「ぼくは…がすきです」と言う表現を教えて、自分が好きなものをあれこれ言ったり、書いたりしてみる中で、ひらがなの復習ができるようにしようと考えました。

著作権の都合で割愛してありますが、このプリントの上には、ドラえもんがおいしそうにどら焼きを食べている絵と、ローマ字読みつきのひらがなの五十音表を載せてあります。
少年がドラえもんをよく知っていること、どら焼きはイタリア語でもdorayakiであることを知っていたので、「ぼくは どらやきが すきです。」という文の意味を、絵から推測させて、「ぼくはNがすきです」が、イタリア語の「Mi piace N」に相応する表現であることを、少年自身が気づけるように配慮しました。最初から規則や意味を説明するより、教え子自身が頭で考えて発見するように導いた方が、ずっと記憶に定着しやすいからです。幸い、好きだの意味はすぐに分かったようで、「食べ物以外のものが好きなときでも、この表現が使えますか」という質問がありました。
下の表にある語彙は、半分が上述のひらがな練習帳に出てきたものであり、残り半分は、「わたしは/ぼくは…じんです」と国籍を言う文を学習した際に学んでいました。そこで、それぞれのひらがなが読めるかどうか、意味を覚えているかどうか確認してから、「…くんは いぬが すきですか」と聞き、「はい、ぼくは いぬが すきです」と少年が答えるという形で、「好きです」という表現の練習とひらがなの復習をしました。
教科書は、すでに少年は、『まるごと日本のことばと文化 入門A1 りかい』(アマゾン日本リンクはこちら)を手にしているのですが、授業では、あいさつやひらがなの学習のために、まだ一部しか使っていません。先週の授業でひらがな50音の学習が一通り終わり、宿題にひらがなの練習プリントを渡してあるので、これからは、この教科書を、もっと活用できるようになりそうです。

*******************************************************************************************
"Boku (Watashi) wa ... ga suki desu."
E' la formula giapponese per dire "Mi piace ...".
L'ho insegnato al mio allievo di 12 anni
in modo che lui potesse fare il ripasso degli alfabeti giapponesi
imparando nello stesso tempo ad esprimere che cosa gli piace.
*******************************************************************************************
関連記事へのリンク
- 12歳誕生祝いは日本語授業、入門講座は母君の依頼 (2018/7/18)
- 日本語教育 上級・出直し入門それぞれの難しさ、N1対策の場合 (2019/2/13)
- 忙しい外国人学習者に便利な平仮名練習帳で「ん」まで学習終了 (2016/10/28)
- 『まるごと入門A1』考1、新しい日本語教科書と無料の12か国語訳つき日本語基本語彙集 (2015/4/26)
- 外国語教育・学習と『まるごと入門A1』考2 (2015/4/27)
- 12か国語の外国語学習にも役立つ対訳付き日本語語彙集 『まるごと』 オンライン無料 (2017/11/21)


考えるのも楽しいですね。
高校時代
オーストラリアからの留学生に
「ビートルズは好きですか?」と
尋ねたことを思い出します。
人に何が好きか聞いたりできると、会話の幅も広がりますよね。
文法的には決して易しくはないのですが、少年も楽しそうでした。
高校生の頃、オーストラリアからの留学生が高校に来たんですね!