2009年 02月 27日
イタリア語学習メルマガ 第5号(1)「動詞 Andare」
Ieri sera sono andata al cinema con mio marito.
昨夜、夫と一緒に映画を見に行きました。
日本語では、誰かを映画に誘うときに、「今夜映画でも見に行きませんか」といった感じで、質問の中に「映画を見る」という言葉が入ることがほとんどだと思います。
ところが、イタリア語ではその際、「映画を見ませんか」という代わりに、「映画館に行きませんか」という表現を使います。夫も言うように、「Andiamo a vedere un film?」と言って誘うこともできますが、一般に使われるのはandare al cinemaという表現です。
Andiamo al cinema stasera? 今晩、映画を見に行きませんか。
(直訳は、「今晩、映画館に行きませんか。」ちなみに、alは前置詞のa と定冠詞のilが結合したものです。)
cinemaは「映画館」という意味の名詞。なぜ-aで終わるのに前に来る定冠詞が男性名詞単数形用のilなのかと思った方は、文法的感覚が鋭い方で、逆にそれがなぜだか分かっている方は名詞の性について、しっかりものにされた方でしょう。

イタリア語の男性名詞の単数形は、基本的に-oか-eで終わりますが、例外もあります。現代イタリア語の文法を語るときに欠かせない文法書、Luca Serianni の『Grammatica Italiana. Italiana comune e lingua letteraria』(出版社UTET Libreria)の中から、-oで終わらない男性名詞と-oで終わる女性名詞についての説明を引用します。
Sono inoltre quasi tutti maschili i nomi, perlopiù di origine straniera, terminanti in consonante: il bar, il rock, lo sport, il tram, ecc. (Serianni L., 1989, “Grammatica Italiana”, UTET, Torino: p. 110)
それに加えて、子音で終わる名詞については、(その大部分が外国語からイタリア語に入ってきた言葉であるが)ほとんどすべてが男性名詞である(石井訳。セミコロンのあとの語例の訳は省略)。
例としてSerianniが挙げている言葉については、最後のil tram(路面電車)以外は、すべて日本語でも外来語として使われていますから語意がお分かりですね。順に「バール」、「(音楽の)ロック(ンロール)」、「スポーツ」です。
ちなみに最初の例文が映画に関するものでしたから、もう一つだけ私の方で、外来語で子音で終わる男性名詞の例を追加しておきますね。film(映画)も男性名詞で、il filmとなります。ついでに、イタリア語では写真の撮影に用いるフィルムをfilmとは言わず、rullinoまたはpellicolaと言います。旅行中に、フィルムを購入する際には、気をつけてください。さらにカメラについても、イタリア語では、macchina fotograficaと言い、cameraという単語は「部屋」という意味ですから、ご用心。前号で、外国語学習におけるtransfer(言語転移)について少しお話しましたが、外国語を覚えたり、外国語で話したりしようとする際に母国語や既知の他の外国語の言葉を利用するのは、正の言語転移(transfer positivo)ですが、たとえばイタリアでカメラ用のフィルムを買うのに“Vorrei un film per la camera.”(部屋のための映画がほしいんですが)なんて言っても分かってもらえません。このように既存の他の言語の知識が新しい言語の学習に悪影響を与える場合には負の言語転移(transfer negativo)と言います。
次に、Serianniの文法書の同じページから、-oで終わる男性名詞に関する例外に触れた部分を引用します。
I nomi maschili in -a sono in gran parte di origine greca e di uso colto[...].
-aで終わる男性名詞は、その大部分がギリシア語に由来するものであり、学識語として使用されているものである。(石井訳)
例として、日常生活でよく使うものを挙げておきますね。
cinema(映画館)、problema(問題)、tema(テーマ、主題)、 dramma (演劇作品、劇)。
さて、イタリア語で「行く」を表す動詞はandareですが、どこに行きたいのかによって(後に来る名詞によって)、前置詞や定冠詞の選択・要不要が異なるので厄介です。
以下の例は、イタリア語で書かれたイタリア語の教科書『Qui Italia』(Mazzetti. A., Falcinelli M., Servadio, B., Le Monnier, Firenze, 2002)の57ページから引用し、私の方で番号を振って、三つに分け、和訳を付したものです。
1. andare a Parigi / a Milano パリに / ミラノに 行く
2. andare a lezione / a teatro / a casa 授業に行く / 劇場に行く / うちに帰る
3. andare a letto 就寝する
4. andare a mangiare / a studiare / a lavorare 食べに / 勉強しに / 仕事をしに 行く
5. andare al cinema / al ristorante / al bar / al mare 映画館に / レストランに / バールに / 海に行く
6. andare all’Universita 大学に行く
7. andare alla mensa / alla stazione / alla posta 食堂に / 駅に/ 郵便局に 行く
8. andare in Francia / in Grecia フランスに / ギリシャに行く
9. andare in centro / in ufficio 中心街に / 勤務先(オフィス)に行く
10. andare in montagna / in farmacia / in biblioteca 山に / 薬局に / 図書館に 行く
11. andare da Gianni / da mio fratello ジャンニのうち(ところ)に / 兄(弟)のうち(ところ)に 行く
12. andare dal professore / giornalaio / dottore / parrucchiere
先生(教授)のところへ / 新聞雑誌販売店(edicola)に / 病院・診療所の)医者のところに / 床屋に 行く
13. andare dalla professoressa / dalla dottoressa
(女性の)先生(教授)のところへ /(病院・診療所の)(女性の) 医者のところに 行く
規則さえ覚えれば、すぐに正しく使えるようになる表現と、きちんとした規則がないので丸暗記するしかない表現があります。
(この後は、すでに規則をご存じの方は読み飛ばしてくださって構いません。)
さて、まだあまりandareの表現をしっかり学んだことのない方、自分自身で、どういう規則があるのか発見するべく頭を使って、次の問いに答えてみてください。以前にも申し上げたように、そうやって自分で規則を発見した方が、参考書で読んで納得するより、ずっと頭に残りやすいのです。

問1 1.と8.の文では、どちらも前置詞のあとに地名が来ていますが、前置詞のaとinはどのように使い分けられているのでしょう。その規則を簡潔な言葉で書いてみてください。
( )
また、その規則を使って、次の文の空欄に入る前置詞を記してください。
ア. Sono andato ( ) Tokyo l’anno scorso.
イ. Siamo andati ( ) Giappone nell’autunno del 2004.
問2 英語では「-をしに行く」と言う場合に、go fishing/ go to fishといった具合で、動詞goのあとに前置詞なしで動詞の進行形が使われるか、または、to+動詞の原形が使われます。
イタリア語では「-をしに行く」という場合に、(1)どの前置詞を使い、(2)どんな動詞形を使うのでしょうか。
ア. a イ. di ウ. in エ. per オ. 前置詞は使わない
カ. 不定詞(例、pescare) キ. ジェルンディオ(例、pescando) ク. 過去分詞(例、pescato)
(注)pescareは「釣る」という意味の動詞。ちなみに名詞の「釣り」はpesca、「魚」はpesceです。
(3)イタリア語で、「明日私はネーラ川(il fiume Nera)に釣りをしに行きます。」と書いてください。
( )
問3. 次の名詞(すべて上の1.-13.の中で使われています)を男性名詞と女性名詞に分類してください。
ア. cinema イ. ristorante ウ. bar エ. mare オ. stazione カ. professore
キ. dottore ク. parrucchiere
ヒント - 名詞の直前にある定冠詞に着目すれば、答えられるものばかりです。
問4.前置詞としてdaを必要とする名詞には共通する特徴があります。どんな特徴ですか。
( )
解答と解説は次号で行います。入門者の方は、しっかり自分の頭で考えて、答えてくださいね。
(解答・解説は、第6号の2.にあります。)
さて、ここまで学習がすんだところで、次の文章(前述の『Qui Italia』の52ページから引用)を読んでみてください。何も見ずに、どのくらい理解することができるでしょうか。
20 luglio, ore 23
Oggi è lunedì. Sabato mattina finalmente cominciano le vacanze. Sono molto stanca perché lavoro tutto il giorno: la mattina vado in ufficio alle otto, all'una vado alla mensa, poi torno in ufficio e ci resto fino alle 17. Dopo il lavoro torno a casa, guardo la TV e ascolto un po’ di buona musica.
Il martedì e il giovedì vado in piscina con Patrizia.
La sera di solito mangio a casa, qualche volta vado in pizzeria con Marco, ma vado a letto sempre prima delle undici.
Domenica mattina parto: vado in Sardegna, al mare. Forse Marco viene con me...
Adesso vado a dormire...
Stella
この文章についての練習問題と解説は次号に掲載しますが、andareを使った表現をしっかりものにするため、まず何度も声に出して読んでみることをお勧めします。(問題と解説は第6号の3.にあります。)
(記事が長いために、エキサイトブログでは第5号をすべて一度に投稿することができないため、分割して投稿します。)

