イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

イタリア語学習メルマガ 第6号 「春〜木と果実の名前、映画『Ex』(2)」

1. 春 〜 イタリア語の木と果実の名前

 3月から4月にかけて日本に帰国していたため、1か月半の間休刊してしまいました。発刊を待たれていた方には、申しわけありません。

 2002年4月にイタリアで暮らし始めてから、これまで桜の花が咲く頃に帰国する機会がまったくなかったため、改めて桜の花の美しさに感慨を深くし、また日本人の心に根づいている桜への愛情を再確認しました。

 10世紀初めに書かれた『伊勢物語』の82段にある在原業平とその舅の紀有常の和歌のやりとりにも、すでに桜の花に対する特別な思い入れが明らかです。

 このメルマガはイタリア語を学習されている方を対象にしていますから、以下に上記の和歌と日本人の桜への愛情に触れたイタリア語の文章を掲載します。数年前に、イタリアのダンテ・アリギエーリ協会のウルバニア支部とペルージャ支部のために、日本の古典文学について講演をする機会があったのですが、和歌の訳と随想文は、その機会に私が書いて、イタリア語の先生やイタリア人の友人に手直ししてもらったものです。

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「世の中にまったく桜の花が存在しないならば、人々は春の日々を心のどかに過ごせるであろうに。

 散るからこそ、桜はいっそうすばらしいのだ。定めのないこの世の中に、永遠に存在するものなどあるだろうか。いや、そんなものはありえない。

 在原業平の手になる1首目の和歌は、逆説を用いて桜への愛情を表明している。現実には、桜の花は存在していて、人々は心から桜の花を愛していたがために、花が咲くのを長い間待ち望み、花が咲くと、風が吹くたび雨が降るたびに(桜の花が散ってしまうのではないかと)心配していた。(後略)」(「      」内は石井訳)

業平の歌は、「桜の花が全く存在しない」という現実とは反対の事実を想定して歌ったものです。日本語の和歌で「~せば~まし」という反実仮想(もし~ならば~だろうに)が使われているのに対し、イタリア語では同じことが仮定文(periodo ipotetico:ここでは、Se … 動詞の接続法過去…,…動詞の条件法現在…)で表現されています。

 さて、今イタリアも花盛りです。ペルージャでも町を歩くと、色とりどりの花が町を彩っています。たとえば、白や薄紫のglicine(藤)の花、赤紫色の鮮やかな花が満開のalbero di Giuda(セイヨウハナズオウ)、 lilla(リラ)などなど。Albero di Giudaは直訳すると「ユダの木」なのですが、こう呼ばれているのは、キリスト教でイエス・キリストを裏切ったユダがこの木の下で首をくくって自殺をしたと言われているからだそうです。

 わが家の庭先でもlillàやcamelia(椿)に加えて、ciliegio(桜)の花が満開です。ただし、イタリアの桜の花というのは、たいていの場合白一色で、庭木として植えてある場合、さくらんぼ(ciliegia)が目当てである場合が多いようです。ここで、初心者の鋭い方は気づかれたかもしれませんね。イタリア語では、木を指して言う場合には語尾が-oの男性名詞となり、その果実を指す場合には語尾が-aの女性名詞となる単語のペアがたくさんあります。身の回りによくある木や果物では、

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 ただし、例外もあって、たとえばレモンは木でも果実でも同じで、limoneです。それから、ブドウの果実はuvaですが、木はviteです。桜以外は、日本語では「木」にも「果実」にも同じ言葉を使いますので、文化の違いが興味深いですよね。逆にイタリア語では、「稲」も「米」も「ごはん」もみんなriso一語で表現します。ちなみに、ペルージャの方言ではプラムの木・実のどちらもbrugnoと言います。



2. 「映画を見に行きませんか。」 続編(入門者向け)

 第5号の問題の解答例です。

質問1 都市(町)の前にはa、国名の前にはinを用いる。

  ア. Sono andato ( a ) Tokyo l’anno scorso.

  イ. Siamo andati ( in ) Giappone nell’autunno del 2004.

 問題が不適切であったことに今気がつきました。というのは、「東京」は「東京都」であり、イタリアでいうRegioneに該当する行政区分なのですが、イタリアでは「東京」をcittà(都市・町)として認識している人(というか誤認している人)が多いため、前置詞も都市名の前に来るaを使うという特殊な例だからです。イタリア人の友人や学生には「東京は町ではない」とよく言っているのに、この問題を作ったときには自分自身がすっかり東京を「町」扱いしてしまっていました。ちなみに、県・Regioneの固有名詞の前に来る前置詞は通例inですので、頭に入れておいてください。(*2019年3月追記: 1889年から、一時期東京が市であった期間もあったので、そのために、今もその頃に定着した前置詞を使い続けているのかもしれません。)

(例)A febbraio siamo andati in Toscana.

質問2  (1) ア  (2) カ (3)Domani vado a pescare nel fiume Nera.

質問3. 男性名詞 ア, イ, ウ, エ, カ, キ, ク   女性名詞 オ

質問4. 人を表す名詞(人名・職業名など)である。


さて、再び『Qui Italia』の52ページの文章を引用します。

                                                    20 luglio, ore 23

Oggi è lunedì. Sabato mattina finalmente cominciano le vacanze. Sono molto stanca perché lavoro tutto il giorno: la mattina vado in ufficio alle otto, all'una vado alla mensa, poi torno in ufficio e ci resto fino alle 17. Dopo il lavoro torno a casa, guardo la TV e ascolto un po’ di buona musica.
Il martedì e il giovedì vado in piscina con Patrizia.
La sera di solito mangio a casa, qualche volta vado in pizzeria con Marco, ma vado a letto sempre prima delle undici.
Domenica mattina parto: vado in Sardegna, al mare. Forse Marco viene con me...
Adesso vado a dormire...

Stella



この文章では、前号のandareを使った表現の復習もできますが、さらに、初心者の方に問題です。この文章には時を表す表現も頻出しているのですが、次の日本語にあたる表現を本文から抜き出してみてください。

(1) 朝 (2) 夕方、夜 (3) 毎日 (4) 8時に (5) 1時に (6) 17時に 

正解と文章の訳は数行後に載せますので、自分で考えて解いてみてください。頭を使って考えているうちに、「~時に」というときに、どういう言い方をするかという規則もお分かりかと思います。それから、曜日を表す表現も出てきますので、不確かな曜日のある方はしっかり確認してみてください。

この文章は日記とも親しい人へのメール・手紙とも考えられるのですが、皆さんもこの文章にならって自分の1日、1週間をイタリア語で表現してみてください。私のペルージャ外国人大学の日本語の授業でも、時刻を表す表現や動詞を学習したあとは、「私の1日」「わたしの週末」という題での作文を宿題にしています。まずは自分自身のことから、すこしずつ知っている表現を使って書けるよう、話せるように練習していきましょう。

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正解

(1) mattina (2) sera (3) tutto il giorno  (4) alle otto (5) all’una (6) alle 17

解説

「~時に」というときには、alle (前置詞のaとleが融合したもの)に数字をつけて表現するのが大原則です。唯一の例外として、1時の場合だけall’unaとなるのは、「1」は単数であって、複数ではないからです。ただし、ペルージャ出身・在住の人はalle unaという人がほとんどで、私がペルージャの人との会話の中で“all’una”と言うと、決まって“Alle una?”と聞き返されたり、言い直されたりします。イタリア語の先生でも「もともとalle (ore ) unaの oreが省略されているのだから、alle unaでもいい」とか「その方が正しい」とか言う人がいたりもしますが、実はこれは、ペルージャ周辺に限って使われる表現のようで、ペルージャ以外の出身のイタリア語の先生やイタリア人によると「ペルージャ以外では正しい表現として通用しない」ということです。

2段落目の初めで、il martedì e il giovedìと、曜日の前に定冠詞がついていますが、定冠詞がついている場合は「毎週」の意味になるため、ogni martedì, ogni giovedìと同義の表現ということになります。同様に、本文中にla mattina, la seraとありますが、ここでも定冠詞があるために、「毎朝」「毎晩」という意味になります。逆にsabato mattina、domenica mattinaのような定冠詞のない表現は、1度きりの特別な予定や出来事を述べたい場合に用いられています。

それでは、最後に文章の訳を付しておきます。皆さんの学習の参考にしてください。


「7月20日 23時

今日は月曜日。土曜の朝、やっと休暇が始まる。毎日仕事をしているから、ひどく疲れてる。朝8時に職場に行って、1時に食堂に行き、それから職場に戻り、17時まではずっと職場にいる。仕事のあとは家に帰り、テレビを見て、いい音楽を少し聴く。
毎週火曜日と木曜日、パトリッツィアとプールに行く。夜はたいてい家で食べるけれど、時々マルコとピザを食べに行く。でも、11時前には必ず床に就く。
日曜の朝、出発する:サルデーニャに、海に行く。たぶんマルコが私と一緒に来る…
さあ、今から寝よう……
ステッラ」                                           (「  」内は石井訳。)



3. 映画『Ex』(2)

さて、映画の予告編の最初で、ドン・ロレンツォ(don Lorenzo)がなんと言っているのか聞き取れましたか。



 正解は次の通り。


“Ricordatevi di una cosa: ogni divorzio inizia sempre con un matrimonio.”

「よく覚えておくように。どんな(        )も必ず(       )で始まるものなのです。」

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Perugia 2007/6/16

 divorzio, matrimonioが何を意味するか、英語の知識のある方にはすぐ分かるかもしれません。divorzioは「離婚」、matrimonioは「結婚」(英語ではそれぞれ、divorce, matrimony)ですから、ドン・ロレンツォは「すべての離婚は必ず結婚から始まる」と説いているわけですが、これは一体どんな場面なのでしょう。

カトリック教会(Chiesa Cattolica)では、教会で結婚式を挙げることを望む婚約者たちにcorso prematrimonialeに通うことを義務づけています。prematrimonialeは、名詞matrimonio(結婚)から派生した形容詞です。matrimonioに「~の前に」を現す接頭辞のpre-をつけ、名詞を形容詞化するための接尾辞-aleをつけてできた形容詞ですから、意味は「結婚前の」。婚約者たちは、何日間か教会に通って、この「結婚前の講座」を受講し、結婚に備えるわけですが、講座では神父が結婚の重要さやあるべき夫婦の姿を説いたり、すでに何年も結婚生活を送っている熟練の夫婦が自分たちの生活について語ったりすることが多いようです。映画の予告編の冒頭部では、corso prematrimonialeを受講している婚約者たちに、神父のドン・ロレンツォが「結婚生活がすべてバラ色とは限らない」ことを告げて、しっかり心構えをするように諭しているわけです。国民の大半がカトリック教徒のイタリアでは、今でも毎週日曜日には教会のミサ(Messa)に出かける人が多く、ミサ・結婚式・葬式を執り行ったり、地域の老人や病人の家を回って訪ねて励ましたりする神父(prete, sacerdote)は、信徒たちから名前の前に敬称donをつけ、don Lorenzo, don Nelloなどと呼ばれています。

例によって、長くなりましたので、映画の解説は次号からも引き続き、少しずつしていきたいと思います。



4. お知らせ

 まぐまぐのサイト上で、最初はバックナンバーをすべて公開していたのですが、それをやめたのは、第1号にメールアドレスを載せていたために、届く迷惑メールの数が激増したためと、それから、すでに発行したメルマガの誤字・脱字などの訂正ができないためです。その代わり、まだ初心者で未熟ではありますが、ホームページを作成して、そこで訂正済みのバックナンバーを公開することにしました。最新号から登録された方で、バックナンバーに興味のある方は、ぜひこちらからご覧ください。

http://www.geocities.jp/naoko_ishii/backnumber.html
 
*2019年5月追記: ヤフージオシティーズのサービス終了のため、現在、このブログにバックナンバーを少しずつ移動中です。詳しくは、第119号の二つ目の記事をご覧ください。

今は大学の授業の準備に追われていますが、時間を見つけて少しずつサイトの内容も充実させていくつもりでいます。

 それでは、また次号まで。

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2009-04-16 12:00 | Lingua Italiana | Trackback | Comments(0)