2019年 04月 02日
家族の呼び名でひらがな練習、イタリアで日本語教育
「おとうさん」と「おとうと(さん)」、「おっと」も、混同してしまいやすい言葉です。上述の理由で、イタリアの人には、「おと」と「おとう」の聞き分けが難しく、そのため正しい音と表記を覚えるのも難しいからです。さらに、北イタリア出身の人になると、イタリア語で二重子音を単一子音として発音する傾向があり、そのために、子音の長短も聞き分けるのが難しいために、「おとう」、「おと」、「おっと」がどれも同じように聞こえてしまうので、聞き分けと正しく記憶することに、さらに苦労してしまいます。
こんなふうに、学校の授業で教えるときは、「お……さん」と似たような言葉が多い上に、自分の家族か人の家族かによって、呼び方まで違うので、日本語の家族の名称は難しいのですが、今日の12歳の少年の授業では、家族を表す言葉に似たような言葉が多いことを、逆に利用しました。
これまでの授業では、ひらがながしっかり学べるまでは、カタカナと混乱しないように、カタカナは自分の名前とイタリア・ドイツの国名だけ押さえておこうと考え、けれども、授業のたびに話せること、表現できることが増えていくように工夫して、あいさつや「はじめまして」の会話、数字、名前や国籍・年齢の言い方、「……が好きです」といった表現などを、学習してきました。
教科書として使っている『まるごと りかい 入門A1』(詳しくはこちらの記事)では、第2課「カタカナ」、第3課「どうぞよろしく」では、カタカナがたくさん出てきます。少年は中学校の勉強も忙しいので、できるだけ授業中にひらがなが定着するようにと、宿題も少しは出しているのですが、今日の授業では、ひらがなばかりでカタカナがいっさい出てこない第4課「かぞくは3人です」を学習しました。
「おっと」、「おとうとさん」、「おとうさん」など、ひらがなをすでに学んだ学習者が、言葉をしっかり覚えようとすると、なかなか覚えられずに苦労するのですが、同じような音が、似たパターンで繰り返されているために、ひらがなを読んだり書いたりする練習には、うってつけなのです。
最初に、こちらの記事で紹介しているひらがな練習帳の33〜34ページで、ひらがなを読む練習をしながら、家族を表す言葉を学び、絵と音声で、家族の呼び方を学ぶ教科書の問題を解いたあと、
わたしが用意したこちらのプリントの表を完成させました。「かぞく」と「わたしのかぞく」は、教科書のこうした言葉のあとに、家族みなの絵があって、「ちち」、「はは」などと呼び方が添えられているので、少年にも意味がすぐ理解できました。
下の表は、教科書やプリントの絵と言葉も参考にしながら、自分できちんと埋めていくことができました。「おにいさん」と書くべきところに、「あにさん」と書いたりしていたので、「鬼は怪物ですよ」と注意しましたが、「あに」と「おに」は、そう言えば、読むときにも混同していました。ひらがなの「あ」と「お」も似ていますし、「あに」にも「おにいさん」にも、2字目に「に」が来るので、間違えやすいのでしょう。
12歳の少年が生徒ということで、「おっと」や「つま」、「ごしゅじん」や「おくさん」はさっと流して、少年自身が、自分の家族や友達の家族について説明するときに必要となりそうな言葉だけを、表に書き込むようにしました。
「ひとり、ふたり…」という序数詞が、『まるごと』では他の教科書に比べて、かなり早く出てくるのですが、その代わり、写真や音声が豊富で、写真を見ながら、そして、少年がすでに数えられる1から30までの数字から推測すれば、それが人数を表す表現だということが、すぐに分かります。
教科書の音声と写真にも助けられて、家族の言い方を習った後で、授業の最後に、「ぼくのかぞくは5にんです」と、自分の家族の人数を言うことができました。
先週の授業では、『はるがきた』を学習して、いっしょに歌いました。ひらがなの歌詞とイタリア語訳、歌の映像へのリンクは、こちらの記事にあります。『はるがきた』も、同じ言葉の繰り返しが多いので、ひらがなを読む練習にも、覚えるにもうってつけです。授業の最後に、3人で4回ほど歌いました。そうです、3人でです。少年は「ぼくは歌がへただから」と乗り気ではなかったのですが、少年の母君、わたしの同僚のドイツ語の先生の方が、「わたしも歌が大好きで、授業中によく歌うのよ。さあ、いっしょに歌いましょう。もう一回歌いましょうよ。帰りの車の中でも聞きましょうね」と、ひどく喜んでくれたので、3人でいっしょに歌ったのでした。
冒頭の写真は、学校の授業中にわたしが書いた板書です。学校では、生徒が奥さんのいる社会人男性なので、「わたし」に「つま」がいるのでありました。
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Il vocabolario della famiglia in giapponese
おっと /otto/ il proprio marito
おとうと /otooto/ il proprio fratello minore
おとうさん /otoosan/ il padre altrui o l'appellativo del proprio padre
おとうとさん /otootosan/ il fratello minore altrui
Gli allievi tendono a confondere queste parole simili tra di loro ma
ieri ho approfittato della loro somiglianza per far imparare il mio allievo di 12 anni
a imparare gli alfabeti hiragana. Si ripetono gli alfabeti お, と, う, さ, ん e
così alla fine della lezione è riuscita a leggere e scrivere bene queste lettere.
Poi lo aiuta molto il manuale, "Marugoto" con tanti disegni, fotografie e
file audio gratuitamente scaricabili dal suo sito.
*Articolo sul manuale, "Marugoto" con spiegazioni in italiano in fondo:
https://cuoreverde.exblog.jp/23945598/
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な~るほど。(^-^)
私達は 普段 きっちり伸ばさなくても
通じるので あいまいな発音をしているかもしれませんね。
姉の孫たちの発育を眺めていると
日本語習得の過程がわかって 楽しいです。
先日 もうすぐ4歳になる男の子に
フラミンゴの画像を見せたら
その直後 絵を描いてみせてくれたのですが
「マンゴー」と言っているのです。
へつ! これが あの果物のマンゴー??と
一緒にいた大人は思ったのですが
彼は覚えたばかりの「フラミンゴ」と言ったつもりだったようです。
という箇所に、母音の長短の区別が関わっていることが多かったです。たとえば、「学校」
という漢字の読みを、「がっこう」ではなく「がっこ」と書いてしまうといった間違いです。
今教えている日本語能力試験でN1を目指す若者も、やはり知らない言葉などで母音の長短が分からず
とまどうことが時々あります。
小さい子供たちが言葉を身につけていく過程を観察するのは、興味深いことでしょうね。外国語としての
イタリア語教育に携わる女性の言語学者の中には、自分たちの子供のイタリア語の発達過程をつぶさに
記録して、外国人移民が暮らしながら学校に行かずにイタリア語を身につけた場合のイタリア語の発達と
比較して、研究論文を書く人もいて、そういう文をいくつか読んで、おもしろいなと思ったことがあります。
脳内に記憶された単語は、発音が似たものが近くに配置されているのだそうで、「マンゴー」と「フラミンゴ」は
この「-aンゴ」という音が共通しているために、男の子も混同してしまったのではないかと思います。
教材は「まるごと」を使われているんですね!私も時々使います。遠いイタリアでも同じテキストで日本語を勉強している学習者さんがいると思うと感動です。
それにしてもイラストがかわいらしくてとてもお上手ですし、毎回のプリントもすばらしいですね!!
それを知って、わたしもうれしいです♪ 教えている外国語学校でも、4年前から
『まるごと』を採用しています。教える側がいろいろ補わなければいけないことは
多いですが、様々な言語の単語集に、オンラインで無料で手軽に使える音声ファイル、
写真やイラストが豊富で、難しい日本語の勉強を楽しんだり、日本文化を知って興味を
高めたりするのに、大いに役立ってくれていると思います。
ありがとうございます。プリントにしておかないと、大事な要点が生徒さんたちの記憶から
飛んでしまう恐れがあり、授業の流れやポイントをあらかじめ計画しておくためにも、
プリント作りは大切なものと考えています。作り方や使い方を教えてくれた初任校だった
今治東高校の先輩や同僚の先生方には、今も心から感謝しています。