2019年 05月 02日
第120号 「令和、日本の新たな時代の幕開け」〜イタリア語のニュースを聴く

ゴールデンウィークをいかがお過ごしですか。5月5日日曜日まではイタリアでも、祝日や土日が相次ぐため、あちこちに旅行に出かける人が大勢います。
第119号でもご案内しましたように、今年3月末のヤフージオシティーズのサービス終了に伴って、このイタリア語学習メルマガのバックナンバーを、これまで載せていたサイトの代わりに、ブログ、「イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia」に収めることに決めました。時間はかかるものの、今後できるだけ早いうちに、バックナンバーのブログへの移行を終えたいと考えておりますので、ご了承くださいませ。
2 「令和、今始まる日本の新しい時代」〜イタリア語のニュースを聴く
ユーロニュースは、欧州放送連合が、ヨーロッパの視点でニュースを伝えようと開局したニュース専門放送局です。そのユーロニュースのイタリア語版で、日本にとって新しい時代の始まりが、どんなふうに語られるか、次の映像を視聴してみましょう。
皆さん、きっとすでによくニュース自体の内容をご存じなので、1分40秒という短い時間で、特に重要な点について語るこのニュースには、聞き取れる箇所があるのではないかと思います。
今号のイタリア語学習教材は、この映像の14秒目から26秒目までです。いったい何について語っているのか、概要をつかむことを目的に、何度か聴いてみましょう。上級でリスニングに自信のある方は、13秒間ですから、できれば紙にご自分で、何と言っているかを書き取ってみましょう。
すぐに答えを見てしまうより、自分の耳と頭で、まずはしっかり理解しようと考えた方が、学習内容がずっと記憶に定着しますので、皆さんの目に答えが入ってしまわないように、ここに写真を挿入しておきます。

1/5/2019
写真は、イタリアでも祝日だった昨日に訪ねたマルケ州のランチャ城です。今、イタリアでは路傍でも野山でも真っ赤なヒナゲシ(papavero)の花が、あちこちに咲いていて、きれいです。
さあ、それでは、ニュースで語られている言葉を、今度は文字で読んでみましょう。できれば、まずは再度ニュース音声を聞きながら、文字を目で追ってみて、そのあとで、文章を何度か読んで、内容を理解するべく努めてみてください。
euronews (in italiano) - Giappone: fine dell’era dell’Imperatore Akihito, ora tocca a Naruhito
https://www.youtube.com/watch?v=BVVXeHnBhIs 0:14-0:26
“Dal 1° maggio inizia la nuova era Reiwa, una parola che esprime il concetto di pace e coesione sociale. L’era che si sta concludendo, Heisei iniziò nel 1989 all’incoronazione di Akihito.”
皆さん、ニュース自体についてはご存じでしょうから、その既存の知識を活用して、初級・中級の方も、数字や日付、元号と名前を手がかりに、内容を理解するべく、何度か読み返してみてください。
さらに、次の語注を参考に、読み直してみましょう。
era [女性名詞] 時代
esprimere [他動詞] 表現する、表す、意味する
concetto [男性名詞] 概念、観念
coesione sociale 社会的結束
concludersi [代名動詞] 終わる
イタリア語では月日は、原則として、「男性単数の定冠詞 + 日を表す基数詞 + 月」で表します。ですから、たとえば、5月2日はil 2 (due) maggio、1月8日は、1’8 (otto) gennaioとなるのですが、1日だけは例外で、il 1° (il primo)と、序数詞を用います。また、日付の前に来る男性単数の定冠詞は、ilである場合が多いのですが、8日と11日だけは、日を表す数字が、otto(8)、undici(11)と母音で始まるために、定冠詞がl’となります。ご注意ください。
“Dal 1° maggio inizia la nuova era Reiwa, una parola che esprime il concetto di pace e coesione sociale. L’era che si sta concludendo, Heisei iniziò nel 1989 all’incoronazione di Akihito.”
では、訳を見てみましょう。ひどく複雑な文の構造が分かりやすいように、内容はすでに皆さんご存じのことでもありますので、あえて直訳に近い訳をしてみます。
「5月1日から新しい時代、令和が始まる。令和は、平和と社会的結束という概念を表す言葉である。今終わろうとしている時代、平成は、1989年に昭仁(天皇)の即位で始まった。」
「始まる」を意味する自動詞、iniziareが文章中2度使われています。1文目では主語、la nuova era Reiwa 「新しい時代、令和」が、述語動詞であるiniziaの後に置かれていることにご注意ください。4月30日のニュースなので、ごく近い確実な未来であるために、直説法未来ではなく、直説法現在になっています。2文目の主語はL’era che si sta concludendo, Heisei、「今終わろうとしている時代、平成」で、iniziòは直説法遠過去です。標準イタリア語の文法の規則では、同じ過去に起こったできごとでも、最近起こったことや、遠い昔のできごとでも、現在につながりがあると話者が感じていることには、近過去(passato prossimo)を用い、現在につながりがないと感じていれば、遠過去(passato remoto)を用いることになっています。ただし、くだけた話し言葉では、北イタリアでは、本来遠過去で表現するべきことにまで近過去を使い、南イタリアではつい最近のことでさえ過去を遠過去で表現する傾向があります。おもしろいのは、このニュースで「平成が始まった」の「始まった」を、すでに現代とはつながりのない遠い過去ととらえて、遠過去を使っていることです。
ごく短いニュースの中に、多くの情報を盛り込まなければならない中で、「令和」の説明が、簡素になっていますが、「平和」と「人と人の間の和」という大切な点は押さえてありますし、わたしは、首相の発言にはあった「日本国民の」という言葉がないことに、胸をなでおろしながら聞きました。
和を大切にする日本の文化はすばらしいと思う一方で、内と外を分けて、日本と外国を、日本人と外国人を分けてしまうのではなく、世界とすべての世の人の和と平和を考えることが、今は欠かせないと考えているからです。そのため、退位式典で、退位された平成天皇が、日本と日本国民に限定せずに、「明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」(詳しくはこちら)と言われたことに、感銘を受けました。
著作権の侵害を避けるためにも、今回は映像のごく一部だけを書き起こしたのですが、実は今回映像をご紹介したニュースは、次のオンライン記事を要約したもので、ニュースのほとんどの文が、次の記事中に出てきます。興味のある方は、ぜひお読みください。
・euronews - Giappone: fine dell'era dell'Imperatore Akihito, ora tocca a Naruhito (30/4/2019)
https://it.euronews.com/2019/04/30/giappone-fine-dell-era-dell-imperatore-akihito-ora-tocca-a-naruhito
最後に、ブログの関連記事をいくつか挙げておきますので、興味があれば、ぜひご覧ください。
・知られざる日本の歴史と天皇交代質問攻め
・イタリアも祝日多い季節です バスの便減少・店の休みに注意
・庭のひなげしと退位式典イタリアの報道
・どうあろうとも戦争は~ジャンニ・ロダーリの詩、『覚え書き』
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新年の初めに掲げていて、成果の上がっていない抱負を、令和の新しい時代にこそと、考えているわたしです。皆さんも、新年の抱負でまだ思うほど十分には実行できていないことに、新しい時代の波と勢いに乗って、取り組んでみませんか。イタリア語の学習も、もしわたしのフランス語学習のようにさぼっている方がいるとしたら、今こそ始めるいいきっかけです。令和の「れい」には零の響きも感じます。初心に返ったつもりで、もしそういう方がいらっしゃれば、いっしょに頑張りましょう。

