2019年 05月 06日
学びたい子と支援する親、イタリアで日本語学習
先週火曜日の授業では、教科書、『まるごと りかい 入門A1』の「だい4か かぞくは 3にんです」を終えたあとに、子供の日の説明をして、折り紙でかぶとを折り、『こいのぼり』の歌を、意味を押さえてから、いっしょに歌う予定でした。けれども、その前の週に答えられなかった天皇交代についての質問の説明を準備しておいたら、新たな質問があったりして、折り紙でかぶとを折るところまでで終わってしまいました。
教科書の第4課で学んだ「こども」という言葉を、「こどもの日」の説明につなげ、「おとうさん」、「こども」という語彙が何度も出てきた授業のすぐあとに、「こいのぼり」の歌詞を見ていこうと考えていたので、残念です。ふだんは、わたしとの授業が4時半に終わったあと、学校の同僚であるドイツ語を教える母君は、少年をうちに送ったあと、午後5時から、やはり両親の一人がイタリア人、もう一人がドイツ人という家庭の子供たちに、ドイツ語を教えに行っているため、授業が終わると、二人とも慌ただしく去ってしまうのですが、先週はそのドイツ語の授業がないとのことで、4時半を過ぎてからも、ゆっくり折り紙を折ったりおしゃべりしたりできて、よかったです。
では、左下に並ぶ「子」・「こども」以外の言葉について、どうしてカードを作ったのかと言いますと、
教科書、『まるごと』に、こんな会話が出てくるからです。①から⑤までの会話を聞き取って、問題に答えながら、すでに学んだ「あに」・「おにいさん」・「あね」・「おねえさん」などの言葉について、効果的に練習できる点はすばらしいと思います。発音にも表記にも似通った点のある、この四つの言葉を覚えるのに、少年も苦労しているからです。
ただ、他の日本語の教科書では、この段階では出てこない「おとこのこ」・「おとこのひと」・「おんなのこ」・「おんなのひと」という言葉が出てきて、その意味を頭に入れておかないと、会話がきちんと理解できないので、その導入の仕方を工夫する必要があります。
そこで、教科書には、まさに名の通り「まるごと言葉を覚えるように」という意図があるのだと思うのですが、響きもよく似た四つの言葉の意味を、言葉を構成する語の意味から推測させて、記憶に残るようにしようと、こんなカードを作ってみました。男と女については、漢字の成り立ちについても説明したら、少年も母君も興味深そうに聞いてくれました。
ちなみに社会人の生徒が対象の場合には、特に「おとこのこ」など、母音のoが多いので発音に苦労し、語彙の響きも意味も似ているので覚えるのが大変そうだったこともあり、同僚の先生方と相談して、この四つの言葉については、他の教科書には入門の段階では出てこない言葉であるために、さっと流していました。
少年が、ひらがなをかなりきちんと読んだり書いたりすることができるようになってきたので、明日の授業については、カタカナを導入しようかどうか、カタカナと会話表現・文法との兼ね合いをどうするかについて、最近はずっとあれこれ考え悩んでいました。結局は、カタカナが出てくるけれども数が少ない「だい5か なにが すきですか」に進んで、課の第1ページから出てくるパン・コーヒー・ワインという語彙を学んだあとで、ア行・カ行のカタカナとパ・ン・ヒ・ワの4字を教えることにして、先ほど授業用のプリントを完成させました。
復活祭明けの最初の授業では、思いがけず母君から、ハイビスカスの鉢植えをもらって、うれしかったです。
中学生になったばかりの息子が、学校の授業には関係のない日本語をどうしても勉強したいと言うのを聞き入れて、じゃあ個人授業をとさっと動く、そういうご両親の姿勢に驚くと共に、感嘆しています。先週の授業のあとには、なんと小学生で日本語を勉強したい子供もいると聞いて、さらに驚きました。少年の母君は、その子にもドイツ語を教えに行っていて、その子のお母さんから質問があったのだそうです。
その小学生の子も、イタリア語・ドイツ語に加えて、小学校で英語を学んでいるはずです。この子も12歳の少年も、こんなふうに幼い頃から複数の言語を学んできているために、新しい外国語を学ぶことに対する抵抗がなく、文化に興味があるから、だからその国の言語を学びたいと、自然に思うのだろうかと感じました。また、この子たちが小学校で経験した英語教育が、きっと楽しい学びがいのある授業であったためでもあることでしょう。トーディに住む姪たちも、幼い頃は、まず泳げることが必要と、しばらく両親の意向で水泳教室に通ったのですが、その後は、バレーやピアノ、体操競技など、姪たち自身が興味を持った習い事に通っています。子供たちが何かをしてみたいと思ったときに、たとえそれが「日本語を学びたい」という変わった、そして将来役に立つかどうか先が見えないことであっても、環境を整えて背中を押してやる、すばらしいことだなと感じながら、少年や母君の期待に応えるべく、しっかり準備をして、授業に臨んでいます。
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Durante la lezione di oggi canteremo "Koinobori", la canzone del giorno dei bambini ('kodomo no hi'). In queste settimane il mio allievo di 12 anni ha imparato molte parole riguardanti la famiglia e la canzone ne contiene alcune, quindi è anche un bel ripasso. Il giorno dei bambini era il 5 maggio, ma nell'ultima lezione siamo riusciti a fare l'elmetto dei samurai con origami solo dopo lezione e la canzone l'ho rimandata a oggi.
Ormai l'allievo ha imparato quasi tutte e le 48 lettere dell'alfabeto hiragana, dunque da oggi si imparano anche le lettere dell'altro alfabeto katakana. Sì, in Giapponese esistono due sistemi alfabetici sillabici e inoltre si usano anche i caratteri cinesi, chiamati kanji.
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関連記事へのリンク
- 知られざる日本の歴史と天皇交代質問攻め (2019/4/26)
- 子供の日と日本語の授業 (2015/5/4)
↑ 映像として使うのにうってつけの『こいのぼり』の歌の映像や折り紙のかぶとの折り方へのリンクあり。
このテキストおもしろいですね。
また日本での英語の教え方とかなり違うのでその点も興味深いです。
『日本語に興味を持つ』
昨日も何かの番組で日本語に興味を持ち独学で勉強し、現在一橋大学に留学中
という若いスロベニア人の女性を見ましたよ。
なんとフィギュアスケーターの浅田真央選手の試合をTVで見て憧れ、フィギュア
スケートを習ったそうです。その時からいつか日本に行きたいと日本語もおばあちゃん
と2人で勉強したそうです。
また私の友人のドイツ人の孫はアニメ『名探偵コナン』が大好きで、
コナンシリーズを全部揃えて楽しんでいました。彼もそこから日本に興味を持ち
日本語を学びはじめたということでした。
日本語を始めるきっかけは様々でしょうが、日本にとってもいいことでしょうね。
生徒さんが日本語を学びたいと思った理由は何なのかしら?
「やりたいことをやらせる」
イタリアの教育は親の考え方に余裕があるなぁと思います。
日本ではさしずめ進学が一番の目的になり、水泳も、音楽も、絵画も全て内申点を
上げるため。子供たちがかわいそうです。もっと自由におおらかにと思うのですが…
> やはり両親の一人がイタリア人、もう一人がドイツ人という家庭の子供たちに
この家庭、多いのですか?
ドイツ人はゲーテのように明るいイタリアに憧れるのかしら?
その、ご家庭も、その想いに応えようとするナオコ先生も素晴らしいですね。感動して少しウルってきました
ヨーロッパでは、様々な言語が飛び交っているから、抵抗なく、数種の言語を学べると言う環境が羨ましいです!
日本では、最近こそ、外国人も増えて、他言語も飛び交っていますが、私が子供の頃は、英語ですら、中学校の英語の時間くらいでしか聞かない言葉でしたから~(^^;)
最近旅した、オランダ、ベルギーは、一つの国でも、2つ以上の言語を公用語として使っている国?だからか、様々な言語に対応していて、ツアーの人の中でドイツ語が堪能な方がいて、彼女は、ドイツ語で現地の方と話されてましたよー(*^^*)
そういう、多言語に対応と言うのも、良い事だなあ~と感じました(^-^)
とてもうれしいことですね。
↑の表を見て気がつきました。
donna の (d) を取ると~ ローマ字で onna オンナ
と読めますね~(^-^)
大学や学校の授業でも、会話や文章、コミュニケーションがまずあって、より理解したり円滑に意思疎通を図ったりするための助けとして、文法や語彙を学ぼうという形で、授業をしてきたのですが、今回はいつまで関心が続くか分からないけれど、日本語が学びたい、日本語で話したいという少年が対象ということで、さらに使える日本語、楽しい日本語ということを念頭に置いています。
本当に様々なきっかけで日本と日本語に興味を持ち、日本語を勉強する方がいらっしゃるんですね。12歳の少年が日本語を学びたいと思うようになったのは、アニマや漫画、ゲームがきっかけで、実は今個人授業で教えている社会人や大学生の教え子も、多くの場合、それが勉強を始めたきっかけです。
親や社会がこれを勉強しろ、ひたすら勉強しろというのではなく、子供が自分からしたいと思うことをさせてやれるような、そういう社会であるといいのですが。
暖かく食がおいしく自然の美しいイタリアへと、ドイツをはじめ、ベルギーやオランダなどから、ウンブリアやトラジメーノ湖に毎年休暇に戻る人が大勢いますから、そういう人も多いことと思います。
日本にも今は観光客と共に、仕事のために日本に来て生活する外国の方やそのお子さん達も大勢いるので、そういう子供たちが日本で学校に通って、日本語とできれば母語の学習支援も受けられるようになり、移民の方たちと地元の人たちとの交流がもっと深まり、広がっていきますように。
そうなんです。donnaのdを取ったら、日本語の「おんな」になって、数字の8、ottoと日本語の「夫」の発音が似ていて、などなど、そういう類似点も、興味を持って覚えるための助けとなればと考えています。
色々と工夫して授業をしている様子がわかって興味深かったです。
ヨーロッパなどでは、両親の国籍が違うことも多いでしょうし、そのせいで、まずは両親の言葉、そして英語と語学を学ぶ環境が日本とは違いますね。
何か日本に興味を持って学ぼうとすると、覚えるのも早いように思います。
今、ヨルダン人の方を教えているのですが、覚えたいという気持ちはあっても、家から出ることがなく、外へ出ても、日本語を使わなくても事が足りてしまうので、なかなか覚えられないようです。
家族の共通語は英語なので、覚えたての日本語を使うよりついつい英語になってしますようで、どうしたものかと思います。(奥様は日本人なのですけどね)
外国語学習・教育研究によると、住んでいる外国や、学ぶ言語が話される国の文化への興味や好きという思いがあると、やはり勉強しようという気持ちになりやすく、学習意欲も継続しやすいようです。若干古い研究結果ですが、イタリア在住のある国からの移民で、自分たち移民だけの間でもっぱら交流してしまい、イタリアに対して快く思っていないがために、イタリア語を学習しようという気持ちがなく、勉強してもなかなか力が伸びないということがあったそうです。
英語が話せるのだから、現地語を覚えなくてもという思いは、残念ながら国籍と住む場所を問わず、抱く人が多いようなのですが、このヨルダンの方は、それでも日本語を勉強しようと考えて、授業に通い始めたという点で、すばらしいですね。授業で学んだことを実際に使ってみる、そういう機会を通して、より意欲が高まり、覚えようという気持ちになってくれますように。
中学生・高校生たちの、敬語を使ったり文章を書いたりする力がだんだん低下していることを、わたしが日本の高校で教えて、高校入試作文の採点にあたっていた20年前にも感じていましたから、今はなおさらかもしれませんね。使用中の日本語の教科書、『まるごと』も、くだけた表現や音声が時々あるために、使うわたしたちの方で、あれこれと補足・訂正をしているんですよ。