2009年 07月 31日
イタリア語学習メルマガ 第16号 「ぼったくり対策の手引き、ペルージャの夏」
⇒ メルマガ 第15号 「ローマのぼったくりレストラン」を読む(リンクはこちら)
6月19日午後に起こったレストランPassettoでの「日本人観光客ぼったくり事件」はイタリアで7月1日、日本でも2日後の7月3日には新聞で取り上げられたのですが、それをきっかけに次の事件も発覚しました。同じ事件に触れている7月6日の記事を二つ挙げてあります。まずは記事の見出しから見てみましょう。(1) はサイト、http://www.romauno.tvから引用しました。また、 (2)は新聞La Repubblicaの記事です。前号と同様に、記事の見出しが、記事全文へのリンクとなっています。(2019年5月現在、(1)の記事については、ウェブページが存在しないため、リンクを削除しました。)
(1) Altra truffa al Passetto ai danni di turisti giapponesi
(2) Ristorante il Passetto, altra stangata a turisti giapponesi
(1)の見出し中、truffaは「詐欺(罪)」で、altraは英語のanotherにあたる不定形容詞、altroの女性単数形で、「ほかの、別の」という意味です。ですから、(1)を訳すと「パッセットで日本人観光者への他の詐欺(が発覚)」となります。
(2)は直訳すると「リストランテ・イル・パッセット。日本人観光客へのもう一つの打撃」です。
中・上級の方で時間に余裕のある方は、先に(2)の記事の全文をご自身で読んで大意をつかんでから以下を読んでください。
記述が詳しいし、より正確だと思われますので、(2)の記事を参考にご説明します。ここで被害者として登場する日本人観光客は、35歳の夫婦です。(イタリア語のcoppiaという単語は、日本語の「夫婦」にあたる場合もあれば「恋人たち、カップル」である場合もありますが、ここでは年齢を考えて「夫婦」としておきます。)この二人が被害にあったのは6月7日だったのですが、ニュースでぼったくり事件があった際にまだイタリアにいたため、自分たちも詐欺にあったと気づき、警察に訴えました。この二人がだまされた手口も6月19日の手口と似ており、ウェイターは客にメニューを見せずに注文を受けています。
では、「ウェイターはこの二人にどんな料理・飲み物を運んだのでしょうか。」この問いに答えるつもりで、記事の次の部分を読んでみてください。
“Venivano serviti loro due antipasti di circa cinque fette di prosciutto ciascuno, due primi, spaghetti all'astice e un piatto di spaghetti ai funghi semplici e non porcini come richiesto, un pesce in bianco diviso a metà con contorno di quattro funghi porcini non richiesto dai clienti, vino, un caffè.
皆さんがイタリアのレストランに行かれたとき、レストランで注文する料理を選ぶのに欠かせない重要語句が目白押しになっています。整理してみましょう。antipastoは、日本語では「前菜」になりますが、もともとanti-「前の」という接頭辞がpasto「食事」という単語についてできた言葉です。
primo piatto「第一番目の料理、パスタ・リゾット・スープなど」やsecond piatto「第二番目の料理、肉・魚など」は調理されて出てくるまでに時間がかかるため、待ち時間を利用してすぐに用意できる(または、すでに用意されている)前菜をたしなむことができます。レストランではpiatto「皿、料理」という言葉をつけ加えなくてもprimo、 secondoといえばそれぞれprimo piatto、second piattoのことだと明らかなので、この記事にあるようにpiattoという言葉はよく省略されます。
contorno「つけ合わせ」はたいていの場合サラダや野菜料理で、ここでは登場しませんが、レストランでは、食事の最後、コーヒー(caffè)の前にdolci(ケーキやパイ、ティラミスなどの甘いもの)を頼むこともできます。その他、この記事には食品の名前がたくさん出てきますので、覚えておくと旅行先で重宝すると思います。
上記の引用部分を直訳すると「彼らには…が給仕されていた。」となります。この文では動詞の受動態(venivano serviti「…が給仕されていた」)の後に来る主語がひどく長いので、次のように訳しておきます。
「二人のためにテーブルに運ばれたのは、前菜が二皿(それぞれにハムが約5切れ)、第一番目の料理が2種類(ロブスターのスパゲッティと客に頼まれたポルチーニではなく、普通のきのこのスパゲッティ)、(二人用に)半分ずつ分けられた白ワインで煮た魚料理が一皿と客が注文していなかったポルチーニ四つのつけ合わせが一皿、ワインとコーヒー一杯であった。」(「 」内は石井訳、以下同様)
合計293ユーロという勘定を見て、日本人観光客は驚きます。クレジット・カードを差し出したあと、その支払い明細を見て、店側がさらに59ユーロ上乗せして352ユーロも取っていることが分かり、抗議しますが、「59ユーロは、合計金額に課金された税金だ」と押し切られてしまったようです。記事に興味のある方はぜひ全文を読んでみてください。
こういう事件を聞いて、イタリアのマスコミやローマ市・イタリア政府関係者の大方は、一部の不心得者のためにローマやイタリアのイメージが損なわれないようにと対応しています。また、サイト上の記事には、よく読者の感想や意見が添えられているのですが、そういう感想を読むと、イタリア人も皆こういう悪徳商人に対して憤慨しているのが分かります。
参考までに、そうした意見を一つ引用します。
“inviato da Aries
il 07 luglio 2009 alle 11:17
I ristoranti del centro offrono spesso ‘piccole o grandi trappole’ anche per noi residenti . La buona cucina romana, il garbo e lo charme fortunatamente si trovano anche fuoriporta.”
「中心街のレストランは私たち住民に対してもしばしば『大小のわな』をしかけてくる。おいしいローマ料理、礼儀正しさ、魅力は、幸いなことに町の門の外(あるいは郊外)にも見つかる。
送信者 Aries、2009年7月7日 11時17分」
地元の人でさえだまされることがあるわけです。ちなみに私は一度大阪で駅からホテルまでタクシーを利用した際に、日本人のタクシー運転手にあちこち遠回りされて、本来の料金の3、4倍の料金を払わされたことがあります。ホテルの人に「駅から至近距離ではなかったのですか」と尋ねたところ「大阪には、客が土地の者でないと分かると、客が道を知らないのをいいことに、距離数を延ばして高い料金を請求する悪徳運転手が大勢いるんです」と言っていました。今も大阪ではそういう悪徳運転手は野放しになっているのではないかと思いますし、記事に添えられた他の意見にもあるように、イタリアやローマでも、正直な店主やタクシー運転手が大半だと思います。日本にせよ、イタリアにせよ、観光客をえさにして儲けようとする不心得者が大観光都市には、残念ながら存在します。国や地方自治体が対策を強化し、また観光者の方も情報を集めて身を守るべく努力するのが一番だと思います。
*追記(7月30日):ブランビッラ伊観光相が、被害を受けた日本人観光客に対して「国費で負担するので、再びイタリアに来て、いい思い出に残る旅行をしてください」と訴えていたのは皆さんもご存じだと思います。イタリアでは7月30日になって、被害を受けた日本人観光客側から「申し出はありがたいけれども辞退します。イタリア旅行にはいい思い出もあり、また自費で訪れたいと思います」という辞退があった旨のニュースが新聞でもテレビでも報道されていました。La Repubblicaサイト上の同記事に、「ぼったくり対策の手引き」へのリンクがありました。
“LA GUIDA
Ristoranti, attenzione ai conti gonfiati di Monica Rubino”
すでに長くなったので文の引用や単語の解説はしませんが、come evitare le truffe al ristorante?「どうすればレストランでぼったくり(被害に遭うの)を避けられるか?」という問いに対して掲げてあるalcuni consigli「いくつかの助言」を要約してみます。要約は、皆さんの旅行中の防犯対策のためでもありますが、後からご自分でイタリア語の記事を読まれる際に、最初に内容が大体分かっていると、初級や中級の方でも、本文を読んだときに分かるところが多くなるからでもあります。自信のある方や挑戦しようと考えられる方は、最初にイタリア語の記事を読んでから、下の要約を読んで、自分が分からなかったところを確認し、また誤解したところがあれば辞書などを引いて、なぜ読み違えたのか考えてみてください。
1.店は各料理の値段のみならず、夜間やテーブル使用のための上乗せ料金も明示しなければならず、店主にはメニューに記された値段を適用する義務がある。その義務が遂行されなかった場合は市町村警察に介入を要請することができるし、領収書があれば差額の返還を要求できる。
2.レストランやバールではフルコースを食べない客(たとえば第一番目の料理だけ食べる客)を拒否することができない。
3.レストランがサービス料を請求できるかどうかは各地方の行政機関によって法律で定められている。サービス料を徴収するレストランにはメニューにその旨を明記する義務がある。
4.レストランでは客に頼まれれば水道水を給仕する義務があり、ビン入りのミネラル・ウォーターの購入を強制することはできない。
5.客には、料理や飲み物の一品ごとの値段を明記した領収書を要求する権利がある。
6.メニューに明記してある場合に限って、サービス料を合計金額に対して何パーセントという形で請求することも合法である。
7.チップは義務ではなく、与えるかどうかは、訪れている国の習慣や文化次第である。イタリアではチップはいつも喜んで受け取られるが、ヨーロッパではチップを与えることが不快感も与えない代わりに当然のこととして期待されてもいない。
8.レストランの店主は、コートや傘など、客が店内に入るために店側に預けなければならなかった物品の盗難については、賠償責任がある。
9.日本人観光客のぼったくり事件の後、ローマを訪れる外国人観光客がぼったくり被害にあった際にそれを指摘できる連絡先が設置された。
電話 コールセンター Help Tourist 06.45420928
(無料ではなく、市内間の電話料金が適用される)
メール helptourist@adoc.org.
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2 ペルージャの夏
ペルージャでは、この数日まったく雨が降らず、毎日暑い日が続いています。冷房のない家の中では、日が暮れてから窓をすべて開け放しても、午後10時過ぎになっても、まだ温度が29度から30度と暑いため、戸外で涼を取る人がたくさんいます。7月28日の夜は親戚、義父母の姪とその夫が我が家を訪れたため、皆で風通しのいい庭に出て、夜遅くまでおしゃべりに花を咲かせたのですが、義父が「昨夜、近所のバールに行ったら、暑いものだから、店の前にたむろしておしゃべりしながら涼を取っている若者やお年寄りがたくさんいた」と言っていました。
ペルージャでは町の一大行事であるウンブリア・ジャズが終わったばかりですが、今も、各地でさまざまな祭り行事が催されています。先週は夫とペルージャ郊外のピーラ(Pila)という場所で催されたPiccantissimaという祭りに出かけました。トウガラシ(peperoncino)を使った辛い(piccante)料理やシチリア料理を野外でたしなむことができるというので、辛いものが大好きの夫は楽しみにしていたのですが、料理もお祭りも今ひとつの感がありました。義父母が若かった頃も、ペルージャの郊外では「今週はこの村、来週はあの村」といった具合に、夏にはあちこちで村祭り(sagra)があり、大勢が戸外に集まっては音楽を聞いたり、音楽に合わせて踊ったり、飲み食いしながらのおしゃべりを楽しんだりしていたようです。村祭りで踊られるのは今も昔もほとんどの場合、ballo liscioと言われる伝統的な踊りで、ゆっくりした甘いリズムにのってカップルで踊るものです。義父は若い頃から踊るのが大好きだったのですが、車など持たぬ家がほとんどであった当時のことですから、隣村まで何キロメートルも歩いて行き、祭りに参加して踊りに踊ったあとで、疲れた足でさらに長い道のりを歩いて自宅に午前4時頃戻り、農家の末っ子ですから、午前5時にはもう農作業を始めなければならないということがよくあったそうです。今でも踊るのが大好きで、夏の夜は、祭りに出かけて義母と共に踊るのをとても楽しみにしています。
では、また。日本でもあちこちで夏祭りが催されることと思います。お体に気をつけて、楽しい夏をお過ごしください。
*追記(2019年5月10日)
ヤフージオシティーズのサービス終了のため、現在、このイタリア語学習メルマガのバックナンバーを、ブログに移行中です。すでにブログに収録済みのメルマガ一覧は、タグ、「イタリア語学習メルマガ バックナンバー」(リンクはこちら)からご覧になれます。
引用した記事にポルチーニのパスタが出てきたので、トスカーナの山のレストランで、ポルチーニソースであえたタッリャテッレを食べたときの食事の写真を、添えることにしました。明朗会計だったこの山の店の料理に興味のある方は、記事、「山の幸・おしゃべり楽しむ栗の里、トスカーナ マッラーディ」(リンクはこちら)をご覧ください。