イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

コルトーナ風景写真に平和への願いを込めて

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 イタリアの町や村を歩いていると、戦争で亡くなった人々を悼んで建てられた祈念の像や碑を見かけることがよくあります。

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 3月末にトスカーナ州コルトーナ(Cortona)の町を訪ねたときに見た、この戦没者慰霊碑には、右手に大きく「戦争で亡くなった600人のコルトーナの戦死者に(捧ぐ)」と刻まれています。下に1915年から1918年とありますから、この「戦争」(guerra)は、戦争勃発が1914年、イタリアの参戦が1915年だった第一次世界大戦のことでしょう。

 左手にはさらに小さい字で、「コルトーナ市民が、すべての戦争における戦死者を記念して」と書かれています。

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Cortona (AR) 29/3/2019

 国を問わず、兵士か一般市民であるかを問わず、尊い命を奪い、ささやかな日々を生き地獄に変えてしまう戦争。力尽きたその人を、羽を広げた天使が迎えて、温かく抱きかかえる像には、今はどうか天で安らかにという人々の願いが、大切な家族や友人を亡くした人々の思いが、込められているように思います。

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 この壁画も、コルトーナの商店街の壁に見かけました。

 憎しみは憎しみを呼び、自分さえよければという思いが勝れば、国では貧富の差が拡大し、国際関係は軋み合い、今も世界で絶え間なく続く戦火が、より広がってしまう恐れがあります。

 地域の中でも、国の中でも、世界でも、互いの違いを豊かさとして尊重し合い、弱いとされる立場にいる人々も幸せに暮らせるような、心豊かな世の中にしていくには、もっともっと愛が、思いやりが大切なのではないかと思います。

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 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』で、自分のために極楽から地獄へと垂らされた蜘蛛の糸を登る主人公が、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸はおれのものだぞ。お前たちは一体誰にきいて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と叫んだとたんに、糸はぷつりと切れてしまいます。

 イタリアでは、本当は、不必要に多い政治家が不当に破格な額の報酬や年金を得ているために、また、多くの資金がマフィアなどの組織的犯罪集団の懐に入ってしまうがための経済難であり、儲けさえ多ければいいと、賃金を安く抑え、労働力の安い外国に拠点を移してしまう企業のために、多くの人々の生活が苦しくなっているというのに、右派政治家の中には、それをひとくくりに移民、難民のせいだと声高に叫ぶ輩がいて、テレビニュス報道にも、そういう政治家の意図を反映して、人々の非難が移民に向かうように仕向けているとさえ思われるようなものがあります。

 移民は、難民はと、一人ひとりの状況を見ず、ひとくくりに糾弾するそういう風潮が、一般市民の間に、外国人への不満や偏見・差別という形で、少しずつ波及していることが感じられて、そら恐ろしい気さえする今日この頃です。自国では迫害を受け、命の危険があるために、イタリアに亡命しようとする人も決して少なくないのです。第二次世界大戦中に、ユダヤの人々の亡命を助け、命を救った人を讃える映画やドラマが放映される一方で、今同様の危険に遭っている人を見殺しにする姿勢が、「この蜘蛛の糸はおれのものだぞ。お前たちは一体誰にきいて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と大声を上げる蜘蛛の糸の主人公に重なります。

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 コルトーナに向かう道では、アッシジの聖フランチェスコ(San Francesco d'Assisi)の銅像が、両腕を広げていました。弱い立場にある人に手を差し伸べ、そして、共に手を携えてこそ、本当は、多くの人がより暮らしやすい豊かな世の中になっていくように思います。

 令和という新しい時代に、人も企業も国も出発点に立ち戻り、互いを思いやる仁の心から和を尊み、皆が暮らしやすい、より平和な社会へと世の中が向かっていくことを、心から願っています。

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 コルトーナでは、こういう不思議な像、作品も見かけました。

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 こういう町の一角からも、奥にウンブリアのトラジメーノ湖が見えるのが、うれしかったです。

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 湖が少し見えるだけで、うれしくなる自分がいました。

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 こういう作品も、見ると何だか楽しくなります。

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 像のように身じろぎもせずに、じっと立っている猫もいました。

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 最後になりましたが、こちらがコルトーナの美しい中心広場、レプッブリカ広場(Piazza della Repubblica)です。

 もっとゆっくり広場の建物も訪ねたかったのに、3月は、夫がこのあと急に急な坂道を上り始めてしまったので、またいつか再訪できればと考えています。

関連記事へのリンク
- 守れ地球、イタリア初女性宇宙飛行士の言葉から
- どうあろうとも戦争は~ジャンニ・ロダーリの詩、『覚え書き』
- 丘の町急坂登ればトラジメーノ湖、コルトーナ
- 夕日あかあかトラジメーノ湖、トッリチェッラ

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by 3841arischan at 2019-05-25 08:24
なおこさん、コルトナの戦死者を弔う記念碑、感銘を受けました、素晴らしいですね~♡
昨日、日本のニュースで、イギリスどころではなく、EUの国では、EU反対派の勢いが増して来て(多分政治家の事)、ともすればEU崩壊の危機になるかもしれない?なんて言うニュースが流れてました!しかも、その中でも活発なのがイタリアとか!
今、ほんとに、世界的に激動の時代なのかもしれませんね!
どうか、世界が平和でありますようにと仰られた日本の天皇陛下の言葉通りであって欲しいと願わずにいられません!

なおこさんのとても素敵なお写真に癒されます。
なおこさんにとってはトラジメ―ノ湖が見えたらホッとするという気持ちよくわかります(*^_^*)
私にとっては瀬戸内海でしょうか♡
Commented by milletti_naoko at 2019-05-27 18:22
アリスさん、ありがとうございます。コメントが遅くなってすみません。
イタリアでのEU反対は、わたし自身の周囲ではそれほどなく、今回の選挙で
勝利した政党は、構造的な問題は無視して、移民や欧州連合など悪者を外に見つけ、
まるで移民を排除して欧州連合から離脱すれば問題が解決するような、憎しみや
差別・偏見に満ちた言動を行う政治家が率いているので、行く末が本当に心配です。

コルトーナからもトラジメーノ湖が見えて、うれしかったです♪
瀬戸内海の優しい青い海、わたしも懐かしいです。
Commented by snowdrop-uta at 2019-05-28 06:52
心底から共感します。
欧州議会選挙の報道を見ながら呆然としています。
まさか世界各国で「…、ファースト」と言い出すようになろうとは!
インターネットで世界中が未曾有のつながりを享受できるようになった今、
人類は英知を求め、手を差し伸べ合うどころか、てんでに子供帰りしようとでも言うのでしょうか。

震災後の日本でも、あらゆる境界を超えた人と人の絆が生まれてくると思ったら、かえって家族の絆ばかりが強調されるようになった気がします。もちろん家族は大切ですが…
Commented by milletti_naoko at 2019-05-28 20:27
snowdrop-utaさん、英国のEU離脱関連記事を読んでいたら、
現在他のヨーロッパに住み働く英国人の多くが、今住んでいる国の
国籍を取得しようとしていると書かれていました。記事に書かれた
市民の声を読んでも、すでに多くの市民の心ではヨーロッパの国の
壁が取り払われているのに、政治家の扇動で、不況や治安の乱れを
口実におかしな方向に向かっていることを、選挙権のないわたしは、
呆然としながら見ています。幸いわたしの周囲の親戚や友人は、
良識ある人が多いのですが。

日本でも世界でも、家族を思う心が他の人やその家族にも向かっていき、
最終的には平和な世の中、本当に和を大切にする社会になってくれれば
いいのですが。
by milletti_naoko | 2019-05-24 23:13 | Toscana | Trackback | Comments(4)