イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

歴史千年の鐘鋳造工房は教皇御用達、アンニョーネ 鐘の歴史博物館

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 千年以上の歴史を誇り、今も千年前と同じ技法で鐘を造り続ける鋳造工房が、モリーゼ州のアンニョーネ(Agnone)という町にあります。職人の技術を代々受け継いできたマリネッリ一家が経営し、1924年には教皇庁御用達となり、教皇の紋章を使う許可を得たマリネッリ鐘鋳造工房、Pontificia Fonderia di Campane Marinelli です。

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 土曜日は、この鐘鋳造工房の左手にある入り口から、鐘の歴史博物館に入り、約1時間のガイドつきツアーに参加しました。

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 博物館及び鐘鋳造工房内では、写真・ビデオ撮影が禁止されていたので、写真は撮れなかったのですが、まずは、鐘を造る工程や鋳造工房の歴史を説明するビデオを見て、それから、職人さんのガイドで、鐘の歴史博物館内に入り、鐘造りなどについての興味深い説明を聞いてから、鐘が展示された博物館や鐘鋳造工房を訪ねました。

 次の映像に、わたしたちが訪問中に見聞きした案内の核となる説明があります。説明はイタリア語ですが、興味のある方はご覧ください。


 博物館内には千年前の鐘もありましたが、のちに鐘の高さと鐘の底の円周の長さが等しくなるようになど、然るべき鐘を造り出すための比率が発見され、古い鐘は形としては美しいけれど、この比率に従っていないため、音に問題があるのだそうです。

 西暦2000年の聖年を記念するバチカンの鐘や、対戦中に爆撃で破壊されたモンテカッシーノ修道院の新しい鐘、ピサの斜塔の鐘をはじめ、アンニョーネのマリネッリ鐘鋳造工房では、イタリア国内の多くの鐘はもとより、世界の様々な国の鐘も鋳造してきたとのことです。中世からの歴史のあるウンブリア州グッビオのロウソク祭りでは、前日に中心広場の鐘を高らかに鳴らします。実況中継を見て、その鐘がアンニョーネで造られていたことを知っていたのですが、博物館訪問中には、ウンブリア州以南のイタリアの教会の鐘はすべてが我が工房で造られたものですという説明がありました。

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 プーリア州サン・ジョヴァンニ・ロトンドにある聖ピオ教会の鐘も、マリネッリ鐘鋳造工房が手がけたとのことで、工房前には聖ピオの像があり、またその横には、踊るように鐘を鳴らす修道士や修道女の絵があり、顔の部分に穴が空いていて、そこから顔をのぞかせて、記念写真が撮影できるようになっていました。

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Chiesa di Sant'Antonio Abate, Agnone (IS)

 鐘は、教会のミサなど、宗教的意義があるだけではなく、時を知らせ、火事など緊急の事態を告げるなど、社会的にも重要な意義を持っていたのだというガイドさんの説明を聞いて、改めて日々の生活における鐘の大切さを思いました。訪問の最後には、鐘のコンサートがあり、イタリアの賛美歌から喜びの歌、ジングルベルまで、鐘が様々な音楽を奏でるのを聞くことができました。

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Locanda La Campana

 旅の目的地をモリーゼに決めたときから、夫は、アンニョーネに行きたいと言っていたのですが、町が主要道路から離れた丘の上にあるために、ようやくアンニョーネを訪ねたのは、先週金曜日のことでした。当日になって宿泊サイトで宿を探し、選んだのがこの「鐘」(campana)という名のLocanda La Campanaです。石造りの宿は、朝食を食べた広間も、わたしたちが泊まった部屋も、装飾に工夫が凝らしてあってすてきで、部屋は広く、タンスからインターネット接続、ドライヤーまで、必要なものが皆きちんとあって便利でした。

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 歴史的中心街近くの石畳の長い階段の途中、アーチの下に宿の入り口があり、趣があり静かで、場所もとても便利です。階段を上ったところにある通りに、無料の駐車場があって、宿の人の勧めで、わたしたちはそこにアイゴを駐車しました。ただ、大きく重いスーツケースを持っての移動は、大変かもしれません。

 宿に着いてから、この宿を営むのがマリネッリ鐘鋳造工房の経営者の家族で、そのため、ここに宿泊すれば、鐘の歴史博物館に割引料金で入場できることを知りました。宿の人からは割引だと聞いていたのですが、博物館では担当者にもよるのかも知れませんが、宿泊した旨を告げると、入場料金一人5ユーロのところを、無料で訪問させてくれたので、助かりました。

Pontificia Fonderia di Campana Marinelli
Museo Storico della Campana Marinelli

Via Felice D’Onofrio, 14 - Agnone (IS) 86081 Italy
Tel. : +39 0865 78235
Fax : +39 0865 78235
Email: info@campanemarinelli.com, museo@campanemarinelli.com
Sito : Marinelli Pontificia Fonderia di Campane

Locanda La Campana Bed & Breakfast
Vico Polito n°15/17 - 86081 Agnone (IS)
Tel. : 338 8435967, 333 3098421
Email: info@locandalacampana.com
Sito : Locanda La Campana Bed & Breakfast, Agnone (IS)

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Pontificia Fonderia di Campana Marinelli, Agnone

Passione & lavori artigianali per più di mille anni,
interessante visitare il suo museo storico,
vengono da qui la campana di Gubbio, le campane di
molte altre chiese dell'Umbria e del Sud d'Italia e non solo.
Carina e ospitale la Locanda La Campana,
gestita proprio dalla famiglia Marinelli.
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by snowdrop-momo at 2019-07-27 07:02
鐘工房の家族が営む「鐘」に泊まって、鐘の造り方をしたしく見聞されたのですね!素敵です。

数年前に法王庁と鐘についてのドキュメンタリー番組を録画したのですが、また見てみたくなりました。

鐘の聖別、本では読んでいましたが、映像を見たのは初めてです。さすがイタリアの番組ですね!

アラン・コルバンの『音の風景』、フランスの社会における鐘の諸相が網羅されていて、圧巻の一冊です。日本語版しか持っていませんが…
これを『平安京 音の宇宙』と読み比べるとまた面白いのです。ちなみに京の鐘は、五行思想にもとづいた音高のものが
都の東西南北に配されているんですって!

ps. カンパネルラは「小さな鐘」ですね。『銀河鉄道の夜』からはイタリアの香りもします。
Commented by milletti_naoko at 2019-07-29 19:36
snowdrop-momoさん、法王庁と鐘についてのドキュメンタリーが、なんと日本でも放映されたんですね! どういう内容か、わたしも興味深いです。鐘を作る際には、必ず祈りを捧げるのだそうです。これもきっと中世からの伝統でしょう。

フランスや日本、各国における鐘の音色や役割を比べてみるのも、おもしろいですね。それでまたそれぞれの文化における特徴が浮き彫りになってくるように思います。カンパネルラって、campanellaのカタカナ表記だったんですね! 初めて思い至りました。
Commented by snowdrop-momo at 2019-08-01 06:39
そうなんです。
イタリアを旅した時は、ジョヴァンニという名前の入った教会をよく見かけました。
わが家族はなぜか「ジョヴァンナさん」と訛るんですよ。
それだと女の子の名前になりますよ~といつも言うのですが。
^^
ノートルダムの火災では、ふとっちょ(bourdon)と呼ばれる鐘が焼けずに残りました。イタリアでは、鐘にどんな名前をつけるのでしょう。
Commented by milletti_naoko at 2019-08-01 20:07
snowdrop-momoさん、洗礼者ヨハネに捧げられた教会の多い町を訪ねられたんですね。ジョヴァンナさんと言えば、イタリアでは、ジャンヌダルクが、ジョヴァンナ・ダルコと呼ばれます。

鐘に名前があるとは初めて知りましたが、無事に残ったようで、何よりです。
by milletti_naoko | 2019-07-22 23:58 | Molise | Comments(4)