イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ゆり・なでしこ花咲く山に手向けたスカーフ、シビッリーニ山脈 リエート山

 イタリアの初夏の山で出会うオレンジ色が鮮やかなこのユリは、イタリア語名をGiglio di San Giovanni(訳すと「聖ヨハネのユリ」)と言います。イタリア語ではサン・ジョヴァンニ(San Giovanni)と呼ばれる洗礼者ヨハネを記念する祝日が6月24日で、その前後に花が咲くからです。学名はLilium bulbiferumで、日本語ではそれをカタカナ読みして、リリウム・ブルビフェルムと呼ぶようなのですが、

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Giglio di San Giovani sul sentiero verso la cima del Monte Lieto, Monti Sibillini 6/7/2019

7月初めにシビッリーニ山脈のリエート山を登ったときは、マルタゴン・リリーが咲いていた上に、このサン・ジョヴァンニのユリも数輪見かけることができて、うれしかったです。

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Dalla pagina web http://www.sibillini.net/il_parco/gps/mappaSisma.jpg?v=1.0

 カステッルッチョの高原の野の花も美しいであろうシビッリーニ山脈を登ろうと、この日は朝うちを出発したのですが、2016年のイタリア中部地震から3年が経つ今も、シビッリーニ山脈国立公園内には、まだ危険なので歩くことができないトレッキングコースや、車が通行できない道路がたくさんあります。この日は暑かったこともあり、標高が高く、一部は登山が可能となっている登山コース、E11(sentiero escursionistico 11、リンクはこちら)を歩いて、リエート山(Monte Lieto)に登ることにしました。夫は、登頂後に山の斜面を下って、カーナトラ渓谷まで下り、そこから再び山の裾野、野の花が見られる可能性のある高原の傍らを通る道を登って、出発地点(ピンクの*印)に戻ろうと提案したのですが、わたしは、それでは標高差のかなりある道を炎天下長い間登らなければいけないことに、ためらいがありました。

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 この日の登山中には、このかわいらしい花も、たくさん咲いていました。

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 251番トレッキングコースを登る途中で、夫がコースを逸れて、山頂へと向かってしまい、草原の中を歩くのに辟易したわたしが、251番コースを歩いて行ったところまで、前回の記事(リンクはこちら)でお話ししました。

 251番コースを登りつめて、尾根道である252番コースとの合流地点(1843m)に到達し、来た道をふり返ると、奥の方に、シビッリーニ山脈の2千メートル級の高峰が連なるのが見えて、感動しました。

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 この地点からは尾根を通ってリエート山頂まで歩く登山道もあり、すでに山頂に着いた夫が、わたしを誘いに、この道しるべのあるところまで下って来ました。

 そこで、山頂には行かず、そのまま252番コースを進んで渓谷まで歩こうと考えていたわたしも、夫の後についてリエート山頂に向かいました。このとき、風が強いから帽子が飛ばされないようにと、夫がわたしに、トレッキングの時にはいつも携帯している大きな緑のスカーフを貸してくれたので、そのスカーフを帽子の上からかぶり、首の下で結びました。

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 雲が多く、強い風が吹いていたのですが、山頂からの眺めはすばらしかったです。lietoはイタリア語で「うれしい」という意味の形容詞で、「うれしい山」に登れて、わたしもうれしく思いました。

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 夫は、予定どおり渓谷まで山を下って、高原のそばを通って出発地点に戻ろうと言ったのですが、それでは歩くのが大変だし、このまま前方の尾根道を歩けるところまで歩いて下った方が、眺めもいいし楽だからとわたしが提案して、結局は、なだらかな尾根道を下って行くことにしました。

 わたしが山頂で写真を何枚も撮ったり、360度のパノラマを録画したりしていると、一足先に山頂に着いた夫は、激しい風が吹きつけるので寒いからと、どんどん先へと下って行きました。

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 山頂からも、小さく右手下方に見えていたカステッルッチョ(Castelluccio di Norcia)の町並みが、遠くからとは言え、よく見えるところにさしかかったので、ズームで拡大して撮影しました。

 中心街の家が、数軒を残してすべて平らに崩されてしまっていると、望遠鏡で眺めていた夫からは聞いていたのですが、今ようやく写真で、それを確認することができました。登山の帰りに、わたしたちが花の高原に寄らなかったのは、それがあまりにも切なかったためでもあります。

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 先を歩いていた夫が、この先は崖になっているので、左手の斜面を、行きに歩いた252番コースまで下ろうと言うので、尾根道の途中から斜面を下りました。途中で夫が呼ぶので、何かなと思って行ってみると、冒頭の写真でもご紹介したサン・ジョヴァンニのユリが咲いていました。

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 さらにしばらく下った夫が、252番コースを見つけたのを確認して、わたしも夫の進む辺りへと、山を下りました。

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 風景やゲンチアナ・ルテア(genziana maggiore)の花がきれいだと、時々足を止めてはのんびり撮影しながら、夫について歩いていたら、

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夫にスカーフはどこと聞かれて、はっとしました。渓谷では風が吹かないので、もう必要がないから片づけたのだろうと、夫は考えていたのですが、わたしはスカーフを片づけた覚えはなく、けれども首の周りにはもうスカーフがありません。山頂から尾根道を下る間に、ゆるんでいたスカーフを結び直した覚えがあるので、それから斜面を下りている間に、風に飛ばされてしまったのでしょう。

 夫の大切にしていたスカーフをなくしてしまって申しわけない、今ならまだ見つかるかもしれないと、わたし自身が斜面を登って探そうとしたのですが、君が登ってはいつまでかかるか分からないと、代わりに夫が探しに行きました。夫がかなり探したものの、結局スカーフは見つからないままでしたが、「シビッリーニ山脈にスカーフを捧げたね」と、夫は言ってくれました。

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 このあとは、ナデシコ(garofanino)

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キキョウ科と思われる花が咲く渓谷の細い道を歩き、

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ブナの巨木が美しい森を通って、出発地点へと戻りました。

 もし夫が言っていたように、カーナトラ渓谷へと下っていれば、強風にスカーフが飛び去ることもなかったのではないかと、夫には申しわけないのですが、この日は思いがけず、たくさんのゲンチアナ・ルテアの花や風景を愛でながら、山歩きを楽しむことができました。

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Belli i fiori di giglio di San Giovanni sul Monte Lieto
,
bello anche il panorama dalla cima.
Tirava un vento forte ed è volato via
il fazzoletto che mi aveva prestato mio marito.
Mi dispiace molto, perché l'ha utilizzato per molti anni,
ma gentilmente dice che l'abbiamo donato ai Monti Sibillini.
Monte Lieto, Monti Sibillini 6/7/2019
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関連記事へのリンク / Link all'articolo collegato
- 牛と花出会って登るリエート山、シビッリーニ山脈 / Verso il Monte Lieto tra mucche e fiori, Monti Sibillini (6/7/2019)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:【キャンペーン】2019年夏!私の花火写真&お気に入りの夏ショット!
Commented by ciao66 at 2019-08-02 06:24
草原に咲く聖ヨハネのユリは美しいですね♪
サン・ジョヴァンニの名前はイタリアでよく目にするものの、聖ヨハネのこととは思っていませんでした。この美しい花のイメージでサン・ジョヴァンニを覚えたいと思います。
 「うれしい山」というのはいい名前の山ですね。lietoはイタリア語で「うれしい」というのも、これで覚えられそうです。
 美しい写真を見ながら楽しくイタリア語の勉強ができました♪
 失くしものは残念なことでしたが、それを山に「ささげた」というのもそこが、聖ヨハネの山だったからですね!
Commented by tawrajyennu at 2019-08-02 10:12
こんにちは♪
色々な花を愛でながらのトレッキング、良いですね~
私も、サンジョバンニが聖ヨハネを意味するというのは、知りませんでした。

カステルッチョは、確か地震で被害を受けた村でしたね。
あれから、だいぶ経つのに、こうしてまだその爪あとが
残っているのを実際に見るのは、辛いですね。
Commented by otenbasenior at 2019-08-02 12:49
多分ご主人のお気に入りのスカーフなんですね。
とても残念でしたね。
私も自転車で一人で山に登って強風にあい下るのが危ないほどだったので夫に迎えを頼んだのですが、夫が車を降りるとき強風でドアがちぎれそうだったのでそれに気を取られてお気に入りの帽子が飛んでしまったことがありました。
娘のプレゼントだったので特に残念でしたが、下方に飛んでしまい探すのさえ難しかったので諦めました。
たくさんのお花に慰められましたね。
Commented by 3841arischan at 2019-08-02 15:30
なおこさん、今年のイタリアもかなりの猛暑なのですね!
高いお山なら、涼しいけど、標高の低い場所はつらいですよね!
そういうこともいろいろ考えての登山、素敵ですね~
サン・ジョバンニにゆり、オレンジがとても綺麗です♡
ピンクの花も、ナデシコやキキョウ科の花も♡
こういう場所を歩いていたら、こころが洗われますね☆
まだまだ地震の爪跡がある場所、お山から眺めても、それと分かる場所を避けたのはわかります^^;
とても素敵な登山でしたね~ご主人様の優しい一言も良いですね(^_-)-☆
Commented by hanashigai at 2019-08-02 19:21
標高が高すぎる訳でもないのに広い斜面の一面が草原のようになっているのは、もともと牧草地だからなのでしょうか?
給水所周辺の駐車場の雰囲気など、羨ましいくらいの長閑なロケーション!日本だったら舗装して駐車料金取られそうなんて比べてしまいました(笑)
トレッキングコースをトレースしたのに草むらに囲まれてしまうハプニング(?)が
ありつつも、夏山トレッキングを存分に楽しまれて充実されたのが伝わります。
スカーフの件は残念ですがご主人の「山に捧げる」なんて、そんなふうに考えられるのが素敵すぎます♪
フィルムで撮ってた頃に渓流で露出計を川に落としてしまい、そのまま流れていった経験がありますが、そんなふうには思えなかったので、今後はご主人を見習いたいと思います。
Commented by milletti_naoko at 2019-08-02 21:29
ciao66さん、このオレンジ色のユリに出会うと、夏の訪れを感じます。このユリに、「ユリ」で終わる和名があるなら、記事にそう書いたのですが、学名で呼ぶと、何だか別の花のことのようで、「わたしはサン・ジョヴァンニのユリと呼びますが、その理由は」という思いから書いたのですが、思わぬところで、お役に立てたようでうれしいです。確かにヨハネとジョヴァンニ、英語ではジョンになりますが、音の響きがかなり違いますよね。

聖ヨハネのユリが咲く、喜びの山のどこかに飛んで行ってしまったスカーフ、せめては山の神様が心に留めてくれるといいのですが。
Commented by milletti_naoko at 2019-08-02 21:42
タワラジェンヌさん、こんにちは♪ 夏の山は、色とりどりの野の花に出会えるのが登山の楽しみと言うよりは、励みです。ウィキペディアを見ると、ヘブライ語の名前が、古代ギリシャ語風にIoannesとなり、ラテン語ではJoannes、Johannesとなったとあるのですが、ロマンス語文献学の授業で、Ioannesがイタリア語のGiovanniに変容した過程を学んで、おもしろかった記憶があるので、いつか外国人大学の授業ノートを発掘して、記事としてご紹介できたらと思います。大学で教えた中に、Ioannisという名前のギリシア人学生がいましたので、ギリシャでは今も「ヨハネ」に響きが近いこの名前が使われているのではないかと思います。

少しでも早く、村の人々が以前のように中心街に戻れる日が来ることを、心から願っています。
Commented by milletti_naoko at 2019-08-02 21:46
お転婆シニアさん、強い風に飛ばされないようにと貸してもらった大切なスカーフを、風に飛ばされてしまって、申しわけなく思いました。車のドアがちぎれるほどの強風だったとは、最近は暴風による恐ろしい事故も多いですし、帽子は残念でしたが、ご無事で何よりです。お嬢さんの贈り物だったのですね。わたしも帽子が山で崖の急斜面のはるか下方に落ちてしまって、取りに行くのは危険だとあきらめたことが、もうかなり前のことですがありました。

花がたくさん咲いていて、きれいでした♪
Commented by milletti_naoko at 2019-08-02 21:50
アリスさん、日本もかなり暑い日が続いているようですね。できるだけ涼しい、標高の高い、木の多い涼しい場所をと、地図で登山に行ける場所を探しています。夫はかなりの標高差のある登山道や標高は低いけれども、川の水源に行けるコースも提案していたのですが、話し合って、リエート山に行くことになりました。

鮮やかなオレンジ色のユリはぱっと目に飛び込んで来るので、最近トスカーナの山中を車で走っていても、路傍の斜面に咲いているのが見えて、うれしかったです。ありがとうございます。夫にそう言ってもらえて、救われました。
Commented by milletti_naoko at 2019-08-02 22:01
放し飼いさん、イタリアでは多くの山で放牧が行われるため、自然の状態であれば木々が育つはずのところにも、草地となってしまって、木が育つことができず、こんなふうに山の高みが草はらのようになっているところが多いんです。

給水所周辺の駐車場は、実は舗装されていてかなり広いのですが、わたしが山が見えるように、給水場の奥にある草地まで登ったので、小さく見えています。イタリアでは海辺や町の近くの駐車場は有料のところが増えていますが、この辺りの山では、まだ無料のところの方が多いように思います。実はこの日も、カステッルッチョの中心街近くや高原には、かなりの長い車の列ができていて、ここに駐車する車が比較的少ないのは、多くの人が殺到する場所から離れていたからでもあります。

露出計が渓流で流れるとは、残念でしたね。夫の言葉を聞いて、菅原道眞の「紅葉の錦神のまにまに」という歌を思い起こし、何か相通ずるものを感じたわたしです。
by milletti_naoko | 2019-08-01 19:16 | Viaggi | Comments(10)