2019年 09月 12日
秋の庭と花の色、ピンクはバラ・桃・ナデシコの色
今日ふと花を見やると、色があせ始めた花や、散ってしまった花びらがあり、花の間に実が育っています。
すでに実ばかりとなっている房もあり、その赤い実にも、けれど風情があります。
花の色は移りにけりないたづらに……
『徒然草』の「花は盛りに」の段を思い、花盛りだけではなく、またしおれて実ができる頃の風情も愛でられるようでいたいと思いつつ、小野小町の歌が心に浮かび、鏡を見れば少しずつ、白髪が増えて、シミができてきている、そういう変化もまた、大切に慈しめるようでありたいと感じたのでありました。
しばらく前に雨が降って大地を潤し、近頃では朝晩涼しいほどになったためでしょう、昨日だったか、庭のバラの花が2輪きれいに咲きました。
そのうちの1輪は、どういうわけか、本来あるべきよりも、花びらの数がずっと少ないのですが、こういう花も美しいなと、今日水をやりながら思いました。
日本語では、今では、従来から語彙にある桃色よりも、ピンクという外来語の方が、色を表すのに使われることが多いのに対して、イタリア語では、今も従来どおり、ピンク色を表すのに、バラを指すrosaという単語を使います。日本語で「桃色」と言うのに対し、イタリア語ではピンクは、「バラの色、バラ色」と言うわけです。
伊伊辞典の定義を見ると、色としてのrosaの語義には、「赤と白の間の色で、イヌバラや他のバラの花の色」とあります。(リンクはこちら)イヌバラ(rosa canina)は、イタリアの野山に自生するバラで、イタリア中部では5月に花盛りになり、山はエニシダの黄色い花と、イヌバラのピンクの花で彩られます。それで、このバラの花の色が、そのまま色を表すことになったのでしょう。
ただし、花や植物のバラを表すrosaが女性名詞であるのに対して、ピンク色を表すrosaは、男性名詞で無変化です。形容詞としても使われますが、この場合も無変化ですから、ご注意ください。
桃の花と言えば、かつて内子町や野村町から松山市へと車で向かうと、春には桜に先駆けて、桃の花が咲き、道路沿いから見える風景が、桃の花のピンクと菜の花の黄色に彩られて、とてもきれいでした。
イタリアでは見られない春の風景だと思っていたら、春にマルケ州のアーソ川沿いを車で走ったとき、花盛りの桃の木が並んでいるのが見えて、うれしかったです。
日本では桃色、イタリアではバラ色ということは、英語のpinkという単語も、もともとは、何かの花の色であることに由来しているのではないかと、ふと思いついて調べると、
本来pinkは「ナデシコ」を指していて、17世紀半ばから、そのナデシコの花の色であることから、ピンク色を表すのにも、このpinkという言葉が使われるようになったということです。(リンクはこちら)写真は、今年7月にシビッリーニ山脈で出会ったナデシコ(garofanino)の花です。
ピンク色は、イタリアでも日本でも英国でも、花の名前とその色から来ているのが、おもしろいなと思いました。そして、日本語同様に、英語からの外来語が少なくないイタリア語も、今のところは色を表すpinkは大きな伊伊辞典でも、語彙として収録されておらず、つまり、今もrosaが色の名前としても健在なわけですが、どうかいつまでもこうあってほしいと思いました。
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Nel nostro giardino i fiori di lagestroemia e rosa.
Il rosa è il colore dei fiori di rosa,
in giapponese è 'momo-iro', il colore dei fiori di pesco,
poi ho scoperto che anche la parola inglese 'pink' deriva
dal colore dei fiori di garofanino chiamato 'pink' anche esso.
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近頃では 桃色とは言わず ピンクと言っていますね。
ピンクがナデシコの意味だとは知りませんでした。
サルスベリ
実家にも あったのですが
実ができるのは知りませんでした。
近所にも サルスベリの花が咲いているので
実ができるかどうかチェックしてみます。
日本では バラ色とはあまり言いませんが
シャンソンのタイトルに「バラ色の人生」というのが
ありますね。
自分ではピンクは彩度が高い色を、桃色と言うと淡くて落ち着いた色を指して別けていると気付かされました。
私が小中学生時代は色鉛筆やクレヨン、水彩絵の具の基本色は12色で、その殆どが和名だった記憶があります。
桃色も薄桃色、濃い桃色、桜色、薄紅色など、物と情緒で使い分けてますがピンクはひとくくりで使う時に呼ぶことが多いです。
バラ色は極限の幸せな状況を表す時に使うとばかり思っていたので、イタリアで色を指して使われているのが面白いと思いました。
※先程コメントしましたが送信時にエラーが出たので、もしかすると同じ内容のコメントが連投になるかも知れません。
イタリアの百科事典、トレッカーニのオンライン辞書でも、pinkを調べても色はなく、百科事典にもかろうじて、Pink Floydなど固有名詞が並ぶばかりで、ほっとしました。日本で桃色と呼ぶように、イタリア語ではピンクを今もバラ色と呼ぶわけです。確認したら、フランス語でもピンクはバラと同じ単語で、わたしの手持ちの辞書には、roseの語義として「バラ色」が「ピンク」に先立って並んでいますが、仏仏辞典を見ると、バラの色には様々あっても、指すのはやはりピンク色のようです。