2019年 09月 21日
童話で愛を育もう〜舞台はトラジメーノ湖、クッコ山 本の祭典


Umbrialibriは、ウンブリア州が主催する本の祭典で、著者を招いたり、対談を設けたりして、書籍を紹介し、文化を促進する催しです。

Intervento di Jessica Cardaioli
会場に到着して、ステージに向かうと、わたしたちが大好きで、よく夕焼けを愛でに行っているトラジメーノ湖(Lago Trasimeno)の生態系について話をしていたので、びっくりしました。アメリカザリガニなど、外来の生物のために、従来からトラジメーノ湖に生息する魚や鳥たちにとって、生きづらい環境となってしまっていること、わたしたちもよく湖で見かけるカンムリカイツブリの生態などが、詳しく語られていて、話がとても興味深いのです。
ただ、この生物・生態研究者の女性は、「カンムリカイツブリ(svasso maggiore)にとっては、アメリカザリガニ(gambero della Louisiana)は大きすぎるので、食べることができません」と話していたのですが、

わたしたちは昨年の春、カンムリカイツブリが大きなアメリカザリガニを捕まえて、かなり苦労したあげくに、飲みこんだのを目撃しています。そこで、本の紹介が終わったあとでスマートフォンでそのときの写真も証拠として、その旨を研究者に言いに行きました。

さて、トラジメーノ湖の生態系についての話があったのは、マルコ・パレーティ(Marco Pareti)(写真左)の本、『Avventure a Borgo Gioioso』を紹介するためでした。本の題名は、『よろこび村の冒険』とでも訳せるでしょうか。gioiosoは「うれしい、上機嫌の」という意味の形容詞なのですが、「うれしい村」と訳してしまうと、Gioiosoが地名ではなく形容詞であると判断されかねないため、あえて「よろこび」と名詞を使って訳してみました。

このブログでもしばしば登場する、ウンブリア州の美しい湖、トラジメーノ湖(Lago Trasimeno)や、架空の村、よろこび村を舞台に、個性あふれる村の人々や、カンムリカイツブリやアメリカザリガニなど、湖に生息する生物などを主人公にした童話(favola)が、本には九つ収録されています。
表紙の絵がとてもかわいらしく、しかも、本の内容を端的に表しています。

この日、会場では、7つ目の童話、『Gamberello, Cecco e l zu' nipote e i pretini corridori』の朗読がありました。漁師二人が、「巨大なクジラ(balena)を捕獲した」と村人に知らせ、村じゅうが大喜び、大騒ぎする中、アメリカザリガニが……という童話なのですが、表現がユーモアに満ち、人がつい取りがちな行動を、巧みにおもしろおかしく描いています。朗読もとてもうまいので、楽しみながら聴きました。

トラジメーノ湖畔の管楽器奏者による演奏もあり、美しい音色を楽しみました。
九つの童話は、楽しんで読めるばかりではなく、トラジメーノ湖の歴史や漁業や刺繍など、湖畔や島の文化、生態系や環境問題など、子供も大人も学べる事柄が盛り込まれ、童話の最後に、そういう事項についての説明が、子供にも理解できるように、分かりやすく書かれています。

子供たちがこの本を読んで環境問題について学ぶという活動も、学校で行われているとのことで、作者のマルコ・パレーティが、そうして学んだ子供たちから、親が注意されたと、そういう報告も受けましたと語っていました。

この本は、ひっくり返すと、英語の題名と副題が書かれた表紙があり、この英語の表紙を開くと、英語で書かれた童話が、やはりイタリア語版同様に九つ並んでいます。つまり、イタリア語版と英語版が一冊になり、それぞれが独立した形で楽しめるようになっているのです。
朗読や対談を聞いて、興味を持ったわたしは、会場では2割引で買えるとも聞いていたため、15ユーロのこの本を12ユーロですぐに購入し、作者や朗読者のサインももらいました。
少しずつ読んでいたこの本を、ようやく今晩読み終えて、記事を書いています。単純に童話として楽しいと言うよりは、教育的意図が色濃く、学びがふんだんに盛り込まれているところが、少し気になるものの、最後まで楽しんで読むことができました。

紀元前217年に、古代ローマ軍がハンニバル率いるカルタゴ軍と戦って、大敗を喫したトラシメヌス湖畔の戦い(Battaglia del Lago Trasimeno)の舞台が、湖畔の村、トゥオーロであることなど(写真は、トゥオーロ ハンニバル博物館の両軍の陣形の模型)、トラジメーノ湖の歴史や文化については、知っているつもりでしたが、まだまだ知らないことや訪ねていないところが多いことが分かり、行ってみたい場所もできました。

童話を楽しみながら、トラジメーノ湖や自然、文化を愛する心を培うことができる、すてきな本だと思います。

本の紹介のあと、ウンブリア州の出版社が、自社の本を並べているのを見て回りました。興味深い本がいろいろあり、中にはたとえば、ペルージャ方言で書かれた『星の王子さま』までありました。イタリア語の題名は『Il piccolo principe』ですが、ペルージャ方言での題名は、『L principe cinino』となっています。
*追記(9月22日): UmbrialibriのFacebookの写真に、なんとわたしたちも登場していました。
Pubblicato da Umbrialibri su Lunedì 29 luglio 2019
会場では、他にも様々な出版社の本が展示・販売されていました。
Pubblicato da Umbrialibri su Lunedì 29 luglio 2019
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Interessante la presentazione del libro, "Avventure a Borgo Gioioso" di Marco Pareti.
Bello e istruttivo il libro, leggendo il quale ameranno e conosceranno ancora di più
il Lago Trasimeno, la natura, l'ambiente e la tradizione locale i bambini e gli adulti.
Umbrialibri in alta quota @ Villa Anita, Sigillo
Suoni Controvento 2019, festival nel Parco del Monte Cucco 27/7/2019
Presentazione del libro, "Avventure a Borgo Gioioso di Marco Pareti
Dialogo con l'autore Jessica Cardaioli
Letture di Mirco Revoyera
Musica dei Fiati del Trasimeno con Sara Chionne, Francesca diamanti e Miriam Schicchi
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参照リンク / Riferimenti web
- Umbria Libri - HOME
- amazon.it - Marco Pareti, "Avventure a Borgo Gioioso. Favola lacustre scritta per i grandi ma da leggere quando si è ancora bambini"
- amazon.it - Antoine de Saint-Exupéry (Autore), G. Orazi (Traduttore), "L principe cinico"
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トラジメーノ湖 / Lago Trasimeno
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トラジメ―ノ湖にまつわるお話で、湖畔や島の文化、生態系や環境問題まで学べる絵本は、素晴らしいと思います♡
何より、絵の色も素敵だし、挿絵も可愛らしくて、読みたい気になれますね(^-^)
学ぶということは、字がいっぱいの本からよりもこうした絵本からのが吸収しやすい?と思いました!
音楽演奏などもあり、楽しい本の祭典でよかったですね♡
クッコ山とここがつながるとは、思いもよりませんでした!
僕の住む地域に「深泥池」がありますが、そこにもやって来る鳥で、巣を造って子育てする様子も見れますし、結構貪欲で頭のサイズくらいの魚は食べちゃってるのを目撃したことあります。
ザリガニを捕食してるシーンは見たことないですが、アメリカザリガニも小さいのから大きいのまで様々ですから、外来種とは言え湖の生態系の枠の中で上手いことやってそうですね。
クッコ山は、以前登ったことはあるものの、高みまで楽に車で登れて、食事ができるところも複数あるため、特に夏は来る人が多いからと、この日までは夫があまり行きたくない山だったんです。それが、この本の祭典を機に山を歩いて、クッコ山の魅力に目覚め、以来何度も訪ねるようになりました♪
鳥が子育てをして、その様子が間近に見られるなんて、いいですね。アメリカザリガニは、在来の魚、テンチの卵を食べてしまうのだそうで、従来の湖の生物たちに悪影響がこれ以上出ないことを願っています。