イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

晩秋のラヴェルナの森に紅葉求めて

 11月9日土曜日、アッシジの聖フランチェスコ(San Francesco d'Assisi)が聖痕を受けたと言われる聖地、ラヴェルナ(La Verna)に、後世に建てられた修道院を訪ねると、

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Santuario della Verna, Chiusi della Verna (AR) 9/11/2019

境内の十字架のすぐ下に立つカエデ(acero)が紅葉していて、とてもきれいでした。

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 ラヴェルナの修道院は、こちらの切り立つ断崖の上に建っていて、冒頭の写真の十字架は、岩壁を下から見上げて撮影したこの写真では、右端に見える紅葉したカエデに隠れています。

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 大きな木の十字架は、この教会が建つ広場に立っています。教会の奥、山の高みに立つ木々は、もう葉を落とした裸の木も多いのですが、

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先の十字架のすぐ下方の岩壁には、まだ紅葉の美しい木がたくさんありました。

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 ラヴェルナの森を歩くとき、ふだんはラベッチャ(La Beccia)から、2枚目の写真に見える岩壁を取り囲むブナの森を通って、修道院を目指すコース(anello basso del Monte Penna)が多く、その次によく歩くのが、修道院からペンナ山の山頂へと登る周遊コース(anello alto del Monte Penna)です。

 そのどちらのコースも、つい最近歩いたばかりだからと、11月9日は、キウーシ・デッラ・ヴェルナ(Chiusi della Verna)の中心街のはずれに建つ国立公園の観光案内所前の駐車場に車を置いて、そこから修道院を目指す自然の小道(Sentiero Natura)を歩いて、山を登りました。上の写真は、出発地点近くに立っていた案内看板を撮影したもので、わたしたちの出発地点は、地図で①と記されている場所です。②まで進んだあと、わたしはそのまま⑩を目指して歩いたのですが、夫はいつもの断崖の周囲の森を歩きたいからと、③の方向へと向かいました。

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 国立公園の観光案内所の前では、何やら作業が行われている最中でした。出発地点に、こんなふうに妖精の小道(Sentiero delle Fate)と書いた看板が立っているのは、

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入り口付近のあちこちに、森で見つかった木を彫ってつくられた森の精たちが、潜んでいるからです。

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 トレッキングコースを歩いて行くと、激しい雨や風の日が多かったために、地面に積もる落ち葉も多いのですが、まだ紅葉が始まったばかりの木々もあります。

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 上の地図中②の分岐地点から、しばらく山を登ったところに、石の門と木の扉でできた趣ある森への入り口があります。

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 雨がたくさん降ったあとなので、この日もあちこちでキノコ(fungo、複数形 funghi)を見かけました。倒れてしまった木の切り株のおかげで、すくすく育つキノコたちに、自然と生命の不思議を思います。

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 どんより曇った空から、時々日の光が差して、黄葉したブナの葉が、金色に、オレンジ色に見えます。

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 博物館で、古代ギリシャ人やエトルリア人によるツタ(edera)の葉をあしらった装飾を見て、きれいだなと思って以来、緑のツタの葉が、ハートの形に見えたり、スペードの形に見えたりします。

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 岩壁の下を歩くコースに比べて、まだ若く細いブナの木が多いのですが、苔むした石や岩に風情があります。ツタの写真を撮るのに夢中になって歩いていたら、上へ登るための道しるべを見過ごしたように思って、しばらくこの辺りを行ったり来たりしました。

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 探していた道しるべが見つからなかったので、小道をそのまま前方に進むと、先の地図に⑩と記された、ラヴェルナ修道院の境内へと続く道路との合流地点に、到着することができました。わたしは、数年前に暴風で木々がなぎ倒されたことがあったため、そのときにトレッキングコースが変更になったのかと思ったのですが、夫は以前からあの道だったよと言います。

 いつもの断崖の下の道を、わたしがこの日避けたのは、いつもの周遊コースは、雨が降るとぬかるみや泥だらけになって、ひどく歩きにくいからでもありました。秋が深まり冬へと近づいていく森を、紅葉や苔、ツタの緑を愛でながら歩くことができて、うれしかったです。 

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Verso il Santuario della Verna attraverso il Sentiero Natura

tra gnomi realizzati con legni raccolti nelle Foreste Casentinesi,
calpestando le foglie cadute bagnate dalle piogge.
Si sta avvicinando l'inverno ma rosse le foglie di alcuni aceri
sotto la grande croce della Verna, sopra la parete di rocce.
Chiusi della Verna (AR) 9/11/2019
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- 紅葉にキノコにょきにょき秋の森、ラヴェルナ / Colori d'autunno nel bosco della Verna (20/10/2019)
- 秋色の光注ぐ山を頂へ、ラヴェルナ ペンナ山 / Dal Santuario della Verna verso la cima del Monte Penna (27/10/2019)
- 秋色の森の緑のハートと古代ギリシャ・エトルリア芸術 / Foglie di edera, bei cuoricini verdi nel bosco d'autunno (9/11/2019)
- 秋のラヴェルナ / Anello Basso del Monte Penna in autunno (14/10/2012)
↑ anello bassoとanello altoのトレッキング・コースの地図あり。ラベッチャからラヴェルナ修道院へと歩く石畳の参詣路や修道院内の土産物屋の記事へのリンクもあります。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:秋と言えば紅葉!みんなに見せたい秋の風景ショット2019
Commented by ciao66 at 2019-11-19 17:40
妖精の小道とは素敵なネーミングですね♪
歩いていると森の精たちに出会えるとは楽しそう!
落ち葉で出来た「敷紅葉」が美しく、落ち葉とツタの葉っぱの対比がまた綺麗!泥だらけにもならずに気持ちのいい散歩道を楽しめて良かったですね。
Commented by nonkonogoro at 2019-11-19 22:51
深まりゆく秋の風景画像
楽しませて頂きました。
日本には妖精は いないですね~
妖怪はいるけれど。。。
Commented by tawrajyennu at 2019-11-20 09:44
妖精の小路・・・・と聞いただけで、何だかワクワクしますね。

naokoさんが歩いた道を見ていると、本当にどこかに妖精が潜んでいそうです。

落ち葉や、岩についた苔・・・も素敵ですね。
Commented by hanashigai at 2019-11-20 22:24
私の暮らす地域も紅葉のピークを迎えつつあり、今日は両親を連れて紅葉狩りをしてきました。
と言っても、目指したのは片道55キロ程を走って到達する山のピークと、更に30キロを走って降りて到達する海沿いの町で、たっぷり9時間近くも運転手をして、久しぶりに車の運転で疲れてます(笑)
記事でご紹介されているようなブナの原生林が残る、素晴らしい眺望の県道(旧林道)を、紅と黄の光りに包まれながら走ったのでとても満足したのですが、なおこさんご夫妻のように私もレッキングをしなければなぁとも思わせられました。
Commented by milletti_naoko at 2019-11-21 02:02
ciao66さん、国立公園の森で地面に見つかった木材を使って、木が木の精へと生まれ変わり、森を歩く人を楽しませてくれる、すてきな芸術だと思います。前回記事にした際に、作られた彫刻家の方に連絡したら喜んでくださったのですが、せっかくつくった木の精たちの手入れや保護を町が怠っていて、どんどん傷んでしまうのが残念だとおっしゃっていて、今回、木の精に会えてうれしいと同時に、もっとせっかくの試みや芸術を大切にしてほしいと感じました。

落ち葉が泥から足を守ってくれて、紅葉を楽しむことができて、本当によかったです♪
Commented by milletti_naoko at 2019-11-21 02:06
のんさん、1週間で、そして同じ場所でも標高が少し違うだけで、秋や紅葉の進み具合が違うのが興味深いです。

日本にはなるほどいるのは妖怪ですか。妖精には会ってみたいけれど、妖怪はちょっと会うのは遠慮したいですね。妖怪人間ベムは昔学校の夏休みに好きで見ていたのを、ぼんやり覚えているのですが。そう言えば、みんな人間になれたのでしょうか。
Commented by milletti_naoko at 2019-11-21 02:09
タワラジェンヌさん、ありがとうございます。sentieroというイタリア語は、トレッキングや登山の地図や案内看板では、トレッキングコースという意味で使われるのですが、木彫りの木の精達がいる道を、トレッキングコースと訳すのは、雰囲気的にも、散歩道を考えた人の意図からしても違うだろうと考えて、辞書の語義を参考に、赤毛のアンの歓喜の小径も思い浮かべながら、小道と訳してみました。

雨に濡れた落ち葉の積もる晩秋の森も、独特の風情がありました♪
Commented by milletti_naoko at 2019-11-21 02:17
放し飼いさんのご両親も、それはさぞかし喜ばれていたことでしょう。それにしても、走行距離が100km未満なのに運転に9時間近くかかるとは、よっぽどの渋滞か悪路か、片側通行の多い道だったのでしょうね。お疲れさまでした。ペルージャのうちからラヴェルナまでは、片道約100kmですが、それでも片道が車で約1時間半です。

歩くことでよりゆっくりと愛でられる風景、歩いてだけしか見られない景色もありますので、いつかぜひ歩いて紅葉をご覧くださいね。
Commented at 2019-11-22 06:38
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2019-11-23 00:30
鍵コメントの方へ

なるほど、確かに森の精には、そういう楽しい遊びが可能でしょうね。ふと不思議の国のアリスのトランプたちが頭に浮かびました♪
by milletti_naoko | 2019-11-19 06:52 | Toscana | Comments(10)