2019年 11月 25日
女性が神であったとき 写真 アントネッラ・ピゼッリ 俳句・伊訳 石井直子〜イタリア 女性写真展から
アントネッラ・ピゼッリの写真の主題は、女性に内在する神性です。かつて女性の力が、自然の生命の周期と密接な関わりを持つことから神性を持つものとみなされていたことを踏まえて、この作品では、モデルの女性たちを、宇宙を構成する五つの要素、土、水、空気、火、木を体現するトラジメーノ湖の精に見立てて、命を生み出す自然の力と一体となり、山や湖沼、森、天空などに活力を与える存在として、表現しています。
nasce, cresce e si espande la vita
nell’acqua, nelle mie mani
si irradia nel cielo, sull’acqua,
mi bacia
la luce del sole
via il vento con le nuvole
che dissetino il mondo
tramonterà il sole, si trasformerà tutto,
ma io sarò ferma qui come roccia
nell’alto e nel profondo cresce l’albero
e così la mia magia
初めてアントネッラ・ピゼッリに出会って、写真作品の構想を聞いたときに、「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。」に始まる女性解放運動の先駆者、平塚らいちょうの言葉とその精神が重なりました。心から共鳴し、アントネッラから受け取った写真作品の背景にある数ページにわたる探求や思いを読み返して、作品に込めた思いを、俳句を通して表現できるようにと、考えをめぐらせました。時空を超えた主題であるため、また十七字という限られた字数の中で、できるだけ写真の心を伝えるためにも、無季俳句とすることを選びました。
11月25日は、女性に対する暴力撤廃の国際デー(Giornata internazionale contro la violenza sulle donne)です。イタリアでは特に、別れた恋人や夫が女性の命を奪うという事件が多発し、また残念ながら、イタリアでも日本でも、そして世界中で、様々な形で今も、多くの女性が男性の暴力に苦しみ、最悪の場合は死に至るという事態が起こっています。
わたしたち女性自身が、らいちょうの言うように、太陽であったかつての自己を取り戻すこと、アントネッラ・ピゼッリが作品を通して訴えるように、わたしたち女性の中にある神性に誇りを持つことが、まずは大切だと思います。けれども、同時に、「女性は男性の言うことに従うもの、弱いもの、力のない存在、容貌や体の美しさや気立てのよさだけが女性の魅力である」といった歪んだ女性観が、男性優位の社会の中で培われ、マスメディアでも、男性に都合のいい女性像が伝えられがちである状況を変えていくことが、男女差別や女性への暴力のない、男性も女性も生き生きと幸せに生きていける世の中を、世界を築いていくためには欠かせません。
そのためにも、女性がとらえる女性像、女性の優しさ・力強さなどの魅力を、女性写真家が、女性を撮影した写真と、その写真にやはり女性が詩を添えた女性写真展を通して、特に、若い世代に向けて、マスメディアが伝えがちな、一般的な風潮から浅はかにも抱きがちな歪んだ女性像・女性観とは違う女性の姿を発信し、女性に対する暴力をなくし、よりよい世の中にしていこうという写真展、Donna vede Donnaの根底にある精神がすばらしいと心から賛同し、参加できたことを、光栄に思っています。
アントネッラとわたしが二人で写っている画像ということで、すでに先日の記事でもご紹介しているビデオ映像を、再びここに埋め込んでおきます。今後また、会う機会がある中で、もっとよい写真を撮ってもらえたら、後日差し替えるつもりでいます。
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Ecco qui nell'articolo "Quando le donne erano Dee", le opere di Antonella Piselli, tutte le cinque fotografie e i miei haiku composti per esse per la mostra, Donna vede Donna.
Nell'occasione della Giornata internazionale contro la violenza sulle donne, trovo ancora più importanti le immagini della Donna Dea fotografate da Antonella Piselli e i loro messaggi nella mostra, Donna vede Donna, mirata a 'descrivere, con foto e versi, le varie sfaccettature femminili e di mettere in risalto la dolcezza, la bellezza e la centralità sociale delle donne, aborrendo da ogni forma di violenza' (dal pannello illustrativo della mostra).
QUANDO LE DONNE ERANO DEE
Fotografie di Antonella Piselli Haiku e traduzione Naoko Ishii
"Il tema interpreta il Divino insito nella Donna.
L'Energia femminile, in passato intesa come Dea, viene legata ai cicli biologici delle fasi della Natura.
Le modelle, Angela e Anthea, nel ruolo di Ninfe del Trasimeno ed elementi primigeni di Terra, Acqua, Aria, Fuoco e Legno, hanno espresso l'essenza del Principio Femminile Universale.
Simboli e archetipi, esseri divini di sesso femminile, fusi e connessi alla forza vitale e procreativi della Natura, che animavano con la loro presenza i monti, le acque, i boschi, gli alberi e l'etere.
Modelle: Angela Morvillo e Anthea Baldoncini
Luoghi: Tuoro s/T - Lago Trasimeno" (dal pannello illustrativo della mostra)
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素晴らしい写真と俳句です。
写真に命を吹き込むような命の俳句流石ですね。
イタリアに俳句人気が一気に広がりそうな気がします
祖国の俳句愛好家として嬉しいです。
女性の凛とした姿が美しく、簡潔なフレーズの詩がぴったりそれに合っているように思われました。
(リズムが日本語よりはイタリア語に近そうな英語に訳してみて、何となくそんな感じが・・・)
写真と込められた思いがすばらしいので、どうしたら俳句の短い言葉の中で表現できるか、自分なりに必死で考えました。「命を吹き込む」女性、かつて神であった女性がある意味、アントネッラの写真の主題だと思うので、そんなふうにおほめいただいて、ありがたいです。
イタリアでも俳句人気はあって、数年前にトスカーナで行われた催しで詠まれていましたし、わたしもダンテ・アリギエーリ協会という世界にイタリア語・イタリア文化を普及する目的の団体に請われて、芭蕉や蕪村、一茶の俳諧や俳句の歴史を紹介したことがあり、そのときに、いろいろな俳句のイタリア語訳が出ているのに驚きました。
写真が美しく俳句や季語、季節の行事や自然などを回想と共に語られる金太郎さんのブログ、特にこの展覧会で俳句を担当するようになってからは、以前にも増して興味深く拝読しています。
写真も詩も、改めてゆっくりとしっかりと見てくださって、ありがとうございます♪