イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

古の窯焼き自慢のパネットーネ、チェルヴェーテリ

 18世紀の巨大な窯が、今も現役で、パン(pane)やビスケット(biscotto)、クリスマスが近いこの時期はさらにパネットーネ(panettone)を焼き続け、とてもおいしいと評判で、ミラノなど遠方からも注文があるというパン屋さん(forno)が、ラッツィオ州ローマ県の町にあります。

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Antico Forno a legna Piergentili, Cerveteri (RM) 5/12/2019

 仕事に情熱と誇りを持つ職人さんと奥さんが、午前中の営業時間が終わったというのに、いつまでも親切に夫の質問に答えたり、自ら店や家族、地域の歴史を、あれこれと話したりしてくれました。

 奥さんが手にするパネットーネ(panettone)が、この時期の店の自慢で、遠方からも注文が次々にあるそうです。環境に優しくと、歴史ある窯にもふさわしい落ち着いた紙の包装を、今はあえて選んでいるそうです。18世紀の巨大な窯は、内部があまりにも広いので、右上に見える柄のとても長いスコップを使って、作業する必要があるとのことです。

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 店の入り口の上に、大きくAntico Forno a legnaと書かれています。「薪をくべて焼く歴史ある窯」とあるけれども、そんなに窯が古いんですかという夫の問いに答えて、パン職人さんが、窯の内部を見せて、あれこれと説明してくれたのだそうです。

 窯は18世紀のものですが、一方、ここを職人さんの祖父母が買い取って、パン屋を開業したのは、1937年です。

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Panettone dell'Antico Forno di Cerveteri a casa di Migiana, Perugia 7/12/2019

 粉物にはうるさいイタリア人の夫や友人、義家族の皆に、この店のパネットーネは大好評で、我先にと手が伸びていました。わたしたちは干しブドウのみのパネットーネを購入したのですが、他にも干しブドウと砂糖漬けの果物入り、チョコレート入りのパネットーネがあり、いずれも19ユーロです。ごく素朴なパネットーネが19ユーロとは高いなあと、物価が比較的安いウンブリアに住むわたしたちは思ったのですが、リミニの友人たちが、こんなにおいしい職人の作ったパネットーネなら、32ユーロで売っている店さえあるのだから、決して高くはないと言っていました。

 店で利用している小麦粉が、精白されたものであることだけが(0粉だったか00粉だったかうろ覚えなのですが)、少し残念です。他にもパンやビスケットをあれこれ買い込んだのですが、どれもおいしかったです。

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Chiesa di Sant'Antonio Abate, Cerveteri (RM) 5/12/2019

 店を去ろうとしたとき、奥さんが親切に、すぐ近くにあるサンタントーニオ・アバーテ教会(Chiesa di Sant'Antonio Abate)を鍵で開けて、内部を案内してくれました。

 地区の人々が費用を出し合って、つい最近、改築が終わったところなのだそうです。フレスコ画が細部までていねいに描かれ、独創的で色づかいがきれいです。

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 祭壇の後ろに書かれているフレスコ画も独特で、ダンテの『神曲』の天国篇を説明するときに、大学の先生が利用していた絵を思い出しました。

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 はにかみながらも前をじっと見据えているように見えるこの聖母マリアも、その端正で美しい表情が、印象に残りました。

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Museo Nazionale Archeologico Cerite, Cerveteri (RM)

 チェルヴェーテリ(Cerveteri)は、主要な古代エトルリア墳墓遺跡と考古学博物館がある町です。温泉宿に一泊したあと、比較的近くにあったチェルヴェーテリの考古学博物館を訪ね、そのあと町を散策していたら、このパン屋さんにめぐり合うことができました。

Antico Forno a legna Piergentili
Via dei Bastioni, 9 - 00052 Cerveteri (RM)
Tel. : 06 9955 1926
FB : Facebook, Antico Forno a legna Piergentili, Cerveteri

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Ottimo il panettone dell'Antico Forno a legna Piergentili

cotto al forno del Settecento con passione e dedizione.
Bella la Chiesa di Sant'Antonio Abate, restaurata di recente.
Nel paese di Cerveteri con necropoli etrusca e museo archeologico importanti,
abbiamo trovato anche questo forno speciale grazie al fiuto di mio marito.
Cerveteri (RM) 5/12/2019
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:食べたいものがいっぱい!グルメの季節、冬を満喫しよう!
Commented by 224sora at 2019-12-17 15:12
美味しそうなパネトーネ♪
パネットーネと発音するんですね!
本場のお味はどんなのかなぁ!?
日本のパネトーネしか食べたことがないけど
シュトーレンより好きです♪
Commented by non at 2019-12-18 05:10 x
日本でもパネットーネが売られているのですが
他のパンより少し高いように思います。
古い窯で焼かれたパネットーネ 食べてみたいです。
Commented by milletti_naoko at 2019-12-18 23:06
soraさん、panettoneと、中間にtが二つあるので、標準イタリア語では、二重子音はきっちり発音するため、「パネットーネ」となるのですが、北イタリアでは、方言でも地方イタリア語でも、二重子音も単子音として発音する傾向があるため、ミラノなど、北イタリアに住まれている方はパネトーネと耳にするので、パネトーネと書かれるのではないかと思います。

シュトーレンに比べると、素材はごく素朴で、その分生地の質や発酵が味わいにモノを言うのだと思います。今は日本でも、美味しいパネットーネが食べられるのでしょうね。
Commented by milletti_naoko at 2019-12-18 23:12
のんさん、今は日本でもパネットーネが売られているんですね。イタリアでは、スーパーで売られる工場生産のパネットーネは客寄せにかなり安い値段がついている場合こそ多いものの、職人さんが作ったパネットーネは、職人さんが作ったパンよりも、ずっとずっと高価です。年に一度きりのとっておきの機会で、クリスマスの贈り物やお土産にと購入されるためでもあるかと思います。
Commented by tawrajyennu at 2019-12-22 11:09
こんにちは♪

職人さんが丁寧に作られ、18世紀に作られた窯で焼かれるパネットーネ、美味しいのでしょうね。
日本で食べたパネットーネとは、違うのかしら?
Commented by milletti_naoko at 2019-12-22 23:11
タワラジェンヌさん、こんにちは♪ パネットーネも、生地に使う材料や分量、発酵のさせ方などがそれぞれ異なるので、イタリアで作られるパネットーネでも千差万別なんですよ。
by milletti_naoko | 2019-12-17 08:21 | Lazio | Comments(6)