イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第91号「初プレゼーペと聖フランチェスコ、フィレンツェ ブロガー招待」  

1.初プレゼーペと聖フランチェスコ ~ 伝記を読む

 クリスマスが近づき、イタリアでは町や家、教会が、クリスマスツリーやイルミネーション、そして、プレゼーペで飾られています。イタリアでは、クリスマスに、イエス・キリストの生誕場面を再現した模型を飾る習慣があり、この模型をpresepeあるいはpresepioと呼ぶことは、これまでにも何度がお話しました。クリスマスにキリスト生誕の場面を再現しようと初めて思いついたのは聖フランチェスコで、最初のプレゼーペは、1223年のクリスマスに飾られました。

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アッシジ 聖フランチェスコ大聖堂のプレゼーペ 2019/1/5


 今回は、聖フランチェスコの伝記から、聖人が世界最初のプレゼーペを飾ろうと思いついた場面を読んでみましょう。

“mi piacerebbe poter celebrare il Natale del Signore in una forma del tutto speciale. Desidero cioè rievocare in forma viva e reale le sofferenze che dovette sopportare il Signore, per amore nostro. Così, dunque, nella grotta più grande di quella roccia - e Franceso gli segnalò il luogo - prepariamo una vera stalla, uguale nello spazio ad una stalla normale dove mangiano le mucche e i cavalli. Conduci anche un bue ed un asino, affinché possiamo avere l'impressione esatta di come successero i fatti nella grotta di Betlemme. Annuncia quindi questo avvenimento a tutti gli abitanti di Greccio e invitali solennemente ad essere presenti in quella notte felice.” 

(Dal libro, "Nostro fratello di Assisi. Storia di una esperienza di Dio" di Ignacio Larrañaga )

 次の問いを読み、この問いに応えられるように、文を読み直してみてください。

 1 聖フランチェスコが、キリスト生誕の場面を再現しようとするのは、人々に何を思い起こさせるためですか。
 2 聖人がプレゼーペを設置しようと考えたのは、どんな場所ですか。
 3 場面を再現するために連れて来るように言っている動物は何ですか。

 いくつかの言葉については、意味を付しておきますので、読む際の参考にしてください。

rievocare 思い出させる、記念する sofferenza 苦しみ grotta 洞窟 sopportare 耐える、我慢する stalla 家畜小屋 mucca 乳牛、雌牛 cavallo 馬 bue 牛 asino ロバ affinché +接続法 ~するように、~するために avvenimento できごと、事件、行事 abitante 住民 solennemente 厳粛に、荘重に presente 居合わせる、出席する

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アッシジ サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ教会、世界のプレゼーペ展 2015/1/4

 答えが大体お分かりになりましたか? 1の答えは2文目に書かれています。

"Desidero cioè rievocare in forma viva e reale le sofferenze che dovette sopportare il Signore, per amore nostro. "

とあって、聖人は「つまり、私たちへの愛のために、主が耐えなければならなかった苦しみを、鮮やかに現実的なものとして、思い起こさせたい(記念したい)んだ。」と言っています。

 ですから、答えは、「(凍りつくような寒い冬の夜に、貧しい家畜小屋で生まれたキリスト、)主が、私たちへの愛のために耐えなければならなかった苦しみを、鮮やかに現実的なものとして思い起こさせるため。」です。

2 プレゼーペを設置しようと考えた場所については、3文目に書かれています。nella grotta più grande di quella roccia とありますね。つまり、「(あの)岩(岩壁)の一番大きい洞窟の中に」で、これが答えになります。

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グレッチョ修道院、世界初のプレゼーペが設置された洞窟 2013/2/16

3については、4文目に、Conduci anche un bue ed un asino、つまり「牛とロバを(1頭ずつ)連れてきなさい」とありますから、答えは、「牛とロバ」です。

 皆さん、おできになりましたか?

 では、全文を訳してみますね。

「(前略)私は、主の生誕を記念するクリスマスを、打って変わった独特の方法で祝ってみたい。つまり、私たちへの愛のために、主が耐えなければならなかった苦しみを、鮮やかに現実的なものとして、思い起こさせたいんだ。そういうわけで、だから、あの岩壁の最も大きな洞窟の中に − フランチェスコは場所を彼に示して言った − 本物の家畜小屋を準備しよう。雌牛や馬が食べる、ごく当たり前の家畜小屋と同じものを。ベツレヘムの洞窟の中でできごとが起こったのと、そっくり同じような印象が持てるように、牛とロバも1頭ずつ連れて来なさい。そうして、この特別な祝いをグレッチョの住民すべてに知らせ、このクリスマスのうれしい夜に居合わせるように、厳粛に招待しなさい。」(石井訳)

 ここまで読んでお分かりのように、聖フランチェスコが初めて考えて創り上げたプレゼーペは、本当の動物を使った、実物大のものでした。今でもイタリア各地では、こうして等身大のプレゼーペを準備する町があります。こうしてキリスト生誕の場面を再現しようという伝統は、これからも続いていくことでしょう。

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アッシジ サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ教会、グレッチョでの最初のプレゼーペ 2011/12/25

 最後に、今回の文の中から、ふだん話をするときに、聞くときに鍵になる言葉、役立つ言葉を拾い出してみましょう。

"mi piacerebbe poter celebrare il Natale del Signore in una forma del tutto speciale. Desidero cioè rievocare in forma viva e reale le sofferenze che dovette sopportare il Signore, per amore nostro. Così, dunque, nella grotta più grande di quella roccia - e Franceso gli segnalò il luogo - prepariamo una vera stalla, uguale nello spazio ad una stalla normale dove mangiano le mucche e i cavalli. Conduci anche un bue ed un asino, affinché possiamo avere l'impressione esatta di come successero i fatti nella grotta di Betlemme. Annuncia quindi questo avvenimento a tutti gli abitanti di Greccio e invitali solennemente ad essere presenti in quella notte felice. "

 日本の文化では、自分が「こうしたい」、「これがほしい」とはっきり口にするのがはばかられがちなのですが、イタリア語でも、何かを自分がしたいときに、volere「~したい、~がほしい」の直説法現在を使って、"Voglio mangiare la pizza.", "Voglio il tè."と言うと、「他の人がどうしたいのであろうと、状況がどうであろうと、そんなことは構わない。自分はとにかく、ピザが食べたいんだ、お茶がほしいんだ。」というニュアンスがあり、かなり身勝手に聞こえます。こういうときは、同じ動詞のvolereないしはmi piaceの条件法現在を使って、"Vorrei mangiare la pizza.", "Mi piacerebbe prendere il tè."と言うと、「できれば、もし皆もよいようであれば、ピザが食べたいのですが、お茶が飲みたいのですが」と、控えめに、相手の気持ちにも配慮を示した形で、自分の希望を伝えることができます。

 論理的に話を進め、文を書くには、文と文の成分の関係をはっきりさせる副詞や、文と文の関係を明らかに示す接続詞が役に立ちます。自分がすでに述べたことを言い換えたいときに使う副詞、 cioè「つまり、すなわち」や、接続詞、dunquequindi 「だから、それで」という言葉は、便利なので、必要なときに、きちんと使えるように覚えておきましょう。

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グレッチョ修道院 2013/2/16

 1223年、今から790年前に、聖フランチェスコの意向で、初めてプレゼーペが飾られたグレッチョのこの岩壁には、今はこうして修道院が建っていて、初プレゼーペの洞窟や、聖人たちが過ごした部屋などを訪ねられるようになっています。

*イタリアのクリスマスの過ごし方やイタリア語のクリスマスの歌、クリスマスカードの書き方に興味のある方は、次のメルマガに関連記事へのリンク一覧があります。参考にしてください。
(ヤフーのサービス終了のために、現在インターネット上から消失したバックナンバーを、このブログに移動中です。以下のバックナンバーについては、移動でき次第、リンクを追加するつもりでいます。)

- 第60号 「12月のイタリア、外国語学習成功の要因、スカルペッタ」

*昨年の次の記事では別のクリスマスの歌も紹介しています。

- 第83号 「クリスマスと歌、『Bianco Natale』」 

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アッシジ サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ教会、世界のプレゼーペ展 2011/12/25

*イタリアで暮らされていて、お子さんやご家族に、あるいは日本で友人のイタリア人に、日本語の勉強を兼ねて、あるいは一緒に楽しむために、「きよしこのよる」を教えたいという方は、下の記事に、ひらがなの歌詞とイタリア語訳、イタリア語による日本語の言葉の解説、そして、歌の映像へのリンクがありますから、ぜひ活用してみてください。

- きよしこのよる, “Astro del Ciel” in giapponese  



 2.フィレンツェ大聖堂クーポラ登り、わたしとイタリア語ほか

 10月にフィレンツェにフォトブロガーとして招待された際の様子は、前号でもお知らせしましたが、そのとき大聖堂で、一般には年に1日しか訪ねることができない屋上テラスを歩き、さらにクーポラにも登ることができました。 

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フィレンツェ大聖堂のテラスを歩く 2013/10/19

 招待してくれたOpera del Duomoやこのとき一緒だった他のブロガーにも理解できるように、すばらしいフィレンツェの眺めをとらえた写真の他に、イタリア語でも説明を添えてあります。興味のある方はぜひご覧ください。

ドゥオーモのテラスを歩く

大聖堂クーポラ登り    

 今年はペルージャではオリーブが豊作のところが多く、我が家でも約1か月と長期間にわたって収穫をしました。オリーブ収穫やミケランジェロが生まれたカプレーセの村の栗祭り、最近見たいい映画、『マフィアは夏しか殺さない』など、最近も、イタリアの旅や文化に関するブログ記事を多く書いています。

 12月は、ブロガーとして、昨年のエミーリア地震で大きな被害を受けたピエーヴェ・ディ・チェントの村にも招待され、クーポラが崩れ落ちたままの教会のほかにも、楽器作りの工房など、興味深い場所を訪ねることができました。

オリーブ収穫と栗のジェラート   

映画、『マフィアは夏しか殺さない』

ブロガーと被災地の宝たち   

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エミリア地震で被災した教会 2013/12/8


 このメルマガを刊行し始めて、まもなく5年になります。おかげさまで数か月前に、読者数が600人を超えました。個人発行で、広告費用を払うわけではないメルマガとしては、かなり健闘しているのではないかと思います。わたしが愛媛県の地方で、イタリア語やイタリア文化の情報を得るのに苦労していた10数年前に比べ、今はイタリア在住でブログを書く方も多ければ、イタリアのマスメディアがインターネット上で発表する情報も気軽に見ることができるようになったのですが、それでも、イタリア語を勉強しよう、イタリアの文化について知ろうと、さまざまな理由でご愛読くださっている皆さんには、心から感謝しています。

 そもそもこのメールマガジンを発行しようと考えた理由や、今後、こんなことを書いていきたいということについて、ブログの記事に詳しく書いてみました。また、イタリアに語学留学しようと考えている方の参考になればと、11年前に、わたしが半年学んだマルケ州の私立語学学校での授業などの様子についても、紹介しています。興味のある方は、ぜひお読みください。

祝読者600人達成         

わたしとイタリア語、思い出の学校2 

 冬本番が近づき、クリスマスに年末年始と、うれしいけれども慌しい日々が続きます。我が家ではようやく昨日クリスマスツリーの飾りつけを終え、どたんばなのですが、今年はプレゼーペを一工夫できないかと考えているところです。フランス語は最近すっかり怠け気味で、これではいけないと思うことしきりです。

 皆さん、どうかすてきなクリスマス、そして新年をお迎えくださいね。
 
*2019年12月21日 追記: クリスマスが近いので、クリスマスゆかりのバックナンバーに、新たに写真を添え、投稿します。ヤフージオシティーズのサービス終了のため、インターネット上からなくなったイタリア語学習メルマガのバックナンバーを、順に第17号までブログに転載していたのですが、この時期は、クリスマスゆかりの記事を含む業を中心に、このブログ上に掲載していきます。ご了承ください。ブログでのバックナンバーの掲載については、詳しくは第119号の二つ目の記事をご覧ください。

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2013-12-24 07:03 | Lingua Italiana | Comments(0)