2020年 01月 15日
たそがれゆく世界静かに映す湖、トラジメーノ湖

湖畔に着いて、散歩し始めてまもなく夕日が地平線に近づいたので、立ち止まって、沈む夕日を見送りました。金色の光を放つ太陽が湖面に映り、卵の双子の黄身のようです。右手に見える島は、マッジョーレ島(Isola Maggiore)です。

日が沈むのを見届けてから、岸辺を右手へ、北西へと歩いて行きます。5時過ぎには、まだ空が明るいので、葉を落とした裸の木々や、緑の山、岸辺の石が、揺れる水面に本来の色を保ったまま、映っています。

後ろをふり返ると、枝を広げ、体全体を動かして踊るように見える木々が、湖面でも踊っています。
写真展、Donna vede Donna「女が見る女」で知り合った女性写真家、アントネッラ・ピゼッリと、その写真仲間にたまたま出会って、おしゃべりを始めたのは、この頃ではなかったかと思います。

南西の空は、地平線近くが赤みを帯び、マッジョーレ島とわたしたちが歩く前方に見える岬が、水面に影を落とし始めました。

空と湖の色が、刻一刻と移り変わっていきます。わずかに波立つ水面に、木々の影が墨絵のように映っています。

空が暗くなったので、二人にあいさつをして、夫と二人で、岸辺を元来た方へと引き返します。
途中、岸が少し突き出しているので、島行きの船の発着所や切符売り場のある桟橋と、その明かりがよく見えるところがありました。南東の空は、もうたそがれ色をしています。

まだ茜色が残る南西の空と湖の間を、船がチェトーナ山(Monte Cetona)の前を通って進んで行きます。

一部、遊歩道が岸から若干離れているところがあります。歩いていたら、地平線近くの空と湖が、深い紅の色になったので、草原の上を岸辺へと歩いて、撮影しました。
船が通ったあとに波が立ち、湖面に赤と青の縞模様が描かれています。この写真では、先の写真のチェットーナ山の右手にそびえるアミアータ山(Monte Amiata)が左に、マッジョーレ島が右に写っています。湖に立てられた棒の部分を拡大すると、

船が立てた波のために棒の影が揺れて映り、その傍らに鳥がいるのが見えるのですが、視力のいい夫によると、この鳥は鵜(cormorano)だそうです。

南東の空の青が深くなり、港に近づくと、街灯の明かりやホテルなどの建物が見えてきました。着いたときには、人波の間をすり抜けて歩かなければいけなかったのですが、この頃は、まだ散歩する人はいるものの、ゆったりと歩くことができるようになっていました。

右前方に、島行きの船の発着場がある桟橋が見えてきました。ここまで来ると、岸辺には、ジェラートなどの食べ物や飲み物を売る店が並んでいます。

チェトーナ山とアミアータ山が仲よく並ぶ南西の空は、まだ地平線近くが茜色を帯びています。桟橋や上を歩く人の影が、湖面にも映っています。

アミアータ山の左の裾野の上空には、金星(Venere)が白くきらめいています。
島行きの船が出る桟橋まで歩いて、湖の水位を確認し、さらに向こうまで歩いてみたいと、わたしは思っていたのですが、桟橋にまだかなり多くの人がいたからでしょう、夫が今日はもう帰ろうと言うので、湖を後にして、駐車場に向かいました。
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Due soli d'oro nel cielo e sul Lago Trasimeno,
sembrano tuorlo gemello dell'uovo.
Dopo il tramonto si trasformano i colori del cielo.
I suoi colori, alberi spogli, un palo con un cormorano,
tutto viene riflesso sull'acqua del lago.
Passignano sul Trasimeno (PG) 12/1/2020
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被写体の配置がとても良いですね!
トラジメー湖、今日の夕焼けの表情が嫋やかで冬らしい色がよく出ていて素晴らしいです。堪能しました。
世界的に有名な雑誌が、世界で最も美しい夕焼けが見られる七つの場所として選んだのは、やはりトラジメーノ湖畔にあるサン・フェリチャーノなのですが、少なくとも冬の間は、パッシンニャーノからの夕景もすばらしいと思いました。春が近づいて、日が西に沈み始めると、北の湖畔にあるパッシンニャーノからは、夕日が湖ではなく大地の向こうに沈んでしまうのに対して、東の湖畔にあるサン・フェリチャーノからは、年中湖の向こうに沈む夕日が愛でられるのです。
一昨日の記事と同様、1月12日日曜に撮影した写真なのですが、おとといの写真は鳥、今日の写真は水鏡に焦点を当てて選んでいます。
日本の美しい山や湖、朝焼けや水鏡を数多く撮影されているtoshiさんに、そんなにほめていただけて光栄です。
たそがれの青が美しいことと共に、同じ町の湖畔でも、場所によって自然や人為的風景の比がかなり異なるのもおもしろいなと思いました。