イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ありがとう さようなら?

 2003年12月に初めて出会ってからしばらくして、夫とまずは友人としてつきあい始めた頃のこと、何かがきっかけで、「ペルージャでは鳥の鳴き声を聞いたことがない」と言うわたしに、「じゃあぼくが、鳥の鳴くのが聞こえるところに連れて行ってあげるよ。」と、夫が言ったことがあります。

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Monte Tezio, Perugia 1/12/2019

 以来、イタリア各地の様々な美しい風景を、夫のルノー カングーで訪ねてきたのですが、先週土曜日、2月29日に、ようやくカングーに代わる新しい車を決めて、月曜に頭金を払いました。改築費用がかさんで大変なので、いっしょにしばしば乗ることになるわたしも、自分から申し出て、頭金を一部負担しました。

 緑のカングーを初めて見たときは、ひどく驚いたのですが、農作業に必要な道具などを運ぶため、また田舎道を走るため、夫はできるだけ車高が高く、草刈り機などが楽に運べて、悪路に強いことを、昔から、車を選ぶための重要な点として考えているようです。

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 カングーが写っていて、しかも絵としてよさそうな写真は、探してもなかなか見つかりません。今回採用した写真は、昨年12月1日に、ミジャーナの改築中の家に、友人たちを迎える準備をしに行ったときに撮影したものです。晩秋で、紅葉がきれいな上に、

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驚いたことに、バラの花も咲いていました。

 昨日は、ミジャーナに作業をしに出かけた夫が、このカングーでミジャーナに行くのもこれが最後かと、とても寂しそう、残念そうに言っていました。夫がカングーを新車で購入したのは2002年10月だそうで、不思議なことに、わたしが半年学んだマルケ州の私立語学学校から、ペルージャ外国人大学で学ぶために、ペルージャに来たのも、同じ2002年の9月下旬でした。

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 18年間、約40万キロを走り、一度はエンジンも交換し、何度か追突されたこともある夫の車は、最近では高速道路で坂道を走っていると、エンジンが止まってしまうこともあり、危険も感じていました。電気系統などにもこれまで何かと問題があったのですが、夫はカングーの大きさと車高の高さ、多少の悪路なら進んでしまえるところが、ひどく気に入っていました。改築作業に必要な板や農作業に必要な草刈り機などが、楽に運べるからと大きさを重視していたのですが、けれども、カングーの新車はかなり高い値段になっています。2月29日土曜日、夫はフィレンツェのルノーのディーラーにカングーの中古車を見に行くつもりだったのですが、大きなものを車で運ぶことはめったにないのだから、同程度の値段で買える新車にした方がよいのではないかとわたしが言い、ウンブリアで夫が見つけて気に入っていた車が二つあったので、その二つを見に行って、うち一つを購入することに決めました。

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Pian Grande, Castelluccio di Norcia, Norcia (PG) 14/7/2018

 この写真は2018年7月に撮影したものですが、夫と初めてカステッルッチョの高原(Piani di Castelluccio)を訪ねたのは、2004年6月で、そのときも、高原には真っ赤なヒナゲシ(papavero)の花が、一面に咲いていました。一度、カステッルッチョでのドライブの途中に、車のメーターの走行距離が、123,456kmとなったのに気づいてうれしかったのを、今も覚えていて、それもこのときだったように思っていたのですが、それではわずか2年弱の間に距離を走り過ぎているように思うので、別のときだったかもしれません。

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 2011年6月にわたしがアイゴを購入してからは、カングーにはエアコンがないためもあり、夏はアイゴで出かけることが多くなったのですが、一昨年前のこの夏は、カングーで訪ねていて、夫と共に緑のカングーが小さく写っている写真が見つかりました。カングーでは、夫と共にあちこちへと出かけた旅の思い出がたくさんあるので、わたしも名残惜しい思いはあります。けれども、最近では、タイヤのゴムの磨耗のために、雨の日にブレーキをかけたら路上で滑ったこともあり、いろんな意味でもう手放さなければいけない時期に来ています。

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 夫も廃車にするつもりでいたのに、ところが義父が、大きい車は何かを運ぶために便利だから、自動車保険は自分が払うから残しておこうと言い始め、しかも機会をとらえては夫を説得しようとしているようで、今日はなんと夫が説得されかけてしまっているので、心配しています。あちこちガタが来ているために、たとえ荷物を運ぶだけであっても、危険の可能性があると思うからです。うちには、現役5、60年のチンクエチェントがまだ健在なので、義父もそう思うのでしょうが、チンクエチェントと夫のカングーでは走行距離が違います。

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 月曜には、新しい車をディーラーに引き取りに行くので、楽しみなのですが、まさか夫がカングーを手放さずに取っておくことに決めはしないかと、今日は少し心配になりました。

 古くてもう使えないものは、思い出があっても手放すことで、新しいすてきな出会いも呼び寄せることができると、今日の昼食時にも言ったのですが、明日も機会をとらえて伝えるつもりでいます。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by minoru2703 at 2020-03-08 10:48
18年で40万キロは凄いですねえ
日本だと10年10万キロ乗る人も滅多にいません

古い車はどんなに整備や部品交換しても劣化は避けられず危険が危ないです
特に高速道路は走る気にはならないですな

花咲く丘が綺麗です
Commented by 3841arischan at 2020-03-08 12:01
なおこさん、長年乗った車は、愛着がわき
手放すときは、感慨深いものですね~
ご主人様の車は、なおこさん達の歴史でもあるわけですね♡
おつきあいしていた時代からの~♫
数々の思い出の中でもカステルッチョのお花畑は、私も数あるなおこさんの素晴らしいお写真の中でも印象に残るべスト10くらいに入ると思います♡
お疲れ様でした、ありがとうという優しいお気持ちも素敵です(^^♪
Commented by haikutarou at 2020-03-08 15:16
こんにちは
愛車の話を興味深く拝見いたしました。
一般的にヨーロッパの人は15年とか20年乗る人多いですよね。
私は自動車会社に勤務していてイギリスの自動車会社に3年間出向していましたがナンバープレートのアルファベットが一巡して、まだ乗り続けているがいて驚きました。
路肩にエンストしている車も結構いましたね。
30年前のはなしです。
現在はどうなんでしょうね?
Commented by u831203 at 2020-03-08 21:16
イタリアはすごいことになっていますね
1600万人隔離とは、どういうことでしょう
なおこさん、ご主人大丈夫ですか?
くれぐれもお気を付けください。 masa
Commented by milletti_naoko at 2020-03-08 23:53
みのるさん、わたしも日本に住んでいたときは、1年に2万キロ運転していたんですよ。他の町に行くバスが週に数本だけで、土日はスーパーも商店街も休みという地域に長く暮らしていたので、どうしても車での移動距離が伸びました。当時の同僚たちから、よく車は10万キロ乗ったら買い換えの時期と聞いていたので、イタリアではかなりの距離や年数を平気で乗っている人が多いのに驚いていますが、18年で40万キロは、イタリアでも数少ない方だと思います。

わたしもはらはらしっぱなしで、ようやく新しい車になって、まずは安全のためにほっとしています。2016年のイタリア中部地震で、カステッルッチョの村は崩壊してしまいましたが、野の花は村人たちのおかげもあって、今も毎年美しい花を咲かせてくれています。
Commented by milletti_naoko at 2020-03-08 23:58
アリスさん、車は暮らしや旅の大切な友ですから、手放すのはわたしも寂しいので、夫の寂しい気持ち、よく分かります。夫が最初に乗っていた赤いパンダは中古車で、新車のカングーを買ったときは、見かけも機能も何もかも気に入って、うれしくて仕方がなかったのだそうで、そういう喜びもまた大切な思い出としてある車なのだと思います。

ありがとうございます。カステッルッチョにもトラジメーノ湖にも、何度も何度もカングーで行きました。新しい車でも、きっとまたいろいろな思い出ができていくことでしょうが、カングーには本当に感謝しています。
Commented by milletti_naoko at 2020-03-09 00:11
金太郎さん、こんにちは。まあなんと、自動車会社に勤められていたんですね! イギリスの自動車会社にも、そんなにも長く出向されていただなんて。15年、20年乗る人は多いと思います。2002年10月購入の夫の車のバックナンバーがCC始まりで、2011年に購入したわたしのアイゴがEJ始まりなのですが、AやBで始まるナンバーを時々見かけるほか、この新しいナンバー制度以前の、県を表す2文字で始まるバックナンバーの車も、道路でかなり見かけるからです。

我が家では物を大切にしようと、戦中を生きた義父母が思い実践するために、また、イタリアでは少なくとも、昔は一生使える長持ちする家電や自動車が作られていたためか、我が家には今も現役の55年近く前の冷蔵庫がある上、自動車修理工の手が入っているものの、やはり5、60年前のチンクエチェントも現役で、今でもしっかり走りますし、出かけた先で、同じような昔のチンクエチェントが道路を走るのを見かけることが時々あります。

路肩にエンストしている車、それほどしばしばではありませんが、たまに見かけますし、うちの車が最近ではまれにですが、そういう状況になります。
Commented by milletti_naoko at 2020-03-09 00:16
masaさん、ありがとうございます。わたしたちは元気です。イタリア政府は、用心のために、これ以上拡大しないようにと対策に踏み切っていますが、実際に隔離される地域、リミニ周辺に住む友人の多くは元気で、「日曜にいっしょに山を歩こうよ」、「うちでパーティーをしましょう」と提案したりしています。わたしたちは感染しても大丈夫でしょうが、義父母が高齢なので断り、パーティーについては、幸い良識ある友人の一声で取りやめになったそうです。

お二人もどうかお体を大切にお過ごしくださいね。
Commented by sunandshadows2020 at 2020-03-09 12:52
なおこさんのご主人と我が夫双子ではないかしら?
イギリス人とイタリア人ですが(笑)
車はやはり荷物を乗せるために彼のはいつもバンなのです。
大切に乗っていらしてすごい走行距離ですね。車も本望でしょう!
素晴らしいひなげしの野原は植栽したものでしょうか?
それとも自然で?
ため息が出るほど綺麗ですね。
Commented by milletti_naoko at 2020-03-10 00:41
お転婆シニアさん、屋外や緑の中で過ごすこと、体を動かすことが好きだという点をはじめ、確かに共通点が多いですね。今日無事、ディーラーに新車を引き取りに行った際に、カングーは置いてきました。夫はやはり何だか名残惜しそうでしたが、もう十分本望、寿命を果たしたのではないかと思います。

ヒナゲシは自然に任せているだけではここまで咲かないので、この頃では震災後の地域復興の意図もあって、種をまいているのではないかと思います。年によってまた訪ねるときによってかなり違いがあるのですが、このときは一面に咲く高原が本当にきれいで、感動しました。
by milletti_naoko | 2020-03-08 09:15 | Umbria | Comments(10)