イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第40号(1)「トスカーナ小村の椿まつり」

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 1.トスカーナ小村の椿まつり

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Panorama di Lucca dalla cima della Torre Guinigi, Lucca 2015/3/29

 フィレンツェの西方、ピサの北東に位置する ルッカ(Lucca)は、中世の町並みが残る美しい町として知られており、町を取り囲む「広い城壁」が「緑の散歩道」となっていることが、私の持っている『地球の歩き方 イタリア』にも書かれています。

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Sant’Andrea di Compito, Capannori (LU) 2010/3/6-7

 このルッカの町の郊外、ルッカから10分あまり車で東へ向かったところに、庭の美しい貴族の館があちこちにある美しい地方や自然の非常に美しい小村があります。

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 サンタンドレーア・ディ・コンピト(Sant'Andrea di Compito)は、豊かな自然に囲まれた小村です。村の中央付近を美しい小川が流れ、イタリアには珍しく土壌が酸性で、椿の栽培に適していることもあり、また、椿を愛し、その栽培や研究に取り組む人が多いこともあって、毎年3月頃に、この村及び隣村のピエーヴェ・ディ・コンピト(Pieve di Compito)を中心に La Mostra Antiche Camelie della Lucchesiaが行われます。

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 この催しは、直訳すると「ルッカ地方の歴史ある椿の展示会」となりますが、趣向が凝らされ、内容が多岐にわたってもいますので、ここでは「椿まつり」と呼ぶことにします。今年は3月6日、7日および3月13日、14日と、2週間にわたって週末に催されたのですが、私は夫と3月6日土曜日の午後から、7日日曜日にかけて、この椿まつりに参加しました。

 椿まつりの中心となる展示会場は、コンピト文化センター(Centro Culturale Compitese)近くに設けられた大型テント(tendone)です。センターの入り口には、各会場や順路を記した詳細な地図が掲示され、

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少し構内を歩くと、小道の両脇がさまざまな品種(varietà)の椿で飾られ、下方に中央展示会場となっている大型テントが見えます。

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テント内には、色も形状も多様な椿が、学名などの情報を添えて展示されています。茶の木もやはりツバキ科に属するからということで、世界各国の茶や茶の文化も紹介されていました。

 テント内では、椿や茶に関する講演も行われます。私たちが傾聴した講演は以下の三つです。

(1) Il Tè Italiano. Acclimatazione della Camellia sinensis nel nostro paese. Relatore Angelo Lippi.

(2) Storia e cultura di una bevanda millenaria: il tè dalle origini ai nostri giorni. Relatore Livio Zanini.

(3) Vita e morte di un maestro del tè. Sen Rikyu, il fondatore dell'arte giapponese del tè. Relatore tezio Bettin.

 講演の内容が大体予想できますか。分かる言葉を手がかりに類推してみましょう。ちなみに、relatoreは「講演者、研究発表の報告担当者」を意味し、この言葉の直後に、それぞれの講演をした人の名前が記されています。

 訳してみると、それぞれ次のようになります。「  」内は私が訳したものです。

「(1) イタリアの茶。我が国における茶の木の移植。講演者、アンジェロ・リッピ。」

 Camellia sinensisとは「茶の木」のことで、これは学名です。ちなみに、イタリア語で「椿」はcamelia(Lは一つのみ)で、「椿」の学名はCamellia japonica。学名はラテン語でつけられ、学名の前半は属(famiglia)、後半は種(genere)を表します。「茶の木」、「椿」を表す学名のラテン語が、直訳するとそれぞれ「中国の椿」、「日本の椿」であるのが興味深いですね。

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「(2) 千年を超えて飲用される飲み物の歴史と文化―茶、その起源から現代まで。講演者、リーヴィオ・ザニーニ。

 (3) 茶の師匠の人生と死。千利休、日本の茶道芸術の創立者。講演者、テッツィオ・ベッティン。」

 茶を愛する文化がどのように世界中に伝播し、また、世界各地でどのようにお茶がたしなまれているかなどが分かって興味深かったです。日本人であり、またかつて漢文も教えた立場からすると、少々問題のある発表内容もありはしたのですが。気になった間違いは、たとえば、「日本が戦国時代に突入したのは、天皇の権力が崩壊したためだ」とか、太平の世が長く続いた「唐の時代」(618-907)を「760年まで」としていた、とかいったものです。

 「茶道」は、ふつうイタリア語ではcerimonia del tèと言います。(3)で、演題に「cerimonia」(儀式、祭式)という言葉をあえて使わなかったのは、「イタリア語でcerimoniaというと、華やかなカトリック教の儀式が連想されがちで、その連想が「茶道」の精神や在り方を伝えるのを妨げかねない」と考えたからだ、と講演者が説明していました。

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 他にも、様々な企画や催しがあり、近くの邸宅でおいしいお茶をいただいたり、350近くの品種を誇る椿園まで散歩したりもしたのですが、この続きはまた、別の機会にお伝えしたいと思っています。

→続き、第40号(2)「春の訪れ」へのリンクはこちらです。

関連記事へのリンク
- 椿みごとルッカ小村の花の園 (2019/3/16)
- 美しい椿の小道 庭園の景、ルッカ マルリア邸 (2019/3/16)
- 椿まつりでお茶を (2010/3/6-7)
- 美しいルッカの夜と夏時間 (2015/3/29)

*追記(2020年3月31日)
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 Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:一度は行ってみたい場所
Commented by 3841arischan at 2020-03-31 23:28
なおこさん、メルマガを移す作業、、ご苦労様ですm(_ _)m
ルッカと呼ばれる地方には、椿祭りがあったり、なおこさんもここで椿を買って帰ったのでしたよね?
私は、ルッカと言えば、オリーブのルッカという品種を思い出します!
我が家に植えたオリーブなので親しみが有ります(o^^o)
ルッカへ旅したブロ友さんもいて、ここは、私にとってもご縁のある場所かも?
いつか、イタリアが元に戻って落ち着いたらまた訪ねてみたいと思いましたよ❤
素敵な記事をありがとうございます❤
Commented by paradiso-norina at 2020-04-01 15:56
京都の椿はいかにもザ・ジャパンという感じで見慣れていますが、いつからか椿を植栽している洋風庭園もめずらしくなくなりましたね。
ルッカの椿の数々、素敵です。背景との相乗効果か、椿がとても明るく華やかな印象の花に見えてきます。
八重とかはバラにも劣らないあでやかさがありますね。
いいなぁ~、ここで野点とかしてみたくなります^^

”ダンテ”の講義、、興味があっても難しく途中から流し読み、、、根性なしのトホホの私です。。
Commented by milletti_naoko at 2020-04-04 08:12
アリスさん、温かいお言葉をありがとうございます。長年かけてせっかく書いたものなので、こちらに移行するペースを上げていかなければとつくづく感じています。

オリーブにルッカという品種があるとは初めて知りました! アリスさんのお宅に、この町の名を冠するオリーブの木があるなんて、何だかうれしいです。ブログのお友達にも訪ねた方がいらっしゃるんですね。機会があればぜひ。こちらこそ、うれしいコメントをありがとうございます♪
Commented by milletti_naoko at 2020-04-04 08:16
のりーなさん、椿は意外とこちらの館や庭園にも合うので、驚いています。日本でもそういう洋風庭園を見かける機会が増えてきているのでしょうか。

椿、この日は空が曇っていて、思うように撮れなかったので、のりーなさんのコメント、とてもありがたいです。昨年買った椿の花は特にあでやかで、バラに負けない美しさがあり、毎朝見てはうっとりしています。野点、さすが風情がありますね。本来は今年もきっとお茶の席が設けられるはずだったでしょうに、中止になって残念です。

いえいえ、読もうとの試み、ありがとうございます。機会があればまたぜひ次の機会にでも♪
by milletti_naoko | 2010-03-29 12:00 | Toscana | Comments(4)