イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

忠誠な使徒ユダ イエスの時代の銀貨、オルヴィエート カーヴァの井戸プレゼーぺ

 あなたの言動がだれかに誤解されたことがありませんか。
 実際とは異なるあなた像を、人がつくりあげていたことはありませんか。
 そのとき、あなたはどう感じましたか。

 オルヴィエート(Orvieto)中心街にあるカーヴァの井戸(Pozzo della Cava)では、階段を地下へと降りて、古代エトルリア時代にも用いられていた深い井戸や洞窟などを訪ねることができます。

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Lo Strumento, Presepe del Pozzo della Cava
Orvieto (TR) 3/1/2020

 今年1月3日に訪れたときは、イタリアではまだクリスマス期間中だったので、例年のように、幼子イエス聖誕場面を再現するプレゼーぺ(Presepe)が飾られていました。

 今日、4月10日金曜日は、イエスの受難と死を記念して祈る聖金曜日(Venerdì Santo)なのですが、イエスをローマ兵に売り渡したとされるイスカリオテのユダ(Giuda Iscariota)が、今回のカーヴァの井戸のプレゼーぺの主題、そして案内人となっていました。入口を入ってすぐに、ユダの像とあいさつを書いた展示があり、順路の最後には、冒頭に記した言葉が書かれていました。

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 1978にエジプトで発見された『ユダの福音書』をもとに、ユダは本当は裏切り者ではなく、預言が実現するようにと、イエスから請われて、ローマの兵士にこれがイエスだと示したのであり、実際には最も信頼されていた忠誠な使徒だったのだと、

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プレゼーぺでは、様々な場面を実物大の人形で再現し、言葉を添えて、見る人に訴えていました。

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 貧しい家に、イエスと同じ晩に生まれたとして、ユダが生まれた場面も再現され、

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イエスの死後、自らも首をくくったと言われるユダのその死の場面が実物大で再現され、しかもその奥の洞窟には、十字架に架けられたイエスが配されています。イエスの生誕を祝うクリスマスに飾られるプレゼーぺとしては、異色の試みだと思います。

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 迷路のような洞窟の中をさらに歩き、荘厳で美しい幼子イエスの生誕場面や

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喜びと祝福に満ちた場面を、

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洞窟内に設けられた通路を歩き、階段って訪ね、さらに進むと、屋内の展示の最後に、冒頭の言葉が書かれていました。

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 外のテラスに出ると、建物が凝灰石の岩をうまく利用して築かれているのが分かって、興味深かったです。

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 再び中に戻って、今度はイエスの時代の硬貨(Le Monete del Tempo di Gesù)の展示を見ました。

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 中には、ユダが裏切りの報酬として受け取った銀貨とされるシェケル銀貨もありました。

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 この写真で左に上下に並ぶ銀貨のうち、上の大きいのが1シェケル(Siclo)、下の小さいのが半シェケル(Mezzo Siclo)の銀貨です。

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 これは、一枚上の写真の硬貨シートの裏側を撮影したもので、シェケル銀貨は右端の二枚です。歴史チャンネルで、イエスの死の前の日々を歴史的に検証する番組があったので、昨年もすでに見ていたのですが、今日も見ました。番組の最後の方で、30シェケルは今でいうとわずか30ユーロに相当する金額で、それだけの報酬のためにイエスを裏切るとは考え難いと言われていると、話がありました。

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 プレゼーぺもとても興味深く、凝灰石の洞窟を様々な場面を訪ねながら歩くことができました。けれども、プレゼーぺがあるために、見られなかったり訪ねられなかったりしたところもありますので、いつかぜひ再訪したいと考えています。

Pozzo della Cava
Via della Cava, 28 - 05018 Orvieto (TR)
Tel. : +39 0763342373
Email: info@pozzodellacava.it, casasciarra@pec.pozzodellacava.it
SIto : Pozzo della Cava - HOME

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Lo Strumento - Presepe del Pozzo della Cava

Giuda Iscariota, traditore o il discepolo più fedele?
Bello e interessante, anche la mostra "Le Monete del Tempo di Gesù"
Orvieto (TR). 3/1/2020
#iorestoacasa e scrivo articoli del blog.
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- 古代相撲・墓、プレゼーペと大聖堂、オルヴィエート / Necropoli, Presepe Pozzo della Cava & Duomo, Orvieto (3/1/2020)
- 聖金曜日とイエス受難の歴史検証 / Rai Storia - Ultimi giorni di Gesù
- 近づく復活祭、聖金曜日とペトラルカ『カンツォニエーレ』 / Venerdì Santo e il Canzoniere di Petrarca (6/4/2012)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by yuki0901671 at 2020-04-11 08:48
おはようございます。

すごく素敵な施設なのですが、もし一人だけだったら霊気が移りそうで怖いかも知れませんね。年間の平均気温が高い地方なのでしょうか。光が溢れているようで、ローマのテルミ二駅で見上げた空のように柔らかく包み込むような陽気を感じます。
Commented by ciao66 at 2020-04-11 20:48
オルヴィエートには行ったのですが、その時カーヴァの井戸も見たいと思いつつ、行けませんでした。こんなところだったんですね。でも井戸の場所がどこかのでしょうか?
 ユダのプレぜーべは興味深いですね!冒頭の言葉はユダは裏切り者ではなく、イエスから密命を託された弟子だった、という説のことではないかと思うのです。 イエスは自らの意思でユダに自分を裏切るように言い、ユダはそれを実行して、結果いわれのない汚名を着せられたと。
 「ユダは裏切り者ではなかった」で検索すると、たとえば・・・ https://english.evidus.com/magazine/ibunka/178.html などあれこれと。
Commented by pikchdan_y70 at 2020-04-11 22:15
洞窟に移されたイエスが十字架にさらされたままですか?日本人としてはあり得ませんね!そう思いませんか?
Commented by milletti_naoko at 2020-04-12 23:52
Nikuさん、こんにちは。古代エトルリアや古代ローマの遺跡には、地下の墳墓に貯水槽など、地下を訪ねられるところが多く、ここも普段は、そういうつくりや暮らしのあとがおもしろいのでしょうが、このときは確かに、テーマが重かったので、確かにお化け屋敷みたいのように感じられるところもありますよね。わたしもこわいのは苦手で、ホラー映画や怪談も、まんが日本昔話でさえ避けていた方です。旅行者はたくさんいました。

ちょうど夕日が沈みかけたところで、西日が優しく降り注いでいました。
Commented by milletti_naoko at 2020-04-13 00:00
ciao66さん、井戸もあって、中をのぞき込んで撮影もしたのですが、プレゼーぺの説明が大きな紙か何かに書かれて、上から下まで吊り下げられていたために、井戸の奥にある水がうまくきれいに撮影できず、今回の主題には関わりがないからと、写真を割愛しました。

おっしゃるとおり、今回のプレゼーぺの主題は、その説、『ユダの福音書』に基づくものです。カトリック教会では、公式には今もユダを裏切り者と評しているようですが、この日の歴史番組で聞いたところでは、歴史学者たちは、ユダというユダヤを象徴するような名前と言い、裏切るには安すぎる報酬と言い、キリスト教が母体となるユダヤ教を非難の対象とするために、ユダの裏切りとして、罪をすべて負わせていたのではないかと考えていると言っていたように思います。
Commented by milletti_naoko at 2020-04-13 00:27
Pikchdanさん、ところ変わり、時代変わればですよね。カトリック教会でも、十字架や十字架に架けられたイエスの像を象徴として飾るように、重んじるようになったのは、コスタンティーノ帝が磔刑を禁じてからで、それ以前には考えられなかったことだと、歴史番組で言っていました。
Commented at 2020-04-13 07:07
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2020-04-14 00:05
鍵コメントの方へ、ありがとうございます。おかげさまで、うちにこもりながらも元気に過ごすことができています。

興味を持って読んでくださったと知って、うれしいです。リンクもありがとうございます。さっそく拝読しにうかがいますね。

カトリック教の人が多いイタリアでさえ、それほどさかんに話されてはいませんので(カトリック教会ではやはりユダは裏切り者扱いのようなので、そのためもあるかもしれませんが)、日本ではなおさらニュースにもなりにくいのでしょうね。

重さは分かりませんが、イメージしていたよりもはるかに小さく、薄そうだったので驚きました。
by milletti_naoko | 2020-04-11 08:01 | Umbria | Comments(8)