イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第40号(2)「春の訪れ」 

2.春の訪れ

 私の身近にいるイタリア人に尋ねると、春(primavera)の訪れは「3月20日」、つまり春分(equinozio di primavera)の日、昼夜の長さがほぼ同じになる日だと答える人と、復活祭(Pasqua)だと答える人の二派に分かれます。今年の復活祭は4月4日。復活祭は、「春分の後にくる最初の満月の次の日曜日」と定められていて、年によって日にちが変わるのですが、毎年3月下旬から4月中旬の時期になります。ですから、3月末のこの時期は、「春分」派の人にとっても、「復活祭」派の人にとっても、春が訪れる、あるいは訪れ始める時期だと言うことができます。

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 このところ、ペルージャでは日中の気温が15度に達する暖かい日が続いています。3月上旬に購入したときには、つぼみ(bocciolo)ばかりだった椿(camelia)が美しい花を咲かせ始め、

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庭の芝生(prato)は一面、ヒナギク(margherita)の花に覆われています。

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 我が家のあちこちに植わっているローズマリー(rosmarino)も花盛りで、肉(carne 女性名詞)魚(pesce 男性名詞)豆類(legumi 男性名詞、複数形)を調理するときに香りを添えてくれる上に、薄紫色の美しい花で目を楽しませてくれます。

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 冬の間は雨が多いため、野菜畑(orto)が泥だらけになりがちだったので、野菜を取りに行くのは、義父母にお願いしていました。先週は、義母から「カリフラワーが今食べ頃だから、畑に行ってごらんなさい。」と聞いて、久しぶりに畑に行くと、道端のローズマリーやスモモ(prugno、susino)の白く小さい花が美しく、カリフラワーも見事に育っていました。義母によると、ついこの間まで、寒さのために生長が止まって小さいままだったので、もう大きくならないかとあきらめかけていたのに、この数日の好天のおかげで急に大きくなったとのことです。

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 カリフラワーは、イタリア語でcavolfiore。男性名詞で、cavolo fioreとも言います。cavolo「キャベツ」とfiore「花(男性名詞)」という二語から形成された言葉なのですが、日本語でも別名を「花キャベツ」というようですから、覚えやすい言葉だと思います。

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 野菜を取りに畑に行くときは、固くて食べにくい外側の葉を取り分けて、メンドリたち(galline)(女性名詞で単数形はgallina)にやるようにしています。メンドリたちは食欲旺盛で、遠くから私の足音を聞いただけで、もう「コーッコッコッコ!」と大変な勢いで、柵まで駆け寄ってきます。そして、レタスやキャベツの葉を投げてやると、我先にと奪い合って食べ始めます。ちなみに、写真で、鶏たちの右に立っているのは、オリーブの木(olivo)です。

 動物の名前では、日本語では性別に頓着しないのに、イタリア語では性別をはっきりさせる必要があるものがいくつかあります。たとえば十二支で、「うさぎ」(coniglio、lepre)「蛇」(serpente)はイタリア語でも雌雄の別が問題にならないのですが、十二支の動物をイタリアの人に説明すると、「丑」と「酉」については、イタリア人の頭の中では、牛がtoro「雄牛」mucca「乳牛、雌牛」、鶏がgallo「オンドリ」gallina「メンドリ」かで、イメージががらっと変わってしまうようで、雌雄のどちらなのかを知ろうと躍起になります。これは、イタリアの人にとっては身近な家畜で、性別による役割が明確に分かれているからではないかと思います。日本では、「丑」と「酉」の性別にそこまでこだわる人はいないでしょうから、文化の違いが表れているようで興味深いです。

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 春が近づいてから、メンドリの産む卵の数が日に日に増えてきました。夫は、「復活祭で卵を使うのは、単なる象徴ではなく、こうした自然現象と関連している。」と言います。ペルージャで、復活祭の食卓に欠かせないのが、torta di Pasquaです。tortaというと、ふつうは「ケーキ、パイ」など甘いものを指しますが、このtorta di Pasquaは卵とチーズをふんだんに使った塩味のもので、どちらかというと「復活祭のパン」とでも訳した方がいいような食品です。実際、復活祭の日には、パンとtorta di Pasquaの両方が、肉や野菜料理を食べる際に、食卓に並んでいます。

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 我が家にもミモザ(mimosa)の木があり、例年は2月の末から3月初めにかけて鮮やかなレモン色の花が満開になります。3月8日の女性の日には、毎年義父が自宅のミモザの花を束にして、リボンを添えて贈ってくれるのですが、今年はどういうわけか、ご近所のミモザは何日も前から花盛りだというのに、我が家のミモザはまだほとんど花を咲かせていません。

 こうした暖かい日が続いている上、我が家は夫も義母も「春の訪れは春分」派なので、先日バスに乗った際に運転手さんに「ようやく春が来ましたね。」(Finalmente è arrivata la primavera.)と言ったところ、「いえ、まだ油断はできません。復活祭までは、寒さが戻ってくる可能性が十分あるから、復活祭が終わって初めて、春が来たと言えるんですよ。」と言われてしまいました。彼女は「春の訪れは復活祭」派だったのです。

 この記事は、イタリア語学習メルマガ 2010年3月29日発行、第40号(1)「トスカーナ小村の椿まつり」の続きです。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by nonkonogoro at 2020-04-16 08:58
カリフラワー
まるまる育って(笑)とっても おいしそうですね。
私はクリームシチューに入れたりしますが
取り立てだと 生食でサラダにして食べられるのかな?

生みたて卵も おいしいでしょうね。

この時期
スーパーで購入した野菜や商品にも
コロナウイルスが付着してないかと不安になるので
naokoさんちのように自家製だと ホントに安心ですね。

春は プリマベーラ
夏は エスターテ

これだけは 覚えています。
マンドリンはイタリア発祥の楽器なので
マンドリン団体には イタリア語のが多いです。
もちろん 音楽用語も ほとんどイタリア語ですよね。

Commented by milletti_naoko at 2020-04-17 18:12
nonさん、大きい採れたてのカリフラワー、とてもおいしいです。生でサラダにしても食べられるのですが、夫が好きではないので、たいていはゆでているのですが、まれに衣をつけて揚げることもあります。卵も新鮮な卵が食べられて、ありがたいです。

マンドリンはなるほど、団体の名前もイタリア語の場合が多いんですね! そういう名前を通して、日本の皆さんの目に触れるイタリア語も増えてきているのでしょうね。
by milletti_naoko | 2010-03-29 13:00 | Lingua Italiana | Comments(2)