2009年 09月 04日
第20号(1)「旅先での会話(出身地・趣味)」
こんにちは。いかがお過ごしですか。今回は、イタリア留学・旅行の際に、現地の人とちょっとした言葉を交わすのに使える表現と、前々からお約束していた「ダンテとイタリア語」の関係について執筆しています。今号は妙に長くなってしまいましたが、慌てずに、時間をかけてじっくりお読みください。来週月曜日から2週間、旅行に出かける予定ですので、次号の発行は9月25日(金)とし、それまでは休刊の予定です。

2.旅先での会話(出身地・趣味)
皆さんが、イタリアを旅行・留学中にこんなふうに尋ねてくるイタリアの人がいるかもしれません。
1. a) “Di dove sei?” b) “Di dov’è Lei?”
2. a) “Da dove vieni?” b) “Da dove viene?”
1、2のどの文も「どちらのご出身ですか。」という意味です。話し相手に対して、a)ではtuを使って、b)ではLeiを使って呼びかけています。
皆さんなら、どのようにお答えになりますか?
“Sono giapponese.”「私は日本人です」(“Vengo dal Giappone.”「日本から来ました」)とだけ答えることもできれば、“Sono giapponese, di Osaka.”(私は日本人で、大阪の出身です)と、国(paese, stato)のあとに、町・都市(città)の名を添えることもできます。essere di ...、venire da ...は共に「~の出身である」という意味で、ここでは、前置詞のdiとdaはどちらも「出身」を表します。かの有名なLeonardo da Vinciのdaもこれと同じ用法で、da Vinciは「ヴィンチ村出身の」という意味になります。
「日本」は、イタリア語ではil Giapponeと言い、giapponeseはその名詞・形容詞です。“Sono giapponese.”(「私は日本人です」)という文では、giapponeseは「日本人」という意味の名詞です。-eで終わっていますから、男女に関わらず形が同じでgiapponeseですが、これがイタリア人だったりアメリカ人だったりすると、男性ならitaliano・ americano、女性ならitaliana・ americanaと語尾が変わってくるので厄介です。ちなみに、時々、新聞などで、日本のことをil Sol Levante(日出ずる国)と言うこともあります。一方、テレビや新聞などで、イタリア(L’Italia)をil Bel paese(直訳は「美しい国」)と呼んだり、言い換えたりしている場合もありますので、覚えておいてください。
“Sono giapponese.”と答えても、さらに“Di dove sei?” (Da dove vieni?)と聞かれる場合があります。この場合は、「(日本の)どこから来ましたか→どの町が出身地ですか。」と尋ねているわけですから、“Sono di Osaka.”(“Vengo da Osaka.”)などと、町の名前を答えてください。最近では、イタリア人にも日本文化の様々な側面(アニメや漫画、空手・合気道・柔道や茶道など)に興味を持っている人がたくさんいます。東京・大阪・京都に加えて、札幌など、いろいろな町の名を知っている人もいます。
一方、出身地を聞かずに、最初からヤマをかけて、こう聞いてくる人もいます。
“Sei giapponese?”( “Lei è giapponese?”) 「あなたは日本人ですか?」
その場合は、“Sì, sono giapponese.”(はい、私は日本人です)と答えてください。英語のYesにあたるイタリア語のSìには、見ても分かるように母音のiの上にアクセント記号があります。母音のi(日本語のイに比べると、唇をかなり両脇に引いて発音する音です)を、はっきり力強く発音しましょう。
見知らぬ相手にいきなりtuで呼びかけるのは失礼なはずなのですが、若く見えるためもあってか、私は初対面の人からtuを使って呼びかけられることがよくあります。夫に言わせると「若者の間では知らない同士でも、親しみを込めて、互いにtuで呼びあうことがある」ということですが、夫と一緒にレストランやピザ屋で食べるときも、帰り際に、店の人が夫には“Arrivederci.”とあいさつするのに私には“Ciao.”と言うということが、よくあります。上記の質問ですが、最近では次のように聞かれることがあるかもしれません。
“Sei cinese?” ( “Lei è cinese? ”)
昔は、イタリアで見かける東洋人というと多くが「日本人観光客」だったようですが、最近ではペルージャでも、豊かになった中国からの団体旅行客を見かけることがあります。また、近年はイタリア・中国が協力して推進する「マルコ・ポーロプログラム」によって、膨大な数の中国人学生がイタリアの大学に留学しています。一方、従来イタリアの各地に移民として住み、働いている中国人やその2世、3世もたくさんいます。
そういうわけで、イタリアを旅行中に「中国人ですか。」と聞かれることもあるかと思います。そう聞かれたら、“No, sono giapponese.”(いいえ、私は日本人です)と答えてください。イタリア人で「日本人・中国人・韓国人の区別がつかない」という人は多いのですが、あまり目くじらを立てないでください。私も日本人学生の方に「中国人ですか」と聞いてしまうこともあれば、中国人学生に同胞だと思い込まれて、中国語で話しかけられて困ることもあります。日本で暮らしていて中国や韓国の方を見るとすぐお分かりになるかもしれません。けれども、イタリアという外国に暮らしていると、外見だけでは、アジアのどの国の出身だか判断に迷う場合がよくあります。イタリアを訪れる中国・韓国の方に豊かな家庭出身だったり、ファッションに興味のある人がいたりすることもその理由だと思います。
イタリア語で、中国はla Cina。cineseはその名詞・形容詞で、意味は「中国語、中国人、中国の」です。giapponeseと同様、語尾が-eですから、一人の場合には男女に関わらずcineseで形が同じです。
7年間イタリアに暮らしている間に、 “Sei coreana?”「韓国(朝鮮)人ですか。」と聞かれたことも、ごくまれですがありました。 イタリア語では普通、韓国をla Corea del Sud 、朝鮮をLa Corea del Nordと呼び、国名を位置の違いで呼び分けています。ちなみに、Sud は「南」、Nordは「北」です。国名la Coreaの名詞・形容詞はcoreanoです。意味は「韓国(朝鮮)語、韓国(朝鮮)人、韓国(朝鮮)の」。国民を指す場合、単数形で、男性ならcoreano、女性ならcoreanaと語尾が変わりますので注意してください。
2002年、日韓共催によるサッカーのワールド・カップでイタリアが韓国に敗れた翌日、町を歩いていてこう聞かれたときは、聞いてきたイタリア人男性の声に殺気が漂っていました。“No, sono giapponese.”と答えてやり過ごしましたが、その時ばかりは「韓国人でなくてよかった」とつくづく思いました。ちなみに、この数日前にイタリアがクロアチア(la Croazia)に敗れており、語学学校でクラスメートだったクロアチア人の女学生が「バールで見知らぬイタリア人と話したとき、相手の反応が怖くて、自分がクロアチア人だと言えなかった。」と言っていました。2002年のワールド・カップについては、イタリアでは、審判が不公平であったという批判も含めて、論議が沸騰していました。普段は間口が広く外国からの客を温かく迎え入れるイタリア人の中にも、この時ばかりは、前日あるいは当日(特に、不公平と思われる審判の結果)イタリアに勝った国に対する嫌悪感を示す人が、サッカーの猛烈なファンである男性を中心に、何人かいました。数日経つともう忘れていたわけですから、ごく一過性のものではあったわけですが、仮に私が韓国人やクロアチア人であったとしても、一市民には何の罪もないというのに……
誰かに出身地を聞かれたら、皆さんの方も、尋ね返してみてください。tuを使って話しかけてきた相手が同年配・年下であればtu、年上の方であればLeiを使って出身地を聞いてみましょう。“Di dove sei?” (“Di dov’è Lei? ”)「どちらのご出身ですか。」と聞いてもいいし、イタリア人らしいと見当がつくならば、「あなたはイタリア人ですか。」と尋ねることもできます。その際、相手が男性なら “Sei italiano?” (“Lei è italiano?”)、 女性なら“ Sei italiana?” (“Lei è italiana?”)と質問しましょう。相手が “Si, sono italiano/italiana.”「はい、イタリア人です。」と答えた場合は、さらに出身の町を尋ねるため、“Di dove sei?” (“Di dov’è Lei? ”)と尋ねましょう。万一、相手が“No, sono rumeno/spagnolo.”「いいえ、ルーマニア人/スペイン人です。」と答えた場合でも、同様に“Di dove sei?” (“Di dov’è Lei? ”)と、出身地の町を聞くことができます。

さらに会話を続けていると、次のように聞かれるかもしれません。
“Come ti chiami?” (“Come si chiama?”)
訳すと、「お名前は何ですか。」で、最初に挙げたのがtuに対する、かっこ内がLeiに対する質問になります。chiamarsiは活用が厄介ですが、「名前を~という」という意味の動詞です。「私の名前は~です。」と答えるには、次のように言います。
“Mi chiamo Sakura Yamakawa. ” 「私の名前は、山川さくらです。」
“Mi chiamo ....”のあとに、自分の名前を入れればいいわけです。これらの表現は文法的に難しいため、文法書ではかなり後になって出てくることが多いのですが、「人の名前を尋ね」、「自分の名前を言う」ための決まり文句として覚えてしまってください。自分の名前を答えたあとは、上記の同じ表現を使って、相手の名前を尋ねてみましょう。
会話を広げるため、前号(第19号)でもご紹介した“Mi piace/Mi piacciono ...”(私は~が好きです)という表現を使うこともできます。
1. Mi piace l’Italia. 私はイタリアが好きです。
2. Mi piace viaggiare in Italia. 私はイタリアを旅行するのが好きです。
3. Mi piacciono gli spaghetti. 私はスパゲッティが好きです。
4. Mi piacciono le canzoni italiane. 私はイタリアの歌が好きです。
この表現では、「好きなもの」が主語になります。piace、piaccionoと活用しているこの動詞の不定形はpiacere。1・2では主語が3人称単数(あるいは単数扱い)なので動詞がpiace、3・4では主語が3人称複数なので動詞がpiaccionoと活用します。ちなみに、第5号でご紹介した“(Tu) mi piaci.”「君が好きだ/あなたが好きです」もこの同じ文型を用いたもので、動詞がpiaciという形を取っているのは、主語が2人称単数のtuだからです。
イタリア人と会話する際に、皆さんが「自分はこれが好き」と言いたいものは何でしょうか。

la cucina italiana (イタリア料理)、il calcio (サッカー)、la musica italiana (イタリア音楽)、l’opera lirica (オペラ、歌劇)、 la moda(ファッション)、 la pasta(パスタ)、 il gelato(アイスクリーム)などいろいろあると思います。以上、すべて名詞の単数形を用いますから、 “Mi piace”に続けていうことができます。“Mi piace la cunica italiana.”、 “Mi piace il calcio.”など。同様に、動詞句が主語となる場合も動詞は3人称単数形piaceになりますから、2の例の他にも、たとえば、“Mi piace studiare l’italiano.”(私は、イタリア語を勉強するのが好きです)ということができます。
逆に、i film italiani(イタリア映画)、le canzoni italiane(イタリアの歌)などのように、好きなものが複数形である場合は、 “Mi piacciono”に続けて自分の好きなものをいうことになります。中には、“Mi piacciono gli italiani, perché sono allegri e simpatici.”(陽気で感じがいいので、イタリア人が好きです。)と言われる方もいるかもしれません。
この“Mi piace/Mi piacciono ...”(私は~が好きです)という表現は、文の構造を考えて訳すと、「私には~が気に入っている。」となります。先に述べましたように、この文の主語は「好きなもの」であり、ここではMiは「私には」という意味で、A meと言い換えることもでき、文法的には間接補語(oggetto indiretto、complemento di termine)です。「あなたには」はイタリア語で、te(= a te)あるいは Le (= a Lei)ですから、「(あなたには~が気に入っている→)あなたは~が好きです。」はイタリア語で、“Ti piace/ piacciono...”(相手をtuで呼ぶとき)あるいは“Le piace/piacciono...”(相手をLeiと呼ぶとき)となります。
ひょっとしたら、旅先で会話の相手から“Ti/Le piace l’Italia?”(あなたはイタリアが好きですか。)あるいは“Ti/Le piace la cucina italiana?”(あなたはイタリア料理が好きですか。)と聞かれるかも知れません。どう答えたらいいのでしょうか。
“Sì, mi piace.” (ええ、好きです。)あるいは“Sì, mi piace molto.” (ええ、大好きです。)と答えることができます。
たとえば、 “Ti/Le piace il calcio?”(あなたはサッカーが好きですか。)と聞かれて、「いいえ、好きではありません。」と答えるには、“No, non mi piace (il calcio.)”あるいは “No, non mi piace molto.”(いいえ、あまり好きではありません。)と言うことができます。
今回ご紹介した表現は、旅行や生活で使える重要なものが多いため、個人的には、入門者対象の学習書の初めの方にあるべきだと考えています。こういう旅行や留学で真っ先に必要となる表現でありながら、一般の学習書ではまったく扱われないか、後の方になって出てくるような表現を、今後も少しずつご紹介していきたいと思います。
*2020年4月追記: 今回ブログに移行するにあたって、出身地についての応答と、「…が好きです」という表現について、よさそうなイタリア語学習者用の映像を探してみました。それぞれについて、これがいいと思った映像をここにご紹介します。
この映像にはイタリア語字幕がある上に、Piacere di conoscerti/conoscerLa/Piacere「会えてうれしいです/お会いできてうれしいです[光栄です]/はじめまして」という、初めての出会いの際に役立つ表現も登場します。
この映像は、二人の会話がMi piace/Mi piacciono...「わたしは…が好きです」という言葉を軸に進んでいく上、起承転結の筋運びや落としもみごとで、単に見るだけでも楽しめる映像になっていると思います。
*追記: このメルマガの続き、第20号(2)「イタリア語の歴史とダンテ」へのリンクはこちらです。
婆の私も憧れるくらいに頑張られている。そっと寄り添って、抱きしめたくなります。
おかしな婆ですね。でも私は貴女のファンです。
貴女とこうして繋がっていられることは私の誇りです。
気がかりなのはお身体のこと、どうぞ十分にお気をつけ下さい。
義理のお父様、ちょっと困りものですね。
でも、貴女の優しさ、貴女の知恵でどうぞ乗り切ってください。
婆には何もできません。でもいつもいつも、貴女を誇りと思って、
応援しています。なおこさんfight!です。貴女のそのままでいいと
私は思います。