2009年 09月 25日
第21号「イタリアのニュースから:テロにより兵士6人死亡、マイク・ボンジョルノ逝去」
ご無沙汰しています。いかがお過ごしですか。旅行中は普段に比べてテレビや新聞でニュースに接する機会が少なかったのですが、私が知っている範囲で、前号刊行(9月4日)から今日(9月22日)までのニュースで、特にイタリアで重大だと思われるものを二つご紹介します。
一つは、9月17日に、アフガニスタンで平和維持のために従軍していたイタリア人兵士が、首都カブール市内で爆弾テロに遭い、6人が死亡、4人が負傷したというニュースです。以下のリンク先のCorriere della Sera紙の記事には、さらにアフガンの民間人も15人が死亡、55人が負傷したと書かれています。
Attentato a Kabul, colpiti due nostri blindati: morti 6 para della Folgore.
Un kamikaze in auto si fa saltare in aria sulla strada dell’aeroporto.
Tra i nostri soldati 4 feriti.
http://www.corriere.it/esteri/09_settembre_17/kabul_esplosione_ambasciate_b337c62e-a360-11de-a213-00144f02aabc.shtml
上記の記事の副題にあるkamikazeというイタリア語は、もちろん日本語から入った外来語なのですが、元来の意味である「神風特攻隊員」よりもむしろ「自爆テロ行為を行う者」という意味で、テレビ・新聞などのニュース報道でよく使われています。un kamikaze in autoのautoは、ここではautomobile(自動車)の略称です。
死亡した兵士たちは、26歳から37歳と若く、家族・友人・軍関係者のみならず、国全体を深い哀悼に包みました。17日当日、18日翌日は、テレビも新聞もニュースの詳細や残された家族たちの悲嘆を伝え、21日の国葬の際には、家族や政界の重要人物に加えて、多数の一般市民が、国のため平和のために命を犠牲にした兵士たちに敬意を捧げるために参列しました。次のリンク先、新聞紙Il Sole 24 oreのサイト上の記事では、国葬やその前日の様子が詳しく語られています。
Funerali di stato per i sei para, giornata di lutto nazionale
http://www.ilsole24ore.com/art/SoleOnLine4/Italia/2009/09/afghanistan-paracadusti-caduti-rientro-salme.shtml?uuid=68afdf26-a5e3-11de-8f84-343e41741891&DocRulesView=Libero
多くの犠牲者が出たことで、アフガンに駐留するイタリア人兵士の早期帰還を巡って、与党内でも意見が紛糾しています。
もう一つのニュースも、残念ながら「死」(morte)に関わるものです。
2. E’ morto Mike Bongirono
まずは以下のリンク先の、SKY.itのニュース報道を視聴し、また記事を読んでみてください。
(*2020年4月追記: 記事は幸い今もあるのですが、ニュース映像は残念ながら見当たりません。)
Addio al re della tv italiana. E’ morto Mike Bongiorno.
https://tg24.sky.it/cronaca/2009/09/08/mike_bongiorno_morto_montecarlo
まず題を見てみましょう。
“Addio al re della tv italiana. E’ morto Mike Bongiorno.”
人と別れるときのあいさつで、一番無難に使えるのが“Arrivederci.”だと思います。語源的には「再び会える(rivederci) まで(a)」なのですが、日本語の「さようなら」、「では、また。」などに当たるかと思います。ごく親しい相手にあいさつするときは、出会ったときも別れるときも “Ciao!”でいいのですが、あまりよく知らない相手や目上の人(たとえば、学生から見て「大学の先生」)には、つまりLeiを使わなければいけない相手には、別れに際して“Arrivederla.”と言う必要があります。
それに対して、この見出しにある“Addio”というあいさつは、同じ「さようなら」でも、「これが最後で、もう二度と会うことがない」という場合に使うあいさつです。
“Addio al re della tv italiana.”とありますから、最期の別れを告げている相手は、il “re della tv italiana”です。reは男性名詞で「王」を意味し、対義語は regina(女性名詞、意味「女王」)です。「イタリア、テレビ(界)の王」とは、では誰のことか。それは次の文で分かります。
“E’ morto Mike Bongiorno.” 「マイク・ボンジョルノが逝去した。」
mortoは、「死ぬ」を意味するmorireという動詞の過去分詞です。動詞morireやnascere(生まれる)は近過去が、essere+動詞の過去分詞という形をとります。
では、なぜマイク・ボンジョルノが「イタリア、テレビ界の王」と表現されているのでしょうか。また、彼はどんな人生を送ったのでしょうか。
その答えは、次回までの宿題にします。上の新聞記事をよく読んで考えてみてください。
実際にマイク・ボンジョルノがどういう人物だったか興味のある方は、以下の彼がゲスト出演する番組の映像を視聴してみてください。
(*2020年4月追記: 現在では、どちらも映像が削除されているため、一つ目のリンクは削除して映像の題名や情報だけ残し、二つ目については、同じと思われる映像を新たに埋め込みました。)
1. Mike Bongiorno, la storia della Tv italiana tra trionfi e delusioni
2. Mike Bongiorno ospite al Fiorello Show - 25 aprile 2009 (Sky Uno)
1では、RAI3の人気番組、Che tempo che faのゲストとして招かれ、司会者、ファービオ・ファッツィオ(Fabio Fazio)のインタビューに答えています。司会者はマイクの親しい友人です。二人は、年齢がかなり離れているものの(番組中をよく聞けば、二人の年齢が分かります)、仕事の上で互いに尊敬しあっている間柄で、その親しさや敬愛ぶりが、会話の端々からも伝わってきます。
2でマイクをゲストとして迎えているのは、イタリアで人気のある若手司会者、フィオレッロ(Fiorello)です。特に近年、多くの仕事をマイクと共にしました。マイクは死の直前まで、フィオレッロと共演するはずであったSKYの新番組の制作に取りかかっていました。
親しい敬愛する人どうし、聴衆と仕事を愛し、ユーモアに富む人どうしが、どんなふうにおしゃべりを繰り広げているか、初級の方も雰囲気だけでもつかむつもりで、ぜひ聞いてみてください。特に、1の番組では、インタビューを聞きながら、マイクの人生やイタリアのテレビ界で果たした役割を知ることができます。
簡潔なのでSKY.itの記事を引用しましたが、Mike Bongiornoについて、より詳しいことが知りたい方は、次のLa Repubblicaの記事をお読みください。この記事を読むと、1のインタビューを視聴して理解できることがかなり増えてくるはずです。
E' morto Mike Buongiorno icona della tv italiana
http://www.repubblica.it/2009/09/sezioni/persone/mike-bongiorno/mike-bongiorno/mike-bongiorno.html
次号では、これらの映像で使われる表現もいくつか取り上げて説明するつもりでいます。
久しぶりにメルマガを執筆するのではりきっていたのですが、書き始めた翌日に緊急の翻訳の仕事が舞い込んできたため、今回は少し短めになってしまいました。楽しみにされていた方には、申し訳ありません。
では、また。読書の秋、芸術の秋がやって来ました。秋の夜長を利用して、時にはイタリア語の学習にも取り組んでみてくださいね。
イタリア語学習メールマガジン「もっと知りたい! イタリアの言葉と文化」関連号へのリンク
- 第22号(1)「マイク・ボンジョルノの人生と業績、使える便利な会話表現」
- 第22号(2)「マイク・ボンジョルノとイタリア語、ラジオ・テレビ イタリア語普及に大貢献」
フランス語でデモですか! 語末の-eが無音になるのは、フランス語の発音の規則を適用しているのでしょうね。
近年の自爆テロと神風特攻隊の違いについて、歴史的に検証し、説明するような番組も、何度が見たことがあります。
「フランス語ででもですか(フランスにおいてもですか)」と書くつもりだったのに、マックかグーグルキーボードが勝手に変換してしまったんです。
フランス語でもですよね。イタリア語もです♪ 無音になるHを無理に発音しようとするからか、YAMAHAを「yamaKa」と発音する人が、時々、テレビのアナウンサーにさえいるんですよ。