イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第26号(2)「Don Matteo 7 〜 マッテオ神父の事件簿」

 イタリア語学習メルマガ第26号「義父母の金婚式、死者の市、Don Matteo 7」に、グッビオの町の写真を添えて、このブログに移行しています。この記事は、第26号(1)「義父母の金婚式とペルージャ死者の市」の続きです。



3.Don Matteo 7 〜 マッテオ神父の事件簿


 私も夫もテレビを見るのは、ニュース・時事問題を扱った番組・映画、自然を扱ったドキュメンタリー番組を見るときくらいなのですが、最近私たちが欠かさず見るようにしているテレビドラマが一つあります。それは、『Don Matteo 7』です。

第26号(2)「Don Matteo 7 〜 マッテオ神父の事件簿」_f0234936_052148.jpg
Gubbio (PG) 2011/5/14
 
 主人公は題名にもあるドン・マッテーオ(Don Matteo)です。筋は、カトリック教会の神父であるドン・マッテーオが、殺人事件を警察と協力しながら解決していくというものです。舞台はウンブリア州の美しい町、グッビオ(Gubbio)です。

 一話完結型で、決まった筋立てである点は、日本の時代劇に似ているのですが、ドン・マッテーオを取り巻く人々も警察官たちも個性豊かで人間味にあふれています。神父が主人公ということで、生き方・在り方を教えてくれるような場面も多々あります。ドン・マッテーオは普段自転車(bicicletta)でグッビオの町やその付近をあちこち移動しているのですが、ドラマのあちこちで見られるグッビオの町やその郊外の田園風景が美しくて、見るたびに「もう一度グッビオに行ってみたい」という気持ちになります。

第26号(2)「Don Matteo 7 〜 マッテオ神父の事件簿」_f0234936_0544111.jpg


 「7」とあるのは、番組の放映が第7シーズンに入ったからです。現在は毎週木曜日、21時10分から23時15分頃まで、1日に2話を放映しています。イタリアに留学していらっしゃる方は、リスニングのいい勉強にもなりますので、ぜひご覧ください。

 11月12日に放映される次回分の予告が、以下のリンク先からご覧になれます。何と言っているかお分かりですか。

- Don Matteo 7 Promo della puntata del 12 novembre (YouTube) 、33秒

(*2020年5月追記1: 

 番組の予告だった上記映像が現在削除されているため、代わりに、残念ながらイタリア国外では見られないと思うのですが、RaiPlay.it上のドラマ該当回へのリンクを添えて、リスニング該当箇所の秒数を書き換えています。(3)の言葉は、今回紹介する映像は予告編ではなく本編なので、RaiPlay.it映像にはないのですが、イタリア語学習に役立つと思うので、説明はそのまま残してあります。また、当時紹介した予告編にはなかった言葉も、本編には若干あるのですが、その部分のセリフは書き加えていません。


 またこの『Don Matteo7』は、2016年2月から、日本でもAXNミステリーで『マッテオ神父の事件簿 シーズン1』として、イタリア語音声・日本語字幕で放映されました。今号でご紹介する回のAXNミステリーチャンネルサイトでの説明をここに添えておきます。

第26号(2)「Don Matteo 7 〜 マッテオ神父の事件簿」_f0234936_1301890.jpg
https://www.mystery.co.jp/


追記了)


 取り上げて説明するのは3箇所、(1) Episodio 19 -1.01.16~-1.01.06、(2)? (どこで言っているか分かったら書き添えます。)、(3)24~27秒目の部分です。今回のリスニングは初級の方が対象です。中・上級の方は、これ以外の部分で何と語られているのか、耳を澄ませ、辞書を片手に考えてみてください。

 上記3箇所について、最初は場面の概要をつかむつもりで、それから一語一句しっかり逃さず聞き取るつもりで耳を傾け、聞き取れた言葉を紙に書いてみてください。

 では、答え合わせです。用意はよろしいですか。


- RaiPlay.it - Don Matteo Stagione 7 - Episodio 19 Perfetta
- RaiPlay.it - Don Matteo Stagione 7 - Episodio 20 Tango


(1) Episodio 19 Perfetta -1.01.16~-1.01.06


“Patrizia: Ciao, Giulio.
Giulio : Che fai lì?
Patrizia : Mi serve un passaggio alla stazione. ”


「パトリッツィア: こんにちは、ジューリオ。
 ジューリオ   : そこで、何してるんだい。
 パトリッツィア: 駅まで車で送ってもらう必要があるんだけど。」(「  」内は石井訳、以下同様)


 最初のCiaoが親しい相手に対するあいさつで1日中使える表現だというのは皆さんご存じだと思います。

 次のChe fai lì?について。cheは、ここでは「何を」という意味の疑問代名詞。faiは動詞fare「する」の直説法現在で、主語がtuのときの形です。は「そこに(で)、あそこに(で)」という意味の副詞で、と同義語です。

 Che fai?という表現は、日常よく使われます。「何をしていますか/何をしてるの」と聞く場合に使うこともあれば、少しいらついたように “Che fai!”「何してるんだよ!」と言って、相手が「するべきではないことをしている」旨を非難することもあります。

 イタリア語でも、動詞の直説法現在は、現在だけでなく近い未来も表しますから、たとえば“Che fai stasera?”「今夜は何をする予定なの?」と聞くこともできます。こう聞いてからだと、相手に一緒に何かをしようと誘いやすくなります。

“Patrizia: Mi serve un passaggio alla stazione.”

 “Mi serve...”も便利な表現で、「私には~が必要です」という意味です。たとえば店で、店の人に何がほしいか言うときにも使うことができますし、友人・知人に自分に必要なものを言うとき、協力してもらいたいときにも使える便利な表現です。

 伊伊辞典『Lo Zingarelli』には、次の例があります。

Ti serve qualcosa?”     「何かいるものがある?」
Mi servirebbe il tuo aiuto.” 「あなたの助けが必要なんですけど。」

 serveは、動詞servire(ここでは「必要である」という意味の自動詞)の直説法現在で、主語が三人称単数のときの活用形です。servirebbeは条件法現在でやはり主語が三人称単数のときの活用形です。

 この二つの例文でも、ドラマのパトリッツィアのセリフでも、「必要なもの」が文章の主語になっています。必要なのが「誰にとって」かは、動詞の前に代名詞の間接補語を置いて、あるいは前置詞a +名詞(代名詞)を置いて表します。「私に/君に/あなたに~が必要だ」は、イタリア語でそれぞれMi/Ti/Le serve ...と表現します。必要なものが複数である場合には、動詞が複数形になるので、Mi/Ti/Le sevono ...となることに気をつけましょう。この文の文法構造は、第20号でご紹介したMi/Ti/Le piace ... (Mi/Ti Le piacciono ...)「私は/君は/あなたは~が好きです」という表現の文法構造とよく似ています。

 日常生活でよく耳にするのが、“Ti serve una mano?”「助けが必要ですか?」という表現です。日本語でも「手を貸す」という表現がありますが、イタリア語でもdare una mano a ~は「~を手助けする」を意味し、mano(第一義は「手」)は「手助け」という意味でも使われます。

 ちなみに、だれかに「車で送ってください」と頼む場合には、普通はもう少し丁寧な表現を使いますので、ご注意ください。


(2) ? (*追記3:該当箇所を探して、ながら聞きしたのですが、今日のところはどの回のどの場面に出てくるか分かりませんでした。いつか分かり次第、説明を追加します。)


“Maresciallo: Mi dica. Che c’è?
Capitaono : No niente, maresciallo.”


 maresciallo とcapitanoは、carabiniere(国防省警察官)の位の名前で、それぞれ准尉、大尉です。部下と上司の対話なので、Leiを使って呼びかけています。訳してみましょう。


「准尉: おっしゃってください。何が問題なんですか。
大尉: いや、何でもありませんよ。准尉。」


 “Che c’è?”は直訳すると「何がありますか。」です。たとえば映画やテレビで今晩何があるかを聞くのにも使えますが、上記の会話にあるように、問題を抱えていそうな人・気難しい顔や暗い顔をしている人に向かって「一体何があったんですか」と尋ねる場合に使うこともよくあります。何人かが大声で騒ぎ立てたりしているときに、「何事ですか/一体何事か」と言うのにも使われます。


(3) 0:24-0:27 (*追記4:上述のように、テレビ番組本編には、この音声は含まれません。)

 この最後の部分では、番組がいつあるか、どのチャンネルであるかを、視聴者に伝えています。

“Don Matteo sette, giovedì prossimo. Ventuno e dieci. RAI uno.”

「Don Matteo 7、来週木曜日21時10分(から)。(チャンネルは)RAI 1です。」

 使用されている言葉は知っていても、自然な速度のイタリア語は速くて聞き取りが難しかったという方がおいでかもしれません。

 実際の会話やテレビ・映画のイタリア語は、イタリア語の先生や学習書付属のCDのように、一語一語はっきり、ゆっくりと発音されるわけではありません。それぞれの状況に応じて、早口で言ったり、口ごもっていたりする場合もあります。また、話し手の出身地や性別、年齢・職業・学歴などによっても、発音やイントネーション、語彙・文法まで少しずつ違ってきます。旅行や留学生活の中で耳にするイタリア語が理解できるようになるためには、そういうさまざまなイタリア語の音声にできるだけ慣れておくことが大切です。そのためにも、テレビや映画の音声映像はいいリスニング教材になると言えます。言葉が使用される場面の映像も共に映し出されるために、実際の会話と同じように、周囲の状況から言われていることを推測する訓練ができて、イタリアでの人々の生活習慣や特有のジェスチャーが学べるほか、映画・テレビドラマの利用には、そういう利点があるわけです。
 
第26号(2)「Don Matteo 7 〜 マッテオ神父の事件簿」_f0234936_1262947.jpg


 では、また。このところペルージャはめっきり寒くなり、夜間に気温が2~5度まで下がるため、我が家では夫が植木鉢を温室(serra)に運び込む作業を始めたところです。一方、義父は今週初めからオリーブ(olive、単数形はoliva)の収穫を始めました。

 イタリアでは最近になって、新型インフルエンザ(la nuova influenza)の感染者と死亡者が増加しています。死亡者のほとんどが従来疾患を抱えた人である上に、季節性インフルエンザに比べて症状が重いわけではないので、必要以上に心配する必要はないとのことです。ただし、年末に向けて、感染者数の急激な増加が予想されており、感染力の強いこの新型インフルエンザと、症状が重いけれども感染力の弱い鳥インフルエンザ(influenza aviaria)から、感染力も毒性も強いインフルエンザが発生する恐れがあると危惧されています。

 この時期に旅行を予定されている方は、日本語のサイトでも読める「新型インフルエンザの予防対策」にしっかり目を通しておいてください。

 新型インフルエンザに限ったことではないのですが、手をせっけんで洗うこと、こまめに室内の空気を換気することなど、できることから実践していきましょう。

ブログ関連記事へのリンク
グッビオとドン・マッテーオ
- グッビオに鐘響く (2011/5/22)
- 大好きDon Matteo (2012/2/6)
- Don Matteo 9、舞台がグッビオからスポレートへ (2014/1/9)
- ドン・マッテーオ2月日本上陸、Don Matteo10は1月から (2015/12/23)
- 神父探偵と古代ウンブリア人の町グッビオ、JITRA連載第6回 (2016/4/14)
さまざまなイタリア語
- イタリア語のTPO (2012/11/19)
- 美しいイタリア語と識字能力の低下 (2016/3/21)

イタリア語学習メールマガジン「もっと知りたい! イタリアの言葉と文化」関連号へのリンク
- 第20号(1)「旅先での会話(出身地・趣味)」

 

Articolo scritto da Naoko Ishii

↓ 記事がいいなと思ったら、ランキング応援のクリックをいただけると、うれしいです。
↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ  

Commented by ciao66 at 2020-05-07 20:20
神父さんが探偵というのはイタリアらしいねと思いました。見れないのがちょっと残念ですが・・・
そして、「話し手の出身地や性別、年齢・職業・学歴などによっても、発音やイントネーション、語彙・文法まで少しずつ違ってきます。」というお話、なるほどと思ったのでした。
Commented by milletti_naoko at 2020-05-08 03:55
ciao66さん、イタリアでは長寿の人気番組で、推理番組でありながらサザエさん的家族ドラマやどたばたコメディ的要素も含まれていて、家族で楽しめるドラマです。いつか日本でも皆さんが気軽に見られる形で放映されますように。

長い文章をていねいに読み込んでくださって、ありがとうございます♪
by milletti_naoko | 2009-11-07 13:00 | Lingua Italiana | Comments(2)