2009年 11月 20日
第28号(3)「Giorgia恋の歌 アルバム『Mangio troppa cioccolata』」
- 第28号(1)「人生からの逃避―小説『Il fu Mattia Pascal』」
- 第28号(2)「現実からの逃避―映画『向かいの窓 / La finestra di fronte』」
3. Giorgia恋の歌 アルバム『Mangio troppa cioccolata』
私が日本でイタリア語を勉強していた頃、よく聴いていたイタリア語の歌のCDの中に、ジョルジア(Giorgia)のアルバム、『Mangio troppa cioccolata』があります。題は訳すと、「私は、チョコレートを食べ過ぎてしまう」(直訳は「私はあまりにもたくさんのチョコレートを食べる」)です。
勢いのあるテンポのいいリズムに乗って、ジョルジアが若々しさと元気いっぱいの歌いっぷりを聞かせてくれます。最近のアルバムにはしっとりした大人の歌が多いのですが、この1998年のアルバムには、恋心や思いを、普段着の言葉で率直に語ったものが多いので、初級の方にも聞き取りやすく、勉強になると思います。
中から2曲選んで、簡単にご紹介します。
(1) Un amore da favola
アルバムのタイトル『Mangio troppa cioccolata』は、この歌の歌詞(映像中1:34-1:37)から取られています。まずは歌を聴いてみてください。
元気のいい歌いっぷりで、恋心を歌い上げているのですが、もう1度、内容を理解するつもりで歌に耳を傾けたあとで、以下を読んでください。
冒頭部を見てみましょう。
“Dove andiamo questa sera
sulla mia pelle il tuo sguardo mi sfiora
prova a chiedermi un sorriso
per te ho messo il mio rossetto deciso
e sono lì quando mi chiami
io non lo so quello che pensi di me ehi”
rossoが「赤、赤色」、あるいは「赤い」という意味なのはご存じですね。「知らない」という方は、第3号「色いろいろ」を読み返してください。rossettoはその縮小形で、「口紅」という意味です。日本語で、口紅がピンクだろうとオレンジ色だろうと口「紅」という言葉を使うように、イタリア語でも口紅の色に関わらず、口紅をrossettoと言います。恋の歌によく出てくる名詞が二つあります。sguardo(男性名詞「視線、まなざし」)とsorriso(男性名詞「ほほえみ」)。
最終行、“io non lo so quello che pensi di me”について。non lo soは、一つ目の記事で説明したように「私にはそれが分からない」という意味です。ただ、ふつうこの表現ではloが直前に述べられた事柄を指すのですが、この歌では、loという代名詞が後に来るquello che pensi di me(あなたが私をどう思っているのか)を指しています。
訳してみましょう。
「『今晩はどこへ行こうか。』
あなたのまなざしが私の肌の上をさっと走る。
私に『ほほえんでくれ』と言ってみてよ。
あなたのために、鮮やかな色の口紅をつけたの。
あなたが呼ぶとき(電話してくれば)私はそこにいる。
あなたが私をどう思っているのかが、私には分からないの。」(「 」内は石井訳、以下同様)
続いて、歌のサビの部分を見てみましょう。
“Guarda che non sono una bambola
io che in tutto quel che faccio ci metto l'anima
sogno un amore da favola
ho tanto bisogno di te”
guardareも頻繁に使われる動詞です。意味は、「見つめる。気をつける。」
“Guarda!”はtuに対する命令形で、「気をつけなさい。」とか「よく見なさい。」とか言う意味ですが、「ほら、見てよ。」と言った具合に、誰かに呼びかけるのに使う場合もあります。「注意する」べき内容はche以下の関係節で述べられています。
3行目のun amore da favolaについて。 favolaは「おとぎ話」。前置詞daは、名詞のあとについて、その名詞の用途や属性を表します。このdaを使った表現には、たとえば、camera da letto(寝室、直訳は「ベッド用の部屋」)、occhiali da sole(サングラス)、 scarpe da tennis(テニスシューズ)などがあります。
アニメ、「赤毛のアン」のイタリア語でのタイトルはAnna dai capelli rossiで、ここでも前置詞daが使われています。(daiは、前置詞daと定冠詞iが結合したものです。)
4行目のho bisogno di ...は、「私には~が必要だ。」という意味です。これも買い物をするときや、人に何かを頼むときに使える便利な表現です。bisognoは「必要」という意味の名詞ですから、ho tanto bisogno di teは直訳すると「私にはあなたがとても必要です。」となります。
訳してみましょう。
「気をつけなさいよ、私は人形じゃないのよ。
することすべてに魂を込める私は
おとぎ話のような恋愛を夢見ているの。
私にとって、あなたはとても必要な存在なの。」
この歌の歌詞全文は、以下のページにありますので、ぜひ歌詞を見ながら歌を聴き、歌詞で分からないところを辞書で調べてみてください。
アルバムの題名にある「Mangio troppa cioccolata」という言葉は、先の映像の1:34-1:37、1分34秒目から1分37秒目で歌われています。
-AngoloTesti.it – Giorgia - Un amore da favola Testo
自分でも一緒に歌ってみると、イタリア語のリズムやイントネーションが知らずに身につき、表現や単語も頭に入りやすくなります。
(2) Un’ora sola ti vorrei
まずは、次のリンクから歌を聴いてみてください。どんな気持ちを歌ったものか、お分かりですか。
題の中のun’oraは「1時間」、un’ora solaは「1時間だけ」を意味します。Vorreiは補助動詞volere「~したい」の条件法現在、主語がioの時の活用形ですから、題を訳すと「せめて1時間だけでも、あなたがほしい/あなたが私のものであったらいいのに」となります。このVorreiは日常生活で使える機会の多いとても便利な言葉です。第8号の二つ目の記事の半ばで詳しく説明していますので、まだ読まれていない方は参考にしてください。
歌詞の前半部分を見てみましょう。
“Io che non so scordarti mai
per te darei la vita mia
per dirti quello che non sai
Un'ora sola ti vorrei”
最初に主語Io(私は)があり、直後にcheが来ています。普段あまり耳にしない文型で初級の方には難しいかと思うのですが、このcheは関係代名詞で英語のthatに該当します。1行目のso、3行目のsaiは、一つ目の記事、「人生からの逃避―小説『Il fu Mattia Pascal』」でご説明した他動詞sapere(~を知っている、~できる)の直説法現在で、それぞれ主語がio、tuのときの活用形です。訳してみます。
「あなたを決して忘れることのできない私、
あなたのためなら私の人生だって惜しくない私は、
あなたの知らないことをあなたに告げるために、
1時間だけでいから、あなたが私のものであったらと望んでいるの。」
この後、その「1時間」に何をしたいか、「あなた」が私にとってどれほど大切な存在かを、美しい歌声で切なく歌い上げています。この歌の歌詞全文は、以下のページにありますので、ぜひ歌詞を見ながら歌を聴き、歌詞で分からないところを辞書で調べて確認してみてください。
- AngoloTesti.it - Giorgia - Un'ora sola ti vorrei Testo
最後に、このアルバムが購入できるページへのリンクを貼っておきます。
amazon.co.jp - Giorgia "Mangio Troppa Cioccolata" [CD]
amazon.it - Giorgia "Mangio Troppa Cioccolata" [Audio CD]
イタリア語の勉強仲間へのクリスマス・プレゼントとしても喜んでもらえるのではないかと思います。
では、また。今、外で夫がオリーブを摘んでいます。今日はもう日が暮れてしまうのですが、明日土曜日には私も手伝いたいと思っています。
日本の友人の周囲でも、あるいはイタリアの夫の職場や同僚の子供が通う保育園でも、新型インフルエンザがかなり流行しているようです。皆さん、体調には十分気をつけてお過ごしくださいね。
イタリア語学習メールマガジン「もっと知りたい! イタリアの言葉と文化」関連号へのリンク
- 第3号「色いろいろ」
- 第8号(2) 「イタリア語学習におすすめの教材(入門者編)1 Vorrei vs Voglio」
- 第14号 「バーチチョコ誕生秘話、交通機関のストライキ」
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GiorgiaのCD私も持っています。
とても気に入っていて、よくこのCDを持ってイタリアを旅行しました。車の中でかけて走ると、イタリア語の響きがとても美しくて、イタリア語はほんの少ししかわからない私でも最高な気分になりました。彼女は今はあまり活動していないのでしょうか。なおこさんのご解説をよく読んで聞いたら、もっとヴィヴィッドに歌が心に響きそうです。私もまた聴いてみますネ。
まほろばさんが買われて、車の中でよく聞かれていたのは、まだドイツに暮らされて、イタリアを訪ねる機会が多かった頃でしょうか。わたしが日本で、そうしてイタリアにきてから聞いていた時期とも重なっていそうで、何だか新たなまほろばさんとのつながりが見つかったようで、とてもうれしいです♪