2009年 12月 31日
第33号(1)「Tabaccheria、店・職業を表すイタリア語」
1. Tabaccheria、店・職業を表すイタリア語
遅ればせに年賀状を送ろうとtabaccheriaで切手(francobollo)を買いました。tabaccheriaはtabacco「タバコ」という単語から派生した言葉で、直訳すると「タバコ屋」ですが、他にもいろいろな品物を売っています。
切手、収入印紙(marca da bollo)、塩、文房具やアメ・ガム・チョコレートなどが置いてあるほかに、宝くじ(lotteria)やそれに準ずるものもいろいろ販売しています。私が店にいて、購入した切手を封筒に貼っている間にも、宝くじを買いに来た人や当たり番号を確認しに来た人が何人かいました。切手は郵便局でも売っているのですが、長い列に並ぶのを避けるため、私はできるだけtabaccheriaで買うことにしています。ちなみに、tabaccheriaの目印は、青地に白いTの字です。
私の封筒を見て、宛先が日本であることを見たtabaccaio(tabaccheriaの主人)が興味を持って話しかけてきました。おしゃべりしているうちに、息子さんがペルージャ外国人大学に通っていて、交換留学で2度日本に留学した経験があるということが分かりました。地球規模化(globalizzazione)によって、世間がますます狭くなっていることをつくづく感じました。
さて、タバコ屋の話が出たついでに、クイズです。
次の店ではそれぞれ何を売っているか分かりますか。イタリア語と日本語の両方で答えてください。ヒントは単語tabacco「タバコ」とtabaccheria「タバコを売る店・タバコ屋」、tabaccaio「タバコ屋の主人」の派生関係と後の2語で使われている接尾辞です。
(1) libreria (2) gioielleria (3) biglietteria
(4) farmacia (5) pizzeria (6) panetteria (7) fioraio/fiorista
答えは以下のとおりです。
(1) libro 本 (2) gioiello 宝石 (3) biglietto 切符、入場券
(4) farmaco/medicina 薬 (5) pizza ピザ (6) pane パン (7) fiore 花
上の文章を読んで、店・店の主人を表す接尾辞がそれぞれ-eria・-aioだと推測できた方は、(6)以外は問題なく解けたのではないかと思います (6)について、ペルージャでは「パン屋」をfornoと呼ぶことの方が多いようです。(7)のfioraioとfioristaは、いずれも「花を売る店・花を売る人」の両方の意味で使われます。fioreria「花を売る店」という単語も存在はしますが、伊伊辞典にはraro「めったに使われない」と書かれています。
こうした接尾辞は単語を見て意味を推測するには役立つのですが、いつでも商品名に-eria・-aioをつけると店や店の主人を表す単語になるとは限りませんので注意してください。たとえば、靴(scarpe、女性名詞・複数形)を売る店はcalzoleriaですし、肉(carne)を売る店はmacelleria、「肉屋の主人」はmacellaioです。先の問題でも、それぞれの店の主人や仕事にあたる人物はlibraio, gioielliere, bigliettaio, farmacista, pizzaiolo, panettiere/fornaio, fioraio/fioristaです。このように、店の主人や店で働く人を表す接尾辞には-aioの他にも、-iere, -ista, -aioloなどがあります。
ギリシャ語起源の接尾辞-istaは、職業に従事する人を表す接尾辞としてよく使われます。この接尾辞は英語では-istとなります。artist, journalist, pianist, stylistという英単語は、日本語にも外来語として入ってきていますので、皆さんもご存じでしょう。これらは、イタリア語ではそれぞれartista, giornalista, pianista, stilistaとなります。-istaと、語末が-aになっていますが、「芸術家」は男性であろうと女性であると一人ならばartistaで同形です。複数形はそれぞれartisti, artisteとなりますので注意してください。この言葉に限らず、ギリシャ語起源の名詞では-aで終わるのに男性名詞であるものがあるので注意が必要です。語末が-aの男性名詞で、よく使われる単語にはproblema 「問題」、programma「計画」、tema 「主題」、clima「気候」などがあります。英語では、それぞれproblem, programme (program), theme, climeであり、これらの単語は同じギリシャ語の単語を起源としているために、イタリア語と英語の語形が非常に似通っています。
「店」を表す一般的な単語は、negozio(男性名詞)です。たとえば、眼鏡(occhiali男性名詞・複数形)を売る店は(negozio di) ottica、洋装店はnegozio di abbigliamentoです。日本語では、本屋・薬局・花屋などさまざまな商店を、大ざっぱに「店」という言葉で言い表すことができます。イタリア語でもこうしたすべての店をそれぞれnegozio (男性名詞)と呼んだり、概括してnegozi(negozioの複数形)と言ったりすることができます。
こんなふうに接尾辞や接頭辞の知識が少しあると、単語を覚えたり、知らない単語に出会ったときに意味を推測したりするのに大変便利です。言いたいことがあるのに、イタリア語でどう言っていいのか分からないというときも、こういう接尾辞の知識を駆使して単語をでっちあげてみると、実はその単語が存在していたり、存在しない言葉であっても相手がこちらの言わんとすることを分かってくれたりするものです。
これからイタリア語を学習していく際には、こういった接尾辞・接頭辞にも注意してみてください。なりは小さくても、大きな助っ人になってくれることが、たびたびあるはずです。
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ちょっとした街の雑貨屋さんなんですね。
クイズ!
イタリア語知識ゼロの私ですが、
なんと5問も当たっていました!笑。
1,4,5,6,7はなんとなく想像が付きました。
2と3はいくら考えてもわからず、なんども発音してみましたが
浮かんで来ませんでした。
面白いですね~言語って。
息子がまだ高校生のときにお世話になっていた英語の塾は
英単語を学習するときに、今回のなおこさんのように、ギリシャ語を例に出して、単語の造りを教えてくださったそうで、
それで単語がすごく覚えやすくなったと言っていました。
なんだかそんなことを思い出しました♪
おお、クイズまで挑戦してくださって、ありがとうございます! 2と3は、イタリア語やフランス語を知っている人には分かりやすいと思うのですが、売るものそのものを指す言葉を知らないと、なかなか難しいですよね。
息子さんが通われていた英語塾でも、起源となっているギリシャ語や構造を教えられていたんですね。人間の脳は、ただ単純に情報をつめこんで記憶するのは苦手で、何らかの意味づけをした方が覚えやすく記憶も長持ちするのだそうで、だからこそ、語源や語の構造、例文やその言葉を含む会話や文章といっしょに学ぶ必要があって、漢字も、部首や漢字の構成、用いられている熟語などといっしょに学ぶと覚えやすいことに通じるものがあると思います。