イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第47号「『日本で離婚まつりがブーム』」?」

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 2010年6月23日発行のイタリア語学習メルマガ47号「『日本で離婚まつりがブーム』?」をこのブログに移行しています。


 「日本で離婚まつりがブーム」?

 今朝、今日のニュースを確認するために、イタリアの有力新聞紙、『La Repubblica』のホームページで、見出しを眺めていて、次の見出しに、びっくりしました。

  “Giappone, è di moda la festa del divorzio”
  「日本で離婚まつりがブーム」

 modaは「ファッション、流行」という意味で、ご存じの方も多い単語かと思いますが、essere di modaで「流行している」という意味になります。

 festaもいろんな意味でよく使われる言葉で、「祝日、休みの日」という意味もあれば、家で開くパーティを指す言葉でもあるのですが、記事を読んで、真っ先に思い浮かんだ語義は、「祭典、まつり」でした。

 というわけで、さっそくリンクをクリックして、記事を読んだ後、さらに日本語の記事もいくつか読み、ようやく誤解が解け、事情も分かって納得しました。

 このイタリア語の記事には、結婚・離婚にまつわる関連用語が頻出しています。こういう互いに関わりのある言葉は、文脈の中でいっしょに学ぶと、覚えやすい上に、記憶にも残りやすいのです。というわけで、今回は、この記事を読んで、イタリア語を学習しましょう。

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http://tv.repubblica.it

 このニュースへのリンクは、以下のとおりです。

La Repubblica – Giappone, è di moda la festa del divorzio

 ビデオ映像もあるのですが、説明が英語ですので、今回は映像ではなく、書かれている記事を見ていきましょう。

"Giappone, è di moda la festa del divorzio (23 giugno 2010)
Cresce il numero di divorzi in Giappone e i nipponici corrono al riparo. Se non si può evitare di mettere fine al matrimonio, si può almeno tentare di rendere il tutto più piacevole. Al costo di pagare circa 600 dollari per far officiare il proprio divorzio da un cerimoniere, con parenti e amici riuniti per assistere alla rottura della fede.
Davanti agli invitati la coppia stringe tra le mani un martello e per celebrare la rottura del matrimonio i due spezzano insieme le fedi che un tempo li avevano uniti. Da circa un anno è l'ex commerciante Hiroki Terai - che prossimamente celebrerà a Seoul il primo divorzio in trasferta - a gestire il business delle cerimonie di divorzio e le richieste sono passate da 25 a circa mille in meno di dodici mesi. (a cura di Benedetta Perilli)"

 何度か読んでみて、概要を理解するべく努めてみてください。初級の方や、中級で、記事が難しいと思われる方は、先に、同じニュースを扱った次の日本語の記事を読んでみてください。

ロイター、「東京で『離婚式』、共同作業で結婚指輪つぶす」

 記事を読んで、「離婚まつり」ではなく「離婚式」だと分かって、ほっとしました。確かに、「結婚披露宴」のこともfesta di matrimonioと言います。記事の見出しにあるdivorzio「離婚」とmatrimonio「結婚」という言葉を、まずは押さえておきましょう。

 見出しは、「日本で、離婚式が流行」と訳せます。

 まずは、第一段落を見てみましょう。

"Cresce il numero di divorzi in Giappone e i nipponici corrono al riparo. Se non si può evitare di mettere fine al matrimonio, si può almeno tentare di rendere il tutto più piacevole. Al costo di pagare circa 600 dollari per far officiare il proprio divorzio da un cerimoniere, con parenti e amici riuniti per assistere alla rottura della fede. "

 段落末にある単語、fedeは結婚式には欠かせない「結婚指輪」です。このfedeの複数形fediが第二段落の一文目にも使われています。アクセントのない二重母音-ioで終わる男性名詞divorzio「離婚」の複数形がdivorziとなることに注意してください。

 こういうふうに複数形を作る男性名詞や形容詞は、基本重要語句にもいくつかあります。

 たとえば、occhio ⇒ occhi「目」、vecchio ⇒ vecchi「古い、年老いた」。

 occhii、vecchiiとはなりませんので、要注意。

 ただし、同じ-ioでも、この「i」の上にアクセントがある場合は、複数形が「-ii」となります。たとえば、zio ⇒ zii「おじ」。

 結婚式には招待客がつきもので、たとえば記事にもあるparenti 「親戚」やamici「友人」が招待されるのですが、ここでは親戚・友人は離婚式に立ち会う人として書かれています。

 訳してみますね。

「日本で離婚の数が増えており、日本人はその対策を講じている。もし結婚に終止符を打つことが避けられない場合には、せめてすべてを、より心地よいものにすることができる。式プランナーによる自らの離婚式を行うために、約600ドルの費用を払い、集った親戚や友人に、結婚指輪をたたきつぶすのに同席してもらうことによって。」  (「 」内は石井訳。以下も同様。)

 第二段落を読んでみましょう。

"Davanti agli invitati la coppia stringe tra le mani un martello e per celebrare la rottura del matrimonio i due spezzano insieme le fedi che un tempo li avevano uniti. Da circa un anno è l'ex commerciante Hiroki Terai - che prossimamente celebrerà a Seoul il primo divorzio in trasferta - a gestire il business delle cerimonie di divorzio e le richieste sono passate da 25 a circa mille in meno di dodici mesi. (a cura di Benedetta Perilli)"

 引き続き「結婚」・「離婚」に関連する言葉を見ていきましょう。

 invitatiは「招待客」を意味するinvitatoの複数形です。このinvitatoは、もともと動詞invitare「招待する」の過去分詞で、「招待された、招かれた」という意味でも使われます。coppiaは「夫婦」。ただし、結婚している「夫婦」だけではなく、恋人同士のカップルも、イタリア語では同様に、coppiaと言います。

 celebrare「祝う、(式典を)行う」、cerimonia「儀式」も覚えておきましょう。英語ではcelebrate、ceremonyですから、似ていて覚えやすいのですが、イタリア語では「ce」の発音が「セ」ではなく、「チェ」になります。(ただし、日本語のチャ行と違い、唇をすぼめ、かなり前に突き出して発音します。)celebreràは、celebrare直説法未来の主語が三人称単数形のときの活用形です。さらに、cerimoniaのアクセントはoの上に来るので、長音になるのは、このoですから要注意。最後の一文では、「離婚式」をcerimonie di divorzioと呼んでいるのですが、このcerimonieはcerimonia「儀式」の複数形です。

 内容的に、結婚に関わるのが、insieme「いっしょに、共に」という副詞です。

 第二段落の一文目を訳してみますね。

 「招待客の前で、夫婦は、両手にハンマーを握りしめ、結婚の終焉を祝うために、二人がいっしょに、かつて自分たちを絆で結んだ結婚指輪をたたきつぶす。」

 この後には、考案者の離婚式プラナー、寺井広樹さんや離婚式を希望する人の急増について書かれているのですが、ほぼ同じことが日本語の記事にも書かれていますので、訳は割愛します。

 せっかく二人いっしょに歩み始めた人生ですから、できたらいつまでも共に生きていけたらいいとは思うのですが、次の記事を読んで、この「離婚式」の意義や大切さも感じました。

・神戸新聞/経済/「離婚式で新たな門出 親類に別れを披露」
(*追記:2020年6月現在はリンクが無効となっているため、題名だけ残して、リンクは削除しました。)

 やむにやまれぬ事情でどうしても別れが避けられない場合もあるでしょうし、そうした場合、日本でもでしょうが、イタリアでも、その理由について、後々まで何年も友人や知人が推測したり、憶測で話したりもします。ただでさえ辛い本人たちが、何度も異なる人の前で事情を繰り返すことがなく、また、知人や親戚があらぬ憶測やうわさ話をすることがないためにも、何がうまく行かなかったかを皆の前で説明することは、大切だと思います。

 また、式というのは、葬儀や離任式でもそうですが、自分の心にしっかりとけじめをつけて、後ろをふり向かず、前を向いて歩いて行く手助けをしてくれると思うのです。

 実は、かねてわたしが残念に、また恐ろしく思っていることの一つに、イタリアでは、かつての夫や恋人が、元妻ないしは恋人であった女性を、あきらめきれずに殺害するという事件が非常に多いことです。伴侶を本当に愛するのではなく、自分の所有物のように思う男性が、こういう犯罪に走るのだと思うのですが、こういう男性たちにこそ、いろいろな意味で、こうした離婚式が必要ではないかと思います。

 日本語の記事には書かれている、離婚式の本当の意義が、イタリア語の記事には抜け落ちているのが残念です。



 おわりに

 話は変わって、6月16日は、わたしたちの3度目の結婚記念日だったため、夫と1泊2日の小旅行をして、ささやかに祝いました。旅行中に訪れたマルケの小村がそれはすてきだったので、ブログの記事でご紹介しています。興味のある方はお読みください。
 
マルケ州の3小村を訪ねて ~祝3周年の小旅行1

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祝3周年の小旅行2   

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 3周年にあたっての思いを、詩にしてみたりもしました。よろしかったら、お読みください。

二人歩めば ~結婚記念日によせて

 話を離婚で始めたので、終わりをよくするためにも、結婚について書いた記事へのリンクを張ってみました。

 また、外国語の発音の難しさについて書いたのが次の記事です。イタリア語学習にも大いに関わる問題ですので、イタリア語の発音が難しいと感じている方は、ぜひお読みください。

アイとコイを口にするイタリア人?

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 他にも、オリーブやズッキーニの花野山で見かけた美しい花々の写真を載せたり、アドリア海沿岸ミニクルーズの体験について書いたりもしています。梅雨の時期に、雨に降り込められて、何をしようかというときにでも、写真を眺めたり、記事を読んだりしていただけると、うれしいです。少しずつイタリアを知るたびに、イタリア語学習の意欲も、高まってくるはずです。
        
 ペルージャでは、しばらく真夏のような暑い毎日が続いたあと、最近はしばらく雨が降りがちで、気温が下がってきています。

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 野菜畑ではズッキーニ(zucchina)がぐんぐん育ち、このところ我が家では、料理するときにも、食事を始める前にも、「またズッキーニ!」という悲鳴が聞こえ始めるようになりました。わたしも義母も、毎回できるだけ違う調理法を試みてはいるのですが、ズッキーニはズッキーニです。

 ご愛読ありがとうございます。では、また再来週、お会いしましょう。
 

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by AU3OGR at 2020-06-12 18:03
なおこさん

一文字違うだけで全く違う印象ですね。
言葉は正確に使う事がいかに重要かわかりますね。
それにしても離婚式やるって事は1人ではなく
2人揃ってということですよね。
共同作業ができるほどの仲なら離婚しなくても
良さそうですけど。
普通は顔も見たくない、口もききたくないのでは?
夫婦の仲というものは他人には理解し難い部分があるのですね(*^_^*)
Commented by milletti_naoko at 2020-06-14 23:17
AU30GRさん、本当、おっしゃるようにたった一字違いなのに、内容はかなり違いますね。ただ、どちらも二人でいっしょに決意をして、これから新しい暮らしを始めるためにけじめをつけて、近しい人たちには知っておいてもらおう、そういう点では共通していると思います。

きっぱりと思いを断ち切る、その必要もあるために、式を行うのかもしれませんね。
by milletti_naoko | 2010-06-23 12:00 | Notizie & Curiosita | Comments(2)