イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

いまだに混乱 イタリア市民と結婚しての手続きと権利

「イタリア市民の配偶者でありながら権利の縮小
 役所仕事は、こうして欧州連合市民の家族の生活を煩雑にする」

 これは2007年6月10日の、la Repubblica紙が当時発行していた移民生活情報誌、Metropoliの記事の見出しです。記事本文には、イタリア人と結婚したら得られるはずの権利が、法改正などの情報が警察や役所の末端まで行き届いていないために得られず、ひどい不都合や面倒を強いられることが多々あるという状況が書かれています。

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la Repubblica Metropoli del 10 giuno 2007

 2007年4月にEU法を受けて、イタリアでは、イタリア市民と結婚した配偶者が取得できる権利やイタリア滞在のために申請・取得できる書類、発行のための手続きが大きく変わりました。記事には、その法改正が実際に申請を受領したり手続きを行ったりする警官まで行き渡っていないために、あるはずの権利が行使できなかったり、申請にあたって本来は警察でできるのに、郵便局に行かねばいけないと言われたりしたという事例が、紹介されていました。

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 この号の一面には、「イタリア市民と結婚する人にとっても権利が半分のみ」と書かれています。coppie misteはcoppia mistaの複数形で、直訳するとミックス・カップルで、ここでは互いの出身国が異なる二人がなす夫婦と意味で使われています。カトリック教徒である夫とそうではないわたしの結婚式をカトリック教会で行うにあたっては、matrimonio mistoを教会で行えるように申請を行ったのですが、この場合のmistoは「宗教が異なる者どうしの結婚」ということです。また、レストランのメニューに、insalata mistaとあればミックス・サラダのことで、レタス以外にもトマトやキュウリ、ニンジンなど、店や季節によって具は違いますが、様々な具が使われたサラダということです。

 閑話休題。今になってこの13年前の記事を引用したのは、イタリアに暮らす日本の方のブログやツイートを通して、近年になっても、イタリア人と結婚した日本の方が、本来は不必要で煩雑な手続きや手数料を要求され、しかも本来よりも有効期間が短く、享有できる権利も少ない滞在許可証を取得することになった例があることを、知ったからです。また、直接このことに関わるわけではないのですが、イタリアに暮らす様々な非EU圏出身者に発行するべき書類を、相も変わらず混同している警察官が今もいると、つい最近になって知ったからです。



 2007年4月からは、非EU圏出身者がイタリア人と結婚した場合、郵便局に行かずとも、無料あるいは身分証明書と同程度の値段の手数料(後に若干は実費程度の手数料も課してよいことになりました)で、また滞在許可証に比べるとずっと少ない書類を提出するだけで、まずは有効期間が5年、そして、5年後には無期限のEU市民家族用の滞在証(Carta di soggiorno per familiare di cittadino UE)が取得できるようになりました。

 にも関わらず、その後何年経っても、申請に際して多額の料金や不要な書類を請求された、そして発行されたのが「家族用の滞在許可証」(permesso di soggiorno per motivi familiari (per motivi di famiglia))だったという方が、近年になってもまだおられるようです。

 当然得られるべき権利を、不要な手続きや手数料、めんどうなしに得ることができるのは当たり前のことなのですが、残念ながらそうはいかないことが多い現状です。というわけで、すでに何度か提供してきた情報ではありますが、より多くの方に知っていただければと、もう一度記事にすることにしました。

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Dall'aprile 2007 gli sposi extracomunitari di cittadini italiani hanno il diritto di richiedere prima la Carta di soggiorno per familiare di cittadino UE
della durata di cinque anni e, dopo cinque anni, la Carta di soggiorno permanente e per entrambe le occasioni presso la questura o gratuitamente o pagando il costo eventuale degli stampati e del materiale a seconda delle indicazioni della questure di competenza. Nonostante ciò ancora nel 2020 alcune questure rilasciano loro il Permesso di soggiorno per motivi familiari della durata di due anni o la confondono con la ex Carta di soggiorno, cioè il Permesso di soggiorno UE per soggiornanti di lungo periodo il rilascio della quale richiede più documenti e il costo elevato. Dunque, l'articolo della fotografia è del 10 giugno 2007 ma tuttora esistono molti "Sposi di italiani con diritti ridotti" per colpa della burocrazia.
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by yuki0901671 at 2020-06-23 08:44
おはようございます。

私の昔の知り合いが外国人と結婚しましたが、
やはり面倒な手続きは必要だと言っていましたね。
どこの国にもあるのでしょうかね。
特にイタリアはバチカンがある国ですからカソリック
を守ろうとする意識が強いのでしょうか。
日本は宗教的な部分では緩いのですが、ビザ関連で
ややこしいと聞いたことがあります。
Commented by zakkkan at 2020-06-23 16:00
アイだけでは・・通じ合えないのです

今、盛んに人種問題が定義されてますが
ひと昔、前は黄色人種も差別対象でしたね

話は変わりますが、
そうですか、日本は一民族ですから
その点が、解っているようで、解らないです
欧州や、アメリカでは、多民族国家だと思ってましたが
ままならないのは、お役所の方ね
その点は、日本もよく似た点があります
Commented by milletti_naoko at 2020-06-23 17:21
yuki0901671さん、こんにちは。

日本に暮らす外国人の方が、煩雑な手続きや差別などで苦しまれる例も多々あると知り、どうか欧州出身の人ばかりではなく、世界中の様々な国から来た方、背景や文化を持つ方に対しても、心ある対応ができる日本であってほしいと、願っています。

宗教に関してはカトリック教徒がやはり多いものの、宗教離れが進み、イタリア人の友人には仏教やイスラム教のスーフィーに改宗した人もいます。いずれにせよ、滞在手続きに関して、そういう意味で宗教が問題になることはないと思います。
Commented by milletti_naoko at 2020-06-23 17:50
zakkkanさん、人種は生物学的には存在しないので、人類は同一種だそうです。肌の色も、出身国、学歴、資産、宗教、性別、性的指向などと同様、本来あってはいけない様々な差別・偏見が世の中にあるのですけれども。

肌の色そのものに起因する偏見や差別は、イタリアでは感じることがあまりないのですが、わたしがイタリアに暮らし始めたときは、東洋人と言えば日本人観光客が多かったこともあり、文化に対する好意と共に客であるという意識もあってか比較的親切な人が多かったのに、暮らし始めて20年近くの間に、中国経済の台頭があり、マスメディアの報道の仕方も影響してか、中国からの移民や中国の商品がイタリア人の仕事を奪い、賃金を低下させるという意識を持つ人が増えて、目にする東洋人に、たとえばそれが日本人、韓国人、台湾人であるかが分からぬままに、「中国人」と面と向かって、あるいは背後で言う人に会ったり、またはわたしへの接し方や見方が冷ややかだと感じたりする場合が、増えてきたように思います。わたし自身の友人や家族には、東洋文化を始めとする外国文化に関心・敬意を持つ人も多く、上記のような人は一部であることを願ってはいるのですけれども。また賃金の低下や中国商品の優勢は、イタリアの企業の方針や消費者の「質や伝統よりも売り上げの利益」、「質よりも値段」という選択にもよるのであって、一概に矛先を中国や中国の人に向けるのは間違っていると、個人的には考えています。

日本にも民族としてはアイヌの方がおられるほか、沖縄の琉球も、固有の民族・文化を持つとユネスコに認められています。また、現在では日本国内にも多くの多国籍の方が暮らされ、日本経済を支えてくれています。わたしは幼稚園の最後と小学校5年生の冬までを札幌で暮らしたので、アイヌの歴史や文化、歌も学ぶ機会があったのですが、アイヌや琉球など、異なる文化や民族の日本国内における存在をもっと日本全国で認識し、そうした文化を守っていこうとする意識が高まっていくように、そして、外国から日本に来て暮らしている方がもっと生活しやすく、差別・偏見に苦しまずに生きていけるように、国や教育現場、マスコミがもっと積極的に動いてほしいと切に願っています。
by milletti_naoko | 2020-06-22 23:39 | Sistemi & procedure | Comments(4)