イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

平常へ授業・仕事と危険な間違い、日本語授業・夫の職場と夕焼けきれいな湖畔の店

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 月曜日に教え子の13歳の少年が、火曜に姪のアレッシアが、それぞれ中学校・高校卒業のための大きな山を無事に越えることができました。少年は一つ主題を選んで、それを歴史、イタリア語など様々な教科と関連づけて多くの先生方の前で発表する必要があり、姪は、今年は口頭試験のみとなったものの、やはりそれまでの勉強の成果が大きく問われる高校の卒業試験があって、二人ともずいぶん前から入念に準備をしていました。

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Lago Trasimeno al tramonto, San Feliciano, Magione (PG) 25/6/2020

 イタリアの学校制度では、小学校が5年、中学校が3年、そして高校が5年となっています。13歳の少年は、発表の主題に日本を選んだので、それぞれの教科に関連しての発表内容から、発表後に可能性のある質疑応答の準備まで、わたしも少年や母君に協力して、関わってきました。発表に与えられた時間がわずか15分とのことで、内容の広さに対する時間の制約のために、わずかな時間に要点を押さえて発表ができるように準備するのはかえって大変だったのですが、月曜に電話で報告があり、自身も教員であるがゆえに評価の厳しい母君も、「堂々といい発表ができた」と言っていたので、ほっとしました。翌日には姪も無事、高校の卒業試験に合格したと電話がありました。明日は日曜恒例の大家族での昼食には来ないとのことなので、また直接会って話を聞くのを楽しみにしています。ふだんはそれほど勉強に熱心ではないように見えた姪も、試験前1か月頃からは、日曜の昼食後にもすぐに勉強を始め、睡眠時間を削って勉強していると聞いていました。

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 6月半ばからは、感染を防ぐための手だてを講ずれば個人授業は可能となったので、今週火曜の授業では、我が家のテラスで授業をすることになっていました。久しぶりに直接顔を見て、無事に発表を終えられたお祝いも言えると思っていたら、残念ながら母君の仕事の都合で、この日もオンライン授業となったのですが、少年もうれしそうで、晴れやかな顔をしていました。

 学校を卒業する直前の3か月間は、中学校であれ高校であれ、以降は進路が分かれてしまいがちである大切な友達と、いっしょに過ごして絆を深め、思い出を作ることができるかけがえのない時期です。わたしは、自分自身が中学3年の冬休みに、父の転勤のため、東京から松山に引っ越して、転校することになったのですが、卒業後はそれぞれが通うであろう別々の高校について、模試の結果などを見ておしゃべりもしながら、あと3か月はいっしょに過ごせると思っていた、その3か月が皆といっしょに過ごせなくなって、悲しくて仕方がなかったのを今も覚えています。

 少年の場合は近所に住む級友が多いようで、姪もずっと仲のいい友達二人とは、秋からペルージャで大学生として暮らし始めるにあたって、同じアパートを借りて住む予定ではあるそうなのですが、幼い子供から大学生まで、仲間とともに教室で共に過ごせなかったこの3か月は、オンライン授業や電話などでのつながりは保てていても、何か失われてしまった大切なものが、様々な形で残るように思います。イタリアでは今後何事もなければ、9月14日から学校での授業が再開されることとなったのですが、外出・移動規制の3か月間を、育ちゆく過程の中で、不安と寂しさの中で過ごさざるを得なかった子供たちのために、オンラインでは不十分だった教育を補充する必要があるのはもちろんのこと、精神的な支援も必要となってくるのではないかと思います。

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 来週からは少年の授業だけではなく、他の生徒ともオンラインではなくテラスでの対面での授業をぼちぼちと再開していくことが決まっています。少年の授業だけは、おそらくは「非常時の中で、せめて好きな日本語の授業は毎週受けられるようにしてやろう」という母君の配慮のおかげで、オンラインでの授業も以前と同じように毎週続けてきました。そうして、これも少年の授業だけは、母君が仕事で多忙であることと、ちょうど我が家と少年の家の間の道路が、次々に工事中となり今も渋滞する地点があることもあって、授業料の支払いは、我が家での授業を再開するときで構わないと、わたしの方から言ってあります。まだかなり感染者の多い時期に、「お宅の前の郵便受けに入れておくわ」と言ってくれたときもあったのですが、うちの郵便受けは、鍵がかかっていても、悪意のある人が上から手を差し込んで取ってしまうことも不可能ではないため、うちでの授業再開時でいいと言ってきました。長年の同僚でもあるので、確実に支払ってくれることは分かっているのですが、未払いの授業料も300ユーロ近くになってきているので、そういう意味でも、少年の授業が来週こそは我が家でできることを願っています。

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 先週はもっぱら中学卒業のための発表の準備一辺倒になって、日本語そのものの授業が進まなかったので、火曜の授業までにと、おさらいの宿題のプリントを渡していました。正確には、母君にメールで送って印刷をしてもらっていたのですが、これも、わたしが日本語版のワードで作成したプリントは、そのままワード文書として送ると、フォントが変わったり、表が崩れたりしてしまうため、ワードで作成した文書をPDF形式で保存して、送るようにしています。

 上のスクリーンショットは、その宿題の一部で、日本語の教科書、『まるごと日本のことばと文化 入門A1りかい』90ページで、すでに学習した読解問題の助詞を抜いてあり、「に」「で」「を」の使い方をきちんと把握できているかどうかをみるための問題です。まずは何も見ずに自分で解いてから、教科書を見て答え合わせをし、それからイタリア語訳を添えて、右の語彙表を完成させ、さらに、この文を参考にして、少年自身の「わたしのいちにち」を作文として書いておくように言っていました。

 火曜の授業の際に、復習のためにと少年が、クリスティーナさんの1日を語った②の文章を読み始めたときのことです。中学卒業のための発表に忙しくて、ひらがなの拗音があやしくなったのでしょう、「クリスティーナさんは しゅふです。」を、

「クリスティーナさんは しょうふです。」

と読んだので、思わずくすりと笑ってしまいました。「しの次にある小さい文字は何ですか」と問うと、「ゆ」であることは覚えていたので、「しゅ」と読むべきであることを少年自身が思い出せたのですが、娼婦のイタリア語での意味を説明して、間違えないようにくれぐれも気をつけましょうと言いました。少年自身も赤い顔をして笑いながら、「間違えたのが日本でなくてよかった」と言っていました。日本で言ってしまったら、ひどく失礼である上に、もし誤解を招きかねない場面であれば、大問題です。

 「箱の中」を「墓の中」と言ってしまったり、「大学はきれいです」のつもりで「きらいです」と答えたり、「コーヒーください」と言おうとして「こいください」と言ったりと、授業中や試験中は「くすり・どきり・あらあら」で済むけれども、状況によっては誤解を招きかねない間違いには、イタリアでのこれまでの授業の中でたびたび出会っていますが、今回は新たにこの「しゅふがしょうふに」が加わりました。

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 3月以来ずっと在宅勤務が続いていた夫の職場でも、希望を出せば時に出勤することが可能となり、夫も今週からは、毎週木曜日は職場であるウンブリア州庁に赴いて仕事をすることとなりました。高齢の義父母への感染を恐れて、3月上旬には、まだ州庁で在宅勤務態勢となる前から有給休暇を取って、職場に出向くのを避けていた夫ですが、6月になっても在宅勤務が続く現在では、夫も職場での方が仕事がしやすいようで、ほっとしています。椅子や机が長い間座って仕事をするのに適したものではなく、パソコンもまだWindows Vistaを使っているため、オンライン会議では時々聞こえにくい言葉があり、今週月曜日のオンライン研修は、夫の古いパソコンでは受講できないことが当日になって分かり、慌ててタブレットで受講するなど、うちでの仕事には苦労も多いようだからです。今週のように天気がよく、学校も夏休みとなり、すでに多くの人が職場に戻っている状況では、わたしのオンライン授業と夫のオンライン会議が同時にあっても、インターネット接続に問題がありません。というわけで、最近では、モデムから多少離れていても接続が安定しているので、仕事・勉強部屋は夫が使い、わたしのオンライン授業は台所でしています。互いの話し声が相手の仕事の邪魔にならないようにという配慮からなのですが、やはり夫がうちで仕事をしていると、掃除機一つかけるにしても、遠慮して思うようにかけられないので、週に一度は自由に計画が立てられる日があると、ありがたいです。

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 3月に外出・移動制限がイタリア全土で実施される前に、夫たちと同じ職場の同僚が湖畔の村、パニカーレで働くことになり、そのときに夫たちから、「夏は4人でしばしば湖畔の店で夕食を食べるので、いつかいっしょに」と声をかけていたそうです。店で食べることがようやく可能となり、日が長く晩も暖かくなったからと、おととい木曜の晩に、いつものトラジメーノ湖畔の店で、いつもの4人に加えて、その同僚夫妻二人を交えた6人での会食がありました。

 わたしたちは、あらかじめ席を予約していました。午後8時に着いたときには、すでに店は、予約で空いている席がほとんどない状態だったそうです。屋外のテラスで、互いの間に十分に距離が取れるように、テーブルを準備してもらえたので、6人で安心して食事を楽しむことができました。いつも食事を共にする友人夫婦は二人ともウンブリア州庁に勤めているため、わたしたちは湖から最も遠い席に座りました。そのため他の客の話し声がにぎやかで、パニカーレの夫妻の席は遠かったため、言葉がなかなか聞き取れなかったのですが、高かった日が少しずつ傾いて沈み、美しく染まっていく夕焼けの空を楽しみながら、食事をすることができました。

 トラジメーノ湖畔は、夏を中心に観光客が多いこともあり、例年は3月から9月末まで営業しているこの店も、今年は5月半ばにようやく開店することができました。最近ではいつ訪ねてもほぼ満席で、早くから遅くまで大勢の客でにぎわっている様子なので、すっかりなじみとなった店の人たちのためにも、いつまでも店に通いたいわたしたち自身のためにも、ほっとしています。

 ウンブリアにおける新型コロナウイルス感染状況は、6月27日の今日、現在の感染者が15人で、6月11日以来、昨日のように新規感染者が一人という日が4日あったものの、それ以外は新規感染者ゼロという日が続いています。そのおかげもあってか、今日の昼の地方ニュースでは、イタリアの他州からも国外からも、アッシジをはじめとするウンブリア州内の観光地を、大勢の観光客が訪れているという報道がありました。

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by sunandshadows2020 at 2020-06-28 06:40
厳しい規制が功を成したイタリアですね。
こちらは全くどうなっているのか、黒人の人が警察官に殺された件でデモが全国で起こりそれが原因かどうかは分かりませんがここ数日感染者が今まで以上に多くなりました。カリフォルニアは結構真面目に長く規制を続けたのに、こんな結果でお粗末です。
やはり対面で会話、クラスが出来るのが最高ですね。
我が家ではかつて夫が日本を一人旅した時、安いホテルを高いホテルといってしまいタクシーの運転手さんが一番高価なホテルへ案内してくれたことが今でも笑い話です。
Commented by 3841arischan at 2020-06-28 15:45
なおこさん、最後の写真、いつもの綺麗なトラジメ―ノ湖の夕陽を想像出来るお写真で素敵です~♡
ようやく、ご友人夫妻たちと、いつものお店で食事が出来るようになって良かったですね~
そして、連日の満席ならお店も安泰というもの(^-^)
確かにお外の席なら、安心ですよね~
ソーシャルディスタンスを取る席、日本のレストランでも今は離れて座ります~
そうなると、話声が聞こえにくいということはしばしば有ります!
観光客も、戻りつつあるイタリア、良い感じです(*^_^*)
こちらは、観光は、まだまだこれからでしょうか?
Commented by zakkkan at 2020-06-28 16:10
そうですか・・日本語を、読み、書きで行うのですか?

大変そうですが・・
がんばってください・・ファイト・・!!!ね
Commented by milletti_naoko at 2020-06-29 00:35
お転婆シニアさん、今こそ皆の命と健康のために気をつけなければいけない矢先のことで、デモはもっともだと思うものの、今後の感染拡大を思うと心配ですね。欧州連合でも、7月1日以降渡航できるようになるEU圏外の国から今はアメリカ合衆国は除外することになるだろうと、決定はまだ来週の話なのですが、ニュース報道がありました。

やはり授業は対面だと、より注意が払えますし、学習効率も上がります。来週はまたひどく暑くなりそうなので、テラスや窓を開けた台所が暑くなる恐れもあるのですけれども、対面での授業の再開をわたしも楽しみにしています。

安いと高い、だんなさま言葉を取り違えてしまわれたんですね! そう言えば、イタリア人の友人が、昔むかしインドかどこか東南アジアの国で、タクシーで安い宿をと言ったのに、かなり高い宿に連れて行かれたことがあると言っていたことがあります。それはホテルと結託していたのではないかと思うので、だんなさまの話とは事情が違うのではありますが。
Commented by milletti_naoko at 2020-06-29 00:41
アリスさん、この店は幸いテラス席が多い上に、内部の席でも窓をすべて開け放てば風通しがよく、湖の眺めもいいこともあって、国外からの観光客は少ない今も、いつも大勢が食事をしているので、安心しました。

日本でも皆さん、距離を互いに取りながら食事ができるようになっているんですね。そうなんですね。日本の感染状況についても、いつも気にしながらニュースを見たり読んだりしています。イタリアでも規制が徐々に解除された結果、現在各地にクラスターが発生しているので、やはり警戒をすること、安全と健康を第一に考えることが大切だと感じています。
Commented by milletti_naoko at 2020-06-29 00:43
zakkkanさん、ありがとうございます。

日本語で読み書きを覚えるのは、イタリア人の少年にとって決して楽ではありませんが、今もやる気いっぱいで頑張っています♪
by milletti_naoko | 2020-06-27 22:11 | Covid-19 Italia | Comments(6)