イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

イタリア各州感染状況 旅の参考に調べてみると

 数字というのはまやかしもので、単に数が減ったと聞くと、そして数が少ないと知ると安心しがちなのですが、たとえば同じ30点でも、100点満点か30点満点かで大きく違ってきますし、また、100点満点の30点である場合にも、平均点が66点であるか30点であるかで、評価が大きく変わります。こんなふうに、与えられた数がどういう位置づけにあるかが分からないと、適切な判断材料になりかねるのです。

 ここ最近の同じ感染状況のデータを手にしつつも、保健相は、まだ感染の危機は過ぎ去っていないので、屋内でのマスク着用の義務などの規制は7月末まで続けることとすると言い、わたしがデータや発言を参考にしているシンクタンクも、今こそ十分な注意やクラスターを抑えるための多くの検査が必要であると訴える一方、マスメディアや政治家の中には、「感染者も死者も集中治療室入院患者も減少する一方でもう大丈夫」と、あまりにも楽観的発言をするものも出てきています。


 わたしたちが交流することが多い州外の友人に、エミリア・ロマーニャの人が多いため、このところ当州の感染の情報を注意して追っていました。ニュースではロンバルディアばかりが登場しますが、最近では住民あたりの新規感染者数が、エミリア・ロマーニャ州の方が上回ることさえありました。そもそも、数の多さばかりに着目して報道すると、住民数が少ないけれども、感染率は決して低くない州が表面に出てこなくなります。そういう事情もあって、昨日、7月15日現在の感染者数について、人口10万人あたりの感染者数をはじき出し、それを約1か月前、6月17日のデータと比べて、表にしてみました。

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 上の表では、イタリアの20州を北から南へと並べてあるのですが、詳細を見ると、北イタリアでもヴァッレダオスタやトレンティーノのように、比較的感染者数の少ない州や県がある一方、中部のマルケやラッツィオでも人口10万人あたり10人以上の現在の感染者がいることが分かります。

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 また、南イタリアの人口10万人あたりの現在の感染者数は、概して少ないのですが、カンパーニア州とカラブリア州では、1か月前に比べて、数が増えているのが気になります。増加については、北伊のボルツァーノ県についても言えるのですが、ボルツァーノとカンパーニア州では、本来減るべきところが若干数が増えているという状況であるのに対し、カラブリアでは数がほぼ倍増しています。


 さらなる問題は、最近では人の移動や接触が多くなってしまったこともあって、感染経路が分からない新規感染者が、多くの州で出てきていることです。7月7日までの1週間の間の新規感染者について、感染経路が分からない人数と割合を記した上の表を見ると、アブルッツォ、カラブリア、カンパーニアなどの南部の州では、感染経路が特定できない感染者数が過半数を占めています。ということは、どこでどう感染したかが分からないために、感染源となった無症状、あるいは症状があるのに感染を拡大する人の動きや他の人との接触を、食い止めることができないわけです。上の表の左端を見ると、北イタリアについては、7月7日までの1週間の新規感染者は、エミリア・ロマーニャ州、ロンバルディア州で、それぞれ186名、617名と多いものの、そのうち感染経路が特定できないのは、それぞれ2.8パーセント、28パーセントにとどまっています。

 最近の研究では、新型コロナウイルスに感染して、他人を感染させうる可能性のある人の半分近くが無症状であることが明らかにされています。そのために、自分が感染していることを知らずにイタリアの他の地域に旅行に出かける人もいれば、イタリアの各州を縦断して旅行する外国人旅行者もいます。行われるPCR検査数が増えているにも関わらず、新規感染者数が総じて減少傾向にあるのは確かなのですが、7月7日までの2週間に、新規感染者数がゼロであった州はまだ一つもないため、もう感染の危険がなくなったとは、言うことができないはずです。

 ですから、保健相が言うように、今後も十分に注意を払うことが不可欠だと思います。ウンブリアでは、少なくとも我が家では、まだ義父母と姪たちの間でさえ、抱擁や頬への接吻、握手もしないようにしているのですが、感染のずっと多いエミリア・ロマーニャでは、友人同士でもお構いなくしているのだと、今回来た友人たちが言っていました。互いに距離を取ることも、十分な距離が取れないときはマスクをすることも、自他の健康を守るために、大切なことだと考えています。

 明日から、あるいは来週に予定している数日間の旅行について、夫はトスカーナかアブルッツォ、ラッツィオの山に行きたいと考えているようなのですが、ラッツィオは感染率が高く、また、トスカーナも北伊や欧州の他国から訪れる人でにぎわうように思います。マテーラのあるハジリカータやプーリア、サルデーニャは感染率も低く、数年前からずっと行きたいと考えてはいるのですが、日数と予算が限られた旅で出かけるにはあまりにも遠方です。

 昨年行ってよかったモリーゼを中心に訪ねて、アブルッツォにも行くことにしてはどうだろうと、わたしは今この表を作ってみて改めてそう考えたのですが、夫の考えもありますし、さていったいどこに行くことになりますやら。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by nonkonogoro at 2020-07-17 14:19
皆で食事したり 会合が開かれる限り
ライブや カラオケがある限り
感染は広まり続けるのでしょうね。

おけいこも再開し
友人とも食事はしましたが
やはり不安です。
家で 夫としゃべり 食事するときだけ
安心できています。
でも お互い 感染してないとは言い切れないのだけれど。

Commented by ciao66 at 2020-07-17 17:56
閉じこもってばかりではストレスが溜まりますし、何処へ旅に行くのか、その地の状感染況も考えないといけませんし、遠いのも困りますし、あれこれ悩ましいですね!
 日本では政府補助金付きの旅=go toキャンペーンが始まるのですが、感染状況が最悪のタイミングで悪化しており、出だしから揉めております。
東京は感染地帯なので対象から除外されることになり、不満と不安とで議論百出という訳です。
 せっかくなので、安全そうなタイミングと場所で、上手に利用したいとは思いますが、さて・・・。
Commented by milletti_naoko at 2020-07-18 23:31
のんさん、PCRの検査数を増やして、感染者や感染経路がしっかり把握できるようにしておかないと、自由に移動ができて、気が緩んでマスクをしない人が増えてくると、感染を食い止めるのが難しいですよね。

友人たちと話す夫を見ていても、外出先でも、距離をあまり取らないので何だか心配しているわたしです。
Commented by milletti_naoko at 2020-07-18 23:39
ciao66さん、皆がもっと安心して出かけられるように、検査数を把握して、感染が拡大する前に封じ込めてしまえればよいのですけれども、イタリアでも州内外、外国から・への移動も増えてきて、行きたいところに単純に行こうとはならず、いろいろと考えてしまいます。

イタリアも、日本も、そして東京も、皆が安心して暮らし、旅に出かけられる日が早く戻ってくるように、わたしたち市民の一人ひとりはもちろん、行政にも対策と責任をしっかりと取ってもらいたいものです。
by milletti_naoko | 2020-07-16 23:47 | Covid-19 Italia | Comments(4)