ハンモック森の木陰で涼しく読書、ラヴェルナの森

　イタリアでは、8月15日のフェッラゴストと復活祭翌日の月曜日は、ふだんは自然に親しむ習慣のない人も、自然の中へと繰り出す日で、いつもなら静かに散歩ができる山も大勢の人でにぎわいがちです。その上、今年のイタリアでは、外出や自分が暮らす市町村、州の外への移動が自由にできない時期が長く続いたため、さらに、感染を避けるために、外国ではなく国内を旅行しようという人が多いために、ウンブリア州でも、近隣のマルケやトスカーナでも、あちこちの山を、6月以降、いつになく大勢の人が訪ねているようです。

Santuario della Verna, Chiusi della Verna (AR) 15/8/2020
　というわけで、8月15日土曜日は、とにかく人が少なそうな山を選んで行こうと考えていたら、夫がラヴェルナに行こうと言ったので、驚きました。8月15日はイタリアではカトリック教の聖母被昇天の祝日でもあるため、夏はただでさえ巡礼者が多いであろうラヴェルナ修道院は、8月１５日にはさらに、自然の中でピクニックをしよう、歩こうという人でごった返しているだろうと、わたしは考えていたからです。

　けれども夫は、フェッラゴストは皆、海や山に出かけるから、修道院の周辺はかえって人が少ないと思うよと言うのです。ところが実際に出かけてみると、修道院のふもと近くにあるキウーシ・デッラ・ヴェルナの中心街に露店が並び、かつて見たことがないほど多くの車が路上に駐車されて、どこまでもずらりと並んでいます。岩壁の上に建つラヴェルナの修道院が冒頭の写真のように見えてくる位置から、さらに少し進んだ先に駐車場があり、ふだんはそこに駐車して、森を歩いて修道院へと向かうのですが、その周辺にもあふれるほどに車が何台も並んでいます。


　けれども、毎年何度もラヴェルナの森を訪ね、聖なる森を歩いて縦断して修道院に向かう巡礼の旅もしたことがあるわたしたちは、他の人が知らない森への入り口と、静かそうなトレッキングコースを知っていました。

　そこで、夫の思いつきで重いハンモックも背負い、知る人が少ない入り口から森に入り、山を登って、トレッキングコースをしばらく歩きました。そして、岩もブナの木々も美しい場所があったので、トレッキングコースを離れた静かなところにハンモックを取りつけようと、よさそうな場所を探しました。


　夫が慣れた手つきで、次々にハンモックを取りつけていきます。わたしは乗るのが初めてだったので、最初は横たわるとハンモックが斜めに傾いてしまって困ったのですが、そのうちきちんと、ハンモックの中心に、ゆったりとくつろげるように乗ることができました。


　フェッラゴストは、バールなどの店が、閉業しているか、開いていてもひどく混雑している場合が多いのですが、幸いラヴェルナに向かう途中に、以前にもパニーノを作ってもらったことがあるバールが開いているのを見つけたので、そこでパニーノを作ってもらいました。わたしが食べたのは、チーズとルーコラ入りのパニーノです。

　食べてすぐに寝たら牛になるとは言いますが、ハンモックへの乗り降りが意外と大変そうだったので、まず昼食のパニーノを食べてから、ハンモックでくつろぎました。


　昼食後は、夫もわたしもそれぞれハンモックの上で、本を読みました。緑のブナの森が優しい影を落としてくれる上に、標高が千メートル以上あるおかげで、涼しく過ごすことができました。


　読んでいるうちに眠たくなってきて、眠れはしなかったのですが、しばらく目を閉じて休みました。

　思いがけず、別のトレッキングコースが10メートルほど離れたすぐ近くを通っているらしく、時々そのコースを歩く人たちの声が聞こえてきたのですが、幸い皆、そのままコースを歩いて行って、こちらに近づいてくる人は誰もいません。


　そうやって、午後１時半頃から５時半頃まで、森の緑の中で、二人で静かに本を読んだり休んだりしました。途中で夫が、歩く人の声が聞こえていた方向へと歩いて行き、トレッキングコースを見つけて、わたしたちもよく歩く、岩山の下を森を歩いて周遊するコースみたいだよと言っていました。

　午後３時頃に空が曇り出し、何度か雷が鳴って、ぽつりぽつりと降ったものの、雨は幸いすぐにやみ、気温が下がって、夫が少し寒いと感じるほどになりました。二人とも上に重ねて着られる服を持ってきていたので、そのときも寒さを感じずに過ごすことができました。そのうち空は少しずつ晴れてきました。午後５時半頃にハンモックから降り、わたしも夫の言うトレッキングコースまで歩いていって、確かに見覚えのあるコースに似ていると思いました。それからハンモックや本を片づけて、それぞれハンモックを手に、山道を下りました。

　8月15日は、友人たちからも山の湖に誘われていたのですが、周囲に四つ宿泊できる山小屋のある湖は、フェッラゴストには大勢の人でいっぱいでしょうし、ペルージャからはひどく遠いので、今回はわたしたち二人だけで出かけることにしました。緑の中で静かにゆっくりとくつろぐことができて、うれしかったです。

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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