イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖

 日曜の夕方、友人たちを見送ってから訪ねたヴェルナッツァーノの斜塔(Torre Pendente di Vernazzanoは、トラジメーノ湖の北の湖畔の岩の断崖の上にそびえています。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_06564245.jpeg
Torre Pendente di Vernazzano, Tuoro (PG) 25/10/2020

 ヴェルナッツァーノ(Vernazzano)の村の高みにある教会の駐車場に車を置いて、斜塔に向かうと、

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_08410644.jpeg

トラジメーノ湖(Lago Trasimeno)チェトーナ山(Monte Cetona)がきれいに見えるところがありました。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_07073979.jpeg

 まずは、金網の塀の間の細道をしばらく歩いていきます。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_07085861.jpeg

 最初のうちは湖が見えていましたが、そのうち道は両脇が背の高い木々に覆われ、そうして下方へと下っていき、

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_07135399.jpeg

前方に、岩の絶壁の上にそびえる斜塔が、黄葉した木々の上に見えました。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_07151792.jpeg

 道は比較的歩きやすかったのですが、レストランで食事をするだけだと思って、革靴を履いて出かけていたわたしは、靴を傷めないように、そして、濡れた石で足を滑らさないように、注意しながら歩きました。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_07195854.jpeg

 そうして10分ほど歩き、最後にはしばらく坂道を登って、かつて城壁に囲まれた集落があった跡に到着しました。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_07230227.jpeg

 中世前期に築かれたというヴェルナッツァーノの集落(Castello di Vernazzano)に、かつてはどんなふうに建造物が並んでいたかは、案内看板に絵で示されています。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_07262395.jpeg

 ヴェルナッツァーノの集落は、ペルージャからコルトーナに向かう主要道路沿いにあり、中世には戦略的に重要な役割を果たしていたものの、15世紀に戦争と地震の被害があり、その約2世紀後には、コルトーナへの主要道路が別の地に移ってしまったために、衰退します。18世紀半ばには、さらに川の浸食作用で地滑りが起こり、住宅や教会に大きな被害があり、監視塔も著しく傾いたため、集落は1772年に放棄され、人々は平地に住むようになったと、トレッキングコースの入り口に立つ看板には、そう書かれています。

 かつては住宅が並び、1762年には65家族、365人が暮らしていたという集落も、今は傾いた塔や教会の跡が残るばかりです。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_08002094.jpeg

 教会跡や案内看板のある平地からは、斜塔がよく見えます。斜塔へとさらに坂道を登ると、

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_08025920.jpeg

斜塔の前は、ちょっとした公園のようになっていて、テーブルやベンチが並び、木が植わっていて、木々の間から、トラジメーノ湖も見渡すことができました。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_08061596.jpeg

 太陽は一足先に、山の斜面の向こうへと姿を消してしまいましたが、

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_08070601.jpeg

空はまだ明るく、トラジメーノ湖の北にある二つの島、左からミノーレ島(Isola Minore)マッジョーレ島(Isola Maggiore)が、きれいに見えました。この位置からは二島が、並んで泳ぐ魚のように見えます。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_08151288.jpeg

 左手には、南東の岸の近くにあるポルヴェーセ島(Isola Polvese)も見えました。

 島の写真は、いずれもズームを使って撮影したものです。

ヴェルナッツァーノの斜塔と今はなき集落の跡、トラジメーノ湖_f0234936_08113173.jpeg

 このあと斜塔を間近から見ると、斜めに建っているのがよくわかりました。

 危険とも、中に入ってはいけないとも、どこにも書いていないとは言え、木の幹を利用して塔の壁を登り、窓から中に入ったりしたのは、うちの夫です。

 斜塔を訪ねて、湖の美しい眺めを楽しみ、湖畔の集落の思いがけない歴史を知ることができて、興味深かったです。

********************************************************************************************
Torre Pendente di Vernazzano, ora tra i colori d'autunno.
Bello il panorama del Lago Trasimeno,
interessanti la storia del Castello di Vernazzano
costruito nell'Alto Medioevo e i suoi vicissitudini
del quale ora rimangono solo la torre e i muri della chiesa.
Vernazzano, Tuoro (PG), Umbria
********************************************************************************************

関連記事へのリンク
- 仲直り晴れた湖と湖畔の斜塔

Articolo scritto da Naoko Ishii

↓ 記事がいいなと思ったら、ランキング応援のクリックをいただけると、うれしいです。
↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ  

ブログテーマ:お気に入りの場所やお勧めスポット・お店を教えて!
Commented by tokotakikuh at 2020-10-27 14:04
石の文化を知ります
こうして、保存されているのでしょうが
そのままの時代を魅せてくれる
それそのものが
「石の文化遺産ですね」

身近な場所の探索に、飽きがこないですね
Commented by ciao66 at 2020-10-27 17:37
並んで泳ぐ魚のような島が見えていい眺めですね!
こういう廃墟跡はもの悲しい秋の景色が似合いそう。
木の幹伝いに入った窓には何があったのでしょう?
昔はいい所だったのでしょう。斜塔だけが残っているのも不思議ですね。案内板の村の様子から昔がしのばれますね。
Commented by cometsan1966 at 2020-10-27 22:26
昨日の記事で見えた興味深い斜塔をクローズアップですね!

なるほど・・もとはこのような形で集落があり教会もあり
人々の営みがあったのですね~感慨深いですね(*^^*)

斜塔はその時代監視塔として活躍していたのですね☆彡
凄い傾き方で太いワイヤーを沢山繋げて倒壊を防いでいますね
しかし・・日本的な考えだとそれならば一度倒してまた
すぐ立て直すような気がしますが・・歴史的な重みをそのまま
残すのがイタリアのやり方なんですね(*^^*)なるほど

島が見事に仲良しクジラ2頭のようですね~可愛らしく見えます(^^)/
Commented by milletti_naoko at 2020-10-27 23:36
zakkkanさん、現在の村の人たちが、かつてはここに村があった歴史的に大切な場所として、この塔や遺跡を保存しようと試みているようで、大切なことだなあと思いますが、石の文化だからこそ可能なことでもあるのでしょうね。

まだまだ身近な場所に、訪ねていない興味深い場所が、たくさんあると思います。
Commented by milletti_naoko at 2020-10-27 23:44
ciao66さん、わたしたちがこの2島を見るときは、反対側にある湖の南の岸や、ポルヴェーセ島からであることが多く、近くから見るときは逆に、マッジョーレ島のすぐ近くから見ることになるため、こんなふうに2島が並んで見えるのは珍しく、かわいらしいなあと思いました♪

窓があるところは壁がかなり厚くなっているので、敵を狙い撃ちするための隙間かなあと想像したりもするのですが、いつかまた分かったらお知らせしますね。

教会は壁が残るばかりで、家がないのは、イタリアでは崩れ落ちた建物などの石を再利用するので、持ち運ばれたためかもしれませんが、定かではありません。

いくつもいろいろな説明を読んだので、どのページで読んだのか定かではないのですが、15世紀にはフィレンツェに攻められもしたようで、長い歴史における集落の盛衰を、つくづくと思いました。
Commented by milletti_naoko at 2020-10-27 23:55
お馬さん、現代でもトンネルができて、主要道路が通る場所が変わると、その道路が通る地域の経済や人々の暮らしが変わってくることが少なくないのですが、かつてはさらに、道路の移転に伴うそういう地域の浮き沈みが激しかったのだろうなと、記事を書くにあたって、いろいろなサイトの説明を読み比べて、しみじみと感じました。

ペルージャからコルトーナへ向かう主要道路上にある、ペルージャの領土内にある最後の砦ということで、また湖など広い範囲を見渡せることもあり、この監視塔も重要な役割を果たしていたことと思います。

かつて自分たちの村はここから始まり、先祖はここに暮らしていたのだと、塔や村をそのまま大切に保存して、次世代に伝えていこうということだと思います。

お魚さんのように見えて、かわいらしかったです♪
Commented by meife-no-shiawase at 2020-10-28 12:50
以前は城壁に囲まれた集落が!
看板に書いてあるような緑豊かなところでたくさんの方が
生活されていたのですね。
傾いた教会がなにか物寂しい感じがしますが
でもあんなに美しい湖が望めて、緑も多くて素敵な村だったのでしょうね。
これはなおこさんが紹介してくださらなかったら
一生、知らなかった場所でした。

自然の力はどうしようもないですもんね・・・。
ご主人さま、ちょっと怖い!
縛ってはあるようですが、石のズレが気になります。

島がお魚に!ホントですね~クジラが2頭いるみたいです。
なんだか可愛いし、素敵な風景♡
Commented by milletti_naoko at 2020-10-28 18:16
メイフェさん、中世には異民族の侵入もあり、近隣の町との戦争もしばしばあったので、こんなふうに自然の地形に守られたところに、人々がさらに城壁を築いて暮らしていたのだと思います。夫はすでに一度一人で訪ねたことがあるのですが、わたしも今回初めて行きました。

うちの夫、好奇心と冒険心が旺盛すぎるので、心配になるようなことをすることが時々あります。何事もなかったからよいようなものの、困ったものです。これだけ壁に亀裂が入り込んだ古い建造物は、ふつう柵に囲まれていて、崩れ落ちる可能性があって危険という標示もあるのに、ここになかったのは、単に来る人が少ない上に、そんなことをする人はいるまいと考えたからだと思うのです。

夕どきの秋の風景の中、魚のように見える島がかわいらしかったです♪
by milletti_naoko | 2020-10-27 08:25 | Umbria | Comments(8)