イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

聖リータ生地・サフラン名産地カッシャ 今年は巡礼者激減で大打撃、World Voice 連載第9回

 16世紀に描かれた受胎告知のフレスコ画が美しいこの建物は、ウンブリア州の南、サフランの名産地カッシャから数キロメートル離れた小村、ロッカポレーナ(Roccaporena)にあります。ロッカポレーナは、苦しみの多い人生を歩みつつ、常に愛と祈りに生きたカッシャの聖リータ(Santa Rita da Cascia、1381-1457)が生まれた村です。

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Lazzaretto, Roccaporena, Cascia (PG), Umbria 9/3/2013

 イタリア語、lazzarettoは、小学館の『伊和中辞典』には「伝染病院、隔離病院」という語義があり、ロッカポレーナの観光案内によると、「聖リータの時代には、村を通りかかった旅人が宿泊をし、もてなしを受けることができた施設で、古い言い伝えでは、聖女がしばしば病人の看護に訪れた場所である」とのことです。観光案内にはまた、「建物の呼称から、ペストの疫病がウンブリアを襲った際に、医療施設として使われたと考えられる」とあります。

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Santuario di Santa Rita da Cascia, Cascia (PG)

 敬虔なカトリック教徒である義父母が、カッシャの聖リータを敬愛していて、時々カッシャの聖リータの聖堂にお参りに行き、手土産に特産品のチーズを購入することは、それまでにもしばしばあったのですが、わたしが聖リータを知ったのは、6年前に友人たちと共に、ロッカポレーナとカッシャで、聖女ゆかりの様々な場所を訪ねたときです。そのときに、どんなに辛く、相手を憎んでも当然と思われるときでさえ、愛と祈りを忘れなかった聖女の生き方を知って、感動しました。

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Mostra Mercato dello Zafferano di Cascia, Cascia (PG) 1/11/2014

 さらにその後、夫が植物学の講座で知り合った農家の女性を通じて、カッシャ(Cascia)がサフランの名産地であることも知り、彼女の父が中心になって主催した食農体験教室で、サフランの栽培方法や料理法、効能なども教えてもらいました。上の写真は、カッシャで例年10月末から11月初めにかけて開催されるカッシャのサフラン祭りで、その友人一家の露店を撮影したものです。

 ニューズウィーク日本版姉妹サイト、World Voiceでのわたしの連載、「イタリアの緑のこころ」第9回は、「聖リータ生地・サフラン名産地カッシャ 今年は巡礼者激減で大打撃」と題して、 このカッシャとロッカポレーナを紹介し、さらに、2016年のイタリア中部地震の被災地であるカッシャが、新型コロナウイルス感染の影響で苦境にあることを伝えています。

 よろしかったら、ぜひお読みください。


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https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/ishii/2020/11/post-7.php

 記事へのリンクは、以下のとおりです。

- Newsweek Japan - World Voice - 聖リータ生地・サフラン名産地カッシャ 今年は巡礼者激減で大打撃

 現代では、地方の教会や旅行会社が、アッシジやカッシャ、プーリアの聖ピーオゆかりの聖地、サン・ジョヴァンニ・ロトンドなどへと大型観光バスで移動し、聖地を訪ねてミサに参加できる聖地巡礼観光を企画することが多く、義父母もこれまでに何度も、こうした巡礼ツアーで、ルルドやサン・ジョヴァンニ・ロトンドなどを訪ねています。わたしたちも、ラヴェルナ修道院を訪ねて境内のレストランで食べるときに、集団で巡礼する人々を見かけることがよくあります。そういう大勢の巡礼者を迎えるために、聖地では、大きな宿泊施設やレストランができ、土産物屋なども多数軒を並べるようになったため、今のように移動が制限されて、あるいは感染を恐れて巡礼者が来ない、あるいは大幅に減少するという状況では、多くの店や人々が経済的危機に苦しむことになるのです。

 そうした窮状を打開するためにも、クリスマス前に規制を緩和するようにという要望が多方面から出ていて、その事情もよく分かりますし、規制の緩和はうれしくもあるのですが、緩和しすぎて、感染が激増し、また多くの命が失われるようなことはあってはならないと思います。というわけで、12月3日に新たに出されるであろう首相令の内容が気になり、ニュースやオンライン記事で、しばしば関連情報を確認しています。

関連記事へのリンク
- 苦しみを愛に祈りに~聖リータ、カッシャ ロッカポレーナ (9/3/2013)
- サフランとハーブ、ウンブリアで食農体験1 (9/8/2014)
- サフラン祭りのカッシャへ (1/11/2014)
- イタリア写真草子 - カテゴリ:Covid-19 Italia 
↑ このブログ中、イタリアでの新型コロナウイルス感染状況について書いた記事をまとめています。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:お気に入りの場所やお勧めスポット・お店を教えて!
Commented by ciao66 at 2020-11-29 17:47
冒頭の美しいフレスコ画の部屋が、聖者の開設した伝染病院で、それがペストの疫病の際に医療施設として使われた、という事実が今のコロナ禍の状況に居合わせた我々にとって、特別感慨深いものに感じます。
World Voiceの記事も拝見しました。その聖地が巡礼者激減で大打撃とのこと、なんとか感染が収まり、巡礼者が戻ればいいのですが、うまく行きますようお祈りします。
Commented by cometsan1966 at 2020-11-29 21:30
カッシャはサフランの名産地なんですね(*^^*)
パエリアとかサフランライスでお馴染みの黄色い香料のような
調味料のようなですが。。調べてみたらアヤメ科の多年草なんですね。。花が出てましたがアヤメによく似ていました☆彡

World Voiceを拝読しましたが・・サフラン祭り楽しそうですね
今年は中止なんですね・・例年ノルチャの業者の露店が出て
様々な名産品や加工品が販売されるのが商売柄凄く興味があります☆彡

地震・・コロナで大打撃で閉業を余儀なくされる業者さんも
少なくないのですね・・私の長らくの取引業者さんの1つも昨日
倒産の連絡が入りました。。コロナ禍によつ倒産益々本格的に
増えて行きそうですね((+_+))嫌な世の中ですね。。。
クリスマスもやって来ますが・・まだまだ本当に楽しむのは
あと何年先でしょうね(@_@)‥先ずは罹患しない事優先ですね・・
Commented by sunandshadows2020 at 2020-11-30 10:28
なんとウンブリア州南にサフランの産地があるとは知りませんでした。とすればイタリア料理にもサフランが使われるという事ですね。そういえば確か記憶を遡れば豆料理でサフランを使っていたレシピがありましたね。
私も興味があってサフランを育てた事がありました。
サフラン畑、花が咲く頃は見事でしょうね。
レストラン業、その関連ぎょうも今は大変な時ですね。
もう少し持ち堪えて欲しいと心から思います。
Commented by meife-no-shiawase at 2020-11-30 13:45
本当に日本でもそうですが、感染を広げないということと、経済を止めないということの、
どちらも進めたいけれど、それに対する対策が原因かどうかわからないですが
感染者の増加がおさまりませんね・・・。

さっき、こちらのニュースでイギリスのロックダウンに対する抗議の様子を流していましたが
マスクをしていない人があまりに多いのにビックリしました。
それなのに大勢が密に小競り合いをしていて、え~!?
これでは一人でも感染している人が中にいたら、あっという間に増えちゃいますね・・・。

サフランの栽培ですか♪
お料理用になったものしか見たことがありません。
食農体験・・・普段使っているものの栽培から見学して
その活用の方法を知ると、もっと親しみを感じて美味しく感じますね~♡
Commented by milletti_naoko at 2020-11-30 16:53
ciao66さん、わたしも今回ロッカポレーナの写真を探していて、この山中の小村の伝染病院のフレスコ画の美しさに驚きました。日本でもイタリアでも、かつては疫病がはやると死体が町の通りのあちらこちらに見られた中で、村から離れた場所で人々が当時も看護を受けられる場所があったことにも。World Voiceの記事も読んでくださったんですね。ありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2020-12-02 18:43
お馬さん、イタリアにもウンブリアにも、サフランの産地は各地にあって、肉料理やパスタにもと幅広く使われ、心身の健康にもとてもいい優れものなんです。調べてくださったんですね。花はクロッカスの仲間で、アヤメにも似ていますが、一番似ているのは原種のクロッカスではないかと思います。

お忙しい中World Voiceの記事まで読んでくださって、いつもありがとうございます。なるほど、地元の特産品の販売は、お馬さんのお仕事ですものね。イタリアではこんなふうに、当地や近隣、あるいは離れた町でも、行われる村祭りや市場に出店して、商品を売っていることがよくあります。

やはり日本で、しかもお馬さんの取引されていた業者さんでも、影響がかなり大きく出て、倒産にまで追い込まれたところもあるのですね。本当に残念なことです。

わたしもまずは自分がかからず感染させないことが、この冬は一番だと思います。
Commented by milletti_naoko at 2020-12-02 23:32
お転婆シニアさん、サフランの産地はウンブリアにも、そしてイタリアにも他にもあるんですよ。リゾットはもちろん、肉料理やパスタにも使われているのを食べたことがあります。サフラン畑、一面に咲く様子はきれいですが、すべて手作業なので、収穫は大変なようです。

苦しいときですが、どうか多くの店や業者が持ちこたえてくれればと、わたしも願っています。
Commented by milletti_naoko at 2020-12-02 23:45
メイフェさん、わたしも日本での感染の急増を心配しています。医療機関もかなり逼迫した状況だというツイートも医療関係者の方がしているのを見かけることが増えてきているので、マスメディアが伝えていないことも多いのではないかしら、と。

イタリアでも、今も昔も、感染を封じ込むためにできるだけ厳しい措置をと考える政府や医療関係者が筆頭になって指揮を取る技術科学委員会に対して、野党が「厳しすぎてそれではレストランなどの業者が」と反意を唱え、救済が十分にできていないと言うのですが、夏にマスクなしで大勢で集まる会合を開いて、マスクなどいらないと公言して、感染が拡大する原因を作っておいて何を言うかと思っています。

政府も、できるだけ感染を抑えてかつ業者が営業できてやっていけるようにと考えて、すでにかなり協議を各方面と重ねて、案を出しているわけですから……

わたしも、サフランの花や球根、めしべやおしべなどのつくりについて、大きな写真パネルや実物の球根と共に教えてもらえて、興味深かったです♪
by milletti_naoko | 2020-11-29 10:26 | Umbria | Comments(8)