イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

12年、100万人の今日は記念日

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 12月28日月曜から、いえ、正確に言うと、27日日曜の深夜から読み始めたのはこちらの本、山際寿一著、『京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ』です。


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 読書でおもしろく、ありがたいことの一つに、自分ではすることが難しい体験を、会うことが難しい人に、本を開くだけで語ってもらえるということがあります。まだ第1章を読み終えたところなのですが、切り口も語られた体験も、これまで知らずにいた世界であり、こういう見方もあるのか、こんなことがあったのかと、とても興味深いです。

 そうして、これは、この本にも出てきていたのか、それとも先日読み終えた『あなたの人生、片づけます』に繰り返出てきたのだか、はっきり覚えていないのですが、最近何度も読んで印象に残ったのが、「人は意外と、当然知っているようでいて、言われてみないと気がつかないということがあるものだ」という言葉です。たとえばわたしは、近視なので、また動物を見るのに慣れていないので、夫が遠くに見つけた鳥や動物を、あそこにいるよと言われてはじめて、その存在に気づくことが多く、さらに、それだけでは見えないので、夫に見える方向までしっかり教えてもらうこともあります。あるいは、パリに2週間語学留学をしたときに、うどん屋でクレジットカードが使えず、そのときに紙片に書かれた言葉を見て青くなったら、実は何でもないことだったこともあり(記事はこちら)、そんなふうに、言葉が分からないために、誤解をしたり知らずにいたりするということもあると思います。

 けれども、視力や語学力に関係なく、それまで自分が経験せずに生きてきたから、学ぶ機会や接する機会がなかったから、あるいは偏った考えや意見ばかりに接してきたから、何か間違ったことをそうと思い込んでいるとか、他の人には当たり前のように思えることを知らずにいることもあるでしょうし、逆に、ある人は知っていて、他の人も知っているだろうと思い込んでいるけれども、実は他の人は知らずにいることというのもあることでしょう。『あなたの人生、片づけます』の四つの短編小説で、片づけ屋の十萬里が出会う人々にしても、家族だからこそ心配させまいとして、あるいは他の理由で、あえて知らせずにいるために、自分たちが抱える問題を、さらに複雑なものとしてしまっています。

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Lago Trasimeno, Passignano (PG), Umbria 16/12/2020

 だからこそ、今読んでいる本で著者が語る、日高敏隆教授から言われたという言葉、「自分が本当に大事だと思うことは繰り返し言いなさい。そうしないと人には伝わらないよ」という言葉が、印象に残り、心に響きました。かつての著者と同様に、わたしもブログでは、一度書いたことはできるだけ繰り返さないようにしようと思いつつ、必要を感じて再び書くこともある一方で、よく考えてみると、わたしの記事の中で、夕焼けのトラジメーノ湖が一番印象に残っている、あるいは、わたしのブログというとトラジメーノ湖の夕景を思うという方が少なくないのですが、それは、それだけわたしが、いつ行っても新しい美しさを見せてくれるように思うので、何度も何度も写真や風景を紹介し、その時々に感じたことと共にお伝えしているからではないかという気もします。


 イタリア時間では、こうして書いている今はまだ、12月29日午後11時44分です。2008年12月29日に、イタリア語学習メールマガジン「もっと知りたい! イタリアの言葉と文化」の第1号を発行してから、今日でちょうど12年になります。その後2010年4月にこのブログを始めてから、そして、さらに数年後、ブログをできるだけ毎日更新しようと心がけるようになってから、本来はイタリア語学習メルマガの副教材的位置づけで、イタリアの風景や文化をご紹介しようと始めたこのブログを書く方に力が入り、熱中してしまって、メルマガの方は、発行が足踏みしがちになってしまっています。大切なことは繰り返すことが必要なのだということ、そして、語学に限らず学習は、一度にたくさんつめこむよりも、少しずつでも頻繁にする方が効率がいいのだということを、肝に銘じて、メルマガもあまり考えすぎて発行がまれになるよりも、せめて月に1度は発行できるように心がけたいと考えています。

 また、外国語学習について、ふと書いたツイートに反応が多かったこともあり、


できるだけ多くの方に知ってほしいと思うことは、何度もそればかり繰り返してはいけませんが、やはり意図的に繰り返すことも必要なのではないかと感じました。

 意図的に繰り返すと言えば、昔むかし勤めていた愛媛県の山の中の学校で、理系の3年生は現代文の授業が週に2時間と少なかったのに、ある日の職員会議で、国語は英語や数学と違って、理系の生徒には大学受験の際に配点が低いからと、さらに現代文の授業時間を減らそうという動きがあったことがあります。ただでさえ考える力や発言する力、読解力が足りていないのに、先方が「役に立つ、立たない」で議論をするなら、こちらも相手が納得するように「役に立つ」観点を強調しようと、「知的能力は高いのに恐ろしい犯罪を起こしてしまうような事件が起こるのは、国語を学ばず、思いやりや情緒を培うことができないままに成長したから」、「英語の問題や理系の第二次試験問題や小論文も、現代文や国語の力がなければ満足のいく解答や作文はできない」と反論し、当時の理系の校長から「石井先生はいつもそうやって小石を投げるからねえ」と言われたのですが、結局は他の先生の発言もあって、週2時間の現代文の時間は確保できたことがあります。ただ、まだ20代だったわたしなど、若い先生方が積極的に発言できて、しかも校長や教頭が耳を傾けてくれるという点では、小さな学校だったのですが、ありがたい職場だったと、今改めてそう感じています。

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 閑話休題。書いている間に、イタリアでも日付が変わってしまったのですが、イタリア時間、12月29日午後2時頃に、このブログのアクセス数を確認したら、累計訪問者数が100万人を超えていました。コメントやイイネを通して交流がある方以外にも、読んでくださっている多くの方がいて、書き続けていけるのも、書くのが楽しみなのも、読んでくださる皆さんがいてこそです。本当にどうもありがとうございます。ブログをきっかけに仕事を依頼していただいて、その読者の方の温かいお言葉に感動したことも何度もあります。ブログを書き始めてから10年半以上が過ぎようとしている今では、ブログのおかげで出会えたブログのお友達や読者の方も少なからずいます。皆さん、これからもどうかよろしくお願い申し上げます。上のスクリーンショットは、数のきりがいいので、イタリア時間12月30日午前0時30分過ぎに撮影したものです。

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Perugia, Umbria 29/12/2020
 
 今日も昨日と同様に、朝から風が吹き荒れて、雨が降ったのですが、せっかくオレンジゾーンなのだからと、午後、ペルージャ郊外にあるショッピングモールに買い物に行きました。ふつうのスーパーや薬局などはレッドゾーンのときにも営業しているのですが、ショッピングモールの商店はレッドゾーンになると閉鎖になってしまうからです。夫は、サポートが終了し、できることが日々少なくなっているWindows Vistaのノートパソコンに代わるパソコンを購入しようと考え、わたしは、ショッピングモールなら、雨の日でもいろいろなものを、さっと複数の商店でカードを使って購入できると考えて、行くことにしました。

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 まずは家電販売店に行き、最後はスーパーで食料品などを買い込んで、ショッピングモールを後にしました。3日かしかない貴重なオレンジゾーンであり、雨も降っていて外には出られないためか、平日の午後にしては大勢の人がいるのに驚きました。わたし同様に、キャッシュバックキャンペーンに参加したものの、カード使用の買い物が還元金を得られる10回に達していないので、店が開いている間、自由に買い物ができる間に買い物をしようと考えている人が多いのかもしれません。

 とりあえず、今日も3店でカードを使って買い物をすることができました。うち1店は食料品を買ったスーパーで、あと2店では、ずっと前から必要だったのに買う機会がなかったものを購入したので、キャッシュバックがあってもなくても、必要な買い物ではありました。さて、イタリア全土が再びレッドゾーンとなる12月31日が終わるまでに、あと6回カードで買い物をすることができるでしょうか。

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Ieri il 29 dicembre l'anniversario di 12 anni dalla pubblicazione del primo numero
della mia newsletter sulla lingua e cultura italiana per i miei connazionali,
poi sempre ieri ha superato un milione il numero di visitatori totali del mio blog.
Grazie mille a tutti i lettori!
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by sunandshadows2020 at 2020-12-30 13:19
私も同じようにブログで繰り返さないよう気をつけていました。そして当然知っているようで言われてみないと気がつかないこと、納得です。そして誤解して覚えていることもあります。
背中を押されたような気持ちです、これからは大切だと思うことは繰り返すようにしましょう!
教えてくださってありがとうございます。
Commented by tokotakikuh at 2020-12-30 15:57
国語の持つ力
大学受験生が、直面する課題に、国衙含まれていない
そんな時代は、おかしいですね

そういう、我が家の孫も
どうかすると「国語」が苦手だと言いました
読解力欠如、最近は特に言われるようになりました

活字離れ
その恐ろしい意味が、最近ようやく理解できます
人と、人の間にある「会話」
この大切さを知る基本が「国語」にあるのだと思います

私は、古い人間ですから
特に、そう思うのかしら?(笑)

あと2日
いろいろな騒動があった今年です
そして、ブログというものから
多様な方たちと知り合えました
拙い画像の呟きです
これからも、よろしければ、懲りずにお付き合いの程
ありがとうございました

良い・お年をお迎えくださいね
Commented by meife-no-shiawase at 2020-12-30 22:52
フランスでの体験のブログも拝見しました。
そうしたらびっくり。Abandon!!!
実は今日、お仕事でEnstrument for Abandonを受け取り
通常中国語で来るものが英語で来たので、英語がすっかり退化している私はちょうどそれを調べていたんです~。
すごい偶然にちょっとなおこさんとのご縁を感じました。(笑)。

あと母国語の習得についてもです。
実は私は配偶者の転勤でずっと海外だったのですが
子どもの学校の選択をする時に、幸い、日本人学校がある場所だったのですが
インターナショナルスクールもいい学校があり、すごく迷いました。
でもやはり、なおこさんがおっしゃるように、国語力はものすごく大切だということをその時の学校の先生にもご指導いただいて
日本人学校を選択しました。
一つの言語で物事をきちんと考えられるというのは
やはり色んな意味で大切だなと、今になってあのときの選択は間違っていなかったと思っています。

読書は本当に見聞を広げます。
私もこれからはもっと色々な本を読みたいな~って思ってます♪

Commented by cometsan1966 at 2020-12-31 20:36
この京大総長・・の本どなたかのブログでも取り上げられて
いて・・ユニークな名前に興味を持っていました(^^)/

パリでのうどん屋さんでもクレジットカード事件の記事・・
興味深く拝読しました!・・良かったですね(^-^;さぞや
ご心配された事ででしょう。異国の地で大切な資金源が実は
詐欺まがいの不正使用で水泡に帰し。。それだけではくて
多額の借金を背負わされたかもしれないとなれば・・どんな
に不安だった事か。。お気持ちお察しします(@_@。
両国でそんなに意味が違ってしまう言葉・・恐ろしいですね(汗)

人に伝えて意図している正しいイメージを植え付けて
頂くにはある意味くどいくらいの繰り返しが必要になりますね(^-^;
それで定着したイメージがその人を思う基礎になりますよね。
コミュニケーションを正しくかわすにはそうした努力が
どうしても必須になってきますね(^^)/

国語に対する想いと情熱をひしひしとなおこさんから感じます
愛媛の出来事はまさにその象徴的エピソードですね~素晴らしい
と思います!!
Commented by milletti_naoko at 2021-01-02 20:42
お転婆シニアさん、誰か身近な人に言葉で伝える場合でさえ、何度も言っていても伝わらなかったり、相手が覚えていなかったりすることがあるのですから、大切なことは、確かにできるだけ何度も繰り返す必要があるのだなあと、改めて感じました。

こちらこそ共感してくださったと知ってうれしいです。ありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-02 21:02
zakkkanさん、大量の急速採点を可能とする試験形態が、高校での国語教育を、本来最も大切であるべき真の国語の力をつけるはずのものから逸らしてしまっていること、また大学入試やそこに目標を置きがちな高校教育の在り方によって、考える力、感じる心を培うのに大切な国語の力が、ないがしろにされる傾向があることが、とても残念です。

わたしが日本の高校で教え始めたのが30年前で、それから12年間教えたその間にも、生徒たちの国語の力が低下していくのを如実に感じ、また、活字離れや読書離れも、当時でさえ盛んに叫ばれていました。

zakkkanさんのお孫さんもですか。読書の実用性ではなく、楽しみをもっと伝えていくことで、そして、楽しい国語の授業が行われることで、どうか子供たちや若者たちが、もっと活字や読書に接してくれるようになればと切に願っています。

こちらこそ、ありがとうございました。そして、これからもよろしくお願い申し上げます。
どうかzakkkanさんにとっても、新年がよきものでありますように。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-02 22:37
メイフェさん、フランスでの記事も読んでくださったんですね!
そうすると、こういう使い方、英語でもあるんですね。
不思議なご縁とつながりに、わたしも驚きましたが、パリではこのとき、真っ青になり、ホームステイ先の奥さんがすぐにそうと教えてくれることがなければ、あのまま暗澹とした気分で過ごしていたことと思います。

メイフェさんはだんなさまのお仕事の都合で、長く海外に滞在されていたんですね! 15歳くらいまでは特に、論理的に考える力などが言語習得と並行して養われていくこともあって、母国語をしっかり習得することがとりわけ大切なのだという研究結果を学んだことがあります。日本人学校では文化や慣習も学べることでしょうし、転勤の多い中、そうやって継続して日本語・日本文化に触れて育つことができる環境があって、本当によかったですね。

外国語学習も、音声面は別として、成人してからでも十分に身につけられますし、音声も、イタリアの場合も日本の場合も、実はきちんとした標準語で話そうと思えば話せるという人の方が、今は少ないのではないかという気がします。イントネーションやアクセントまでを考えるとの話で、そうすると、英語学習は中学校以降で十分ではないかと、感じているわたしです。

わたしも近年は、本を読む時期と読まない時期があったのですが、読書の楽しみと習慣を最近取り戻すことができて、うれしいです。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-02 22:48
お馬さん、この方のお名前、おもしろいですよね。わたしも最初は著者の名前は気にせずに読んでいたのですが、本の中で本人を呼ぶアフリカの人などの言葉の引用に、「ヤマギワ」とあるのを見て気づいて、苗字も名前もおもしろいなあと驚きました。

ブログのお友達の皆さんのブログを訪問していると、自分は知らなかったけれども、「読んでみたい、おもしろそうだ」と思う本や著者を知ることができて、興味深いです。本に限らず、お馬さんのブログにしても、自分では知らない世界を、富士山にせよお仕事にせよ音楽にせよ、垣間見ることができるのも、おもしろいなあと思います。

パリの件も読んでくださったんすね。ありがとうございます。幸い、ステイ先の奥さんがすぐにどういう意味か教えてくださったのでほっとしましたが、でなければどん底気分が続いたと思います。残念なことに、実際にそういうことがいつ起こるかもしれない世の中であるだけに、なおさらのこと。

お馬さんの場合には、お客さまとまずは話をされて、そうして話し合いを続ける中から、新しい仕事も開拓されて、そうして今の仕事も継続・発展させていかれるわけですから、まさに、こういう繰り返すこと、相手の側に立って考えることが、ことさら重要で、普段から考えて実行されているんですね。

ありがとうございます。お馬さんのお仕事に対する情熱を、わたしも記事の端々から感じて、感嘆しています。
by milletti_naoko | 2020-12-30 08:46 | Film, Libri & Musica | Comments(8)