
2012月1月3日発行のイタリア語学習メルマガ「もっと知りたい! イタリアの言葉と文化」を、掲載していたサイトがYahoo! ジオシティーズのサービス終了で消失したため、このブログに移行しました。
1.ベファーナが来る
明けましておめでとうございます。イタリアでは、クリスマスの祝いや飾りつけが、1月6日の主顕節(Epifania)まで続くのですが、この主顕節の日は、東方の三博士が、長い旅の末にようやく幼子イエスのもとにたどり着き、贈り物を捧げたとされる日であると同時に、夜、ベファーナというおばあさんが、子供たちの住む家を、煙突を通って訪れる日でもあります。
今回は、このベファーナを歌った粋な歌をYouTubeで見つけましたので、こちらを学習教材として、取り上げます。まずは、リズムと映像を楽しみながら、次のリンクから歌を聞いてみてください。
次に、最初の部分だけ、以下の歌詞を見ながら、もう1度聞いてみましょう。

リズムがよくなるように、語末の母音を省いたり(1行目、viene ⇒ vien)、かなりの行末で
脚韻(rima)を踏ませたりしています。
次の問題に答えるつもりで、再度、歌詞を見ながら、歌を聞いてみましょう。
1.ベファーナはどんないでたちをしていますか。
2.どこから、どんなふうに、やって来ますか。
中・上級の人には簡単すぎるかもしれませんが、イタリアに住んでいれば初級の人でも知っている単語を、日本で勉強すると、中・上級になっても意外と知らない、ということがありがちです。身近な生活用品の名前は、大学や独学用の参考書では扱っていない可能性が高いからです。
たとえば、次の言葉たち。
1. rotto 2. calza 3. collo 4. scopa 5. sacco
scarpeは皆さん、ご存じのはずだと思うので、割愛しました。単数形はscarpaで、意味は「靴」。シンデレラの物語は別として、左右そろった靴を指すことが多いため、scarpeと複数形で使われることがほとんどです。2.のcalzaは、scarpeと関連性の高い言葉で、写真にも写っています。そう、「靴下」。この単語もやはり、普通は、左右一そろいを指す場合が多いので、複数形のcalzeという形で登場します。
1のrottoは、もとは動詞rompere「壊す」の過去分詞ですが、形容詞として、「壊れた、ぼろぼろの」と言った意味でよく使われます。romepereは、rompere le scatole (scatoleは「箱」)など、特定の名詞を伴って、「(人を)憤慨させる、頭に来させる」という慣用句としても、よく使われます。イタリアに長く滞在して、親しい友人ができたり、そうでなくても、いらいらしがちな人が身近にいたりする場合は、"Che palle!"(「なんってこったい、まったく腹立たしい」), " Mi hai rotto le palle."(この場合、rompere le palleとrompere le scatoleは同義です。「君には本当に頭に来た。もううんざりだ。」)というような、あまり品のよろしくない言葉を耳にする機会も多いかと思います。
このrottoが、歌の3行目ではrotteという形になっているのは、なぜでしょう?
そうです、女性名詞の複数形であるscarpeを形容しているからです。
もう一つ問題です。この
rotteと脚韻を踏んでいる単語とその意味を答えてください。
"La Befana vien di notte
con le scarpe tutte rotte,
con la calza appesa al collo
col carbone, (r. 5)
col ferro e l'ottone.
Sulla scopa per volare.
Lei viene dal mare.
Lei viene dal mare.
E la neve scenderà (r. 10)
sui deserti del Maragià,"
これも簡単ですよね。この歌では他にもたとえば、5行目のcarbone「炭」、7行目のvolare「空を飛ぶ」、10行目のscenderà (動詞scendereの直説法未来)などといった単語が、後に続く行の終わりに来る単語と脚韻を踏んでいます。
答えは、すぐ上の行末にあるnotteで、意味はもちろん「夜」です。ここでは、連語で、di notte「夜に」という形で使われています。イタリア語では、行末に置かれた単語の、アクセントが置かれる母音以降が同じ形である場合に、脚韻(rima)を踏んでいると言います。: notte, rotte
7行目の文に主語がなかったり、13行目で動詞partireを語頭に置いたりして、文が破格になっているのは、こうして語順を変えて脚韻を踏ませ、音の響きをよくするためです。
以下に、歌の日本語訳をご紹介します。意訳になりますが(石井訳)、訳を通して、これまでの問題の答えも、自然にお分かりのことと思います。

この歌の歌詞は、こちらのウェブページに掲載されています。
・AngoloTesti - Testo. La Befana Trullallà - Gianni Morandi
声を合わせて一緒に歌ってみれば、イタリア語のリズムを楽しみながら身につけることができるはずです。
こうして子供たちの家を訪れたベファーナは、それまで1年間いい子にしていた子には、靴下いっぱいのお菓子を、悪い子だったら、靴下に木炭をつめて、再びホウキで空へと旅立っていきます。さて、それでは、なぜ一体この老婆が、1月6日に世界中の子供たちに、お菓子を贈ることになったのか……
その事情を語る説をもとに、以前に夫が、とてもすてきなベファーナ物語を書き下ろし、わたしが日本語に訳して、ともに昨年ブログでご紹介しました。心温まるすてきなお話ですので、興味のある方は、ぜひ読んでみてください。リンクは、下の関連記事一覧の最後に掲げてあります。
関連記事へのリンク
・主顕節(Epifania)(主顕節、ベファーナと昨年の主顕節の様子を、写真と共に説明)
・第34号「 Il Capodanno alla Verna、クリスマス(2) 、 L'Epifania e Befana (1)」・第35号「L'Epifania e Befana(2) ~なぜベファーナが子供たちにお菓子を贈ることになったのか」↑ 第34号・第35号をこのブログに移行したら、リンクも追加する予定でいます。
・「ベファーナが来る!」 今年、わたしたちが姪っ子たちに贈る予定の靴下の写真あり

・『LA VERA STORIA DELLA BEFANA di Luigi Milletti』「本当のベファーナの物語」、イタリア語原文 ・『ベファーナ物語』前編 ルイージ・ミッレッティ作、石井直子訳・『ベファーナ物語』後編 ルイージ・ミッレッティ作、石井直子訳
2.年末年始のイタリア
クリスマスを祝う期間中、イタリアの家庭や教会、町を飾るプレゼーペ(presepe)。キリスト生誕の場面を表す模型であり、その情景に人々が思いを馳せやすいようにと、聖フランチェスコが考えたのが始まりとされる、このプレゼーペを、今年もさまざまな場所に見に行きました。
最初の記事では、氷やコルク栓、珊瑚に乾燥パスタなど、思いがけない素材で創られた美しいプレゼーペをご紹介しています。二つ目の記事では、ペルージャ北方にあるコルチャーノの町で、実物大のプレゼーペを訪ねて歩き、クリスマス・コンサートに参加した様子を、三つ目の記事では、美しいスポレートの町で過ごした大晦日の様子をご紹介しています。
*ウンブリア州、ペルージャ周辺の小さな町の魅力を、記事と写真を通して感じていただけると幸いです。
最後に、夫の属する合唱団が昨年のクリスマス・コンサートで歌った
『Tu scendi dalle stelle』の映像をお贈りします。歌のイタリア語の解説は第29号にあります。(リンクは
こちら)
どうか新しい1年が、皆さんにとって、よき1年でありますように。そして、日本、イタリア、世界にとって、よりよい未来への一歩となりますように。
*ヤフージオシティーズのサービス終了のため、現在、ブログにバックナンバーを少しずつ移動中です。
移行済みのバックナンバー一覧へのリンクは
こちらです。
Articolo scritto da Naoko Ishii
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