イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

寿司とイタリア人、とっておきの外食から日常食へ、World Voice 連載第15回

 「43パーセントのイタリア人は、直近3か月にスーパーで寿司を購入したことがある。42パーセントが月に1度以上、26パーセントが半年に1度から3度、19パーセントはまれに購入し、スーパーで寿司を購入したことが一度もないイタリア人は13パーセントにとどまる。」

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https://www.nielsen.com/it/it/insights/article/2019/sushi-nella-gdo/

 以上は、2019年にニールセン社が行った調査の結果です。

 確かに、数年前にペルージャ郊外の大型スーパーで見つけて驚いていた寿司が、最近ではなんと我が家の近所のスーパーでさえ売られるようになったのですが、昨晩この記事を見たときは、びっくりしました。伝統の食文化を誇るイタリアでは、日本に比べると、海外の料理を日々の食卓に取り入れたり、外国料理のレストランを見かけたりすることが少なく、従来の食生活をそんなにも変えることはなかろうと思っていたからです。

 記事の冒頭にはさらに、「今日ではイタリア人の96パーセントが寿司を喜んで食べ、28%は毎日食べてもいいとさえ言っている。」と書かれています。そうして、イタリア人にとって、寿司が、特別な機会の外食から、身近な食品となった理由についても考察しています。

 ニューズウィーク日本版姉妹サイト、World Voice 連載第15回、「寿司とイタリア人、とっておきの外食から日常食へ」では、イタリアでの寿司や日本料理店の普及について、2009年、2015年、2019年の関連ニュース記事や、ウンブリア州での状況も紹介しています。よろしかったら、ぜひお読みください。

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https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/ishii/2021/01/post-10.php

 記事の構想を練り始めたときは、オルヴィエートで新春に寿司を食べたことを話の枕にして、イタリアでの寿司や日本料理の人気について、そして、sushiやtempuraなど、日本の食に関わる言葉が、外来語としてイタリア語に定着しつつあることについて書こうと考えていました。寿司の人気や日本料理店の増加については、かつて新聞記事で見かけたことがあったので、そうした状況を数字と共に紹介する記事をインターネットで探し、文章の流れの中に取り込んで紹介するつもりでした。

 ところがその過程で見つかったニュース記事を読んでいくと、近年の記事や調査にはむしろ、イタリアで、日本料理をはじめとするエスニック料理を作る人や、エスニック食材を購入する人が増えたこと、また、今回ご紹介した記事のように、寿司がスーパーで買われる身近な食品となったことを語るものが多いのです。そのため、予定を変更して、わたしがイタリアで暮らし始めた19年前から今までの、イタリア人と寿司、日本料理の関わり、そしてその変化について書くことにしました。



 そうやって、今朝未明まで記事を書いていたら、ウンブリア州にできては消えていった、値段は若干高いけれど、とてもおいしかった日本料理店の数々を思い出しました。

 閑話休題。上述のニールセン社の調査結果を報告する記事によると、寿司を食べて満足したというイタリア人消費者の割合は、レストランでは76パーセントであるのに対し、スーパーで購入した商品については42パーセントとなっています。さらに、36パーセントのイタリア人は、スーパーで販売される日本食の生魚の安全性を疑っているとも書かれています。このニールセン社の記事は、スーパーでの寿司の販売を拡大していくためには、販売する寿司の品質を向上させ、購入したいと考える消費者が入手しやすいようにすること、また、42パーセントの消費者が高すぎると感じている値段について検討することが、販売業者と生産者にとっての課題であるという考察で、締めくくられています。

 ペルージャ郊外の大型スーパーで売られていた寿司が思いのほかおいしいと、東京でおいしい寿司に食べ慣れているだろう日本の友人から聞いて、いつか食べてみたいと考えたのは、もう数年前の話です。最近も店で見かけたものの、惣菜として買って家で食べるには値段が高いし、また、食品添加物も気になったので、そのときは買いませんでしたし、まだ購入したことがないのですが、いつかより安全でよりおいしい寿司が、より手頃な価格で、スーパーで買えるようになれば、買ってもいいかなと考えています。わたしとしては、特別なおいしさやうれしさをしっかりと味わうために、できればおいしい店でゆっくりと食事を楽しむことを好んではいるのですけれども。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by minoru2703 at 2021-01-13 23:56
外国の寿司は日本のものとは随分変わっていると聞きますがイタリアではどうですか?
日本でもカレーライスやラーメン、スパゲッティは本国とは別物になっているし、それはそれでいいんだと思いますけど
Commented by sunandshadows2020 at 2021-01-14 01:35
私もイタリアでは伝統的な食事を重んじる国だと信じていて、エスニック料理をスーパーで売ってその上人気があるとは驚きました。
まあ半分以上はお米ですしね、これには違和感がないと思えますが、生のお魚の鮮度は気になるところです、保存料もさることながら。
何れにしても馴染みの食品が身直にあると言うのはいい嬉しいものですね。
かつては寿司は高級なもの、レストランで稀にいただくのが楽しみだったのですが評判になってからレストランの数が異様に増え希少価値がなくなったこちらです。
Commented by Penta at 2021-01-14 03:34 x
イタリアで寿司はもう身近な食べ物になっているんですね。

去年だったか一昨年に、イタリアにシラタキだったか春雨を売り込む日本女性の取材をテレビで見たことあるんですが、スパゲティのように調理して食べるとカロリーが少ないので店で使ってもらえる所が出てきたらしいです。
Commented by 3841arischan at 2021-01-14 10:06
なおこさん、イタリアでのお寿司の普及度?がこんなに進んでいるとは驚きました!
ス―パ―での買い物時に、私は見たことはないのですが、もっとも私が最近イタリアへ行ったのが2017年なので、もう4年近く前になりますから・・・
数年で、そんなに普通にお寿司が食べられるようになるとは驚きましたが、イタリアは、もともとお米を食べる文化(リゾット)があるので、普及したのでは?と思います~♫
もっとも、お寿司は、世界中で流行してますよね~
食べやすいし、冷えた状態で美味しいですから(^-^)
パンは、固いパンだと年齢がいくと食べにくい?と感じます!若いときは感じませんでしたが、年とるとお寿司のが食べやすいので、私は若いときはお寿司は好みませんでしたが、最近は、お寿司屋さんへ(スシロ―)行くことが多いです!安価ということもありますが、安かろう、悪かろうではなくて、生魚の質も良いのです!流通が日本はいいからかも?イタリアでも、もしかしたら、同じかもしれないな?とふと思いました!
Commented by u831203 at 2021-01-14 13:22
イタリア人がそんなに寿司が好きとは驚きですね
日本の寿司は今では世界中の人が食べるようになりましたが、イタリア人はトップクラスでしょう
もともと寿司は魚を発酵(腐らした)させたなれ寿司が原点で、今でも滋賀県の鮒ずしがありますが、独特の匂いがして、小生は日本人でも食べたことがありません
逆にイタリア料理は古くから日本の家庭にも浸透していて、パスタやピザはその代表例ですね イタリア料理店もよく見かけます 日本人もイタリア料理が大好きです
でもニヨッキはまだ食べたことがありません
嬉しくなるようなデータをありがとうございました。
masa
Commented by milletti_naoko at 2021-01-14 20:08
みのるさん、パリでは、中国からの移民が、営業していた中華料理店で、衛生上の問題のために閉業に追い込まれたため、日本料理店として開店した場合が多いと、ホームステイ先の家族から聞いたことがあります。イタリアでも、日本料理も提供した方が客が来るし高い値段を設定できるからという理由で、日本料理も提供する店も残念ながら特に最初は多かったように思うのですが、みのるさんが旅行先で寿司を食べられた店も、そういう店だったかもしれませんね。

イタリアでは最近では、日本に実際に旅行した人、留学したり仕事をしたりして寿司の味を知っている人も増えてきて、また、日本の人が経営したり料理したりする店も増えてきたので、本来の寿司に近い寿司が食べられる店が増えてきたように思います。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-14 20:21
お転婆シニアさん、スーパーでの寿司の購入は、特に北西部で多く、また北東部や中部でも広まっているということなので、やはりミラノを中心とする北イタリアの、いろいろな国からの移民やビジネスマンも多くて、食卓も国際色豊かになりがちな、また忙しくて自分で調理する時間を取るのが難しいという地域を中心とした状況だと思います。北イタリアは人口も多いですし。南イタリアの方が食の伝統を守ろうという気概があるように、また、新しいものへの扉は開きにくいように思います。おいしいパンで有名なアルタムーラで、マクドナルが客が来ないので閉店したという映画を昔見たこともあります。

最近は小麦粉のグルテンが健康上の理由で食べられないセリアック病の人がイタリアでも増えつつあり、また、健康のために肉より魚、小麦粉ばかりより米も食べた方がいいという考えもあり、手軽ですぐ食べられることやおいしさもあって、食べる人が増えてきているのでしょう。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-14 20:34
Pentaさん、シラタキ、確かにイタリアのスーパーで時々見かけるようになったのですが、他の国のものかと思っていて、それに乾燥しているので購入したことがなかったんです。なんと日本女性で売ろうとされている女性がいらしたんですね! 

こちらの方ですね! 事業、かなり成功しているようですね。
http://www.tretes.co.jp/?page_id=8262

パスタとしてというよりは、すき焼きもどきに入れて、ぜひ食べてみたいなと思いました。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-14 20:59
アリスさん、北西部で顕著だけれど北東部や中部でも普及とのことで、北イタリアは人口も多いので、おそらくは、ミラノやトリノなど北西の都市での普及度が著しく高く、南部ではそれほどまでには、こうした慣習は広まっていないのではないかと思うのですが、いずれにせよ、ペルージャでまで郊外にあるうちの近所のスーパーで寿司が売られるほどですから、すっかり事情が変わってきました。

わたしも日本に住んでいた頃は、特に寿司が好きというわけではなかったのですが、こちらに来てから恋しくなりました。確かに固いパンは食べづらいですよね。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-14 21:08
masaさん、いろいろ調べていて、日本でのイタリア料理の人気と浸透と、イタリアでの日本料理の人気と浸透が、後者の方が少し遅れ気味ではありますが、2000年の少し前から並行して行われてきているようで、おもしろいなあと思いました。わたしが日本に住んでいた頃と比べると、パスタやピザもずっと手軽に、頻繁に食べられるものになったようですね。いつかニョッキもお食べになる機会がありますように。

こちらこそ、いつも温かいコメントをありがとうございます♪
Commented by meife-no-shiawase at 2021-01-14 23:11
イタリアでもお寿司が受け入れられてきているというのはちょっと驚きです。
でも日本人にとって自分の住む国でお寿司が気軽に食べられるというのは嬉しいですね。

日本人の経営者ではなくてもなおこさんが美味しいと思うお店があるのが、これも意外です。

イタリアのお寿司はお写真を拝見する限りでは、
日本で食べるような具材が多いですが、イタリア独特の・・・とかはありますか?
台湾では時々、笑っちゃうようなお寿司を見かけます。
この間は甘い黒豆の軍艦巻きを見かけました。
日本食に黒豆があるからなのかな・・・
もちろん、選びませんでした。笑。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-15 00:25
メイフェさん、わたしもそこまで広まってきているのかと驚きました。わたしは、日本にいた頃はそれほどお寿司が好きというわけではなかったのですが、愛媛県立高校では、初任校が今治で海に近かったので、新鮮な魚を使った寿司や刺身を食べる機会に恵まれ、2校目、3校目は山中の学校だったのですが、寿司を食べる機会はやはり何かとありました。もう長い間日本で食べていないこともあり、また、日本に住んでいた頃も、おいしいお寿司屋さんがいくつもある町に暮らしていたわけではないので、わたしの基準はおおざっぱなところがあるかもしれません。

イタリア独特のというのは、わたしが行く店ではあまり見かけませんが、ローマやフィレンツェの日本の方が経営して作る日本料理店は別として、ラクイラやオルヴィエートなど、料理をするのがアジアのどこかの国の方である場合は、寿司や刺身はおいしいのですが、ギョウザや春巻きの作り方や添えてあるソースなどが、どうも日本とは違うなあということがあり、それはそうした人の国の料理を反映しているのではないかと感じることがあります。

黒豆の軍艦巻き! おもしろいですね。
by milletti_naoko | 2021-01-13 22:54 | Notizie & Curiosita | Comments(12)