イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

「ヴォラーレ」原曲、世界を席巻したモドゥンニョの歌とその誕生秘話、World Voice 連載第16回

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 南イタリア、プーリアの貧しい家庭から、俳優になる夢を抱き、「必ず返すから」と軍資金をいとこに借りてローマに上京した若者、ドメーニコ・モドゥンニョ(Domenico Modugno、1928-1994)は、大衆の心をプーリアの方言で歌ってラジオ番組に出演するなど、友人たちや将来妻となるフランカを、その情熱と才能で引きつけながらも、なかなか頭角を表せずにいました。

 プーリア方言ではなくイタリア語で、大衆の姿よりも恋の歌をと、プロデューサーに言われながら、友人のフランコ・ミッリャッチに恋の歌の歌詞を書いてほしいと声をかけるものの、ミッリャッチも慣れぬ作詞に苦戦していたある日、1957年7月の日曜日。ミッリャッチは、キアンティの赤ワインに酔った頭で、シャガールの青に満ちた絵を見て、想を得て、「自分の体も服も青く塗り、そうして青い空と同じ色になり、青い空の高みへ、太陽へと飛んでいき、幸せに満ちてさらに太陽の高み、青い空の高みへと……」と書きなぐります。


 これだと、詞を見て確信したドメーニコ・モドゥンニョとの歌づくりが始まり、そうして1958年2月に、サンレモ音楽祭で、モドゥンニョが夢見るような表情で高らかに、空を飛ぶように両腕を大きく広げて歌ったその歌、「Nel blu dipinto di blu」は、会場の聴衆や審査員、そしてテレビを通して見る人々の心をつかんで、大賞を受賞します。そうして、やがてアメリカで、世界で大流行していくのですが、このモドゥンニョの歌が、奇跡の経済と言われる、高度経済発展に向かおうとしていたイタリアとイタリアの人々の心に、飛躍の高みへの最後の一押しを与えたのだと記す新聞記事さえあります。


 この1999年の記事の題名には、「モドゥンニョのNel bluの歌で、イタリアが歌い始めた」とあるのですが、「歌い始めた」とはまた、空へと羽ばたき始めたということでもあるのでしょう。記事の副題には、「イタリア奇跡の経済は、一瓶のキアンティとベッドの上のシャガールの絵と果たされなかった約束のおかげで起こった」とさえ書かれています。

 今や世界的に知られる名曲が、こんなふうに若きモドゥンニョの苦しい模索の日々から生まれたことを、上述のツイートに紹介のあるモドゥンニョの人生を語るドラマを見て知って、感動したのは、数年前のことなのですが、つい最近も、1月9日のモドゥンニョの生誕記念日を祝して、テレビで再放送があり、再び見てやはり感動しました。

 そうして、苦しい中でもきっと光が見えてくるだろう、空へと飛んでいくことができるだろうという願いも込めて、ニューズウィーク日本版の姉妹サイト、World Voice 連載第16回、「ヴォラーレ原曲、世界を席巻したモドゥンニョの歌とその誕生秘話」では、モドゥンニョの人生と歌、そしてその内容や人気について、さらに詳しく語っています。

 よろしかったら、ぜひお読みください。


 日本では、ジプシー・キングスが歌う、ビールのコマーシャルソング、『ヴォラーレ』として知られるこの歌が、1957年のイタリアで、キアンティの赤ワインをきっかけに生まれたといのもまた、おもしろいなあと思います。

 夫もドメーニコ・モドゥンニョが好きで、つきあい始めた頃は、まだ夫の前の車が新しく、カセットテープの音楽を車内で聞くことができたので、この歌をはじめとするモドゥンニョの歌も、ドライブ中に、何度も何度も聞きました。

 その偉大な歌手の苦労に満ちた若い時代と、皆が愛する歌の思いがけない誕生秘話を、ドラマのおかげで知ることができました。そして、以前から好きだった歌が、さらに心に迫り、感動を呼ぶものとなりました。

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by Penta at 2021-01-18 02:21 x
日本ではドメニコ・モドゥーニョと書いている事がほとんどなんですが、イタリア語ではモドゥンニョと発音しているんですか。
この曲は、アメリカで第1回目のグラミーも受賞したように思います。
日本では「ザ・ヒット・パレード」と言うザ・ピーナツが司会をするベスト10のような番組の中で高島忠夫が歌っていたような記憶があります。
あとはチャオ・チャオ・バンビーナもその後ヒットしました。
メロディ的には、こちらの曲の方が好きなんですが。(笑)

映画かテレビ・ドラマで曲の誕生の過程が放送されたんですか。
なかなか似ていて雰囲気が出ていたように思います。

2004年には息子のマッシモ・モドゥーニョがサンレモに出ていましたが、最終日だったかではジプシー・キングと共演していましたね。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-18 04:47
モドゥーニョは北イタリア風の発音で、標準イタリア語の伝統的発音とも、プーリアに生まれ、ローマに長く暮らしたモドゥンニョ自身の発音とも違うはずなのですが(Nel blu dipinto di bluの最初のsognoは日本語のカタカナで書くとどうしても従来の発音とは違った音になるのですが、ソーニョよりはソンニョに近い発音をしていて、oは短母音で、gnが二重子音になっています。)、アメリカ経由で知られたために、ひょっとしたら日本では英語風の発音で知られているのかもしれませんね。この発音と表記については、詳しくは次の記事末に書いてあります。
https://cuoreverde.exblog.jp/31374677/
チャオ・チャオ・バンビーナも日本でヒットしたんですね! 夫がよく聞いていたカセットテープにも収録されていました。どうして好きなのに別れなければいけないのだろうと、歌を聞くたび不思議だったので、今度また調べてみようと思います。

そちらでも、なんと曲の誕生の過程を放送したことがあったんですね!
Commented by Penta at 2021-01-18 10:00 x
曲の誕生のドラマ、上に貼られた動画が、そのドラマの一部なんですよね?
それを観ただけなんです。(笑)
Commented by tobelune at 2021-01-18 10:20
朝からこの記事を拝見して感動しました。
「ヴォラーレ」がそんな昔に生まれていたとは思わなかったですし、歌詞の意味もまるで知りませんでした。ただ、気持ちの良い曲だなあとしか・・・。
誕生秘話を教えていただき、「そうだったんだ? 大変だったね。売れてよかったねえ」としみじみ。やっぱり夢を追い続けあきらめないことは大事なんですね。改めてこの曲が好きになりました。素敵なエピソードをありがとうございます。
Commented by ciao66 at 2021-01-18 19:16
キアンティの赤ワインに酔った頭で、シャガールの青に満ちた絵を見て、出来た曲だったとは!とても愉快ですね♪初めて知りましたが、それはとてもイタリアらしい、明るく陽気なお話ですね。
 ボラーレの歌は大好きで、調子がいいし、明るいし、朗々としたところもいいし、子供のころから聞いた記憶が有りますが、なんといっても、モドゥンニョの唄うのが、やはり群を抜いて、一番でしょう。
 シャガールも大好きですし、シャガールの青の絵もいいですね♪いい絵が、いい着想を生んだということでしょうか。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-18 19:24
Pentaさん、ありがとうございます。どうやら「されたんですか」の「か」を読み飛ばしてしまったようです。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-18 19:34
とべるねさん、こちらこそコメントありがとうございます。
感動を共感してくださったと知って、うれしいです♪ わたしも前回見て、とてもよかったことを覚えていたのですが、先日再び見て、手探りで苦労しての名曲の誕生、モドゥンニョや彼を取り巻く人々の人間ドラマに感動しました。

数年前に初めてこのドラマを見たときは、意識していなかったので、去年はモドゥンニョの生地に立つ銅像が両腕を広げているのがおもしろいなとだけ思ったのですが、今回再び見て、空に飛ぶと歌うところで本当にこんなふうに両腕を広げていたのだなあと気づきました。
記事を書くにあたって調べた記事で、その飛翔が、モドゥンニョ本人と歌のみならず、イタリアの世界への飛翔と重なっていたのだと読んで、さらになるほどと思いました。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-18 19:54
ciao66さん、こんなにも世界中ではやった愛される歌が、こういうひょっとしたきっかけから生まれるとはと、初めてこのドラマを見たときは、びっくりしました! 

わたしもこの歌、大好きです。歌が生まれるまでのいきさつや、歌の歴史における役割も考えるとなおさら、やはりモドゥンニョが歌う歌が一番いいなあと、わたしも思います。シャガールの青い絵もいいですよね。シャガールも、深い青い色や空、夢のような彼の絵の世界に、世に羽ばたく歌が生まれて、喜んでいるかもしれませんね。
Commented by meife-no-shiawase at 2021-01-18 23:12
この曲大好きです♡
なにかすごく元気をもらえるメロディですよね~。
動画拝見しました。
観ている、聴いている人たちの表情がたまりませんね。
魅了されていて、ついつい一緒に口ずさんでしまう♪

寝る前にすごく良い気分にさせてもらえました。
いい夢がみられそうです♪
Commented by zao480 at 2021-01-19 01:15
ヴォラーレ、曲の感じでてっきりラテンの国で作られた曲だと思っていました。ジプシーキングスのジョビジョバやスエーニョなどが入っているCDで聞いていたせいですね。南米に行ったときガイドさんがカーステレオで流していました。
キアンティの赤ワインもシャガールの画も大好きですので親しみが湧いてきます。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-19 02:39
メイフェさんもお好きなんですね! なんと就寝の前に読んでくださって、よい気分になってくださったと知って、わたしこそうれしいです。

モドゥンニョの妻や友人、父など、それまで彼を近くでずっと支えてきた人たちが、温かい目で見守りつつ、やがて歌に感動して目が喜びに変わっていく様子も分かって、演出も心にくいなあと思います。思わずいっしょに口ずさんでしまう、そういう歌ですよね。

ひょっとしたら夢の中で、メイフェさんも空を飛ばれるかしらなどと思いながら、コメントのお返事をしています♪
Commented by milletti_naoko at 2021-01-19 19:53
zao480さん、ラテン語起源の言葉が話されている土地、国やその人、文化という意味では、イタリアもラテンですから、ラテンの国で作られたというのは正解ですよ。南米でもステレオから流れてくるほど人気があったんですね!

シャガールの絵、わたしも好きです。こんなふうにいろいろな土地の文化や産物が歌に結実して、その歌がまた世界に広がっていくというのも、いいですよね。
Commented by shata3438 at 2021-01-20 10:57
こんにちは。
やはり名曲ですね!この歌を聞くと青春時代を思い出してしまいます!
Commented by sunandshadows2020 at 2021-01-21 23:50
知らないわと思って、でもアメリカでも流行った歌なら聞いた事があるかも知れないと動画を見ました。
メロディーで、ああ、と思い出しました。
題名や歌手の名を知らなくてもメロディーで覚えている曲は沢山あるのだと自覚しました。
軽くて楽しくなる曲、次回聞いたらキアンティとシャガールの青を思い浮かべるでしょう。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-22 02:20
シゲさん、名曲はそれぞれの人の心に、聞いた当時の記憶と共に刻み込まれているのでしょうね。

わたしが最初に聞いたのは、昔日本で同僚がカラオケで歌ったヴォラーレだったように、ぼんやり覚えています。
Commented by milletti_naoko at 2021-01-22 02:28
お転婆シニアさん、わたしも、曲名や歌手は知らなくても、耳慣れていて聞くとああ懐かしいと思う歌がたくさんあります。

今日モドゥンニョ本人がアメリカで歌う映像を見て、本当に、夢見るように空を飛ぶように歌っていたのだなあと改めて感じました。
by milletti_naoko | 2021-01-17 23:37 | Film, Libri & Musica | Comments(16)