イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第128号「現代イタリア語で使われる語彙の86%を占める基本語彙2000語、寿司イタリアで日常食に」

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⒈ 現代イタリア語で使われる語彙の86%を占める基本語彙2000語


 今回は、イタリアの著名な言語学者でかつ元教育大臣であったトゥッリオ・デ・マウロ(Tullio De Mauro)が、2017年1月に亡くなる2週間前に発表した文章を見ていきましょう。

 かつて氏が編纂し、1980年に発行された『イタリア語の基本語彙辞典』(Vocabolario di base della lingua italiana)は、辞書・学校の教科書の作成や、官公庁における伝達など、さまざまな場面で、皆が理解できる基本語彙を知るための参考資料として、幅広く活用されてきました。1980年から36年後に、また新たな基本語彙を発表するにあたって、リンク先の文章では、その重要性や、新たな編纂が必要だと考えた理由を述べています。

Internazionale - Il Nuovo vocabolario di base della lingua italiana
 (Tullio De Mauro, linguista, 23 dicembre 2016)

 1900万近くもの話し言葉、書き言葉のデータをもとに新しい基本語彙辞典を編纂した氏が、膨大な量のデータに基本語彙が占める割合を述べた次の文章を見てみましょう。本文の後に、意訳を添えています。

"Le duemila parole fondamentali coprono l’86 per cento delle occorrenze, le tremila parole d’alto uso coprono un ulteriore 6 per cento, il restante 8 per cento è occupato da occorrenze delle restanti ventottomila parole incontrate nei testi, tra le quali anche alcune parole di alta disponibilità occasionalmente presenti nel parlato e nello scritto. "

「基本重要語彙の上位2000語が、使用される語彙の86%を占め、次いで使用頻度の高い3000語がさらなる6%を占め、残る8%は、残りの28,000語が占めている。この28,000語の中には、イタリア人話者がよく利用すると知覚している言葉で、話し言葉や書き言葉の中で時折用いられる言葉もいくつか含まれる。」

*追記(1月22日13:50):すみません。イタリア時間で今日未明にメルマガを発行した時点では、日常生活で使われるイタリア語の語彙の95%は基本の3000語というかつてのカテリーノフ先生の教えと混同して、題名を「96%占める重要3000語」としていたのですが、先ほど間違いに気づいて書き改めました。


 正しくは「86%を占める基本語彙2000語」で、これは時代の変化もありますが、デ・マウロが対象とするデータは、新聞や大学の教科書なども含んでいるためです。

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 デ・マウロが編纂し、2016年に発表した『イタリア語の新基本語彙辞典』(Nuovo vocabolario di base della lingua italiana)基本重要語彙上位2000語が、現代イタリア語で使用される語彙に占める割合は、カテゴリーごとに差があります。話し言葉では91.12%、新聞・週刊誌などで84.15%、学校や大学の教科書などで81.51%、文学作品で84.96%、映画や演劇で85.95%、チャットなどコンピュータが媒介するコミュニケーションで85.98%となっています。(追記はここまで)

 幸い、2016年に発表された『イタリア語の新基本語彙辞典』(Nuovo vocabolario di base della lingua italiana)は、こちらのページの本文1行目にあるpdfと書かれたリンクから参照することが可能です。

 辞典の見方については、先のページに以下の説明があります。

"La lista che qui si pubblica include le circa duemila parole fondamentali, stampate in neretto tondo, le circa tremila parole di alto uso stampate in tondo chiaro, e le parole di alta disponibilità stampate in corsivo chiaro. Queste ultime, circa 2.500, "

 基本重要語の上位約2000語は太字のローマン体で、次いで使用頻度の高い約3000語は普通のローマン体で、そして、現代のイタリア人話者がよく利用すると知覚している約2500語は普通のイタリック体(斜体)で記載しているとのことですが、では、語彙数の少ないUの項を例に、見てみましょう。

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 品詞や動詞の種類、名詞の性なども、単語と単語の間にイタリア語で記載されているため、分かりにくいのですが、基本重要語の上位約2000語に含まれるu-で始まる単語は、次の27語です。

uccello  uccidere  ufficiale  ufficio  uguale  ulteriore  ultimo  umanità  umano  una  unico  unire  unità  unito  università  universo  uno  uomo  uovo  urlare  usare  uscire  uscita  uso  utente  utile  utilizzare

 入門者の方も、意外とご存じの語彙が多いのではないかと思います。イタリア語をまったく知らない方でも、英語やフランス語からの類推で、umanità「人間性、人類」、umano「人間の、人間」、università「大学」、universo「宇宙」などは、意味が推測できたのではないでしょうか。



 うち、旅行者でも知っておくと便利な言葉はuovo「卵」で、ただし二つ以上であれば、複数形でuovaとなります。uscita「出口」は、イタリアでは、盗難などを防止するために、入口(entrata、ingresso)と出口が異なる店などがありますし、現在は感染を避けるために、一方通行となっている場所も多いので、記憶しておきましょう。uomo「人間、男、男性」については、トイレの男女別を示すには図なども用いている場合が多いのですが、まれに文字だけで、複数形uominiを用いて「男性用」と示している場合もあるので、覚えておきましょう。ちなみに、この場合、女性用はdonneで、これは「女性、女」を意味するdonnaの複数形です。

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 次いで使用頻度の高い3000語に該当する語には、ubriaco「酔った、酔っ払い」やuniversale「普遍的な」などがあり、イタリア人話者がよく利用すると知覚している約2500語には、地名に由来する形容詞・名詞が、umbro「ウンブリアの、ウンブリアの住民」、ungherese「ハンガリーの、ハンガリー人、ハンガリー語」など、いくつか挙がっています。

 今後は、このメルマガで、取り上げる学習教材の語彙を説明する際などに、この新基本語彙辞典を積極的に活用していくつもりでいます。

関連記事へのリンク




2.寿司イタリアで日常食に、「ヴォラーレ」原曲誕生秘話


 2016年12月に発表された『イタリア語の新基本語彙辞典』には、それぞれ、1996年、1997年に英語からイタリア語に入ったというweb「ウェブ」やinternet「インターネット」が、基本重要語の上位約2000語として、また、cliccare「クリックする」、link「リンク」も、次いで使用頻度の高い約3000語として挙げられていて、高度情報化が進んだこの数十年のイタリア社会の変容が、イタリア語で使用される語彙にも反映されていることが、よく分かります。

 また、イタリア人話者がよく使用すると認識している約2500語には、なんと日本語からの外来語であるkarateも入っています。

 さらに、現在イタリアで最も広く使われている四つの伊伊辞典で、日本語からイタリア語に外来語として入った語を研究した論文によると、sushi「寿司」をはじめとする日本語起源の48語が、四つの辞典すべてに、見出し語として登録されているとのことです。



 また、外来語として言葉がイタリア語に入ったのは1990年とされるsushiが、今ではなんとイタリア人がスーパーで日常的に買う食品となったという、2019年にニールセン社が行った驚くべき調査結果もあります。



 最後に、先のイタリア語の新しい基本重要語の上位約2000語には、volare「飛ぶ」、blu「青い、青」、felice「幸福な、うれしい」も含まれるのですが、サビにこの3語が出てくる、「ヴォラーレ」の原歌を、イタリア人歌手、ドメーニコ•モドゥンニョ(Domenico Modugno)が、1958年にサンレモ音楽祭で歌って、大賞を受賞しました。そのいきさつと、この名曲の誕生秘話を、ニューズウィーク日本版の姉妹サイト、World Voiceに寄稿しています。



 興味があれば、ぜひお読みください。

 どうか皆さん、くれぐれもお体を大切にお過ごしください。うちで過ごすことが多いであろうこの時期、新しい年の初めは、イタリア語学習を始める、または、力を入れていくいい機会だと思います。この学習メルマガが、そのお役に立てば、幸いです。

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*追記:ブログに移行するにあたって、今号で紹介している新しいデ・マウロのイタリア語基本語彙辞典に基づいて、記事の説明中の単語を、次のように色分けしてあります。

基本語彙2000語現代イタリア語で使われる語彙の86%を占める
次いで使用頻度の高い3000語
上のいずれにも該当しないものの、イタリア人話者がよく使うと知覚している約2500語


Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by みーは at 2021-05-06 07:36 x
なおこさま、おはようございます。
うちで過ごす時間が多いであろうこの時期、学習に力を入れて行くいい機会だ、というのは確かにその通りだと思い、このGW中力を入れてみました。
うちにも基礎語彙の本はあるのですがこちらの辞書をプリントアウトして勉強することにしました。こんなに有用なものを無償で提供されるマウロさんというのは随分と太っ腹ですね。なおこさんの訳で日本で出版されたらいいのに、と思っちゃいました。
3000語の方にも「え、これ基本2000語に入っていないの?!」というほどの単語がかなり入っていますよね〜。残りの2500語にイタリアではご法度のような存在?のケチャップが含まれていることにも驚きました。この「18ページ」を習得できたらだいぶ良さそうですが、いつになることやら。。。汗。でも少しずつでも頑張ります。こんなに良いものを紹介してくださりありがとうございました。
p.s .昨日のメルマガの記事ですが、単語の意味がある程度わかっていても文章の意味がちゃんと取れていないということがわかりました。文法の勉強も必要ですがリーディングの訓練も必要だと感じました。 
Commented by milletti_naoko at 2021-05-07 18:18
みーはさん、こんにちは。
時間がない、気分が乗らないと思っていても、5分だけでも1ページだけでも、初めてみると意外と気づくと夢中になって時間が経っていて、時間もなんとか作り出せるということが多いように思います。
だからこそ、ゴールデンウィーク前、それは無理でもゴールデンウィーク中に、イタリア語学習メルマガを発行しようと思いつつ、できずに終わってしまったのですが、バックナンバーを読んでくださったんですね、ありがとうございます。
デ・マウロは、最近亡くなったのですが、イタリア語研究や教育で著名な言語学者で、どちらの分野でも、また教育相としても大いに貢献をした方です。この数十年の間の時代の変化を感じさせる語彙も多くて、興味深いのですが、なんとケチャップも! そうならぬことを望みつつも、今のような状況が今後何年も続けばまた、きっとmascherina「マスク」も仲間入りすることでしょう。
どういたしまして。お役に立てて幸いです♪ 最近は、わたしがイタリア語を勉強し始めた約20年前に比べて、オンラインで無料で、あるいは有料でも手に入るよい教材がたくさんあって、外国語学習がしやすい環境になっているなと感じています。
単語はやはり文章や会話の中で学ぶと、記憶にも残りやすく、また文や会話の中で理解できること、使えることが大切ですから、どちらもやはり少しずつ勉強していくのが大切だと思います。文法と会話を車の両輪にたとえて、どちらも必要不可欠だと書いてあるイタリア語教育の本を読んだことがあるのですが、文法・語彙という車輪と、会話・読むこと・聞くこと・話して書いて使うことという車輪もまた、どちらも共に進めてこそ、前進がしっかりとできていきます。頑張ってくださいね。
by milletti_naoko | 2021-01-22 09:23 | Lingua Italiana | Trackback | Comments(2)