はじめに
今回は随筆風で、いろいろ写真を添えてあります。
1. Capodanno alla Verna
イタリアには、大晦日の夜をにぎやかに友人や家族と過ごしながら新年を迎える人が多い、とは
前号でもお話しました。レストランやピザ屋では、大晦日の豪華な夕食メニューを提供するところがあるのですが、こうした「大晦日の豪華な夕食」は
cenone di San Silvestro(直訳は「聖シルヴェストロの日の豪華な夕食」)と呼ばれます。イタリア語で、夕食は一般に
cenaと言い、
cenoneという単語はこのcenaに拡大辞の-oneがついた形です。なぜSan Silvestroという聖人が引き合いに出されるかというと、12月31日がこの聖人を記念する日とされているからです。
カトリック教では、たとえば10月4日はSan Francesco d’Assisi、6月20日はSan Luigi Gonzagaといった具合に、1年間365日のほぼ毎日がだれか聖人を記念する日となっています。イタリア人には聖人にゆかりの名前を持つ人が多く、そういう人にとって、自分の名前に縁のある聖人の記念日を、イタリア語でonomastico「聖名の祝日」と言います。たとえば、フランチェスコという名の人は10月4日、ルイージという名であれば6月20日が聖名の祝日ということになります。ただ、誕生日とは違って皆が意識して祝いを言うということはなく、omomasticoを意識してさらに覚えている人がたまにいて、電話を通じて、あるいは会ったときに祝いの言葉を言うくらいです。
話が横にそれましたが、今インターネットで “cenone di San Silvestro”を入力すると、まだ昨年末の大晦日の晩餐のメニューや値段を載せているレストランのサイトがいくつか見つかりました。料理やレストランの写真が載っているサイトもありますので、興味のある人はいろいろなページをのぞいてみてください。料理名のイタリア語を読むのもいい勉強になります。
義父母、夫と祝った新年の訪れ
例年、私と夫はリミニ近くに住む夫の古くからの友人と合流してにぎやかに新年を迎えるのですが、今回の大晦日は平日で夫が仕事をしたということもあり、我が家で静かに過ごしました。クリスマスの時期特有の甘いもの、たとえばパネットーネ(panettone)やパンドーロ(pandoro)、ヌガー(torrone)などを食べながら、夫と義父母と共に新年の訪れを待ち、カウントダウンの直後に、スプマンテ(spumante、男性名詞)でささやかな乾杯をして、新年の訪れを祝いました。赤いものを身につけていると幸運を呼ぶということで、義父母は二人とも赤いセーターを着ていました。また、新年の訪れと共に、ペルージャ郊外にある我が家の近くでも、大雨にも関わらず、あちこちでにぎやかに花火を打ち上げていました。
元旦に訪れた、聖フランチェスコゆかりのSantuario della Verna
翌日の元旦(capodanno, capo d'anno)は、私が「日本風に新年を祈りの中で、敬虔な気持ちで迎えたい」と言っていたこともあり、アッペンニーニ山脈の切り立った岩の上に立つSantuario della Vernaを訪れて、この聖フランチェスコにゆかりの聖地の敷地内で過ごしました。このLa Vernaの教会は実は私たちが昨年10月に参加した巡礼の旅の最終目的地でもあり、聖フランチェスコが晩年に聖痕(stimmate、女性名詞・複数形)を受けたことでも有名な場所です。美しい自然に囲まれ、カトリック教徒に敬愛される聖人に縁の深い聖地であるため、前日から宿泊して、新年をこの聖地で迎えた人も大勢います。毎年、年末年始は宿泊希望者が多いので、9月頃までに予約をしないと空室がないということです。境内の中でも、ミサに参加した教会の中でも一心に祈りを捧げる人々をたくさん見かけました。イタリアでも、1年の最初の日を自分の人生や1年の在り方を深く考えながら過ごそうという人が数多くいるわけです。教会の敷地を取り囲む森や山も美しく、散歩に絶好の場所なのですが、今回は大雨が降っていたために散歩は見合わせました。(上の写真は、元旦当日ではなく数か月前に撮影したものです。)
2. クリスマス(2)
ペルージャでは、クリスマス料理のパスタとして、スープ入りの
カッペッレッティ(cappelletti in brodo)を食べる慣習があることは、
第32号でご紹介しました。クリスマス当日の昼食の際に、この小さい帽子型のパスタも撮影しました。