1.謝肉祭のいたずら 〜 わらべうたを読む
謝肉祭、カーニバル(Carnevale)も今日で終わり、明日からは四旬節(quaresima)に入ろうとしているのですが、今日は、この謝肉祭をテーマにした、とてもかわいらしく、楽しい詩をご紹介します。作者は、イタリアの主要な児童文学作家、ジャンニ・ロダーリ(Gianni Rodari)です。

"Scherzi di Carnevale Gianni Rodari
Carnevale,
ogni scherzo vale."
まずは題名から。
"Scherzi di Carnevale Gianni Rodari"
carnevaleは「謝肉祭、カーニバル」です。scherzi は、scherzo「いたずら、悪ふざけ、冗談」という男性名詞の複数形ですから、「謝肉祭のいたずら」とでも訳せるでしょうか。詩の内容からすると、「いたずら」というよりは「戯れ、冗談」に近いのですが、「戯れ」は子供の語彙にはないし、「冗談」では詩のタイトルらしくないので、こう訳しておきます。
冒頭の2行を読んでみましょう。
"Carnevale,
ogni scherzo vale."
わらべうたなので、響きがよくなるように、そうして、脚韻を踏ませるために、時々文法が破格になっているところがあります。俳句で使われる日本語は、ふつうの日本語とは構造が違うことが多いし、「てにをは」の省略や体言止めが、よく見られますよね。
「謝肉祭では、どんないたずらも許される。
(どんないたずらをしてもいいんだよね。)」
1行目は、「謝肉祭では、謝肉祭中は」などと解釈できるのですが、carnevaleという単語を強調するため、冠詞・前置詞が省略されています。ogniは英語のeachにあたり、「すべての〜、どんな〜も」を意味し、後には単数名詞が続きます。valeは、動詞 valere「価値がある、有効である」の直説法現在で、主語が3人称単数のときの形です。ここでの主語はogni scherzo。
そうして、このあとに、話し手が「自分がやってみよう」と考えているいたずらの数々が続きます。では、どんないたずらをしようと考えているのかを、中級以上の方は、ご自分で読んで、考えてみてください。初級の方にはヒントをさし上げます。
Venezia 16/3/2014(ベネチア旅行の記事は
こちら)
第2節から第5節までは、どの節も、出だしが、"Mi metterò una maschera da..."となっています。mi metteròはmettersi「(服などを)着る、身につける」という意味の再帰動詞(verbo riflessivo)の、主語が一人称単数形(つまり、io「わたし」)の直説法未来です。mascheraは、謝肉祭と言えば欠かせない「仮面、マスク」。英語のマスクにも形が似ていますね。ですから、この部分を訳すと、「〜の仮面をつけよう」となります。それぞれの節で、「だれの仮面をつけて、どんなことをしよう」と言っているのか、ご存じの単語を手がかりに考えてみましょう。
第2節・第3節に出てくるプルチネッラとパンタローネは、17世紀以来、イタリアで上演されている仮面を使った即興演劇、Commedia dell'arteの登場人物です。
それでは、訳してみますね。リズムや内容を重視した意訳になります。

ふだん仮面をかぶっている人たちの素顔を、わたしたちも一度でいいから、見てみたいものですね。
さて、日本語ではそこまで再現できませんでしたが、この詩では、各節に脚韻を踏んでいる行があります。他の節に比べてかなり長い第5節には、4行(2組の脚韻)があり、他の節ではすべて、2行(1組の脚韻)があります。以前にもお話したように、イタリア語の場合、単語のアクセントが置かれる母音以降の形が同じである場合に、脚韻(rima)を踏んでいると言います。
最後の問題です。このわらべうたで、脚韻を踏んでいる部分にすべて線を引いてみましょう。脚韻ですから、該当するのは、もちろん行末の単語だけです。解答は、次回のメルマガでお知らせします。
参照リンク
・第37号「お祭り騒ぎから精進の日々へ」 (謝肉祭、バレンタイン・デーと四旬節)
(↑ 2021年2月追記:今年のバレンタインまでにこの第37号もブログに移行して、その後、リンクを追加する予定です。)
2.ウンブリアの謝肉祭、バレンタイン
謝肉祭にちなんで、今回は、今年トーディの町で行われた、中世の謝肉祭(Carnevale medievale)、そして、ウンブリア州の謝肉祭のお菓子について書いたブログの記事をご紹介します。
この2月、イタリアには1985年以来という実に27年ぶりの寒波が訪れ、トラジメーノ湖も、部分的にではありますが、凍りました。この凍った湖がそれは美しかったです。
Lago Trasimeno, Monte del Lago, Magione (PG) 14/2/2012
かつて第36号でもご紹 介したとおり、イタリアでは、バレンタインデーは、恋人や夫婦が一緒に過ごせることを二人で祝う日です。各地のレストランで、いろんなバレンタインディナーが企画されていたのですが、今年、わたしたちはトーディのレストランでバレンタインを祝いました。ハート型のラヴィオリに、具にバラの花びらを使ったパスタと、ロマンチックなバレンタインを演出する工夫がうれしかったです。
2月は例年、イタリアはひどく寒いので、雪や凍結のために、飛行機や電車、バスなどでの旅に支障が出る可能性は高いのですが、旅行で訪問される町周辺の謝肉祭の行事や、バレンタイン・ディナーなどを調べてみると、一味違った旅の魅力を楽しむことができることでしょう。トーディのバレンタイン・ディナーでは、隣のテーブルにいたイギリス人夫婦が、4日間のイタリア旅行の初日なんだと語ってくれました。きっと旅のすてきな思い出になったことと思います。
それでは皆さん、また次号でお会いしましょう。寒い冬が続きますが、春も少しずつ確実に近づいているはずです。わたしも、まだ始めていないフランス語の勉強を、次回は「始めましたよ」とご報告できるように頑張ります。花を咲かせ、実りを上げるためには、まずは地面をならして、種をまかなければいけませんもの。
Articolo scritto da Naoko Ishii
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