コンテ首相続投とならぬことを今も残念に思うものの、マッタレッラ大統領が首相候補として指名したマリオ・ドラーギは、前欧州中央銀行総裁で、欧州の他国からも信頼が厚く、誠実な人柄と仕事の手腕で知られています。この数日のドラーギと各党代表との協議に関するニュースを見ると、幸い、新型コロナウイルス感染症拡大の原因ともなり、国の極端な右傾化を招きかねない選挙は、なんとか避けることができそうで、とりあえずはほっとしています。
ただ、経済・金融畑でやって来た人だけに、産業、企業や銀行ばかりではなく、国民一人ひとりの暮らしや福祉にも目を向けて、人権や平等を重視してくれるのだろうかという懸念がありました。
Città della Pieve (PG), Umbria 28/12/2018
チッタ・デッラ・ピエーヴェ(Città della Pieve)は、ウンブリア州の西の端、トスカーナ州との州境にあり、レンガ造りの町並みが美しい町です。

キアニーナ牛の産地として知られるキアーナ渓谷を見晴らす丘の上に、歴史的中心街があり、

町を歩くと、小路の向こうに、下方に広がる緑の風景も見えて、風情があります。
閑話休題。今日の夕方、ウンブリアの地方ニュースを見ていたら、イタリアの次期首相候補、ドラーギの別荘が、そのチッタ・デッラ・ピエーヴェにあって、教会にも通うので町の神父もよく知っている上、町の人にも顔なじみで、この週末はチッタ・デッラ・ピエーヴェで過ごすのだという報道があって、驚きました。
ニュースではla seconda casa「第二の家、別邸」という言葉を使っていたのですが、AGI通信(Agenzia Gioralistica Italia)の記事によると、休暇を過ごすために2009年に購入した緑のただなかにある家なのだそうです。近年ではチッタ・デッラ・ピエーヴェの町の人が、町中でドラーギを見かけることがよくあり、町から約1km離れた家に、妻と二人で、昨年はほぼ定住していたとのことです。
この数日は、なんとローマから150km離れたこのチッタ・デッラ・ピエーヴェの家から、ローマに通っていたとのことです。

親切で素朴な人柄だという町の神父や新聞屋、肉屋のドラーギを語る言葉を聞いて、温かい人であるようだと、安心しました。
画家、ペルジーノの出身地であるチッタ・デッラ・ピエーヴェには、ペルジーノの手になる美しい《東方三博士の礼拝》の壁画があり、また例年、クリスマスを祝う期間には、イエス・キリストの生誕場面を再現する大規模のプレゼーペが設置されます。
2018年のクリスマスの頃にそのプレゼーペを訪ねたとき、その展示会場の壁に、

こんな言葉が掲げられていました。
「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。
人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神を持って行動しなければならない。」
(世界人権宣言 第1条)(訳はこちらのページから引用)

こういう思いを持つ町の人たちが、いい人だ、この人なら国政を任せられると考えるなら、そうして、この町で、ドラーギ夫妻が心地よく暮らすことができているなら、国や企業の利益ばかりではなく、一人ひとりの暮らしや命も大切に考えてくれるのではないかと希望が持てるように思います。
さて、ウンブリア州では、特に北のペルージャ県で、新型コロナウイルスの感染が拡大して、深刻な状況であることを、先日もお話ししました。ドラーギの別荘があるチッタ・デッラ・ピエーヴェも、上の地図の左端にその名があり、新規感染者の多い29の市町村の一つとなっています。
最近になって、このウンブリアでの感染者の急増は、病院内ではブラジル型の変異種、ペルージャ県の病院の外では、英国型の変異種が出回っているためであることが発覚しました。
その後も、新規感染者数が後を絶たず、集中治療室の病床が逼迫する状況となる病院が出てきたために、ウンブリア州はオレンジゾーンにとどまるものの、
2月8日月曜日から21日までの14日間、ペルージャ県のすべての市町村、そして、テルニ県で新規感染者数の多い六つの市町村が、レッドゾーンとなることになりました。
多くの店が閉業となり、外出・移動がひどく制限される上に、外出の際には必ず自己宣誓書が必要となり、取り締まりもかなり強化されるとのことです。
上のumbria24の記事は、ドラーギも、レッドゾーンで暮らすことになるけれども、「仕事のため」という理由で、月曜はローマに行くだろうという言葉で締めくくられています。
Articolo scritto da Naoko Ishii
↓ 記事がいいなと思ったら、ランキング応援のクリックをいただけると、うれしいです。↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
