2019年 02月 07日
第117号 「学び歌おう接続法、サンレモ音楽祭の歌 去年と今年」
先週のメルマガでご紹介した前置詞、secondo「…によると、…の意見(考え)で」は、自分の考えを言うのに、とても便利な表現です。
イタリア語では新年のあいさつを「Felice anno nuovo」と言い、feliceは「幸せな」を意味する形容詞です。「幸福、幸せ」を意味する名詞は、felicitàです。
1.アンナは幸せだ。
2. わたしは、アンナは幸せだと思う。
文法も文も単語も意味も、書かれたものをすぐ読むのではなく、まずは自分の頭で考えた方が、ずっと記憶に残りやすくなり、自分のものになります。答えがすぐに目に入らず、ご自分の頭で考えていただくために、少し脇道にそれます。名前を「アンナ」としたのは、つづりも発音もローマ字書きとほぼ似ていて、イタリア語でもAnnaと書くからです。
では、答え合せをしましょう。
1.Anna è felice.
-eで終わる形容詞は、男性形も女性形も、単数形では語尾が-eのままです。ここで間違えてしまった方は、動詞essereの直説法現在の変化を確認・復習しましょう。
2.「アンナは幸せだ。」と言うには、現実にアンナが、現在、あるいはいつも幸せであることを言うので、イタリア語では1のように直説法(indicativo)を使うのですが、「アンナが幸せだ」とわたしが思っているのであれば、それがわたしがそう思うのであって、真実とは限らないわけです。「思う」ことに言及するときには、イタリア語では、pensareの他、credere「信じる、思う」やimmaginare「想像する、思う」という動詞もよく使われるのですが、ある事柄を、「…と思う」と従属節を使って述べる場合には、
Penso che Anna sia felice. / Credo che Anna sia felice. / Immagino che Anna sia felice.
と、接続法(congiuntivo)を用いる必要があります。と言うのも、イタリア語では、主観や意見を表す述語の直接補語となる名詞節では、接続法を使わなければいけないからです。
文法的には、たとえ自分は確信している(essere certo / essere convinto)場合でも、あくまで主観であることから、語り手が男性であれば、
Sono certo che Anna sia felice. / Sono convinto che Anna sia felice.
女性であれば、
Sono certa che Anna sia felice. / Sono convinta che Anna sia felice.
と、従属節内の動詞には接続法を使うこととなっています。主語の「わたし」が男性の場合は、certo/convinto、女性の場合はcerta/convintaとなり、イタリア語では形容詞や過去分詞も、語尾が名詞の性・数に従って変化することにご注意ください。
ただし、あえて、自分は100パーセント正しいと確信していることを強調するために、「Sono certo che Anna è felice.」、「Penso che Anna è felice.」と、あえて直説法の動詞を使う例もあります。また、接続法を使わずとも、言わんとすることは伝わることから、ちょうど日本における敬語の誤用やら抜き言葉の氾濫に似て、特に日常会話では、確信を強調する意図があるわけではないのに、直説法が使われている例も見られます。
ちなみに、イタリア語では「わたし」という主語、ioは、日本語と違って、述語動詞の活用形から分かるために、だれかと対比するなど、よっぽど「自分は」と強調したい場合を除いては、あえて言ったり書いたりしないのが普通です。英語やフランス語では、主語が必ず必要なこともあり、こうした言語を母語とする人や、外来語として学んだ最初の欧州言語がこうした言語である人は、必要がないときにいちいちioと言ってしまいがちだそうです。ペルージャ外国人大学で、入門クラスの授業を参観したとき、その授業を担当されたベテランの先生がおっしゃっていました。
閑話休題。secondoが便利なのは、従属節を使わずに、つまり接続法を使わずに、自分の考えを表現できるからです。たとえば、secondoを使えば、2は、
2.Secondo me Anna è felice. / Per me Anna è felice.
と、動詞に直説法を使って述べることができます。secondo me同様に、前置詞のperを使い、per me「わたしの考えでは、わたしに言わせれば」と言うこともできます。
ここで、前号、116号でご紹介した「雌クロウタドリの日(i giorni della
merla)」を説明するオンライン記事を、もう一度読んでみましょう。
この最後の文では、secondo la tradizione「伝承によると」と文が始まっているのに、「sarebbero i tre giorni più freddi dell’anno」と、述語動詞が条件法現在(condizionale presente, condizionale semplice)となっています。これは、「伝聞・推測などに基づく、不確かな現在の事柄を表」(『イタリア語のABC』から引用)すからで、前号の メルマガにも書きましたが、実際、過去約50年の統計を見る限り、雌クロウタドリの日は、1年で最も寒い日ではありません。
さて、接続法の用法は、他にもいろいろあるのですが、ここまで見てきた、述語部の内容を説明する従属節の用法について、さらに少し言及すると、述語部が感情や希望、不安を表す場合にも、従属節内では接続法が用いられます。
3. Spero che Anna sia felice. アンナが幸せであることを願っています。
4. Sono contento che Anna sia felice. アンナが幸せでうれしい。
5. Temo che Anna non sia felice. アンナは幸せではないのではないかと心配です。
イタリアに長年暮らし、学校に通うことなく、働きながらイタリア語を学んだ移民のイタリア語の発達を調べた研究結果によると、接続法と条件法は、イタリア語の動詞の法の中で最も難しく、ごく一部の人だけがきちんと習得したことが分かっています。
2 昨年のサンレモの歌『Il congiuntivo』、イタリア語文法の歌
現在、イタリアでは歌の祭典、サンレモ音楽祭が毎晩放映中で、我が家でも夕食後は、テレビの前に陣取っています。昨年のサンレモの歌に、イタリア語文法の接続法を取り上げた、その名も『Il congiuntivo』という歌がありました。すでに昨年、ブログでもメルマガでも言及しています。
まずは、次のリンクから歌を聴いてみましょう。
・YouTube - Lorenzo Baglioni - Il congiuntivo (Audio + Testo)
イタリア語での文法用語がてんこ盛りなので、文法用語の日本語訳や該当する文例が知りたいという方は、次のブログ記事に載せた表を参考にしてから見ると、理解できるところが増えるかもしれません。
"Il congiuntivo ha un ruolo distintivo e
si usa per eventi che non sono reali.
È relativo a ciò che è soggettivo a differenza di altri modi verbali
e adesso che lo sai anche tu non lo sbagli più."
1行目の形容詞、distintivoは、動詞、distinguere「見分ける、区別する」の過去分詞・形容詞、distinto「異なった、際立った」から派生した形容詞で、「区別を示す、弁別的な」という語義が『伊和中辞典』にあります。ruoloは「役、役割」という意味の男性名詞です。
2行目、si usaはsiを用いた受動態です。第96号にsi+動詞のさまざまな用法をまとめていますので、詳しくは、第96号をご覧ください。
・第96号 「物語を読む4、si+動詞の用法いろいろ、健康とピザと野菜スープ、
3行目、relativo a …は、「…に関する」、soggettivoは「主観的な」という意味で、対義語はoggettivo「客観的な」です。modi verbaliは「動詞の法」で、イタリア語には全部で四つあります。接続法(congiuntivo, modo congiuntivo)は、その一つなのですが、では、altri modi verbali「動詞の他の法」は何でしょう。
答えは、直説法・命令法・条件法で、そのイタリア語名と文例は、次のとおりです。
では、訳を見ていきましょう。
"Il congiuntivo ha un ruolo distintivo e
si usa per eventi che non sono reali.
È relativo a ciò che è soggettivo a differenza di altri modi verbali
e adesso che lo sai anche tu non lo sbagli più."
「接続法には区別を示す働きがあり、
現実ではないことがらを示すために使われる。
動詞の他の法とは異なり、主観的なことがらについて用いられる。
今は君もそれを知っているから、もう間違えることがないだろう。」
以上、「 」内はわたしの訳ですが、若干意訳となっているところがあります。
中級、上級の人はa differenza diとadesso cheの意味を、辞書で調べて、ノートに書いておきましょう。
3 今年のサンレモ音楽祭、イタリア語ci、ceの発音
現在開催中のサンレモ音楽祭で、招待を受けて歌ったフィオレッラ・マンノイアの歌がすばらしかったので、歌の映像へのリンクを、一部の歌詞と日本語訳を添えて、ブログの記事でご紹介しています。興味があれば、ぜひご覧ください。
戦争や差別を、あらぬ方向に向かっていく社会を、手をこまねいて見ていてはいけない。このままではいけないと舵を取り直す力はわたしたち一人ひとりにあって、その勇気と責任も、皆にあるのだから。
— Naoko Ishii (@naoko_perugia) February 6, 2021
サンレモ音楽祭で、フィオレッラ・マンノイアの歌を聞いて、感動しました。https://t.co/PnKnoIdBWS
一方、こちらの記事では、マルケ州の美しい小村を紹介したあと、音楽祭初日にわたしがいいなと思った歌2曲の一部を含む、イタリアの放送局Raiのツイートを、ご紹介しています。
シモーネ・クリスティッキとアリーザの歌を最初から最後まで聞いてみたいという方は、以下のリンクから視聴が可能です。
・Simone Cristicchi - Abbi cura di me (Official Video - Sanremo 2019)
・Arisa - Mi sento bene (Sanremo 2019)
最後に、入門・初級の方に、次の記事に、イタリア語、ciとceの発音について、ラテン語からイタリア語への発音の変化や例と共に分かりやすく記載しています。興味があれば、ぜひお読みください。
「さあ、わたしのあとについて言うのよ。鬼は外、福は内!」
— Naoko Ishii (@naoko_perugia) February 2, 2021
夫が聞き返します。
「映画館? (Cinema?)」
「映画は関係ありません。」
「でも、UCIって言ったよね。」
United Cinemas Internationalの略称、UCIの、イタリア語での発音は「ウーチ」なのです。https://t.co/9QKiSCippn
少しずつ日が長くなり、寒くとも春が確実に近づいてきているのを感じています。語学学習では特に、「一気に」よりも「こつこつ」が大切です。5分でもいいので、好きな歌を聞いてみる、問題集やメルマガに目を通してみるなど、毎日、あるいは1日お気にでも、何らかの形でイタリア語に触れる機会を持ってみてください。いったん始めると、その5分が30分に1時間になることもあるでしょうし、そうでなくとも、5分の積み重ねが日を重ねれば大きくなっていきます。
でも、観客は入っているんですか?
去年の大晦日の紅白は観客無しで行われました。
サンレモに行って、もう20年経ってしまいました。
まだ、数年前のような感じがします。
Lorezo BaglioniはClaudio Baglioniの息子ですか?
日本のケーブル会社は、以前RAI UNOのチャンネルがあって、マンションに入居していた時は、それで生のラジオ中継を聴いていた事がありました。
もう今はそのチャンネルは多分ないように思います。
その後、インターネットで映像が観られるようになって随分身近になりました。
Baglioniと名字は同じですが、親戚関係はないようです。
なんとRai1のチャンネルがケーブル会社に入っていたことがあったんですね!