2010年2月10日発行のイタリア語学習メルマガ第36号「バレンタイン・デー、愛の讃歌」の前半を、関連する写真や記事へのリンクを添えて、このブログに移行しています。
1.イタリアのバレンタイン・デー
日本ではもっぱら女性が男性にチョコレートを贈る日で、意中の男性に告白するきっかけになったり、同僚に義理チョコを贈ったりと、独特の「バレンタイン・デー文化」が発達しています。
イタリアでは、この日をどんなふうに祝うのでしょうか。イタリア語で「バレンタイン・デー」に該当する表現はil giorno di San Valentino「(直訳は)聖ヴァレンティーノの日」あるいはla festa di San Valentino「(直訳は)聖ヴァレンティーノの祝日」ですが、単にSan Valentino「(直訳)聖ヴァレンティーノ」とだけ言って、2月14日の「バレンタイン・デー」を表すこともよくあります。我が家のカレンダーにも2月14日(il 14 febbraio)の項には、単にSan Valentinoと書いてあったり、Festa dei FidanzatiやFesta degli Innamoratiと書いてあったりします。
イタリアで祝うバレンタイン・デーを如実に言い表しているのが後者二つの表現です。ともに「恋人たちの祭日」といった意味です。fidanzato(単数形は男性-o、女性-i)は、本来は結婚を約束した「婚約者」を意味する言葉ですが、最近では単に「恋人」という意味でもよく使われます。innamoratoは「恋に落ちた人、恋する相手、恋人」という意味の名詞ですが、この単語はもともとinnamorare「恋心を抱かせる」(← in- + amore + -are:皆さんもご存じのamore「愛」という男性名詞に接頭辞in-と接尾辞-areがついてできた動詞です)の過去分詞です。
たとえば、「君(あなた)を恋しています/あなたに夢中です。」はイタリア語で、「私」が男性であれば“Sono innamorato di te. ”、女性であれば“Sono innamorata di te.”と言います。
ですから、innamorati(innamoratoの複数形)は「恋に落ちた者どうし」、「愛し合う者どうし」を意味し、恋人どうしだけでなく、結婚して一緒にいる夫婦も含みます。
というわけで、イタリアではSan Valentinoは、恋人同士や夫婦などがお互いの愛を確認したり祝ったりする日です。カードや花、チョコレートなど、あるいは人によってはもっと高価なものを贈ったり、一緒にロマンチックな食事を楽しんだりする日であって、女性だけが一方的に、それも決まってチョコレートを贈る日ではありません。というわけで、もちろんホワイト・デーも存在しません。
独自の甘い愛の言葉もカードに添えることがあるものの、一般的な祝いの言葉はBuon San Valentino!(バレンタイン・デーおめでとう)です。次のリンク先には、イタリア語のメッセージ入りの無料で利用できる絵(写真)入りカードがたくさんあります。かわいい絵や美しい写真もありますので、恋する相手に贈られるのに使われてもいいかもしれません。イタリア語での愛の言葉もさまざまですから、そういう言葉を見て勉強しようという方もいるかもしれませんね。
上記のページのカードをざっと見ただけですが、“Buon San Valentino”の次に多く使われている言葉は、“Ti amo.”「あなた/君を愛しています」でしょうか。これに修飾語をつけて、“Ti amo per come sei.”「そのままの君を愛しているよ/そういうあなただから好きなんです」とか、“Ti amo tanto/davvero."「あなたをとても/本当に愛しています」とか工夫を加えているものもあります。
参考までに、イタリア語では贈り物やカードの封筒に受け取る相手の名前を書くときはふつう“Per Anna”「アンナへ」などと、前置詞にperを使います。このper「~のために、~へ」という言葉をイタリア人はしばしばXマークで代用しますので、“X NAOKO”と書かれたメッセージ入り封筒を受け取ることもよくあります。若い世代は携帯電話(cellulare, telefoninoいずれも男性名詞)でメッセージを送る際にもperにあたる部分を×で代用し、chというつづりもk一字で置き換えるなどして、すばやく短いメッセージを送れるように工夫しているようです。そのため、知識人がイタリア語の乱れや若者の書く力の低下を心配したりもしています。
カードそのものの初めに、「~へ」と贈る相手の名を記す要領は手紙と同じで、caro「親愛なる」という形容詞を名前の前に置きます。このcaroの用法については、第33号の二つ目の記事を参考にしてください。
「大好きな~へ」と愛情をさらに込めた表現を使いたい場合には、Carissimo Francesco、Carissima Chiaraと言ったふうに、形容詞caroに-issimoという語尾をつけてください。
2.世界のバレンタイン・デー
さて、「バレンタイン・デー」は、もともとイタリアの聖人、聖ヴァレンティーノ(San Valentino)に由来する祭日です。
読者の方の中には、英語も学習されている方がおいでかと思います。上の記事は英語音声も聞くことができます。このサイトの中には、他にも面白い英語の記事で、ヒアリングもできるものが数多くありますから、ぜひ活用してみてください。
それはさておき、この記事には、ブラジルではバレンタイン・デーにあたる恋人たちが祝う日は6月12日だとか、中国では恋人同士が祝うのはむしろ7月7日の七夕の日の方だとか、興味深いことがたくさん書かれています。北朝鮮には日本の習慣が伝わったようで、女性が男性にチョコレートを贈って恋を打ち明ける日だということです。
アメリカでは、夫婦や恋人どうしが二人で祝うこともあれば、家族が子供にもお菓子などを贈って皆で祝うこともあり、小学校では子供たちが全員でカードやお菓子を交換するところもあるようです。
「バレンタイン・デー」にせよ、「七夕」にせよ、もともとある土地で生まれた風習が、違う土地に伝わると、それぞれの土地で少しずつ祝い方や精神が変わっていくのがおもしろいと思います。
ただし、子供どうしが祝うにせよ、恋人や夫婦・家族が祝うにせよ、共通するのは「愛」です。上記の記事では、世界各国出身のさまざまな年代の人にそれぞれのバレンタイン・デーの在り方や過ごし方をインタビューしているのですが、最後にインタビューに答えている方の言葉が美しいと思いました。引用してみます。
NANCY LANG: "Valentine's Day is a wonderful opportunity for people to refocus on what love is all about. Because it's sharing, it's giving. Love is a strange element of our lives. But it's very important because without it you have nothing."
ナンシー・ラング「バレンタイン・デーは、人々が愛とは本当は何なのかをしっかり見つめ直すのに役立つすばらしい機会です。なぜなら、愛とは分かち合うこと、与えることだからです。愛は、私たちの人生の不思議な要素です。けれども、とても大切なものです。というのは、愛がなければ、結局何も手にしていないのと同じだからです。」(「 」内は石井訳)
関連記事へのリンク
⇒ 第36号(2)「聖パウロの愛の賛歌」(イタリア語の音声・映像へのリンクあり)に続く。(この記事をブログに移行し次第、リンクを添える予定です。)
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こちらです。
*2021年追記:今号をブログに移行するにあたって、次の号で紹介している新しいデ・マウロのイタリア語基本語彙辞典に基づいて、
記事の説明中の単語を、次のように色分けしてあります。
・基本語彙2000語(現代イタリア語で使われる語彙の86%を占める)
・次いで使用頻度の高い3000語
・上のいずれにも該当しないものの、イタリア人話者がよく使うと知覚している約2500語
Articolo scritto da Naoko Ishii
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