今年1月6日に、日本の国立感染症研究所が、1月2日にブラジルから到着した旅行者4名から変異株を検出したのが、新型コロナウイルスのいわゆるブラジル型の変異株、501Y.V3の世界で初めての検出で、その後、アマゾナス州の州都、マナウスで12月中旬から下旬にかけて採取された31検体のうち42%がブラジル型の変異株であると発覚し、マナウスでは10月までに人口の75%がすでに感染していたと推定されています。
NIID 国立感染症研究所 - 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第5報)
ブラジル型の変異株は、感染力が非常に強い上に、すでに新型コロナウイルスに感染していても、2、3か月後には再感染の恐れがあり、またワクチンの効果も危ぶまれています。
イタリアでは1月25日に、国内における最初のブラジル型の変異株による感染者がいるという報道がありました。
ロンバルディア州ヴァレーゼで、ブラジルからマドリード経由でミラノのマルペンサ空港に降り立ち、入国したブラジル人男性が、その後自主的に、医師に尋ねて22日にPCR検査を受けた結果、ブラジル型の変異株の感染が確認されました。出発前にサン・パウロで検査をしていたのに、その際には家族皆が陰性だったので、おそらく潜伏期だったのだろうとのことです。また、検査で感染は発覚したものの、男性はまったくの無症状でした。この報道の時点ですでにウイルス学者からは、「ワクチンで防ぐのが難しい変異株なので、感染があちこちで発生し始めたら、即刻ロックダウンして蔓延を防ぐ必要がある」という声が上がっていました。
翌1月26日には、アブルッツォ州ラクイラで、ブラジルから帰国した家族4人中3人、両親と子供一人がブラジル型の変異株に感染していたという発表がありました。海外からの入国に際して受けた検査の結果、1月18日に陽性という結果が出て、さらにゲノム解析を行った結果、3人ともブラジル型の変異株の感染が確認されたのです。
問題はウンブリア州の場合です。
https://coronavirus.gimbe.org/emergenza-coronavirus-italia.it-IT.html
感染者の激増は、変異株によるものではないかという疑いから、高等保健研究所に送っていた1月8日の2検体が、ブラジル型の変異株であることが、2月初めに判明しました。いずれもペルージャ在住の高齢者の検体で、一人は新型コロナウイルスに感染して亡くなり、もう一人は介護型ケアハウスの住人です。この二人の検体が選ばれたのは、外部との接触がなく、感染するはずがない状況下で感染していたためであり、二人は、上述のロンバルディアやアブルッツォの例と違って、ブラジルとの接点がありません。そのため、州内での感染状況を突き止めるために、英国型と疑われる検体や原因が分からないクラスターの検体、再感染した人の検体など、42検体が、さらにゲノム解析のために高等保健研究所に送付されました。(詳しくはこちら)
そして、その結果、うち18検体に英国型、12検体にブラジル型の変異株、3検体にその他の変異が確認されました。上記の記事には、ブラジル型は病院内、英国型は病院外のペルージャ、バスティア・ウンブラ、トラジメーノ湖などの地域の検体に発見されたと書かれています。そのため、国からも、「こうした変異株の蔓延は国にとっても重大な問題であり、特にブラジル型の変異株はワクチンの効果が低い可能性があるため、ウンブリア州はオレンジゾーンに残っても、感染が見られる地域はレッドゾーンとして、周辺地域でも注意を喚起する必要がある」と要請がありました。
一方、こちらの記事からは、先のブラジル型と確認された12検体のうち一つは病院外の検体であること、そして、病院内でクラスターを発生させたブラジル型の変異株も外部から侵入したと考えられていることが分かります。ペルージャ総合病院の細菌学研究所長によると、「状況は考えたよりもさらに深刻で、ブラジル型の感染患者を10人確認したということは、実際には100人いる可能性もあり、ロンバルディアやアブルッツォと違って、ウンブリアでは0号感染者が把握できない状況にあるため、感染が広まっていると考えられる」とのことです。また、所長も、そしてニュースで聞くと、ウンブリア州の技術科学員会も、感染を食い止めるためには、ウンブリア州全土をレッドゾーンとする必要があると訴えています。
そして、ウンブリアだけではなく、イタリアの他州でも、すでに少しずつ英国型やブラジル型の変異株の感染が拡大しつつある可能性が大いにあります。
こういう状況の中、昨日、ニューズウィーク日本版の姉妹サイト、World Voice 連載第19回の記事として、「変異株で感染急増 レッドゾーン、ペルージャ・ウンブリア」を執筆し、寄稿しました。

イタリアでは、現在ではイエローゾーンの州が多いのですが、まだまだ気を抜けないので、十分にご用心くださいという気持ちと共に、日本や他国でも、英国型とブラジル型の変異株ははるかに感染しやすく、結果として感染が急速に増大して医療機関が逼迫しかねないため、警戒してくださいという思いを込めて、書きました。よろしかったら、ぜひお読みください。
Articolo scritto da Naoko Ishii
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