イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

変異株で感染急増 レッドゾーン ペルージャ・ウンブリア、World Voice 連載第19回

変異株で感染急増 レッドゾーン ペルージャ・ウンブリア、World Voice 連載第19回_f0234936_08212124.jpg
 今年1月6日に、日本の国立感染症研究所が、1月2日にブラジルから到着した旅行者4名から変異株を検出したのが、新型コロナウイルスのいわゆるブラジル型の変異株501Y.V3の世界で初めての検出で、その後、アマゾナス州の州都、マナウスで12月中旬から下旬にかけて採取された31検体のうち42%がブラジル型の変異株であると発覚し、マナウスでは10月までに人口の75%がすでに感染していたと推定されています。

変異株で感染急増 レッドゾーン ペルージャ・ウンブリア、World Voice 連載第19回_f0234936_05221145.png
NIID 国立感染症研究所 - 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第5報)

 ブラジル型の変異株は、感染力が非常に強い上に、すでに新型コロナウイルスに感染していても、2、3か月後には再感染の恐れがあり、またワクチンの効果も危ぶまれています

 イタリアでは1月25日に、国内における最初のブラジル型の変異株による感染者がいるという報道がありました。



 ロンバルディア州ヴァレーゼで、ブラジルからマドリード経由でミラノのマルペンサ空港に降り立ち、入国したブラジル人男性が、その後自主的に、医師に尋ねて22日にPCR検査を受けた結果、ブラジル型の変異株の感染が確認されました。出発前にサン・パウロで検査をしていたのに、その際には家族皆が陰性だったので、おそらく潜伏期だったのだろうとのことです。また、検査で感染は発覚したものの、男性はまったくの無症状でした。この報道の時点ですでにウイルス学者からは、「ワクチンで防ぐのが難しい変異株なので、感染があちこちで発生し始めたら、即刻ロックダウンして蔓延を防ぐ必要がある」という声が上がっていました。



 翌1月26日には、アブルッツォ州ラクイラで、ブラジルから帰国した家族4人中3人、両親と子供一人がブラジル型の変異株に感染していたという発表がありました。海外からの入国に際して受けた検査の結果、1月18日に陽性という結果が出て、さらにゲノム解析を行った結果、3人ともブラジル型の変異株の感染が確認されたのです。

 問題はウンブリア州の場合です。

変異株で感染急増 レッドゾーン ペルージャ・ウンブリア、World Voice 連載第19回_f0234936_04535012.jpg
https://coronavirus.gimbe.org/emergenza-coronavirus-italia.it-IT.html

 感染者の激増は、変異株によるものではないかという疑いから、高等保健研究所に送っていた1月8日の2検体が、ブラジル型の変異株であることが、2月初めに判明しました。いずれもペルージャ在住の高齢者の検体で、一人は新型コロナウイルスに感染して亡くなり、もう一人は介護型ケアハウスの住人です。この二人の検体が選ばれたのは、外部との接触がなく、感染するはずがない状況下で感染していたためであり、二人は、上述のロンバルディアやアブルッツォの例と違って、ブラジルとの接点がありません。そのため、州内での感染状況を突き止めるために、英国型と疑われる検体や原因が分からないクラスターの検体、再感染した人の検体など、42検体が、さらにゲノム解析のために高等保健研究所に送付されました。(詳しくはこちら



 そして、その結果、うち18検体に英国型12検体にブラジル型の変異株、3検体にその他の変異が確認されました。上記の記事には、ブラジル型病院内英国型病院外のペルージャ、バスティア・ウンブラ、トラジメーノ湖などの地域の検体に発見されたと書かれています。そのため、国からも、「こうした変異株の蔓延は国にとっても重大な問題であり、特にブラジル型の変異株はワクチンの効果が低い可能性があるため、ウンブリア州はオレンジゾーンに残っても、感染が見られる地域はレッドゾーンとして、周辺地域でも注意を喚起する必要がある」と要請がありました。



 一方、こちらの記事からは、先のブラジル型と確認された12検体のうち一つは病院外の検体であること、そして、病院内でクラスターを発生させたブラジル型の変異株も外部から侵入したと考えられていることが分かります。ペルージャ総合病院の細菌学研究所長によると、「状況は考えたよりもさらに深刻で、ブラジル型の感染患者を10人確認したということは、実際には100人いる可能性もあり、ロンバルディアやアブルッツォと違って、ウンブリアでは0号感染者が把握できない状況にあるため、感染が広まっていると考えられる」とのことです。また、所長も、そしてニュースで聞くと、ウンブリア州の技術科学員会も、感染を食い止めるためには、ウンブリア州全土をレッドゾーンとする必要があると訴えています。

 そして、ウンブリアだけではなく、イタリアの他州でも、すでに少しずつ英国型やブラジル型の変異株の感染が拡大しつつある可能性が大いにあります。

 こういう状況の中、昨日、ニューズウィーク日本版の姉妹サイト、World Voice 連載第19回の記事として、「変異株で感染急増 レッドゾーン、ペルージャ・ウンブリア」を執筆し、寄稿しました。

変異株で感染急増 レッドゾーン ペルージャ・ウンブリア、World Voice 連載第19回_f0234936_08212124.jpg

 イタリアでは、現在ではイエローゾーンの州が多いのですが、まだまだ気を抜けないので、十分にご用心くださいという気持ちと共に、日本や他国でも、英国型とブラジル型の変異株ははるかに感染しやすく、結果として感染が急速に増大して医療機関が逼迫しかねないため、警戒してくださいという思いを込めて、書きました。よろしかったら、ぜひお読みください。

Articolo scritto da Naoko Ishii

↓ 記事がいいなと思ったら、ランキング応援のクリックをいただけると、うれしいです。
↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ  

Commented by likebirds at 2021-02-15 11:12
milletti_naokoさん、こんにちは。
日本ではようやくワクチン接種が始まります。
でも、変異株の蔓延などについてはまだ詳細が判明しておらず、心配は尽きません。
出口の見えないコロナ感染の収束、気を付ける日々が続きます。
milletti_naokoさんレポート、心にとめて読ませていただきました。
likebirds(妻)
Commented by tokotakikuh at 2021-02-15 13:52
ウィルスは、必ず、変異するものですよね
今回は、感染力が、かなり強いと言ってますね
日本でも、渡航歴のない人の感染が報告されています

イタリア?では・・ワクチンはどうなっていますか
日本は、医療関係者から
ぼちぼち、始まると聴いています
そのあと、高齢者です
勿論、打つ予定にしてますが
いつのことやら??
Commented by ciao66 at 2021-02-15 17:14
ブラジルの変異種は手ごわいですね!
やっとワクチンが始まろうとしているのに、
神出鬼没のように現れて、ワクチンも効き目が薄いとは。
この分では、昨年と同様に、今年も、
巣ごもりと、つかの間の自由とを何度も往復しそうですが、
じっくり腰を据えて、ウィルスとの闘いになりますね。
Commented by milletti_naoko at 2021-02-16 00:20
likebirdsさん、こんにちは。
日本でもいよいよ始まるんですね。ウンブリア州でも、高齢者へのワクチン接種が始まるのですが、感染が多い状況でもあり、予約がすぐにできるだろうかという心配もある今日この頃です。

ありがとうございます。ようやく感染が広がらぬように暮らすすべを学び、ワクチンも接種が始まってという矢先の変異株の蔓延で、イタリアでは全土ロックダウンにという声も上がっています。先に手を打つほど医療機関の逼迫や亡くなる方も少なく、経済も回復しやすいと思うのですが、どうなることかと、先行きを見守っているところです。
Commented by milletti_naoko at 2021-02-16 00:40
zakkkanさん、他州に比べてウンブリア州では、尋常ではない感染の急増が見られるとのことで、ひょっとしたらペルージャ型の変異株が原因かもしれないとさえ言われていたのですが、ゲノム解析の結果、英国型とブラジル型が理由であることが分かりました。日本でも、感染が多い国に行かなくても、国内で感染してしまう可能性があるのですね。ウンブリアではすでにどれだけの人が変異株に感染しているか知れないのが問題になっているのですが、こんなふうに両方が蔓延する状況では、本当にペルージャ型が生まれてしまう可能性もあり、より警戒しなければいけないのではないかと感じています。

ワクチンはイタリアでもまずは医療関係者、次に高齢者で、ようやく今各州で高齢者への接種が始まっているところです。入手が難しいこともあり、まだまだ摂取までには残念ながら時がかかってしまうのでしょうね。
Commented by milletti_naoko at 2021-02-16 00:45
ciao66さん、ブラジル型が出回ってしまうと、せっかくのワクチンの効果が無駄になってしまう恐れがあるので、まずはすべてレッドゾーンにして感染拡大を抑え、感染経路がつかめるようにしなければいけないと、医療関係者は声をそろえて、ウンブリア全土について、あるいはイタリア全土についてロックダウンの必要を訴えています。実際現在では、新規感染者も現在の感染者も、昨年の春の最も感染が多かったときよりも数値が高い状況で、かつ、これまでの方法では変異株を抑えきれないことが分かってきたという状況でもあります。巣ごもり・自由と言えば、Stop&Goを繰り返すよりも、イタリア全土で2週間ロックダウンをする必要があるという声が上がっていて、わたしも厳しいけれど、今後このままでは激増する恐れが高い変異株による感染を防ぐには、それが一番だとは考えているのですが、さてどうなりますことやら。
by milletti_naoko | 2021-02-15 08:37 | Covid-19 Italia | Comments(6)