
2010年2月17日発行のイタリア語学習メルマガ第37号「お祭り騒ぎから精進の日々へ」を、このブログに移行しています。
1. カーニバル、バレンタインデーと四旬節
カトリック教のお祭りごとには、古来の異教の風習をうまく取り込み、その主旨や祝い方を変えたものがたくさんあります。バレンタインデーも、古代ギリシア、ローマで 2 月15日に行われた異教の神々を讃える祭典に遡り、そうした祭典では耕地の清めや豊穣を祈る儀式が行われていたようです。
ハートの周囲の具はツナと玉ネギです 13/2/2010
今年のバレンタイン・デーは我が家では私の体調が優れなかったため、友人のカップルに誘われたものの、外食はせず、家で祝いまし た。前夜はピザを焼いて、中央にトマトソースで大きなハートを描き、当日私からはプレゼントを贈りました。うちの夫はケーキ (torta)やティラミス(tiramisù、男性名詞)など、甘いものを食べるのも作るのも好きです。
14/2/2010
夫は私にケーキを作って贈ってくれたのですが、身近にある材料を使ってケーキの上に描いた赤いバラ一輪が本当に美しいので、感動しました。いろいろ試行錯誤した結果、バラの花びらには、実の赤いオレンジ(arancia、複数形は arance)を使い、薄緑色の茎や葉には、
りんご(mela)の皮を使用することにしたとのことです。
私が好きな『星の王子さま』の中に描かれている、王子の愛するバラの花に非常によく似ているのも、感激した理由の一つかと思います。日曜日は義父母や義弟の家族、伯父たちと大きいテーブルを囲んで皆で一緒に食べるため、ケーキも半分は他の家族と一緒に食べました。
デザートには、夫の手作りのケーキのほかにも、義母が用意した、カーニバル中に食べる伝統的なお菓子、frittelle(写真手前)とfrappe(写真奥)もありました。
それぞれ、単数形は frittella、frappaで、いずれも小麦粉や卵、砂糖などを混ぜ合わせてこね、油で揚げたものです。カーニバルの期間中は、イタリアでも各地でさまざまに趣向を凝らした仮装行列や催しが行われ、テレビニュースでもそうした祭りの 様子がしばしば放映されていました。有名なヴェネッツィアのカーニバルの様子、さまざまな趣向を凝らした山車が意表をつくViareggioの祭典、そして、オレンジの実を投げつけあうIvreaのカーニバル。
ウンブリア州では、たとえば夫の弟が住んでいる町、トーディ(Todi )では、1月31日に子供たちの仮装行列があり、2月14日には中世の衣装に身を包んだ人々の行進がありました。子供たちの仮装行列については、学校や幼稚園ごとに、先生たちも衣装をまとって参加していま した。
Todi (PG), Umbria 31/1/2010
今年は団体ごとに「シンデレラ」、「101匹ワンちゃん」などとテーマが決まっていて、姪っ子たちの場合には、学校のテーマが「赤ずきん」で、姉娘は花、妹娘は蝶の衣装で参加しました。

昨日、2月16日の火曜日は Martedi grassoでカーニバルの最終日でした。最終日とあって、カーニバルの祭りが盛り上がるところ も多いのですが、これもお祭り騒ぎが終わり、翌日からは四旬節(quaresima、女性名詞)に入り、以後復活祭(Pasqua、女性名詞)までは心身をともに清め、精進に努める期間となるからです。
40日間にわたるイエス・キリストの受難を分かち合うために、この期間だけは現在でも、イタリアのカトリック教徒には、毎週金曜日および初日の水曜日には肉食を断つ人が多いようです。信仰心の深い夫の家族は皆、このちょっとした肉断ちを遵守します。昨年2月まではシエナ外国人大学に通っていたのですが、2年ほど前の四旬節の期間に、あるシエナの神父さんが「四旬節中には、金曜日に絶対肉を断つ必要があり、普段から肉を食べない人は、たとえば自分の好きな甘いものを断つなど、工夫するとよい」などと、ミサの説教の中で、厳かに述べていました。
ただし、一昨年にシエナ外国人大学の大学院課程の仲間たちと、すべての授業が終わったからと打ち上げをした晩は、たまたま四旬節中の金曜日の晩だったのですが、イタリア各地出身(サルデーニャ、ピエモンテ、マルケ、シチリアなど)は皆肉料理を注文しておいしそうに食べていました。全員カトリック教徒ではあるようで、途中で誰か一人が「四旬節中の金曜日であること」に気づいて青い顔はしていましたが、ほとんどのメンバーは顔色も変えずに肉を食べ続けていました。あとから女子学生が一人「曜日を意識していたら、肉料理は頼まなかったのだけれど」と言ってはいましたけれども。 余談ですが、人によりけりだというのは他の宗教でも同じで、ペルージャではアラブ圏出身でイスラム教の人に会うことも多いのですが、イスラム教徒でも豚肉を気にせず食べる人もいれば、少しでも材料の一部に入っていれば食べない人もいます。宗教心の度合いだけでなく、外国に来ているから、そこの風習に倣うということもあるでしょうし、開放的な気分を味わっている場合もあるのだろうとは思うのですが。
→ 第37号(2)「サンレモ音楽祭、アリーザの歌『Malamorenò』」に続く
Articolo scritto da Naoko Ishii
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