イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

感動 映画『コーヒーが冷めないうちに』と海辺の町トラーニ

 とても感動しました。思わず物語に引き込まれて、予告編の言葉そのままに涙を流し、出会いや今というときのかけがえのなさ、大切さを思いました。




 思い合っているのに好きと言えずに、乱暴な言葉で別れてしまった男女。
 少しずつ記憶を失いつつある妻と見守る介護士の夫、互いを愛しく大切に思う夫婦。
 家を継がずに出た姉を慕い会おうとする妹と罪悪感から会うのを避け逃げ続ける姉。
 幼い自分を置いて母が去ったのを悲しみ自分のせいかと責める女性と娘を愛する母。

 心がすれ違ってしまうこと、思うように言えないこと、後から事情を知って後悔すること、なぜと尋ねてみたいのに尋ねられないままに話す機会が永遠に失われてしまうこと。

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Trani (BA), Puglia 19/9/2020

 生きていく中にはそういうどこか、失われた対話のとき、せめてあと一度だけ会えればと願い、けれどとかなわぬ出会いがあることと思います。

 大切な人が今ここにいてくれる幸せ、言葉を交わせるありがたさ。わたしたちは、自分でも気づかないうちに愛に包まれているのに、それに気づけずになんとなく生きてしまっていること、思いを告げる大切な機会を逃してしまうことがありがちであること。たくさんの深い感動と共に、たくさんの学びもありました。

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 前日見た2作品は「おもしろかった」のですが、この映画、『コーヒーが冷めないうちに』には心から感動しました。

 こういうすばらしい映画に出会えるのもまた、かけがえのない尊い機会だと思いますので、オンライン日本映画祭に感謝すると共に、せっかくの機会をとらえて、これだと思う映画はできるだけ鑑賞したいと思います。日中時間を見つけられずに、午前2時に見終えるということがこれ以上続かないようにしようとは心がけつつも。

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 この記事は、映画を見終えてすぐに、感想を忘れないうちにとワード文書に書いていた文に、今日選んだ写真を添えて投稿しています。

 コーヒーかハートマークのある写真を添えようと考えて、パソコンに保存してある写真を検索したら、ミルクがハートを描いたコーヒーの写真がちょうど見つかりました。昨年の秋にプーリア旅行で訪ねた海辺の町、トラーニ(Trani)のバールでの朝食です。映画では、登場人物がコーヒーを飲んで、行きたいと願う過去や未来へと向かうときに、深い水中に潜り込むような場面があり、その場面は海と通じるところがあるように思います。そこで迷うことなく、このトラーニの町と海の写真を添えることにしました。

感動 映画『コーヒーが冷めないうちに』と海辺の町トラーニ_f0234936_00441573.jpg

 トラーニは、町並みも海も美しく、人の温かい町です。着いた晩は、夫が車の鍵をなくしたために、わたしは蒸し暑い広場で立ったまま2時間待つこととなり、翌日は観光のための散歩のあとで、昼食を食べられるところを探して、さらにかなり長い間歩きました。けれどもおかげで、町をくまなく歩くことができたように思います。

 カステル・デル・モンテから少しずつペルージャへ戻ろうと、当日の午後にガイドブックや宿の情報を調べて、歴史的中心街と海から近い上にとても安価な宿があるからと行くことに決めた町が、このトラーニだったのですが、夫はなんと、昨年9月の南イタリア旅行で訪ねた町の中で、一番気に入ったのがこのトラーニだとさえ言っています。わたしもトラーニも美しい町だと思うのですが、マテーラやポリンニャーノ・ア・マーレもとてもよかったので、甲乙をつけるのが難しいです。

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Bella la città di Trani con il suo mare.
Eleganti la cattedrale e il castello costruito da Federico II.
Trani (BA), Puglia 19/9/2020
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参照リンク

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by yuki0901671 at 2021-03-04 08:27
おはようございます。

こういういかにも地中海の港町を見ると、
映画「太陽がいっぱい」を思い出します。
今は亡き母親と小学一年生のときに身に行きました。
Commented by nonkonogoro at 2021-03-04 11:15
この映画は見てないのですが
naokoさんのブログの一つ前の記事に 日本映画祭の画像が
アップされていましたが 右側の [A story of yonosuke] に反応してしまいました。
私の大好きな小説 「横道世之介」の映画化されたものではないか?と 調べてみましたら そうでした。
吉田修一さんの作品です。
Commented by django32002 at 2021-03-04 21:37
「重版出来!」や「グランメゾン東京」の演出をされた塚原あゆ子さんが監督した作品ですね!
日本の映画を楽しんでもらえてよかったです!
Commented by milletti_naoko at 2021-03-05 00:23
yuki0901671さん、こんにちは。

太陽がいっぱい、確かに日差しがさんさんと降り注ぐ地中海と海辺の町は、9月とは言え、まだ夏の陽気でいっぱいで、暑いくらいでした。

昔とは言え、『太陽がいっぱい』を見るのに、映画館に子供連れで入れたのだと驚きました。でもそう言えば、わたしも小学校の頃に007シリーズの『ロシアより愛をこめて』を見に行った記憶があります。
Commented by milletti_naoko at 2021-03-05 00:30
nonさん、『横道世之介』、どなたかの記事で見た記憶があると思ったら、nonさんのブログの記事だったのかもしれませんね。昨日の映画は内容が重そうなものばかりだったので、昨日はおととい放映分だった、この『横道世之介』だけ見ました。

さわやかに駆け抜けた世之介の人柄と出会う人たち、いいですね。Railways、世之介と、死がからむ映画が続いたことも、3日放映分の映画を避けた理由です。せめてアニメ映画だけでも見ようと思ったら、今日は朝から暖房装置の点検があって、結局見られずじまいとなりました。
Commented by milletti_naoko at 2021-03-05 00:51
django32002さん、他にもいろいろな作品を監督されている方の映画なんですね。

名画を無料で見られる機会、ありがたいです♪
Commented by tobelune at 2021-03-05 10:33
「コーヒーが冷めないうちに」昨夜見ました。主演の有村架純さん、好きな女優さんです。
うるうるしました。もし本当にこんな喫茶店があれば、私は妻に会いに行って、そしてやっぱり幽霊になってしまうのかも・・・などと思いながら見ました。
でも、最後の終わり方が爽やかでよかったですね。あれで救われました。ほっとしました。
言葉で伝えることの大切さ、ですよね。

素敵な映画を教えていただき、ありがとうございました。
Commented by tokotakikuh at 2021-03-05 15:52
題名から察すると
ほのぼのした作品かな?と
解説を読んでいると
(((uдu*)ゥンゥン
なるほどね
そうですよね、言いそびれたこと
言わずに過ごした過去
言わなくてもよかったのに・・
などなど・・
人生には・おざなりに通過している事
多々ありますね
その多々を、一つ・一つ・問いかけて
紐解くような映像には・心惹かれますよ

💛マークのカフェとクロワッサン
気持ち取り成す一品ですね

そして、風景画のような・・写真

本日は
画像が、物語をうしてくれましたね
Commented by meife-no-shiawase at 2021-03-06 18:06
今、こういう時だから逆になおさら感じるものがあるのかもしれないですね。
今回、日本へ帰ってなかなか会えなかった親友たちとはちょっとだけ会えることができて
その時に、会えること、話せることがどんなにシアワセかを感じました。

いつでも会いたい時に会えるというのが普通だと思っていたことが
今回のことで、そうではないんだな・・・って。

出会いとかも大切にしていきたいし・・・
そんな風に思います♪
もちろんブログを通してですが、なおこさんとのご縁も
大切にしたいです♪
Commented by sunandshadows2020 at 2021-03-07 00:06
有りますね、気持ちのすれ違い。
一言言っておけば良かったという経験も。
私は口下手なので余計にそんな経験があります。
後悔しないためにも最低自分の言動だけは自分でフォローしておこうと思う今日です。

海辺の小さな船、好きな光景です。
Commented by milletti_naoko at 2021-03-07 00:49
とべるねさん、映画をご覧になったんですね! こちらこそありがとうございます。わたしもとても感動しました。奥さまを本当に大切に思われていて、お二人で充実したすてきなときを過ごされていたことでしょう。とべるねさんの絵からも記事からも、その思いが伝わってきます。
Commented by milletti_naoko at 2021-03-07 00:59
zakkkanさん、誰もがきっと抱えている後悔、けれども時は戻せない。そんな中、過去は変えられないけれども少しだけ戻ることができるという設定の映画で、広がる世界や明らかになる人間関係から、出会いや絆のかけがえのなさを改めて感じ、とても感動しました。

トラーニの町、まだ暑い盛りでしたが、青空と青い空、石造りの町並みが美しかったです♪
Commented by Astrolabe65 at 2021-03-07 02:18

こんにちは なおこさん、

「コーヒーが冷めないうちに」は素晴らしい映画ですね。初めて2年前に飛行機で日本へ行くときも日本から帰るときも見たことがあります。

「Funiculi Funicula」というカフェに通っているお客さんのお話は本当に感動します。

様々な人間関係、男女、夫妻、母娘、姉妹などの関係が描かれていますから。

なおこさんの前の記事で、カフェの名前は昔のイタリアの歌から出てくるのを教えてくださってありがとうございます。それは全然知らなかったんです。

日本語の勉強のために映画化された原作本は、映画のシナリオも、いい教材になると思います。

今、今日のオンライン日本映画祭で何の映画が観られるか調べてみましょう。

Frank
Commented by milletti_naoko at 2021-03-07 05:11
メイフェさん、できなくなって初めて分かるありがたさ、会えることの大切さというものがありますよね。お友達も皆さんきっと、メイフェさんに会えてうれしく思われたことでしょう。

こういう状況でまだペルージャではバールも開いていない上に、マスクを外したり近くにいたりすると感染の危険がある可能性の高い変異株が占める割合が多いために、同じ町に住んでいても会えない人が大勢いて、わたしもことさらに、会えることが待ち遠しいと感じています。

ありがとうございます。わたしもメイフェさんとお知り合いになれたご縁、大切にしたいです♪
Commented by milletti_naoko at 2021-03-07 05:21
お転婆シニアさん、一言言っておけばよかった、言い過ぎた、あんなふうに言っておけば、そういう経験、わたしにもあります。親しい間ほど難しいですよね。自分の言動も、そうして目をつぶることも。一番望むことは穏やかな気持ちでいることなのに。

海辺の漁船は大海原に乗り出していくのですよね。青空の下、青い海がきれいでした。
Commented by milletti_naoko at 2021-03-07 06:36
フランクさんも、飛行機の中でこの映画をご覧になったんですね!
わたしも本当にすばらしい映画だなあと感動しました。

どういたしまして。
Funiculi Funiculaは、日本でも知る人の多い歌ではないかと思います。
この歌で繰り返されるjammeという言葉がほら「山」に似ているでしょうと、イタリア人の生徒が山という言葉を覚えやすいように言ってみたこともあります。

そうですね。わたしも、英語を勉強するのに、映画の原作や映画をもとに書かれた小説を読んだことがあって、とても勉強になりました。

今日はわたしは『舟を編む』、夫は『Tukiji Wonderland』を見ました。予告編を参考にして、これがおもしろそうだなあという映画を見つけて、ぜひご覧ください♪
by milletti_naoko | 2021-03-04 00:53 | Film, Libri & Musica | Comments(16)