イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

地獄行きモンタルバーノと妻主演バーリ舞台の刑事ドラマ

 長年様々な苦しいときやできごとをいっしょに乗り越え、遠く離れて暮らしながら、恋人でい続けたリーヴィアと、会ったばかりの若い女性の同僚に一目惚れし関係を持って別れるばかりではなく、その別れ方がなっていないと、テレビのモンタルバーノシリーズの最終話とされるドラマを、3月8日の晩に見て思ったのは、どうやらわたしだけではないようです。




 その別れの場面の映像を紹介しているコッリエーレ・デッラ・セーラ紙サイトの記事(リンクはこちら)では、主人公が全シリーズを通して長年つきあってきたリーヴィアと電話で別れたことにファンが憤り、ソーシャルメディアで大騒動、論争が起こったとし、「ソーシャルメディアにおけるファンの反乱」(rivolta sui social degli appassionati)と、「反乱、蜂起、暴動」を意味するrivoltaという言葉さえ冒頭に使っています。

 その会話、いえ、モンタルバーノがだんまりを決め込む時間が長いので、「会話」と呼べるかどうかも危ういやりとりを、以下に要約してみます。

「どうして電話をして来なかったの」「今はそういう状況じゃない」「じゃあ、いつなら電話していいの」「時間を無駄にできない、仕事をしているんだ」「じゃあいつなら電話してもいいの」「今はいつとは言えない」「もうあなたの電話や訪問を待ってばかりという状況にはうんざりよ。何日も連絡もしないで、わたしのことはいつも後回しで、わたしのことなどどうでもいいということね。わたし自身のことだって少し考えたいわ。じゃあ今こうして別れることにしましょう。」「ああ。」

 浮気相手といっしょにいるだけで、大切であるはずの恋人と向き合って話し合う時間はあるはずなのに、ただ無言で立ちつくし、最後に「ああ」(Sì)とだけ答えて、向こうから切り出してくれた別れを無感情にただ受け入れるという形の別れ方は、あまりにもひどい。

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Cappella di San Brizio, Duomo di Orvieto, Orvieto (TR) 1/12/2018

 テレビ番組、『Le parole della settimana』では、ゲストたちが、言及された人物たちを、天国(inferno)煉獄(purgatorio)地獄(inferno)のうちどこに送るかを決めて答えるコーナーがあるのですが、先週土曜の晩のこの番組では、電話で恋人の言葉にまともに答えることさえせず、別れたモンタルバーノは地獄行きに値すると、皆の意見が一致していました。

 地獄に落ちろとは言いませんが、正義感と人情のある刑事ドラマシリーズの主人公、モンタルバーノ(Montalbano)が、こんなふうに心移りして恋人と別れ、これからは他の若い女性と生きていくように感じさせる最終話、最後の場面はいかがなものかという気がして、煉獄に行って人間やり直しなさいという気分ではあります。そして、テレビのドラマシリーズをこの話で終えずに、リーヴィアと再び会って恋の日々を共に過ごす小説に基づいたドラマで終わらせてほしいと切に願っています。


 著者のアンドレーア・カミッレーリ(Andrea Camilleri)自身が、死後に出版を予定していたモンタルバーノシリーズの最終作となる小説『Riccardino』には、リーヴィアが出て来ないようですが、最後から2冊目の『Il cuoco dell'Alcyon』では恋人としてリーヴィアが登場するのであれば、モンタルバーノが不倫の恋をする終わりから3冊目の小説、『Il metodo Catalanotti』をテレビドラマシリーズの最終作とするのか、解せないところです。ファンの蜂起を機に、今後、リーヴィアと再び恋人として日々を過ごす『Il cuoco dell'Alcyon』に基づくドラマも、また近い将来制作・放映されるようになることを、切に願っています。夫は、これは真相を突き止めるために、原作の小説を読んでみないとねと言っています。


 さて、モンタルバーノと同じチャンネル、Rai1で、2月から放映されていたドラマ、『Le indagini di Lolita Lobosco』の第一シーズンが、昨夜終わりました。題名を訳すと「ロリータ・ロボスコの捜査」となり、主人公の女性、バーリの副警察署長、ロリータ・ロボスコ(Lolita Lobosco)が様々な事件を解決していくドラマです。途中でオンライン日本映画祭があったため、わたしは全4話中、最初と最後の2話しか見ていないのですが、ドラマとしても楽しめた上、バーリの海や町の風景も見ることができました。毎回ずっと見ていた夫は、昨晩で終わってしまったのが残念そうです。

 驚いたのは、わたしは昨夜夫から聞いて初めて知ったのですが、バーリを舞台に繰り広げられるこのドラマの主人公を演じる女優、ルイーザ・ラニエーリ(Luisa Ranieri)が、モンタルバーノを演じるルーカ・ジンガレッティ(Luca Zingaretti)の奥さんだということです。思いもかけなかったのでひどく驚いたのですが、



その直後に、二人がいっしょに登場するパスタの広告が流れたので、笑ってしまいました。

 この広告の全体にレトロな雰囲気と、テレビの中にまたテレビがある、そういう映像の作り方が、いいなあと感じています。

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by jyuujin at 2021-03-16 11:26
小生のブログで紹介したイタリアンジエラートのお店は
広大なブルーベリ畑の真ん中に建っています
で、店名は「MIRTILLO-・・・ミラテイ―ロというらしいですね
イタリア語でブルーベリーのことらしいですね?
その時期にまた行ってみますよ・・・♪
Commented by meife-no-shiawase at 2021-03-16 20:18
ドラマの最終回や映画の最後で、
気持ちよく終わらないストーリーってありますね。
なんでこの結末っ!?って思うと、それまで観たのが
無駄になるような気持ちになることさえ。
特になおこさんのご覧になったような終わり方は
多くの女性の敵を作ったのではないでしょうか。

CM面白いですね!
あ~これはパスタが食べたくなる~って思いますし
みんながそのテレビの中を見ているなんて、ほんとに面白い♪
Commented by milletti_naoko at 2021-03-18 06:53
北の旅人さん、記事を拝見しました。
イタリア中部では、夏の標高2千メートル級の山の高みで茂みを見つけるブルーベリー、ミルティッロが、さすが北海道。低地でも実るのですね。
ブルーベリーが実る時期はジェラートもおいしい季節ですよね。どんな味がするのか、ご報告を楽しみにしていますね。
Commented by milletti_naoko at 2021-03-18 06:57
メイフェさん、そう言えば、こんな結末になるとはと思うような映画やドラマというのは、意外とありますよね。このドラマはイタリアでも人気が高く、しかも長年にわたって放映されただけに、ちょっと待ってと思うファンが、男女を問わず少なくなかったようです。

CM見てくださったんですね! ありがとうございます。気づくと実は、テレビのすぐ外に世界があって、皆が二人のやりとりをじっと見つめていて、色づかいや室内の様子が、一昔前の雰囲気を醸し出していておもしろいですよね。
by milletti_naoko | 2021-03-16 07:28 | Film, Libri & Musica | Comments(4)